オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
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そして、平日を挟んだ連休の後半初日、悠宇は用事があるといって出かけて行った。
そして、平日を挟んだ連休の後半初日、悠宇は用事があるといって出かけて行った。
麟は、それ以上の理由を聞かなかった。
自分にだって、言いたくないことの1つや2つくらいはある。
それは悠宇でも同じだろうと思って聞かなかったが、ワンピースの裾をひらりとなびかせながら出て行く後姿をみて、何かが胸の奥で痛んだ。
「い〜加減に風呂、入るかぁ」
だらしなくソファで横になりつつ、時計を見る。
つい先刻、10時を告げる時計のメロディーが終わったばかりだった。
「水沢、遅いな」
家の用事と言って出て行ったのは、朝の9時だった。
かれこれ半日。
「俺が干渉することじゃねーか」
つぶやきながらゆっくりとキッチンへ行き、お風呂のスイッチを入れる。
台所まで来たついでにファンの下でタバコを吸おうと手に取ると、玄関の鍵が開いた事を告げるランプが付いているのに気が付いた。
「ん?」
タバコから手を離し、ちょうどキッチンから出ると同時に、リビングのドアが開いた。
「おかえり、水沢」
その表情を窺うこともなく詰め寄り、その距離をあと約2メールという所まできて、それ以上動けなくなった。
「水沢?」
リビングとのドアを後ろ手で閉めたまま、悠宇はうつむいていた。
「・・・ただいま」
それは、やっと搾り出した言葉に聞こえた。
「帰宅時間知らなかったから、さっき風呂のスイッチ入れたばかりでさ」
麟は平静を装った。
すぐに返答はなく、ややあってから、小さな声がもれた。
「・・・ごめん」
「え?」
「ちょっとだけ・・・」
そう言うと、悠宇は右手を伸ばして麟の左袖口をつかみ、うつむいたまま左肩に顔をうずめた。
「かん、ざき?」
次の瞬間、泣いているのが分かった。
「・・・」
一瞬ためらったが、麟は手を伸ばし、右手でそっと髪をなぜた。
「気が済むまで泣けよ」
それだけ言って、麟は何も言わずに悠宇が落ち着くのを待とうと心に決めた。
そしてゆっくりと、悠宇の背中に腕を回した。
高校に入って初めて会ってから、約1年。
2年に進級しても同じクラスのままで、それなりに視界に入ってきていた悠宇の体は、先日は気づかなかったが、思ったよりも細かった。
特に腕を回した腰周りはさらに想像以上に細く、麟は一瞬どきりとした。
時々咳き込むことがあったので背中をさすってやると、その背中も驚くほどに華奢だった。
こんな体でいろいろ抱えているのかと感じると、麟の心が締め付けられた。
そして、自分の無力さに言葉がなかった。
ややあってから、突然のアラーム音に悠宇が体をすくめた。
「あ。風呂、沸いたんだ」
麟の言葉に、悠宇も安堵のため息をついた。
「風呂、入る?」
悠宇はうつむいたまま、軽く頭を左右に振った。
「じゃあ、なんか温かいもの入れるよ」
そういうと、今度は縦に頭を振った。
「じゃ、待ってな」
軽く髪をひとなでしてから麟がキッチンへ向かうと、悠宇はソファの方へと向かっていった。
目で追っていると、クッションを1つ抱え込み、そのクッションに顔をうずめて座っていた。
キッチンへ行った麟は、紅茶を入れることにした。
日頃、悠宇が紅茶を、麟がコーヒーを入れていた・・・なんとなく、暗黙の了解的にそんな感じになっていた。
ガラスのポットの中でゆっくり色づきながらできていく紅茶を、悠宇は台所でのんびりと眺めているのを、麟は何度も見ていた。
