オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
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事の顛末は、こんなカンジだった。
事の顛末は、こんなカンジだった。
学校に着くと、まず充槻は地図を使ってざっと校内のことを説明した。
そしてあっという間に携帯で連絡を取り付け、問題の女性(中野という)の後輩であり自分の同級生を食堂で捕まえた。
そして、中野に連絡を入れさせ、呼びつけた。
途中の道のりや食堂にいて、充槻と中野の事情を知っている同級生数人が、ギャラリーとなって、充槻と悠宇の周りに座った。
そして、問題の中野は悠宇を見たとたんに固まった。
「あなたが成田くんの彼女?!」
その一声は、驚きと怒りとトゲで満ちていたが、悠宇は涼しい顔で、にこりと笑った。
否定も肯定もしない、悠宇の常套手段だった。
「約束通り連れてきたぜ」
「うそ!!」
手前にいる悠宇の右隣に腰を下ろしながら、中野は力いっぱい言った。
「?」
「この子、彼女じゃないでしょ?」
「は?」
「友達か後輩か知らないけど『彼女のフリしてくれ』って頼んで連れてきただけでしょ」
「なんでだよ」
「こーゆータイプ、趣味じゃないでしょ」
「なんで断言すんだよ?」
「だって、似合わない」
「るっせーな!!」
「とにかく!約束通りにオンナ連れてきたんだから、消えろ!」
「なんでよ!ニセモノ連れてきて誤魔化すなんて、許せない」
「だから!俺のオンナだって!」
思わず充槻は、テーブルを叩いた。
ギャラリー達は、くってかかる充槻の様子を見て、冷や汗をかいていた。
が。
言い合いをしている二人に挟まれている悠宇は、まるで他人事の様に涼しい顔をしていた。
それどころか、充槻が買ってくれた缶の紅茶を平然と飲んでいた。
その様子が目障りだったのか、中野の矛先が変わった。
「あんたもなんか言えば?」
「水沢、相手にすんな」
「水沢ぁ?!」
中野は声を張り上げた。
「やっぱり彼女じゃないじゃない!」
「なんでだよ!」
「彼女を苗字で呼ぶなんて、ありえない!」
「俺の勝手だろ!」
もう一度、テーブルを叩く。
「ちょっとぉ。あんたもなんか言いなさいよ!」
そう言って、中野は悠宇の右肩を押して、無理やり自分の方を向かせた。
「水沢!」
同時に、充槻は腰を浮かせ、慌てて右手を伸ばした。
充槻が過剰に反応したのには、理由があった。
過去の交通事故で、悠宇の右肩に古傷があるのを知っていた事。
そして一度だけ、悠宇がケンカの最中に充槻を庇って、右肩を怪我したことがあった事。
しかし、中野に伸ばすはずだった手は、途中でさえぎられた。
「充槻!」
その声に、充槻はぴたりと止まった。
そして悠宇は、ゆっくりと振り返ると、にっこりと笑った。
「大丈夫」
「水沢・・・」
「私は大丈夫」
充槻は、その悠宇の表情をみて、何も言うことができなかった。
そして充槻が座るのを見届けてから、悠宇は中野の方に顔を向けた。
「中野さん、でしたよね?」
「それがなによ?」
「私がここへ来た意味、お分かりですよね?」
「でもあんた、彼女じゃないじゃない!」
「そうだとしても、充槻は貴女とお付き合いする気はありませんから」
直球かよ?!
