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オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
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 「疾風、今夜ヒマ?」
 テスト休みも明日で終わるという日。
 午後になって少したってから、部屋から出てきた悠宇はそう言った。
 「まあ」
 「じゃあ、夕飯終わったら出かけるから」
 「?」
 そう断言されて、8時過ぎ、ふたりは徒歩でてくてくと歩いてとある場所に向かった。
 「ファミレス?」
 目の前まで来て、麟は首をひねった。
 「そう。ここなら長時間いれるからね」
 にこりと笑う悠宇の後を、麟は大人しくついていった。


 「お待たせ」
 店内に入って「連れがいる」と言ってから悠宇が向かったテーブルには、充槻と正義がすでに座っていた。
 「・・・」
 その様子を見て、麟は思いっきり不満そうな表情を作った。
 「なんだよ、疾風」
 即座に充槻が言った。
 「このメンツで集まって、いい事あんのかよ」
 「さあ?」
 しかし、そんなやりとりを聞いてか聞いてないのか、悠宇は正義の隣に座った。
 「いつまでも突っ立ってんじゃねーよ」
 「神崎。なんで俺が、成田の隣なんだよ?」
 「だって、二人ともタバコ吸うでしょ?」
 「・・・」
 ああ、そーゆーコトか。
 麟は心の中でそう言って、仕方なく成田の隣に座った。
 「で?」
 ふてくされたまま、麟は言った。
 「せっかく夏休みだしさ、一日くらいは遊びの計画しようと思って」
 にっこり笑いながら、正義が言った。
 マジかよ?
 麟の顔が引きつった。
 「水沢を嵐山の連中に連れ出されるの、シャクじゃん」
 充槻の顔には「当たり前」と書いてあるように見えた。
 「松原も一応受験だろ、水沢?」
 「たぶん上に上がるから、そんなに必死じゃないとは思うけど」
 「松原って、成績いいのか?」
 さすがに、充槻は声のトーンを落として聞いた。
 「まさか。下から数えたほうが早い」
 「「やっぱり」」
 充槻の声に、正義の声が重なった。
 「私に宿題やらせるくらいだから、どんな雰囲気が想像できるでしょ」
 「お前だって高3じゃねーか」
 麟は麟で、充槻に突っ込んだ。
 「1日くらいは遊べる・・・つーか、遊ばねぇと、死ぬ」
 「去年は松原の仕切りで海行ったけどさぁ。そこまでしなくてもいいから、遊びたいよね」
 「そーゆー問題か?」
 今度は正義に突っ込むが、逆に充槻から突っ込まれることになった。
 「じゃあお前、夏休み中何してんだよ?」
 「あ?」
 「毎日勉強するわけでもねーだろ?」
 「・・・まあ」
 「なら、ヒマな日だってあんだろ?」
 「そりゃまあ」
 「じゃあ、1日くらい付き合えよ」
 「・・・」
 麟の負け。
 不満そうな表情の麟を見て、充槻はにやりと笑った。

 「それで、いつにする?」
 正義が手帳を広げる。
 「あと、どこ行くの?何するの?」
 悠宇も当たり前のように言う。
 「どーっすかな?」
 言いながら、充槻は新しいタバコをくわえた。
 「言っとくけど、俺、8月中頃はいねーからな」
 それは本当のことだったから、麟はまずそう言った。
 「ナマイキ」
 「お前なぁ」
 充槻を睨む。
 「んじゃ、その頃に3人でプールでも行こうぜ」
 「3人?」
 悠宇の顔に疑問符が浮かぶ。
 「俺と桜井とお前」
 「え?疾風は?」
 「いらね」
 「あのなぁ」
 「また、水沢さんの水着姿がみれるなんて、幸せ」
 「あはは・・・ありがと、桜井」
 悠宇の顔が、心なしか引きつった。
 「あ!じゃあ!テキトーな場所で花火とかは?」
 正義の目がきらりと光った。
 「まあ、悪くはないな」
 タバコに火をつけながら、充槻が同意する。
 「山ほど花火買ってやんの、どう?」
 「マンションの屋上、開けてもいいけど」
 そう悠宇が提案すると、
 「「マヂ!?」」
 正義と充槻がまた、シンクロした。
 「んじゃ、決定」
 充槻の一言に・・・麟の意見などは全く反映されずに、マンションの屋上で花火が決まった。

 そして、あと数日で夏休みが終わるというある夜・・・。

 「うわ~いい眺め~」
 屋上に上がってすぐ、正義は四方の見晴らしを確認した。
 駅前とは言え、各駅しか止まらない駅の近所はあまり開発されておらず、高い建物は数少ない。
 わずか7階建てであっても、それなりの眺望が4人を迎えた。
 「あんまり騒ぎすぎないでね」
 と悠宇は言うが、既に用意されていたレジャーシートの上にはちょっとした食べ物と飲み物・・・もちろん、アルコールも置かれていた。
 「風通し、いいな」
 さすがの充槻も、目を細める。
 「飲んでつぶれたら、泊まってもいいから」
 「マヂで!?」
 正義の声の大きさにわずかにひるんだ悠宇は、引きつりながらも返事をした。
 「・・・客間に雑魚寝でね」
 「水沢のベッドじゃなくてか?」
 「そんなサービス付いてません」
 そんな充槻と悠宇のやりとりを聞きながら、麟は眉根を寄せた。
 「・・・疾風。イヤなら参加すんな」
 「お前に呆れてるだけだよ」
 イヤミをたっぷり乗せて、麟は返した。
 「はいは~い!じゃあ、花火大会しよーぜっ!」
 正義の合図で、花火大会は始まった。

