オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
「終わったぁ・・・」
「終わったぁ・・・」
学校から帰るなり、麟は自分のベッドに倒れこんだ。
期末テストが終わっての、帰宅。
これから数日はテスト休みになり、あとは終業式に行けばいいだけ・・・学生の特権ともいえる「休み」だった。
ややあってから、麟の部屋のドアがノックされた。
ベッドに寝転んだまま、体を反転させて頭だけドアのほうに向けると、そっとドアが開いた。
「水沢?」
結局麟は、学校にいるときは「神崎」と呼び、そうでないときは「水沢」と呼ぶのが定着していた。
「・・・何、やってんの?」
制服のままの悠宇は、不思議そうな顔をした。
仰向けで大の字になり頭だけベッドから落ちている姿は、確かに妙だったかもしれない。
「いや・・・疲れたなぁって」
今回のテストの最終科目は、麟が苦手とする数学だった。
数学は前日の一夜漬けの勉強以外やってないに等しく、苦痛からの開放感でどっと疲れが出ていた。
「俺さ、数学苦手だからさぁ、数学が最後って疲れるんだよ」
近づいてくる悠宇のために、麟は身を起こした。
「ふうん・・・それで、昨日聞いてきたの?」
「まぁ」
少し恥ずかしくなり、麟は目を伏せて照れ隠しに頭をかいた。
「水沢がいて、ちょっと助かった」
なにせ相手は、学年主席様だ。
「そう?」
「さんきゅ、な・・・」
「どういたしまして」
にっこりと笑うその顔が、学校で見せる笑顔と少し違うのに気づいたのは、つい先日。
ほぼ1年間一緒の奈央にですらまだわずかに気を使っているらしく、肩の力が抜けていないらしかった。
学校の連中が知らない事情を知っている麟だからこそ、なのか、感情の起伏がわずかに顕著だった。
「着替えたら、お茶入れるから」
「はいよ」
部屋を出て行く悠宇の背中を見ながら、麟も肩の力を抜いた。
明日から新学期という前日の夜、久しぶりに2人は一緒に夕飯をとっていた。
メニューは、悠宇お得意のパスタにホットサラダ、コーンスープ。
麟はモデルのバイトや京都への帰省で春休みの殆どを留守にしていて、殆ど顔を合わせることはなかった。
「そー言えばさ」
「?」
「水沢、春休み何してた?」
目の前にいる、傷だらけの悠宇に思わず苦笑いしながら麟は聞いた。
両手が、包帯でぐるぐる巻きになっていた。
顔には一切傷がないが、他にも何かケガがあるらしく、ほのかに湿布の香りがしていた。
ケガの理由のうちのひとつはケンカだろうが、
「強いんじゃなかったのか?」
と問いたい気持ちを、麟は口には出さなかった。
「色々」
「それ、答えかよ?」
「さあ?」
くすくすと笑った。
誤魔化す気だな・・・と麟は分かった。
「そう言う疾風こそ、ずっと留守だったじゃん」
「俺はバイトとか、帰省とか・・・あ。土産はないからな」
「帰省?」
悠宇が小首をかしげる。
「俺、親戚の家に引き取られるらしいから」
「え?」
あっさりと言う麟に、悠宇は固まった。
「一応まだ未成年だから、保護者って必要だろ?」
「まあ」
「お袋が死んで、そのことで親戚とオヤジがもめてさ。それで引き取るって話になったんだけど、うまく行ってないらしくて。その親戚の家が、京都でさ」
「京都?」
「元々、お袋の実家も京都だからさ」
「そうなんだ」
さすがに、複雑な表情を作った。
「俺のことを生まれた頃から知ってる人だから、引き取られようがどうなろうが構わないんだけどさ、あの家行くと窮屈でさぁ」
「・・・」
「俺の部屋なんか、離れなんだぜ。隔離されてるみたいでむかつくんだよ」
くすりと笑いながらそう言い、場の雰囲気を変えてくれた麟に、悠宇は心の中でちいさく感謝した。
そして始業式。
「はあ?」
クラス分けの張り出しが貼られた掲示板の前で、麟は固まった。
「いや〜。ここまでくると、笑しか出ないっていうか・・・」
麟の斜め後方、さすがの優一も呆然とした口調だった。
「笑い話にもならない、かぁ」
要が、ため息と共に言う。
「片桐の陰謀かな?」
「さあ?」
担任はまた、片桐。
「捕まえて聞く?」
「ある意味、聞きたくない」
2人はてきとーに、話を続けている。
「・・・ってワケで」
そう言うと、優一が麟の肩に腕を回した。
「5年目、よろしく」
「よろしく」
要も、反対側から腕を回した。
そう・・・また3人は、一緒のクラスになったのだ。
「文句言う気もおきねー」