そんな・・・悠宇がいつもやっている様に、少し濃い目にリーフから紅茶を入れ、少量のミルクと砂糖を足し、マグカップに入れて持って行った。
「神崎」
名前を呼びながらマグカップを差し出すと、悠宇はゆっくりと顔を上げた。
「ありがと」
両手で受け取る。
その左隣に座ると、麟はまず一口、ミルクティを飲んだ。
「勝手に砂糖とミルク入れたけど」
「うん、ありがと」
ゆっくりと悠宇はマグカップに口をつけた。
そのままカップ半分位まで飲むほどの間、お互い無言のままでいたが、ふいに麟の視界の端で、悠宇の手が止まったのが見えた。
そっと悠宇の方を見ると、目のふちに涙が溜まっていた。
「泣くな、きっと」
そう感じて麟は先に自分のマグカップをテーブルに置くと、次に悠宇の手からもゆっくりとマグカップを取り、テーブルに置いた。
そして間もなく、悠宇の頬を涙が流れていった。
麟はそっと右手を伸ばし、なぐさめる意味で髪をなぜた。
すると、それが合図でもあったかのように、悠宇は麟に身を寄せ、右肩に顔をうずめた。
「ま、いーか」
そう思い、先刻と同じ様に、麟は何も言わずに悠宇が泣くままに任せていた。
長いような短い沈黙の後、時計のチャイムが11時を告げた。
それから1・2分あってから、悠宇はすこし、麟から体を離した。
「ありがと」
つむいたまま、小さな声で言った。
麟は、返事をする代わりに左手でそっと髪をなぜた。
「本当にありがとう」
さらに体を離したつもりが、悠宇の背中に回された麟の右腕のせいで、ある程度以上は離れなかった。
いや・・・離さなかった。
うつむいたままのものの、泣きはらした顔が見え隠れする。
その表情をみて、麟は心が痛んだ。
泣き顔はもう、みたくない
そんな思いを紛らわすかのように、悠宇を抱き寄せた。
「疾風?」
「・・・あんまり」
言いながら、抱きしめる。
「え?」
「あんまり泣くなよ。見てる俺が辛くなる」
「・・・」
薫にあおられた、と思いたくはなかったものの、麟はゆっくりと気づいた。
いつに間にか、自分の心に入り込んでいた、悠宇の存在を。
無理しているのが分かるから、気になる
気になるから、無理しているのが分かる
分かるから、辛くなる
大切に思うから、辛くなる
そのまま少しの間、悠宇は麟の腕に身を任せていたが、ややあってからそっと体を離した。
「ごめんなさい、迷惑かけてばかりで」
「いいって」
背中に回していた左手をそっと悠宇の右頬にあてると、悠宇が少し顔を上げた。
まだまだ泣き出しそうな気配のある悠宇と視線が合ったのはほんの一瞬で、軽く視線を伏せたその顔を間近で見てしまうと、麟の理性がぐらりと揺れた。
2・3度悠宇の頬をなぜると、そのままの流れで、親指でそっと唇に触れる。
「好きだ、神崎・・・」
自然に、麟の口から言葉がこぼれ出た。
涙を目の縁にためたままの悠宇が、その言葉に、ゆっくりと顔を上げる。
「はや・・・て?」
呆然とした表情の、悠宇。
思いのままに麟が顔を寄せると、一瞬驚いた表情を作った悠宇も、ゆっくりと瞳を閉じた。
そして・・・ゆっくりと2人の唇が重なった。
途中のあとがき
p(*^-^*)q うしゃ♪さあ、本気で終わりが見えてきたぞ!!
しかし・・・この話しが大詰めだというのに、違う話が書きたくなって、頭の中がそっちの話モードになってます。
大丈夫か、私ヾ(--;)ぉぃぉぃ
お話を書くとき、誰かキャラクター側の目線で書くんですが。
今回は、麟目線であり、悠宇が好き好きモードに気持ちがなってないと、筆が進まない。
が!違う話モードになってしまうと、ただでさえ進み辛いこの話しがさらに進まない!
