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オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
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 7月の末日のある日・・・俺はバイト代をもらうべくして、暑い中、事務所へ出かけて行った。


 オオキ・モデル・エージンシーの事務所は、社長宅の一室にあった。
 モデルの事務所としては小規模、らしい。
 社長がモデルをしてる、という事から有名なだけらしい。
 そんなモデル事務所に、ひょんなことから入ることになってしまって・・・結果、お小遣い程度に仕事をさせてもらっていた。
 「あ・・・」
 事務所のドアを開けると、ふかふかのソファに、見慣れた女が座っていた。
 この事務所の稼ぎ頭、月野 友里こと、芸名 ローズ。
 ハーフだという特権で得た容姿を活用している女。
 茶色い髪、外人ぽい独特の巻き髪の様なくせ毛、はっきりとした顔立ち、白い肌、明るい性格。
 そんな女が、どこでどーなって悠宇の友達として現れたのか、謎だった。
 「麟くん」
 ひらひらと手を振る。
 「・・・」
 俺は無言で、軽く右手を挙げた。
 まだ寒い時期に、悠宇が「友達連れてきた」と言って連れてきたのが、友里だった。
 後で聞くと、中学の時の同級生らしい。
 私立 聖華蘭学院中等部って、すげーお嬢様校ぢゃねーか。
 ついでに、友里の兄の逸考は、悠宇が「水沢 勇樹」として嵐山にいた時の同級生らしい。
 世の中狭い、っていうのを実感した。
 「今、飲み物持ってきますね」
 社長の奥さんが、にっこり笑って部屋から出て行くと、友里が自分の隣をぽんぽんと叩いた。
 来い、ってか?
 「なんスか?」
 「あ・・・すっごいイヤそうな顔」
 まるで、俺が悪者の様に言う。
 「あたりめーだ」
 遠慮のないこの女には、正直、振り回される。
 それに・・・いくら暑いからと言って、Tシャツに短パンにサンダルっていう服装されちゃ、どこ見ていいのかすら、分からなくなる。
 とは言え、仕方なく少し離れて隣に座った。
 「悠宇にプレゼントあげた?」
 悠宇の誕生日は、7/27。
 6月の俺の誕生日にプレゼントをくれたから、お返しを上げたくて・・・でも、何がいいのか全く分からなくて、思わず助けを求めた。
 ・・・それは、もしかしなくても間違い、だったのかもしれない。
 「その節はありがとーございました」
 わざとらしく頭を下げると
 「どーいたしまして」
 と、向こうも頭を下げた。
 「よろこんだ?」
 「まあ」
 驚いて、声も出せなかった様に見えた。
 「実はさ・・・悠宇が喜ぶのか、ちょっと不安だったんだよね」
 は?
 「ちょっと、私でもよく分かんないの」
 「はい?」
 「悠宇の恋愛観とか、オンナノコ具合とか」
 「はあ」
 茶目っ気たっぷりに言っているが、目は笑ってなかった。
 なんとなく・・・その友里の雰囲気から、なんとなく言いたいことが分かった気がした。
 「麟くんも困らない?」
 「・・・」
 思い当たるフシはある。
 雑誌の片隅に載っている様な、いわゆる『恋愛マニュアル』みたいなものは、通用しない相手だとは感じた。
 現に、要が付き合っているという彼女の話を聞くと
 「違うんですケド」
 と、言いたい自分がいた。
 それと、後々になって気付いたことがある。
 先日、悠宇の体を俺は欲しがって・・・その思いは成就したけど、気付いた。

