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オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
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 それは、イベントに明け暮れている秋の日の事だった。



 「なあ。女子が調理実習でクッキー作るらしいぜ」
 何故だか一緒にいる事の多い浅見(優一と意気投合した)が、昼休みに言った。
 そんな情報、どっから取ってくるんだ?
 「え!まぢで!」
 優一の瞳がきらきらと輝き出した。
 「あ~。2・3日前、隣のクラスそうだったよね、確か」
 実にしれっと、要が言った。
 「腹へってる時には毒だなぁ」
 実習室にいるだけで、女子にはクッキーの甘い香りがついてくるだろう。
 「・・・うざい」
 麟がこっそり言うと、優一を浅見が揃って睨みつけた。
 「?」
 「食べたくないのかよ?!」
 「空気読め、疾風!」
 「ハモるな!」
 そして一呼吸おいて、要が口を開いた。
 「まあ、貰えるものならもらいたいよね」
 「「だろ!?」」
 優一と浅見のシンクロ率に、麟は米神を押さえた。

 調理実習は5限目で、女子は予想通りに甘い香りを纏ってうきうきと帰ってきた。
 そして6限目はHRで・・・何故か自習になった。
 変なところで気の回る担任は
 『教室から出ない!あと騒ぐな!・・・それを守れば、チャイムと同時に帰っていい』
 女子の実習のクッキーのお陰でそわそわしているのを見越しての判断で、出欠をとってそれだけ言い残すと、さっさと教室から出て行った。
 おーい、仕事しろ。

 「・・・なぁ、鎌田。クッキー残ってないの?」
 担任が出て行って少し経ってから、優一が後ろの席に座っている奈央に聞いた。
 「聞き方違うんじゃないの?クッキー下さいじゃないの?」
 くすくすと笑いながら言うその雰囲気は、聞かれても不愉快どころか面白がっている事を物語っていた。
 「え?マジ?くれるの?」
 「俺も欲しい」
 奈央の後ろの浅見も、きらきらとした瞳で加わる。
 「かわいそうな君たちに、恵んであげます」
 「「やった!」」
 諸手を挙げて喜ぶ2人の様子を、斜め後ろから悠宇がぽやんとした表情で眺めているのを、奈央の右隣で悠宇の前にいた要が気付いた。
 「神崎さん、どーしたの?」
 「神崎さん?」
 クッキーを取り出しつつあった奈央も、悠宇に視線を注いだ。
 「え?」
 自然と注がれた視線に、悠宇が我に返る。
 「えと・・・なんでそんなにクッキー欲しいのかな?って」
 「「「「・・・」」」」
 4人が思わず黙ってしまったのを、悠宇の右隣から眺めていた麟は、小さくため息をついた。