麟は、右手を顔に当てると、がっくりとうなだれた。
「でもさ、いいこともあるじゃん?」
優一はけらけらと笑う。
「また、鎌田と神崎さんもいっしょだし」
何の因果か、麟・優一・要の3人と奈央・悠宇の2人は、席が近いことが多かったのだ。
そして、この5人はまた、同じクラスになった。
「だーかーら!鎌田や神崎が一緒でも、お前らが一緒なら同じなんだよ」
久しぶりに麟は、優一に食ってかかった。
「代わり映えしねーじゃねーか!それに鎌田だって、3年間一緒だぞ!」
「いーじゃない、別に」
「よくない!」
背後からの声に、麟は振り向きざま、叫んだ。
勿論それは、声の主が奈央だと分っての行動だった。
「3人で声を合わせて、腐れ縁って言ってあげてもいいんだけど?」
奈央の言葉に、麟後ろで優一と要の2人が笑った。
「いらねーって」
「じゃあ、また一緒のクラスになれてうれしいです、とか言う?」
「言うか」
「迷惑してるのは、疾風だけじゃないんだけど?」
「誰が迷惑してるって?」
「神崎さん」
麟に1歩も引かなかった奈央は、そう言うと微笑んだ。
奈央の1歩後ろで、悠宇はくすくすと笑っていた。
「迷惑してるのかよ、神崎?」
麟が声をかけると、
「さあ?」
と言って、さわやかな悠宇は笑顔を浮かべた。
途中のあとがき
半分ストック、半分書き下ろしですが・・・また失敗したような気がする。
。。゛(ノ><)ノ ヒィ
よくよく考えてみると、優一・要・奈央を出す意味が薄れていて・・・ああ、使ってあげなきゃ可哀想ね、と思ってみたんですけど。
うむ(-_-;ウーン
使い慣れていないキャラって、やっぱりちょっと大変。
学校から帰るなり、麟は自分のベッドに倒れこんだ。
期末テストが終わっての、帰宅。
これから数日はテスト休みになり、あとは終業式に行けばいいだけ・・・学生の特権ともいえる「休み」だった。
ややあってから、麟の部屋のドアがノックされた。
ベッドに寝転んだまま、体を反転させて頭だけドアのほうに向けると、そっとドアが開いた。
「水沢?」
結局麟は、学校にいるときは「神崎」と呼び、そうでないときは「水沢」と呼ぶのが定着していた。
「・・・何、やってんの?」
制服のままの悠宇は、不思議そうな顔をした。
仰向けで大の字になり頭だけベッドから落ちている姿は、確かに妙だったかもしれない。
「いや・・・疲れたなぁって」
今回のテストの最終科目は、麟が苦手とする数学だった。
数学は前日の一夜漬けの勉強以外やってないに等しく、苦痛からの開放感でどっと疲れが出ていた。
「俺さ、数学苦手だからさぁ、数学が最後って疲れるんだよ」
近づいてくる悠宇のために、麟は身を起こした。
「ふうん・・・それで、昨日聞いてきたの?」
「まぁ」
少し恥ずかしくなり、麟は目を伏せて照れ隠しに頭をかいた。
「水沢がいて、ちょっと助かった」
なにせ相手は、学年主席様だ。
「そう?」
「さんきゅ、な・・・」
「どういたしまして」
にっこりと笑うその顔が、学校で見せる笑顔と少し違うのに気づいたのは、つい先日。
ほぼ1年間一緒の奈央にですらまだわずかに気を使っているらしく、肩の力が抜けていないらしかった。
学校の連中が知らない事情を知っている麟だからこそ、なのか、感情の起伏がわずかに顕著だった。
「着替えたら、お茶入れるから」
「はいよ」
部屋を出て行く悠宇の背中を見ながら、麟も肩の力を抜いた。
明日から新学期という前日の夜、久しぶりに2人は一緒に夕飯をとっていた。
メニューは、悠宇お得意のパスタにホットサラダ、コーンスープ。
麟はモデルのバイトや京都への帰省で春休みの殆どを留守にしていて、殆ど顔を合わせることはなかった。
「そー言えばさ」
「?」
「水沢、春休み何してた?」
目の前にいる、傷だらけの悠宇に思わず苦笑いしながら麟は聞いた。
両手が、包帯でぐるぐる巻きになっていた。
顔には一切傷がないが、他にも何かケガがあるらしく、ほのかに湿布の香りがしていた。
ケガの理由のうちのひとつはケンカだろうが、
「強いんじゃなかったのか?」
と問いたい気持ちを、麟は口には出さなかった。
「色々」
「それ、答えかよ?」
「さあ?」
くすくすと笑った。
誤魔化す気だな・・・と麟は分かった。
「そう言う疾風こそ、ずっと留守だったじゃん」
「俺はバイトとか、帰省とか・・・あ。土産はないからな」
「帰省?」
悠宇が小首をかしげる。
「俺、親戚の家に引き取られるらしいから」
「え?」