 もちろん、一番はしゃいでいるのは正義だった。
 正義本人としても、自分のポジションは分っているから、努めて場を盛り上げようとした。
 盛り上げ役が正義だったのが幸いして、麟もなんだかんだ言いながら正義と一緒に花火を楽しんでた。
 充槻も、それなりに付き合った。
 そして珍しく、アルコールを口にしていた。
 「お前、飲めるのかよ?」
 驚きの表情の麟が問うと、
 「飲めるけど、あんま好きじゃない」
 「はあ?」
 「それに。飲酒運転でパクられる様なバカなマネ、できるか」
 と、しれっと答えた。
 「・・・」
 『意外』という言葉を、麟は出さずに飲み込んだ。
 「水沢ぁ。俺と2人でしっぽりと線香花火やろうぜ」
 「をい!」
 充槻に呼ばれた悠宇は、くすりと笑った。

 24時を越えたころ、気づくと、座り込んだ正義がうとうととしていて、花火大会は終了となった。
 「2人で桜井運んで。片づけしとくから」
 そう言われて、2人は指示に大人しく従った。
 すでに布団が敷いてあった和室に正義を寝かせると、2人は片付けに戻った。
 何もなかったかの様に屋上を片付けて部屋に戻ると、
 「コーヒーいる?」
 と、キッチンに足を運びながら悠宇が聞いてきた。
 「俺、アイス・コーヒー希望」
 充槻が右手を上げながら、勝手知ったるとばかりにダイニングチェアに座った。
 「了解。あと、順番にお風呂入ってね」
 「「はいよ」」
 充槻が返事すると同時に、目の前にTシャツが現れた。
 「疾風?」
 「パジャマ代わりに使えよ、貸すから」
 言いながら無理矢理押しつけると、コーヒーを入れている悠宇を手伝うために、キッチンへと歩いて行った。
 「・・・おう」
 なんだかんだ言いながらも、何も言わず・頼まぬうちにTシャツを貸してくれた事とキッチンで甲斐甲斐しく悠宇を手伝っている麟の姿を見て、充槻は心のどこかで正義が言っていた
 「麟はいいヤツ」
 という言葉を理解した・・・様な気になった。
 「じゃ、先に風呂借りるわ」
 「どうぞ」
 にこりと笑った悠宇の笑顔に送りだされ、充槻はバスルームへと向かった。

 温かい湯船につかりながら、充槻は大きくため息をついた。
 昨年とは違い、かなり悠宇を拘束しての人生初の勉強三昧だったけれど。
 けれど、
 「いい夏・・・だったかも」
 と、つぶやいた。

 「正義のヤツ、妙に張りきってたな」
 入れ終わったコーヒーを手に、悠宇とダイニングテーブルに着いた麟は、軽く笑いながら言った。
 「そうだね」
 にこりと笑う。
 「騒ぐのあんまりすきじゃないけど、でも、楽しかった」
 「そうだな」
 「去年も楽しい事があったけど、今年の方が楽しかったかも」
 「そっか」
 その穏やかに悠宇の表情に、麟も自然と穏やかな表情になった。

 楽しい夏も、もう終わり・・・。





あとがき

 すんごい寒い時に限って、夏の話を書きたくなる私(-"-;A ...アセアセ

 というのも、この曲に出会ってしまったから。
 FLOWのSUMMER FREAK
 真冬だけど、私の頭の中は真夏です(爆
 ちなみに・・・話の設定では、悠宇・麟・正義が高2、充槻が高3の夏。
 ちょうど、悠宇と麟が付き合い始めて少し経った頃ですね。

 季節外れですが、お楽しみいただけたのなら幸いです。
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わかります
「寒い時に限って夏の話」
そうそう、そういうときありますよ。
逆パターンはあんまりないかも。考えるだけで暑いので。

寒いと言いながらも、もうあちこちで梅が咲きはじめていますね。
春、そして花粉の猛威もすぐそこです。
くしゃみが早くも出ていますが、「まだまだ気のせいよ」と言い聞かせている毎日です。
紅梅 2011/02/07(Mon)13:32:23 編集
Re:わかります
紅梅様

いつもいつも本当に、コメントありがとうございます。

>そうそう、そういうときありますよ。
分かっていただけてうれしいです(*'-'*)エヘヘ

>春、そして花粉の猛威もすぐそこです。
そうみたいですねぇ・・・私、杉のアレルギー持ってますけど、花粉症にはならない!と思っています(病は気から・笑)
うちの近所ではもう梅咲いてます・・・桜も温かい春も、もうあとわずかだと思いたいです。
まだまだ寒い日が続きますが、お身体ご自愛ください。
【2011/02/08 09:33】
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