 『初めてじゃない』と。

 優一や要が「彼氏がいないわけない」と言う位だから、いたとしても不思議じゃないし、経験があっても不思議じゃない。
 その割には・・・。
 「慣れてない気がする」
 「え?」
 友里の声を聞いて、思わず我に返った。
 「何が?」
 「えーと」
 思わず視線が彷徨う。
 「いや、その。なんつーか・・・もっと恋愛慣れしてるもんかと」
 そこまでしか、言えない。
 「あー。分かる」
 クッションを抱えながら、友里が何度も首を縦に振った。
 「?」
 「私ねー、前に聞いたことがあるんだよねぇ」
 「え?」
 「臣人くんと付き合ってたの?って」
 臣人って、確か嵐山の松原の下の名前。
 「そしたら、力強く『違う』って言い切ったんだよねぇ」
 はあ。
 「あ・・・それ、言ったっけ?」
 「聞きました」
 「臣人くんがちょっかい出してたのは確実なんだけど、悠宇と臣人くんは、そーゆー関係はないから」
 はいはい。
 「でさ、絶対に恋バナはしないじゃない?悠宇って」
 ええ、そのようです。
 「だから、もしかして付き合ったことないんじゃ?とかも思うわけ」
 確かにその考えは、アリだ。
 「そうすると、悠宇の相手って分からないのよねぇ」
 それには同感だ。
 「悠宇の周りには男友達がいっぱいだけど、だからって悠宇が色気振りまいてたとは思えないんだもん」
 って事は、親友?の友里にも知られてない相手がいる、のか?
 「・・・」
 友里が一緒にいたのは「学校」でだけであって、プライベートの時間はそうそう一緒にいるわけじゃない。
 友里には、モデルの仕事もある。
 だとすれば、知らない男の1人や2人いても、仕方がない。
 それに悠宇は基本、秘密主義だ。
 とは言え、たまたま同居してそのプライベートの時間もかなり一緒にいて、それでも俺は付き合う前に気付かなかっただけなのか?
 そもそも、俺は「彼氏がいない」ことを前提にして付き合い始めたわけじゃない。
 「・・・くん、麟くん!」
 「!」
 「だいじょぶ?」
 思わぬ方向に考えが及ぶ前に、友里が現実に引き戻してくれた。
 が。
 俺の顔を覗きこむのはいいが、胸の谷間、見えてますけど?
 「変なこと言ってごめんね」
 「いや、別に」
 「でも、悠宇なら大丈夫だよ?」
 「へ?」
 「悠宇に麟くんの事聞くと、いつもうれしそうだから。付き合う前から」
 ・・・え?
 「いつも、表情が柔らかくなるから」
 「・・・付き合う前、から?」
 思わず、1つ前の台詞を反芻した。
 「うん。ほんのちょっとの差なんだけど、みつきやせーぎの時より、表情が軟らかかったもん」
 「・・・」
 「一緒に住んでて仲いいからかと思ったけど。今考えたら、麟くんのことが好きだったんだなぁって」
 まぢ、で?
 「だから、悠宇が『男の人にあげるプレゼント選びたい』って言った時、すぐ分かったもん」
 友里の瞳は真剣だった。
 だから・・・それ以上俺は、何も言えなかった。