今さらながら、充槻は悠宇の度胸のよさに呆れた。
「なんであんたに、そんな事言われなきゃならないのよ!」
「充槻にそう言われても分らないようでしたので、言ったまでです。それに先刻言いましたよね?私がここへ来た意味、お分かりですよね?って」
「あのね!」
「これ以上、恥の上塗りをしたくないのでしたら、お引取りを」
こえぇ・・・充槻は思った。
悠宇の背中しか見えないのが幸いだが、平然と・・・下手すれば笑みすら浮かべて言い放ったのだと思うと、そう思わざるを得なかった。
そして、静かな怒りと威圧感。
よほど鈍感でない限り、敗北を感じないないわけがないだろうと思った。
「なによ!」
怒鳴りながら、中野は腰を上げた。
「こんな女連れてくるなんて、サイテー!」
「そうかよ」
文句言えるだけたいしたもんだと思いつつ、充槻は言った。
そして中野は、ヒールの音を響かせてその場から去った。
なんともいえない緊張が解け、その場に柔らかい空気が流れ始めた。
そして充槻は、右腕を悠宇の肩に回すと引き寄せた。
「助かった」
なんの抵抗もなく体を預けた悠宇は、充槻を見てからくすりと笑った。
「どういたしまして」
「お前、ほんとーにいいオンナだな」
言いながら充槻は、溜め息をつきながら少し視線を落とした。
すると、視線を落としたその先には、肩を引き寄せられてゆるんだ襟元から、悠宇の胸元がのぞいていた。
見えるか見えないかの微妙な位置に、赤い華がひとつ。
・・・コレか。
もうひとつ、充槻は溜め息をついた。
帰宅するために悠宇の部屋を後にしてエレベーターに乗ると、即座に有里が口を開いた。
「あのねぇ。麟くんに、聞いたんだ」
「ん?」
「2時間くらい寄り道したらどーするの?って」
「意地が悪いな、オマエ」
充槻が、にやりと笑った。
「そーしたら、それはないって即答したの」
「で?」
「成田が俺に頭下げてまで、そんな事するはずないって」
「そーかよ」
「そんなに信用されたら、手も出せないよね?」
有里はくすりと笑った。
「オマエだから言うけど・・・オフレコにしとけよ?」
「考えとく」
充槻のキツイ口調が口だけだと分っている有里は、軽くウインクした。
「をい!」
そして、充槻は溜め息をひとつ。
有里が口で言うほど、そういう悪さをしないのを承知の上で、思っていることを口にした。
「水沢だけどさ、柔らかくなったろ?」
「んー?そうかも」
「疾風だからだろ?俺じゃムリだ、たぶん」
「そう?」
「アイツの方が、俺よりいいオトコだとは思ってねーけどな」
「あら?でも、二人ともいいオトコだけど?」
「二人とも、かよ?」
苦笑いだ。
「私にとって、今一番いいオトコは、水沢勇樹だから」
「をいをい」
思わず肩をすくめた。
「そーいや、手の込んだ仕上げをしておいたな」
「うふふ・・・サービスです」
その笑顔を見て、
「コイツにも勝てねーな」
と、充槻は溜め息をついた。
あとがき
終わった・・・どーにか終わったよ(;^_^A アセアセ・・・
悠宇の駆け引きの場面は、いろいろとバージョンを考えました。
「ひっぱたかれる」とか「思わず手が出る」とか。
でもまあ、こーしときました。
せっかくだから充槻とラヴラヴにするってのも、選択肢としてないわけじゃなかったんですけどね(笑
止めておきました≧(´▽`)≦アハハハ
学校に着くと、まず充槻は地図を使ってざっと校内のことを説明した。
そしてあっという間に携帯で連絡を取り付け、問題の女性(中野という)の後輩であり自分の同級生を食堂で捕まえた。
そして、中野に連絡を入れさせ、呼びつけた。
途中の道のりや食堂にいて、充槻と中野の事情を知っている同級生数人が、ギャラリーとなって、充槻と悠宇の周りに座った。
そして、問題の中野は悠宇を見たとたんに固まった。
「あなたが成田くんの彼女?!」
その一声は、驚きと怒りとトゲで満ちていたが、悠宇は涼しい顔で、にこりと笑った。
否定も肯定もしない、悠宇の常套手段だった。
「約束通り連れてきたぜ」
「うそ!!」
手前にいる悠宇の右隣に腰を下ろしながら、中野は力いっぱい言った。
「?」
「この子、彼女じゃないでしょ?」
「は?」
「友達か後輩か知らないけど『彼女のフリしてくれ』って頼んで連れてきただけでしょ」
「なんでだよ」
「こーゆータイプ、趣味じゃないでしょ」
「なんで断言すんだよ?」
「だって、似合わない」
「るっせーな!!」
「とにかく!約束通りにオンナ連れてきたんだから、消えろ!」
「なんでよ!ニセモノ連れてきて誤魔化すなんて、許せない」
「だから!俺のオンナだって!」
思わず充槻は、テーブルを叩いた。
ギャラリー達は、くってかかる充槻の様子を見て、冷や汗をかいていた。
が。
言い合いをしている二人に挟まれている悠宇は、まるで他人事の様に涼しい顔をしていた。
それどころか、充槻が買ってくれた缶の紅茶を平然と飲んでいた。
その様子が目障りだったのか、中野の矛先が変わった。
「あんたもなんか言えば?」
「水沢、相手にすんな」
「水沢ぁ?!」
中野は声を張り上げた。
「やっぱり彼女じゃないじゃない!」
「なんでだよ!」
「彼女を苗字で呼ぶなんて、ありえない!」
「俺の勝手だろ!」
もう一度、テーブルを叩く。
「ちょっとぉ。あんたもなんか言いなさいよ!」
そう言って、中野は悠宇の右肩を押して、無理やり自分の方を向かせた。
「水沢!」
同時に、充槻は腰を浮かせ、慌てて右手を伸ばした。
充槻が過剰に反応したのには、理由があった。
過去の交通事故で、悠宇の右肩に古傷があるのを知っていた事。
そして一度だけ、悠宇がケンカの最中に充槻を庇って、右肩を怪我したことがあった事。
しかし、中野に伸ばすはずだった手は、途中でさえぎられた。
「充槻!」
その声に、充槻はぴたりと止まった。
そして悠宇は、ゆっくりと振り返ると、にっこりと笑った。
「大丈夫」
「水沢・・・」
「私は大丈夫」
充槻は、その悠宇の表情をみて、何も言うことができなかった。
そして充槻が座るのを見届けてから、悠宇は中野の方に顔を向けた。
「中野さん、でしたよね?」
「それがなによ?」
「私がここへ来た意味、お分かりですよね?」
「でもあんた、彼女じゃないじゃない!」
「そうだとしても、充槻は貴女とお付き合いする気はありませんから」
直球かよ?!
