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オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
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 その日から、悠宇は必要以上に男っぽい格好をする事が減っていった・・・当然といえば当然の事だった。

 その日から、悠宇は必要以上に男っぽい格好をする事が減っていった・・・当然といえば当然の事だった。
一緒に住んでるのが「実は女で、水沢勇樹である神崎悠宇」であると、麟が認識しためだった。

よくよく見ていると、スカートを穿くのは制服と、よっぽどの理由がある外出のみ。
大抵はパンツ姿(デニムが多い)で、トップスは
「男物かよ?」
と聞きたくなるのが殆ど。
Tシャツにトレーナーにパーカーと、麟のワードローブとさして換わらない。
たまに、体のラインが出るものや、柔らかな素材のいかにも女物を着る時があり、その理由を聞くと。
「気分」
という、分りやすいようで分り難い返事が返ってくる。

ある日曜日の昼下がり。
「疾風さぁ、なんか食べたいものとかある?」
いつものような、大き目のフード付きTシャツにジーンズを履いた悠宇が、冷蔵庫を覗きながら聞いてきた。
「いや、特には」
その返答を待ってから冷蔵庫を閉めて顔を上げると、
「ヤなやつ」
そう返しながら、悠宇はダイニングのもといた席に座った。
「っていうか、ゆーじゅーふだーん」
口調から、からかっている様子が手に取れた。
「俺の意見、押し付けるわけにはいかねーだろ」
麟は、どう悠宇を扱うべきなのか、わずかばかり悩んでいた。
「まあ、それはそうだけど」
そんなことは知らない風の悠宇を見て、
「なんだかなー」
と文句を繰り返してきた・・・心の中で。
「好き嫌いとか言ってくれないと、作りようがないんだけど」
「好き嫌い、ねぇ」
麟の視線が、遠くを見る。
先日、毎日の様に送り迎えをしてる成田を学校の裏門で捕まえ、問うた。
「なんで、水沢が女だって言わねーんだよ」
「はあ?」
その表情には「なんで?」と書かれていた。
「桜井も言わなかった」
麟がそう言うと、
「俺、気にしてなかった」
と、あっけらかんと言われ気抜けした。
「薄味の方がいい、くらいかなぁ」
「ふーん」
あっさりとした、クールビューティと称される悠宇の態度は、ただ単に「女らしくない」というか「男っぽい」わけで、その理由が、男子校育ちだったわけで。
学校にいる時は気を使っているとは思っていたが、気を使わないと、それが顕著に出ていた。
かと言って、所作が荒っぽいわけではない。
変に女っぽいよりは、付き合いやすいと言えば、付き合いやすい。
「あ?水沢?」
不意に、口をつけている、缶に視線がいった。
「ん?」
「それ・・・」
缶を指差す。
「あ?欲しかった?」
「カクテルじゃん」
「そうだけど?」
をい?
「昼間っから酒かっくらってる高校生って・・・」
信宗が言っていた言葉を思い出す。
『怪我して帰ってくるわ、タバコも吸うわ』
当然、酒もアリか・・・思わず、ため息をつく。
「こんなの、ジュースと一緒。それに、タバコ吸ってるヤツに文句言われたくない」
あー、はいはい。俺が悪うございました。
「・・・たまには、俺が夕飯作ろうか?」
「え?」
何の気なしに言うと、悠宇が固まった。
「作れんの?」
「ヤなやつ」
先刻言った台詞をそのまま返すと、悠宇が思わず吹き出した。
「水沢が料理上手なほうが似合わねぇ気がするけど、俺は」
「ヤなやつ」
言いながら、くすくすと笑う。
笑う表情は、確かに女・・・それも、そこそこかわいい。
「月並みだけど、冬ってことで鍋とか?」
「安全かな」
「をい!」
「ま、それでもいいかぁ」
その横顔は、柔らい。
そこそこかわいくて、頭がよくて、運動神経も悪くない。
優一や他の男子どもが騒ぐわけだ・・・と、今さらながら実感した。

そして、一番変化があったのは、お風呂上りだった。
女だとバレるまでは、お風呂上りは自分の部屋に引っ込んでいた悠宇が、リビングやダイニングでくつろぐようになった。
女性の親類が多い麟には見慣れた光景ではあったが、季節柄、パジャマの上にトレーナーやパーカーを羽織っているからいいものの、ほのかに香るシャンプーやボディソープ。
くつろぎながら濡れた髪を乾かす仕草。
1人用のローソファにちょこんと座っている様には、さすがの麟もなんともいえない気持ちになった。
あの日の、自宅での取り乱した姿や、雨の中に立ち尽くす背中など、微塵もない。
それはそれでいいことには違いないが、
「そんなに無防備でいいのかよ?」
そう言いたくなる横顔が、そこにはあった。
お風呂上りにレンジフードの下で紫煙をくゆらせていると、麟の後からお風呂に入った悠宇が、リビングに戻ってきた。
胸まである髪は乾き難いらしく、タオルドライをしながら、キッチンに入ってくる。
その様子を目で追っていると、冷凍庫を開けた。
取り出したのは、雪見だいふく。
「半分食べる?」
パッケージを見せながら、小首をかしげる。
おーい、ちょっと待て!?
女ならではの「甘いものは別腹」行動と、その仕草に軽く固まる。
悠宇は仔猫や仔犬よろしく、よく小首をかしげる・・・その仕草に、何度も麟は面食らっていた。
「いや・・・いい」
「そう」
麟の言葉に、当たり前の様にカップボードから小皿とフォークを取り出し、雪見だいふくを1つだけ移し、それを手にソファへと移動する。
警戒心のない、背中。
「ま、いーか」
水沢勇樹であれ、神崎悠宇であれ、悲しい横顔を見たい趣味は、麟にはない。
神崎と一緒に住んでる、なんて優一に言ったら、殺されそうな気もするが。
思わず、麟は1人でくすりと笑った。
「水沢ぁ、なんか飲む?」
ケトルを手に取りながら聞く。
「入れてくれんの?」
頷くことで返事にすると、
「ありがと」
と、笑顔が返ってきた。
柄にもなく、その笑顔が消えないようにと、心の中で軽く祈った。






途中のあとがき

書き下ろしたんですが、またハズしたような気がするのは・・・気のせいじゃないんだよね、きっと(ノ_-;)ハア…

週1更新とはいえ、やっぱり書き足しや微調整しながらだと、日にちに終われます。
本業の人は大変だ・・・まして、週刊誌のマンガ家なんて、考えただけでおそろしい(||゜Д゜)ヒィィィ!(゜Д゜||)
マイペース、さいこー(笑

しかし、14章も使ってこんだけしか進んでないって、やっぱりどーみても遅いよねぇ〜〜〜〜〜((((((ノ゜?゜)ノあぁ

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