 帰宅してリビングに入ると、そよと涼しい風に包まれた。
 「あっつかった」
 溜め息とともに言うと、ソファにいた悠宇がくすりと笑ったのが分かった。
 「おかえりなさい」
 「ただいま」
 その笑顔に、無意識に安心感を得た。
 ダイニングテーブルの上に「お土産」と言って無理矢理持たされた洋菓子の袋を置いて、クーラーの風が一番当たる所に移動する。
 「はー」
 目を閉じて、その涼風に吹かれる。
 「すずしー」
 やっぱ、シャワーすっかな?なんて思っていると、
 「はい」
 という声が聞こえた。
 「?」
 目を開けると、悠宇がタオルを差し出していた。
 受け取るとそれは、ひんやりと冷たかった・・・その誘惑に勝てなくて、思わず顔の上に乗せた。
 「すっげ、すずしー」
 天国、としか言えなかった。
 そのままそのタオルで、首筋や腕を拭くと、さらに涼しさが増した。
 「麟、何か飲む?」
 「え?」
 「アイスティ、あるけど」
 「飲む」
 「はい」
 軽く笑うと、悠宇はぱたぱたとキッチンへ向かった。
 グラスや氷を出す澄んだ音が聞こえてくる。
 「・・・」
 だいぶ涼しくなってきたので、悠宇を追ってキッチンへと向かった。
 「?」
 背の高いグラスの中の液体は、アイスティと言ってたわりには、不思議な色をしていた。
 「何、それ?」
 「オレンジ・アイスティ」
 「オレンジ・アイスティ?」
 「うん。オレンジジュースで割ったの」
 言いながら、最後の仕上げとばかりにミントの葉をちょこんと乗せた。
 「ちょっと甘い方がいいかな?って思って」
 その、軽く笑った顔を見て、つい先刻までの・・・事務所で抱いた不安など、どこかへ行ってしまった。
 「悠宇・・・」
 そっと引き寄せると、なんの抵抗もなく俺の腕の中に納まる。
 「ガムシロ、いる?」
 言いながら少し、体を離そうとするのを、腕で引きとめる。
 「飲んでから考える」
 一瞬息を飲んだのが分かったけど、けれど腕から逃れることはしなかった・・・しようと思えば、簡単にできるだろうに。
 そっと抱きしめると、小さな吐息と共に肩の力が抜けたのが分かった。
 こんなに自然に寄り添う悠宇であれば、それでいい。
 余計なことを考えたり、過去を詮索するなんて必要ない。
 今、俺の腕の中にいるのは、悠宇なんだから。
 ふと、悠宇が身じろぎしたことで、悠宇の左手が目に入る。
 そこには、先日の誕生日に贈った指輪がはめてあった。
 それと・・・下ろした髪や服の襟元から、先日つけた赤い華がちらりとのぞく。
 「悠宇」
 名前を読んでから、顔を寄せると、素直にその瞳が閉じられた。

 好きだよ、悠宇・・・。





あとがき

 のわっ!すんげーげろ甘で終わっちゃったよΣ(=∇=ノノヒィッッー!!

 お付き合いをしてて、いろんな事でふと不安になることってないですか?
 そのきっかけを友里に落としていただきましたけど、そういう時もあって、そういう事も乗り越えて?上手くいくカップルは上手くいくのではないかと?
 悠宇も麟も不安を抱えてます。
 麟は純粋に、女の子と付き合ったのって初めてって設定ですので、不安が山盛りでしょう。
 それでもどうにかなるのは、ヤツがマイペースだからです(笑
 恋愛の進み具合が遅いのも、ヤツがマイペースだからです(笑
 ま・・・それは悠宇にとっては良かったわけですけど。

 個人的には、最近充槻側から書くものが多かったので、麟側からのは久しぶりで調子出ませんでした。
 でも、お楽しみいただけたのなら幸いです。
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secret (管理人だけにコメントする。)
いいじゃないですか^^
ご無沙汰しています。
これくらい甘くても私は大丈夫です。
チョコレートにあんこかけたくらいじゃ動じませんことよ~オホホホ
私の読解力が低いのでお尋ねします。
悠宇は麟とお付き合いしているんですよね?
紅梅 2010/09/07(Tue)16:41:24 編集
Re:いいじゃないですか^^
紅梅様

本当にいつもいつもコメントありがとうございます。
残暑厳しいですが、お変わりありませんか?

>これくらい甘くても私は大丈夫です。
>チョコレートにあんこかけたくらいじゃ動じませんことよ~オホホホ
うををを!チョコにあんこでは、私は死んでしまいますわ(笑

>悠宇は麟とお付き合いしているんですよね?
はい、そうです。
私が時系列無視して、書きたいものだけ書いているので混乱してしまいますよね?すみません。
悠宇が高2のGW以降、つき合ってる設定です。
この話は、高2の夏のお話なります。
【2010/09/07 21:27】
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