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オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
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そして約束の日の前日の土曜日。

そして約束の日の前日の土曜日。
有里は一泊旅行クラスの荷物を持って、泊まりに来た。
「だって!悠宇専属スタイリスト&メイクとしては、今晩から仕込みをしないと!」
「・・・嘘でしょ」
悠宇は、頭が痛くなった。
結果的にその夜、有里の言葉通りに、悠宇はマニキュア・ペディキュア・顔パック・ヘアパックをさせられていた。

そして当日の朝。
約束をした時間とおりに、充槻はバイクでやってきた。
「で?なんで月野がいるワケ?」
エンジンを止めると、バイクに跨ったまま、眉根を寄せながら聞いた。
「悠宇が、しっかりバッチリお化粧とかできると思う?」
「・・・怪しい、な」
「でしょ?」
「で?本人は?」
「最後の仕上げをしてもらってま〜す」
「最後の仕上げ?」
「見てのお楽しみ」
まさに、小悪魔の微笑だ。
それを見て充槻は、
「どーせロクなことじゃないな」
と、直感した。
そして、何気なくマンションの玄関の方へ視線を移した充槻は、麟と一緒に降りてきた悠宇を見て、がっくりとうなだれた。
「どーしたの?」
「いや・・・」
言いながらバイクから降りると、スタンドをかけた。
そしてキーを抜き取ると、有里の左隣に立ち止まった麟に、キーを放り投げた。
「?」
「2ケツじゃ行けねーだろ?テキトーにしまっとけ」
「・・・了解」
麟はそう答えながら、自分の左隣にいる悠宇に視線を移した。
いつもストレートの髪は、ゆるく内巻きにされていた。
普段は軽く眉を書き、リップグロスを塗る程度の顔には、ナチュラル・メイク。
ボレロの様な丈の、デニムジャケット。
その下は、充槻の希望をかなりの割合で叶えた、オフホワイトのワンピース。
ハイ・ウエストデザインのワンピースは、ちょうどアンダーバストの位置で切り替えが入り、そこにはサテン地のリボンが付いていた。
体のラインがほのかに出るようなシルエットのスカート部分は、刺繍の入ったオーガンジーレースとの2枚重ね。
胸元も同じようにオーガンジーとの2枚重ねで、襟ぐりは柔らかく丸くカットされており、今はジャケットで見えないが、袖はパフ・スリーブ。
お揃いの指輪とネックレス。
それにカゴバッグと白いサンダル、というコーディネイトだった。
「どう?ね、みつき、どう?」
うきうきしながら、有里は悠宇の隣に回りこんで、悠宇を一歩前に踏み出させた。
有里は、充槻のリクエストを聞いていて気づいた・・・充槻の好み、が。
大人っぽく色気のあるタイプでもなく、元気のあるスポーツウーマンタイプでもなく、もちろんはすっぱなヤンキータイプでもなく、隣を歩いていて一番似合いそうにない、控えめで大人しい「清純・可憐」と言った形容詞が似合うタイプが好み、だったのだ。
有里は「ありがち」とは思ったが、もちろんそれを口にすることはなかった。
そして悠宇は、もともとぱっと見はそう見えるのだ・・・顔の造作が充槻の好みかは別として、見掛けだけ、は。
「我ながら満足」な出来映えでもあり、悠宇自身にも、軽く「こうしてみて」と伝えられた感があった。
「・・・合格」
とは言うものの、何か言いたげな顔をしていた。
「文句言うなら、今のうちだけど?」
「いや・・・いい」
そう言うと駅の方に向かって歩き出し、すれ違いざまに麟の肩を、ぽんと1回叩いた。
「行くぞ、水沢」
「・・・いってきます」
ひらりと髪とワンピースの裾をなびかせて、悠宇は充槻の1歩後ろを付いていった。