今さらながら、充槻は悠宇の度胸のよさに呆れた。
「なんであんたに、そんな事言われなきゃならないのよ!」
「充槻にそう言われても分らないようでしたので、言ったまでです。それに先刻言いましたよね?私がここへ来た意味、お分かりですよね?って」
「あのね!」
「これ以上、恥の上塗りをしたくないのでしたら、お引取りを」
こえぇ・・・充槻は思った。
悠宇の背中しか見えないのが幸いだが、平然と・・・下手すれば笑みすら浮かべて言い放ったのだと思うと、そう思わざるを得なかった。
そして、静かな怒りと威圧感。
よほど鈍感でない限り、敗北を感じないないわけがないだろうと思った。
「なによ!」
怒鳴りながら、中野は腰を上げた。
「こんな女連れてくるなんて、サイテー!」
「そうかよ」
文句言えるだけたいしたもんだと思いつつ、充槻は言った。
そして中野は、ヒールの音を響かせてその場から去った。
なんともいえない緊張が解け、その場に柔らかい空気が流れ始めた。
そして充槻は、右腕を悠宇の肩に回すと引き寄せた。
「助かった」
なんの抵抗もなく体を預けた悠宇は、充槻を見てからくすりと笑った。
「どういたしまして」
「お前、ほんとーにいいオンナだな」
言いながら充槻は、溜め息をつきながら少し視線を落とした。
すると、視線を落としたその先には、肩を引き寄せられてゆるんだ襟元から、悠宇の胸元がのぞいていた。
見えるか見えないかの微妙な位置に、赤い華がひとつ。
・・・コレか。
もうひとつ、充槻は溜め息をついた。
帰宅するために悠宇の部屋を後にしてエレベーターに乗ると、即座に有里が口を開いた。
「あのねぇ。麟くんに、聞いたんだ」
「ん?」
「2時間くらい寄り道したらどーするの?って」
「意地が悪いな、オマエ」
充槻が、にやりと笑った。
「そーしたら、それはないって即答したの」
「で?」
「成田が俺に頭下げてまで、そんな事するはずないって」
「そーかよ」
「そんなに信用されたら、手も出せないよね?」
有里はくすりと笑った。
「オマエだから言うけど・・・オフレコにしとけよ?」
「考えとく」
充槻のキツイ口調が口だけだと分っている有里は、軽くウインクした。
「をい!」
そして、充槻は溜め息をひとつ。
有里が口で言うほど、そういう悪さをしないのを承知の上で、思っていることを口にした。
「水沢だけどさ、柔らかくなったろ?」
「んー?そうかも」
「疾風だからだろ?俺じゃムリだ、たぶん」
「そう?」
「アイツの方が、俺よりいいオトコだとは思ってねーけどな」
「あら?でも、二人ともいいオトコだけど?」
「二人とも、かよ?」
苦笑いだ。
「私にとって、今一番いいオトコは、水沢勇樹だから」
「をいをい」
思わず肩をすくめた。
「そーいや、手の込んだ仕上げをしておいたな」
「うふふ・・・サービスです」
その笑顔を見て、
「コイツにも勝てねーな」
と、充槻は溜め息をついた。
あとがき
終わった・・・どーにか終わったよ(;^_^A アセアセ・・・
悠宇の駆け引きの場面は、いろいろとバージョンを考えました。
「ひっぱたかれる」とか「思わず手が出る」とか。
でもまあ、こーしときました。
せっかくだから充槻とラヴラヴにするってのも、選択肢としてないわけじゃなかったんですけどね(笑
止めておきました≧(´▽`)≦アハハハ
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