一気に書くのって、大切だと思いました(大汗
麟は、それ以上の理由を聞かなかった。
自分にだって、言いたくないことの1つや2つくらいはある。
それは悠宇でも同じだろうと思って聞かなかったが、ワンピースの裾をひらりとなびかせながら出て行く後姿をみて、何かが胸の奥で痛んだ。
「い〜加減に風呂、入るかぁ」
だらしなくソファで横になりつつ、時計を見る。
つい先刻、10時を告げる時計のメロディーが終わったばかりだった。
「水沢、遅いな」
家の用事と言って出て行ったのは、朝の9時だった。
かれこれ半日。
「俺が干渉することじゃねーか」
つぶやきながらゆっくりとキッチンへ行き、お風呂のスイッチを入れる。
台所まで来たついでにファンの下でタバコを吸おうと手に取ると、玄関の鍵が開いた事を告げるランプが付いているのに気が付いた。
「ん?」
タバコから手を離し、ちょうどキッチンから出ると同時に、リビングのドアが開いた。
「おかえり、水沢」
その表情を窺うこともなく詰め寄り、その距離をあと約2メールという所まできて、それ以上動けなくなった。
「水沢?」
リビングとのドアを後ろ手で閉めたまま、悠宇はうつむいていた。
「・・・ただいま」
それは、やっと搾り出した言葉に聞こえた。
「帰宅時間知らなかったから、さっき風呂のスイッチ入れたばかりでさ」
麟は平静を装った。
すぐに返答はなく、ややあってから、小さな声がもれた。
「・・・ごめん」
「え?」
「ちょっとだけ・・・」
そう言うと、悠宇は右手を伸ばして麟の左袖口をつかみ、うつむいたまま左肩に顔をうずめた。
「かん、ざき?」
次の瞬間、泣いているのが分かった。
「・・・」
一瞬ためらったが、麟は手を伸ばし、右手でそっと髪をなぜた。
「気が済むまで泣けよ」
それだけ言って、麟は何も言わずに悠宇が落ち着くのを待とうと心に決めた。
そしてゆっくりと、悠宇の背中に腕を回した。
高校に入って初めて会ってから、約1年。
2年に進級しても同じクラスのままで、それなりに視界に入ってきていた悠宇の体は、先日は気づかなかったが、思ったよりも細かった。
特に腕を回した腰周りはさらに想像以上に細く、麟は一瞬どきりとした。
時々咳き込むことがあったので背中をさすってやると、その背中も驚くほどに華奢だった。
こんな体でいろいろ抱えているのかと感じると、麟の心が締め付けられた。
そして、自分の無力さに言葉がなかった。
ややあってから、突然のアラーム音に悠宇が体をすくめた。
「あ。風呂、沸いたんだ」
麟の言葉に、悠宇も安堵のため息をついた。
「風呂、入る?」
悠宇はうつむいたまま、軽く頭を左右に振った。
「じゃあ、なんか温かいもの入れるよ」
そういうと、今度は縦に頭を振った。
「じゃ、待ってな」
軽く髪をひとなでしてから麟がキッチンへ向かうと、悠宇はソファの方へと向かっていった。
目で追っていると、クッションを1つ抱え込み、そのクッションに顔をうずめて座っていた。
キッチンへ行った麟は、紅茶を入れることにした。
日頃、悠宇が紅茶を、麟がコーヒーを入れていた・・・なんとなく、暗黙の了解的にそんな感じになっていた。
ガラスのポットの中でゆっくり色づきながらできていく紅茶を、悠宇は台所でのんびりと眺めているのを、麟は何度も見ていた。
そんな・・・悠宇がいつもやっている様に、少し濃い目にリーフから紅茶を入れ、少量のミルクと砂糖を足し、マグカップに入れて持って行った。
「神崎」
名前を呼びながらマグカップを差し出すと、悠宇はゆっくりと顔を上げた。