 『でたよ、天然』

 「ほらだって!いいにおいだし!」
 優一があわあわと答える。
 「手作りのクッキーなんて、滅多に食えないじゃん」
 浅見も返事をするが、何かがふち落ちない悠宇の表情が晴れないのを感じた要は、ちょいちょいと手招きしてから耳打ちした。
 「?」
 「食欲とは別に、ステイタスの問題があるんだけど」
 「え?」
 「どんなに余って様が壊れて様が、嫌悪している男子にあげないでしょ。もらえたら、それだけで鼻が高いわけ」
 「そうなの?」
 「そうなの」
 1年ちょっと一緒のクラスにいて、要は悠宇の天然に気付いていたから、そう助言した。
 「バレンタインのチョコと一緒」
 「んー?」
 悠宇は視線を斜めに落とし、何を考えている表情を作った。
 「速見くんも、欲しい?」
 「まあ、貰えるならね」
 にこりと笑う。
 すると、机の中をごそごそしたと思うと
 「どうぞ」
 と言って、実習で作ったクッキーを差し出した。
 「え?」
 「あああ!神崎さんのクッキー!」
 「俺も!俺も欲しい!」
 目ざとく視界に入れた優一と浅見が、怒涛の如く詰め寄った。
 「・・・どうぞ?」
 さすがの悠宇も苦笑いした。
 「同じものなんですケド?」
 奈央が言うと、
 「鎌田のも美味いって!」
 「フォローしなくていいから、林。どーせ私のより神崎さんのがいいんでしょ」
 「麟も食うだろ?」
 要が気を利かせて、悠宇と奈央のクッキーを1枚づつ取って手渡す。
 「え?あ・・・うん」
 育ち盛りの男子は、この程度の小腹なんぞすぐ作られる。
 「全部食べていいから」
 わずかな笑顔をつけて、丸ごと優一に手渡した。
 「え?いいの?!」
 「うん」
 「神崎さん、自分は食べないの?」
 優一に渡ったクッキーに手を出しつつ聞く浅見。
 「うん。食べきれないし、クッキーくらいなら焼けるし」
 「そうそう。神崎さん、すごい手慣れてたもんね」
 「クッキーくらい『なら』?」
 要の突っ込みに、奈央が言葉を足す。
 「やめとけ、要。こいつ、ケーキとか焼けるぞ」
 「「まぢで!?」」
 優一と浅見のダブル攻撃に麟は思わずビビり、悠宇は軽く目を丸くした。
 「なんで、んなこと知ってんだよ、疾風!?」
 一緒に住んでて、お相伴にあずかってるなんて、間違っても言えない。
 「・・・そう聞いた」
 「え?!そうなの?神崎さん?!」
 優一が目を白黒させる。
 「・・・やればね」
 「うわ~。俺、そういう彼女欲しいから、俺と付き合って下さい」
 冗談とも本気とも言えない台詞を、浅見はさらりと言った。
 「よく作るの?」
 実習中に聞けなかったこともあって、奈央が聞いてくる。
 「滅多にやらない・・・暇潰し」
 「どこかで習ったの?お菓子教室?」
 「知り合いに」
 「ケーキも焼けるって、本当?」
 「シフォンケーキ?なら」
 「いいなぁ」
 奈央の表情がうっとりする。
 「俺、食いたい」
 「俺も」
 「ふーん?」
 「今度教えて!神崎さん!」
 奈央は悠宇の両手をがしっと握った。
 「・・・鎌田さん、近いよ?」
 「あ☆ごめんごめん」

 そして次の週の月曜日の朝。
 「神崎さん、おはよう。・・・今日は荷物多いね?」
 「おはよ」
 少し遅めに着いた悠宇はにこりと笑いつつ、席に荷物を置いた。
 「鎌田さん、これ」
 「え?」
 差し出されたのは、タイラップで止められたビニール袋入りのスコーン。
 「スコーン?どうしたの?」
 「あ!なにそれ!」
 「うまそう!」
 相変わらず、優一と浅見は目聡い。
 「2人の分もあるから」
 そう言うと、当然の様に2人にも1つづつ手渡した。
 「速見くんも」
 「ありがとう」
 にこりと笑って受け取る・・・その時には、優一と浅見のスコーンは半分、胃の中に消えていた。
 「疾風は?」
 先刻、朝ご飯に一つ食べたが、普通に一つ差し出す。
 「・・・もらう」
 さすがに麟も状況を組んで貰うが、背中に突き刺さる視線が痛かった。
 貰わない方が恐ろしい気がするのは、勘違いだと思いたかった。
 「これどうしたの?」
 「昨日焼いた」
 「神崎さんが?」
 「うん、そう」
 平然とした表情で、席に着きながら答える。
 「神崎さん!お嫁に来て」
 またもや、奈央が両手を握る。
 「既にプロポーズしてくれた人がいるから、第2夫人でいい?」
 「十分です!」
 「「「をい!」」」
 優一・要・浅見は即つっこんだ。
 第1夫人が誰なのか予想のついた麟だけが、大きなため息をついた。

 あとがき

 あれ~?これってなんで書いてんの?

 悠宇は実は、お菓子作るのが趣味と言う設定があります。
 本人自覚はないですが☆
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