あっさりと言う麟に、悠宇は固まった。
「一応まだ未成年だから、保護者って必要だろ?」
「まあ」
「お袋が死んで、そのことで親戚とオヤジがもめてさ。それで引き取るって話になったんだけど、うまく行ってないらしくて。その親戚の家が、京都でさ」
「京都?」
「元々、お袋の実家も京都だからさ」
「そうなんだ」
さすがに、複雑な表情を作った。
「俺のことを生まれた頃から知ってる人だから、引き取られようがどうなろうが構わないんだけどさ、あの家行くと窮屈でさぁ」
「・・・」
「俺の部屋なんか、離れなんだぜ。隔離されてるみたいでむかつくんだよ」
くすりと笑いながらそう言い、場の雰囲気を変えてくれた麟に、悠宇は心の中でちいさく感謝した。
そして始業式。
「はあ?」
クラス分けの張り出しが貼られた掲示板の前で、麟は固まった。
「いや〜。ここまでくると、笑しか出ないっていうか・・・」
麟の斜め後方、さすがの優一も呆然とした口調だった。
「笑い話にもならない、かぁ」
要が、ため息と共に言う。
「片桐の陰謀かな?」
「さあ?」
担任はまた、片桐。
「捕まえて聞く?」
「ある意味、聞きたくない」
2人はてきとーに、話を続けている。
「・・・ってワケで」
そう言うと、優一が麟の肩に腕を回した。
「5年目、よろしく」
「よろしく」
要も、反対側から腕を回した。
そう・・・また3人は、一緒のクラスになったのだ。
「文句言う気もおきねー」
麟は、右手を顔に当てると、がっくりとうなだれた。
「でもさ、いいこともあるじゃん?」
優一はけらけらと笑う。
「また、鎌田と神崎さんもいっしょだし」
何の因果か、麟・優一・要の3人と奈央・悠宇の2人は、席が近いことが多かったのだ。
そして、この5人はまた、同じクラスになった。
「だーかーら!鎌田や神崎が一緒でも、お前らが一緒なら同じなんだよ」
久しぶりに麟は、優一に食ってかかった。
「代わり映えしねーじゃねーか!それに鎌田だって、3年間一緒だぞ!」
「いーじゃない、別に」
「よくない!」
背後からの声に、麟は振り向きざま、叫んだ。
勿論それは、声の主が奈央だと分っての行動だった。
「3人で声を合わせて、腐れ縁って言ってあげてもいいんだけど?」
奈央の言葉に、麟後ろで優一と要の2人が笑った。
「いらねーって」
「じゃあ、また一緒のクラスになれてうれしいです、とか言う?」
「言うか」
「迷惑してるのは、疾風だけじゃないんだけど?」
「誰が迷惑してるって?」
「神崎さん」
麟に1歩も引かなかった奈央は、そう言うと微笑んだ。
奈央の1歩後ろで、悠宇はくすくすと笑っていた。
「迷惑してるのかよ、神崎?」
麟が声をかけると、
「さあ?」
と言って、さわやかな悠宇は笑顔を浮かべた。
途中のあとがき
半分ストック、半分書き下ろしですが・・・また失敗したような気がする。
。。゛(ノ><)ノ ヒィ
よくよく考えてみると、優一・要・奈央を出す意味が薄れていて・・・ああ、使ってあげなきゃ可哀想ね、と思ってみたんですけど。
うむ(-_-;ウーン
使い慣れていないキャラって、やっぱりちょっと大変。
PR
この記事にコメントする
試験明け
試験、懐かしいですね。
いつも試験勉強のとき、毎日少しずつやっておけばよかったと後悔していました。
試験明けって「終わったー!」と開放感に浸れますよね。その瞬間が今も好きです。
(今は夜勤明けになっていますが)
いつも試験勉強のとき、毎日少しずつやっておけばよかったと後悔していました。
試験明けって「終わったー!」と開放感に浸れますよね。その瞬間が今も好きです。
(今は夜勤明けになっていますが)
Re:試験明け
こんにちわ、またのコメントありがとうございます。
高校の時は毎月テストがあって・・・終わっても、試験前になかった部活が復活して開放感はあまりなかったので、キャラを使って疑似体験してみました。
もしかして、夜勤明けでコメントくださったのでしょうか?と、思いました。
どんどん寒くなっていきますので、学生と違って試験休みもありませんし(笑)お体に気をつけてくださいね。
高校の時は毎月テストがあって・・・終わっても、試験前になかった部活が復活して開放感はあまりなかったので、キャラを使って疑似体験してみました。
もしかして、夜勤明けでコメントくださったのでしょうか?と、思いました。
どんどん寒くなっていきますので、学生と違って試験休みもありませんし(笑)お体に気をつけてくださいね。