オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
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文字通りに「ばたんきゅー」と、カバンを持ったまま倒れこむ臣人を見て、正はくすりと笑った。
「お疲れさん」
「・・・」
返事はなく、空いていた左手が軽く上がった。
1学期の終業式の今日、嵐山での臣人史上初の快挙とも言える追試のない学期が終わった。
「お疲れさん」
「・・・」
返事はなく、空いていた左手が軽く上がった。
1学期の終業式の今日、嵐山での臣人史上初の快挙とも言える追試のない学期が終わった。
その理由は簡単だ。
嫌いな勉強を必死でしてまでも、赤点や追試から逃れたかったのだ。
『このままじゃ、上(大学)に上がれないぞ』
担任の言葉に、臣人は真っ青になった。
普通に受験して合格する自信は皆無・・・このまま嵐山大学に上がれなければ、実家に帰るハメになる。
「それじゃ困る!まぢ、困る!」
「だったら、最低でも1学期の試験で赤点取るな」
「!」
その言葉に、臣人はぐぅと唸った。
「・・・分かった」
それだけ言うと、さっさとその場を去った。
そして正に泣きついた。
とは言え、臣人の努力の結果であることには間違いはなかった。
その日の夕飯を寮の食堂で食べながら、臣人はぽつりとつぶやいた。
「ちょっとでいいから、遊びてぇ」
「夏休みに?」
隣に座る月野 逸考が聞く。
「まあ、上(大学)に行くにしても、夏休み中缶詰って訳にもいかないか」
正が笑いながら言う。
「2・3日、うちに遊びに来る?」
そう正が続けると、臣人の食事の手がぴたりと止まった。
「・・・行く」
正の実家は、海神を祭る神社だ。
海神を祭るだけに、もちろん目の前は海であり、即答した臣人の考えは手に取る様に分かった。
「じゃ、決定」
かくして、海でのバカンス(?)が決まった。
海でのバカンス計画の話は、臣人・正の部屋に場所を移した。
そして部屋に座って落ち着くと、
「勇樹、連れてくぞ」
といった。
「どうぞ」
当然と言った表情の臣人に正は頷いたが、携帯の番号を押す臣人の手を、逸考が止めた。
「・・・って、先輩。まぢっスか?」
「は?」
逸考の台詞に、臣人は鋭い視線を向けた。
「勇樹を誘って何が悪い」
「そーじゃなくて」
そう言うと、そっと臣人に耳打ちした。
「正先輩って確か、水沢が女だって知らないんじゃないスか?」
その時、ようやっと逸考の「まぢっスか?」の意味を理解した。
逸考の妹の友里が女の子として学校に通っている勇樹の友達だったことから、音信不通だった臣人とも再開でき、連絡が取れるようになったが、臣人は肝心な『勇樹が女の子である』事は正には言ってなかったのだ。
そして、男数人の中に勇樹1人が女。
「あ・・・」
「はい。じゃ、先輩頑張って」
ぽんと肩に手を置くと、逸考は立ち上がった。
もちろん、臣人の制止も聞かずに。
そして取り残された・・・というか、部屋の住人である正と2人きりになった臣人は巨大なため息をついた。
「月野、なんだって?」
「え?あー、やー、その・・・」
ついつい、視線を彷徨わせた。
「勇樹、誘うんだよね?」
「あー。まあ、そうしたいんだけど」
「けど?」
さり気ない追及。
「えーと。あー、なんつーかさぁ」
「なに?」
「俺がさー、お前に隠し事してたらどーする?」
「どーするもこーするも、そんなのアリでしょう」
「怒る?」
「別に」
けろりと言う。
「俺だって、お前に隠し事がない訳じゃない」
「そーなのか?」
「話の矛先を変えない」
「・・・」
ぴしゃりと言われる。
「それで?」
「た・・・例えば、もしも勇樹が女だったりしたらどーする?」
「まあ、スカート似合いそうだね」
涼しい顔をしてアイスコーヒーを口に運ぶさまが、逆に臣人の肝を冷やした。
「・・・そうだけど」
相槌を打つ状況じゃないが、つい返事をした。
そして・・・コーヒーを飲み下した正の手が、ぴたりと止まった。
「なんだって?」
「え?」
眉根を寄せた正を見て、臣人の背中に冷や汗が流れた。
空気が変わったのだ。
「冗談でも、言っていい事と悪い事がある」
「はい、そうです」
臣人の気持ち的には、正座をするノリだ。
「お前の言った隠し事って、それか?」
「はい・・・すんません」
首をすくめる。
「勇樹が女?」
「はい、そーです」
「って、いつから隠してた?」
「えっと・・・去年?」
それを聞くと、正はしばしの間考え込んだ。
「あのー」
「友里ちゃんの友達だった、って言ってたっけ?」
「え?」
突然の事に、臣人は付いていけなかった。
「友里ちゃんって、女子校じゃなかったか?」
「え?あ?」
「お前それ、色々とマズイだろ?」
「へ?」
「色々とマズイって言ってんの!」
