オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
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桜の花びらがはらはらと舞う、4月。
桜の花びらがはらはらと舞う、4月。
ここ、横浜の私立嵐山学園の入学式が執り行われた。
式の終了後、わざわざ遠回りをして寮に帰る一団の中に、勇樹はいた。
水沢 勇樹・・・人一倍華奢で、ムリヤリ先輩から譲られた学ランに着られている中学1年生は、自他共に認めざるを得ない嵐山のケンカ?1だった。
昨年の編入二日目に、不本意ながらその座に就いてしまった後は、先輩に連れられ巻き込まれるがままに参戦してしまったケンカでその強さは証明され、今や横浜どころか近県にも「嵐山の水沢」の名が広まってしまった。
その、参加させてしまった張本人の松原 臣人は、
「つーか、なんでお前、そんなにケンカ強いわけ?」
と、幾度となく呆れたものだった。
そんな悪名高い?勇樹は、先輩たちとの話をなんとなく流しながら、コンビニ前のガードレールに座っていた。
「勇樹!話聞いてるか!」
先刻からまったく返答のない勇樹に、臣人が声をかける。
「んー?」
「お前、寝てるだろ?」
「起きてるよ」
「説得力ないよ、水沢」
寮で臣人と同室の御園 正がにこにこ笑いながら言った。
「そこで寝たら、置いて帰るぞ」
そう言った臣人の表情には「当然」と書かれていた。
「へっき」
力のない返答をすると、勇樹はまた、道路の方を眺めた。
片側1車線でもあるにも関わらず、こそこそ交通量のある道。
コンビニの道を挟んで向かいに咲いた1本の桜を、勇樹はずっと眺めていた・・・桜というよりは、車から巻き起こる風に舞っている花びらを、だったが。
そんな勇樹の視線に、桜の袂で横断歩道の前に立ち止まり、おしゃべりに花を咲かせている主婦が映っていた。
「あぶない・・・よね?」
勇樹はぼそりとつぶやいた。
おしゃべりをしている主婦は供に子連れで、1人は子供を抱きかかえているものの、もう1人は子供の手を引いていた。
年齢は、2・3歳くらいだろう。
立ち止まっていることに飽き、すぐにでも移動したくてうずうずしている様子だった。
「あ・・・」
ぐいぐい引っ張る子供の手が、母親から離れる。
が・・・母親は「危ないわよ〜」程度で、神経のほとんどはおしゃべりいっている。
「んー」
道の反対側にいる勇樹の方が、はらはらとしだした。
そして、事件はおこった。
母親の手を離れた子供が、よろよろと横断歩道のほうへと向かった。
「あ・・・」
勇樹は、思わず立ち上がった。
「勇樹?」
その様子を目の端に留めた正が、声をかけた・・・その次の瞬間だった。
勇樹は、ひらりとガードレールを乗り越えて、車道に飛び出していた。
車道へ出た子供、青信号、道交法違反の携帯を操作する運転手。
そして、クラクションとブレーキ、母親の悲鳴が、響き渡った。
「勇樹!」
臣人と正が、慌てて駆け寄る。
勇樹の腕の中、子供は呆然としていたが、母親が近寄り顔を見るなり、火が付いたように泣き出した。
「おい、勇樹!!」
臣人が勇樹を抱き上げる横で、正は携帯で警察に連絡を取った。
「・・・ん。せん・・・ぱい?」
ゆっくりと目を開ける、勇樹。
「勇樹、大丈夫か!?」
子供を助けた時に打ったのか、額から血が流れてきた。
「せん、ぱい・・・あの子は?」
「泣いてるけど、そんなことより、お前は?!」
「ん・・・大丈夫」
「ウソ付け!」
「ただ・・・」
「ただ?」
「ちょっと、寝かせて」
「はあ?!」
そう言うと、勇樹の意識は徐々に薄れていった・・・遠くから聞こえる、救急車のサイレンを聞きながら。
ここ、横浜の私立嵐山学園の入学式が執り行われた。
式の終了後、わざわざ遠回りをして寮に帰る一団の中に、勇樹はいた。
水沢 勇樹・・・人一倍華奢で、ムリヤリ先輩から譲られた学ランに着られている中学1年生は、自他共に認めざるを得ない嵐山のケンカ?1だった。
昨年の編入二日目に、不本意ながらその座に就いてしまった後は、先輩に連れられ巻き込まれるがままに参戦してしまったケンカでその強さは証明され、今や横浜どころか近県にも「嵐山の水沢」の名が広まってしまった。
その、参加させてしまった張本人の松原 臣人は、
「つーか、なんでお前、そんなにケンカ強いわけ?」
と、幾度となく呆れたものだった。
そんな悪名高い?勇樹は、先輩たちとの話をなんとなく流しながら、コンビニ前のガードレールに座っていた。
「勇樹!話聞いてるか!」
先刻からまったく返答のない勇樹に、臣人が声をかける。
「んー?」
「お前、寝てるだろ?」
「起きてるよ」
「説得力ないよ、水沢」
寮で臣人と同室の御園 正がにこにこ笑いながら言った。
「そこで寝たら、置いて帰るぞ」
そう言った臣人の表情には「当然」と書かれていた。
「へっき」
力のない返答をすると、勇樹はまた、道路の方を眺めた。
片側1車線でもあるにも関わらず、こそこそ交通量のある道。
コンビニの道を挟んで向かいに咲いた1本の桜を、勇樹はずっと眺めていた・・・桜というよりは、車から巻き起こる風に舞っている花びらを、だったが。
そんな勇樹の視線に、桜の袂で横断歩道の前に立ち止まり、おしゃべりに花を咲かせている主婦が映っていた。
「あぶない・・・よね?」
勇樹はぼそりとつぶやいた。
おしゃべりをしている主婦は供に子連れで、1人は子供を抱きかかえているものの、もう1人は子供の手を引いていた。
年齢は、2・3歳くらいだろう。
立ち止まっていることに飽き、すぐにでも移動したくてうずうずしている様子だった。
「あ・・・」
ぐいぐい引っ張る子供の手が、母親から離れる。
が・・・母親は「危ないわよ〜」程度で、神経のほとんどはおしゃべりいっている。
「んー」
道の反対側にいる勇樹の方が、はらはらとしだした。
そして、事件はおこった。
母親の手を離れた子供が、よろよろと横断歩道のほうへと向かった。
「あ・・・」
勇樹は、思わず立ち上がった。
「勇樹?」
その様子を目の端に留めた正が、声をかけた・・・その次の瞬間だった。
勇樹は、ひらりとガードレールを乗り越えて、車道に飛び出していた。
車道へ出た子供、青信号、道交法違反の携帯を操作する運転手。
そして、クラクションとブレーキ、母親の悲鳴が、響き渡った。
「勇樹!」
臣人と正が、慌てて駆け寄る。
勇樹の腕の中、子供は呆然としていたが、母親が近寄り顔を見るなり、火が付いたように泣き出した。
「おい、勇樹!!」
臣人が勇樹を抱き上げる横で、正は携帯で警察に連絡を取った。
「・・・ん。せん・・・ぱい?」
ゆっくりと目を開ける、勇樹。
「勇樹、大丈夫か!?」
子供を助けた時に打ったのか、額から血が流れてきた。
「せん、ぱい・・・あの子は?」
「泣いてるけど、そんなことより、お前は?!」
「ん・・・大丈夫」
「ウソ付け!」
「ただ・・・」
「ただ?」
「ちょっと、寝かせて」
「はあ?!」
そう言うと、勇樹の意識は徐々に薄れていった・・・遠くから聞こえる、救急車のサイレンを聞きながら。
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