二人の背中が見えなくなってから、麟は、
「じゃ、片付けるか」
と言って、充槻から預かったキーをバイクに差し込んだ。
そして、地下駐車場へ押していく麟の後ろを、有里は追った。
「ねえ」
「なに?」
「今さらだけど、いいの?」
「なにが?」
「なにが?って、分ってるんでしょ?」
その言葉に返事はない。
返事がないが故に、有里は自分の言いたいことが伝わっているのが分った。
「どーするの?2時間くらい、寄り道してくるかもよ?」
イタズラ心も込めて、有里は言った。
「ないな、それは」
麟は即答だった。
「どーして?」
「成田が俺に頭下げたんだ、それはない。言い方は「貸せ」だったけどな」
「んー?そんなもの?」
「成田が本気なら、正面から正々堂々と取ってくだろ、たぶん」
「まあ。確かに正面からって言うのは、みつきっぽい感じかなぁ」
「ケンカで連れ出すときは、一言もねーし」
「どーして?」
「さあ?当然だとか思ってんじゃねーの?」
「・・・よくわかんない」
有里は軽く、頬を膨らませた。
「じゃあ、悠宇の事は疑わないの?」
「なにを?」
またそう言われて、有里は溜め息をつく。
「浮気するんじゃないか、とか」
「する気があるなら、とっくにやってるだろ」
「そう?」
「ほとんど毎日成田に送り迎えされてんだから、その気ならとっくだって」
「まあ、それもそうね」
「成田じゃなかったとしても、学校から一歩外に出たら周りが男ばっかりなんだから、相手なんか、いくらでもいる」
「んー確かに。それに、悠宇が進んで誰かを好きになるとも思えないし」
そんな有里の言葉を背中に受けながら、麟は空いているスペースにバイクを停めて、ロックをかけてからキーを抜き取った。
「じゃ。部屋に戻ったら、紅茶入れるね」
言いながら有里は、両腕を麟の左腕に絡めた。

そして・・・まだ明るい夕方の5時頃、二人は帰ってきた。
「ただいま」
にこりと笑いながら悠宇は入ってきたが、反比例するかの如く、充槻は疲れきった顔をしていた。
「成田?」
その様子を見て、麟は眉間にシワを作った。
当の成田は、無言のままにソファに座る麟の隣に、どっかりと腰を下ろした。
そして、背もたれに両腕を乗せると、天井を仰ぎ見る様にして首をかくんと後ろに倒した。
「・・・っつかれた」
「ごくろーさまでした」
とりあえず、麟は言ってやる。
「ね〜え。コーヒー入れるけど?」
キッチンから有里が二人に声をかける。
「はいよ」
麟は即答したが、充槻の返事はない。
「成田は?」
「・・・いる」
声を出すのすら、億劫といった様子だった。
「いるってさ!」
充槻の声が小さいために、麟が代わりに返事をした。
「どーしたよ?」
「とりあえず、疲れた」
言いながら、頭を戻す。
「ってか。オンナは怖ぇえ」
「?」
そして、報告会ともいえるお茶がはじまったのだった。

「で?その女の人、どーだったのぉ?」
まずは有里。
「黙らせた」
「うふふ・・・そうよねぇ。この有里さまが付いてるんだから」
有里はにこにこだ。
「悠宇は?」
「面白かった」
そう言って、にこりと笑った。
「なにがぁ?」
「あんなに困った顔の充槻、初めて見た」
くすくすと笑う。
「そうなの?」
有里は、ことんと首を傾げた。
「俺はなーんも、面白くねぇし。それに、アイツを黙らせたのは水沢だし」
それでか・・・と、麟は、先ほどの充槻の発言の意味が分った。
「俺、ぜってー水沢には逆らわねぇ」
「?」
有里は首を傾げ、悠宇はくすくすと笑い続けた。
有里の追及の視線は痛い上に、悠宇は話し出す素振りすらみせないので、結果的に、充槻が事の顛末を話すハメになった。





あとがき

2008年5月の充槻強化月間を終えて感じたこと・・・きっと充槻って、こんなタイプだろう像ができたことが収穫でした。
イメージであり、ああいう顔つきじゃないとは思うんですけどね。
でも一番近いのは、hydeだ・・・うん。
とは言うものの、最近(ここ1年位)で充槻株が上がってきたのにはワケがある。
そう・・・麟の性格が丸くなったのだ。
麟というキャラが生まれてすぐは、もっとヤンチャで好戦的だったのだ・・・それを、充槻が引き継いでしまったのだ。
そして充槻の方が、家庭環境も普通で性格構造が単純なので、書き易さが倍増。
こうして、充槻株がアップした。

しかし・・・なんでこの話、こんなに長くなったんだろう?
結果、3分割です(大汗
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