「ありがと」
両手で受け取る。
その左隣に座ると、麟はまず一口、ミルクティを飲んだ。
「勝手に砂糖とミルク入れたけど」
「うん、ありがと」
ゆっくりと悠宇はマグカップに口をつけた。
そのままカップ半分位まで飲むほどの間、お互い無言のままでいたが、ふいに麟の視界の端で、悠宇の手が止まったのが見えた。
そっと悠宇の方を見ると、目のふちに涙が溜まっていた。
「泣くな、きっと」
そう感じて麟は先に自分のマグカップをテーブルに置くと、次に悠宇の手からもゆっくりとマグカップを取り、テーブルに置いた。
そして間もなく、悠宇の頬を涙が流れていった。
麟はそっと右手を伸ばし、なぐさめる意味で髪をなぜた。
すると、それが合図でもあったかのように、悠宇は麟に身を寄せ、右肩に顔をうずめた。
「ま、いーか」
そう思い、先刻と同じ様に、麟は何も言わずに悠宇が泣くままに任せていた。
長いような短い沈黙の後、時計のチャイムが11時を告げた。
それから1・2分あってから、悠宇はすこし、麟から体を離した。
「ありがと」
つむいたまま、小さな声で言った。
麟は、返事をする代わりに左手でそっと髪をなぜた。
「本当にありがとう」
さらに体を離したつもりが、悠宇の背中に回された麟の右腕のせいで、ある程度以上は離れなかった。
いや・・・離さなかった。
うつむいたままのものの、泣きはらした顔が見え隠れする。
その表情をみて、麟は心が痛んだ。
泣き顔はもう、みたくない
そんな思いを紛らわすかのように、悠宇を抱き寄せた。
「疾風?」
「・・・あんまり」
言いながら、抱きしめる。
「え?」
「あんまり泣くなよ。見てる俺が辛くなる」
「・・・」
薫にあおられた、と思いたくはなかったものの、麟はゆっくりと気づいた。
いつに間にか、自分の心に入り込んでいた、悠宇の存在を。
無理しているのが分かるから、気になる
気になるから、無理しているのが分かる
分かるから、辛くなる
大切に思うから、辛くなる
そのまま少しの間、悠宇は麟の腕に身を任せていたが、ややあってからそっと体を離した。
「ごめんなさい、迷惑かけてばかりで」
「いいって」
背中に回していた左手をそっと悠宇の右頬にあてると、悠宇が少し顔を上げた。
まだまだ泣き出しそうな気配のある悠宇と視線が合ったのはほんの一瞬で、軽く視線を伏せたその顔を間近で見てしまうと、麟の理性がぐらりと揺れた。
2・3度悠宇の頬をなぜると、そのままの流れで、親指でそっと唇に触れる。
「好きだ、神崎・・・」
自然に、麟の口から言葉がこぼれ出た。
涙を目の縁にためたままの悠宇が、その言葉に、ゆっくりと顔を上げる。
「はや・・・て?」
呆然とした表情の、悠宇。
思いのままに麟が顔を寄せると、一瞬驚いた表情を作った悠宇も、ゆっくりと瞳を閉じた。
そして・・・ゆっくりと2人の唇が重なった。
途中のあとがき
p(*^-^*)q うしゃ♪さあ、本気で終わりが見えてきたぞ!!
しかし・・・この話しが大詰めだというのに、違う話が書きたくなって、頭の中がそっちの話モードになってます。
大丈夫か、私ヾ(--;)ぉぃぉぃ
お話を書くとき、誰かキャラクター側の目線で書くんですが。
今回は、麟目線であり、悠宇が好き好きモードに気持ちがなってないと、筆が進まない。
が!違う話モードになってしまうと、ただでさえ進み辛いこの話しがさらに進まない!
一気に書くのって、大切だと思いました(大汗
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