正の言う『マズイ』の意味を臣人が理解するのは、その数十秒後だった。
途中のあとがき
夏のお話、ということでNUTS BANG。
最近聞きまくっているFLOWがイメージソング(勝手に)
夏の話が・・・浮かれた話が書きたかったらしい。
そんな私を温かく見守りつつ、お楽しみいただければ幸いです。
嫌いな勉強を必死でしてまでも、赤点や追試から逃れたかったのだ。
『このままじゃ、上(大学)に上がれないぞ』
担任の言葉に、臣人は真っ青になった。
普通に受験して合格する自信は皆無・・・このまま嵐山大学に上がれなければ、実家に帰るハメになる。
「それじゃ困る!まぢ、困る!」
「だったら、最低でも1学期の試験で赤点取るな」
「!」
その言葉に、臣人はぐぅと唸った。
「・・・分かった」
それだけ言うと、さっさとその場を去った。
そして正に泣きついた。
とは言え、臣人の努力の結果であることには間違いはなかった。
その日の夕飯を寮の食堂で食べながら、臣人はぽつりとつぶやいた。
「ちょっとでいいから、遊びてぇ」
「夏休みに?」
隣に座る月野 逸考が聞く。
「まあ、上(大学)に行くにしても、夏休み中缶詰って訳にもいかないか」
正が笑いながら言う。
「2・3日、うちに遊びに来る?」
そう正が続けると、臣人の食事の手がぴたりと止まった。
「・・・行く」
正の実家は、海神を祭る神社だ。
海神を祭るだけに、もちろん目の前は海であり、即答した臣人の考えは手に取る様に分かった。
「じゃ、決定」
かくして、海でのバカンス(?)が決まった。
海でのバカンス計画の話は、臣人・正の部屋に場所を移した。
そして部屋に座って落ち着くと、
「勇樹、連れてくぞ」
といった。
「どうぞ」
当然と言った表情の臣人に正は頷いたが、携帯の番号を押す臣人の手を、逸考が止めた。
「・・・って、先輩。まぢっスか?」
「は?」
逸考の台詞に、臣人は鋭い視線を向けた。
「勇樹を誘って何が悪い」
「そーじゃなくて」
そう言うと、そっと臣人に耳打ちした。
「正先輩って確か、水沢が女だって知らないんじゃないスか?」
その時、ようやっと逸考の「まぢっスか?」の意味を理解した。
逸考の妹の友里が女の子として学校に通っている勇樹の友達だったことから、音信不通だった臣人とも再開でき、連絡が取れるようになったが、臣人は肝心な『勇樹が女の子である』事は正には言ってなかったのだ。
そして、男数人の中に勇樹1人が女。
「あ・・・」
「はい。じゃ、先輩頑張って」
ぽんと肩に手を置くと、逸考は立ち上がった。
もちろん、臣人の制止も聞かずに。
そして取り残された・・・というか、部屋の住人である正と2人きりになった臣人は巨大なため息をついた。
「月野、なんだって?」
「え?あー、やー、その・・・」
ついつい、視線を彷徨わせた。
「勇樹、誘うんだよね?」
「あー。まあ、そうしたいんだけど」
「けど?」
さり気ない追及。
「えーと。あー、なんつーかさぁ」
「なに?」
「俺がさー、お前に隠し事してたらどーする?」
「どーするもこーするも、そんなのアリでしょう」
「怒る?」
「別に」
けろりと言う。
「俺だって、お前に隠し事がない訳じゃない」
「そーなのか?」
「話の矛先を変えない」
「・・・」
ぴしゃりと言われる。
「それで?」
「た・・・例えば、もしも勇樹が女だったりしたらどーする?」
「まあ、スカート似合いそうだね」
涼しい顔をしてアイスコーヒーを口に運ぶさまが、逆に臣人の肝を冷やした。
「・・・そうだけど」
相槌を打つ状況じゃないが、つい返事をした。
そして・・・コーヒーを飲み下した正の手が、ぴたりと止まった。
「なんだって?」
「え?」
眉根を寄せた正を見て、臣人の背中に冷や汗が流れた。
空気が変わったのだ。
「冗談でも、言っていい事と悪い事がある」
「はい、そうです」
臣人の気持ち的には、正座をするノリだ。
「お前の言った隠し事って、それか?」
「はい・・・すんません」
首をすくめる。
「勇樹が女?」
「はい、そーです」
「って、いつから隠してた?」
「えっと・・・去年?」
それを聞くと、正はしばしの間考え込んだ。
「あのー」
「友里ちゃんの友達だった、って言ってたっけ?」
「え?」
突然の事に、臣人は付いていけなかった。
「友里ちゃんって、女子校じゃなかったか?」
「え?あ?」
「お前それ、色々とマズイだろ?」
「へ?」
「色々とマズイって言ってんの!」
正の言う『マズイ』の意味を臣人が理解するのは、その数十秒後だった。
途中のあとがき
夏のお話、ということでNUTS BANG。
最近聞きまくっているFLOWがイメージソング(勝手に)
夏の話が・・・浮かれた話が書きたかったらしい。
そんな私を温かく見守りつつ、お楽しみいただければ幸いです。
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