オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
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予想外の汗をかくこと、しばし。
予想外の汗をかくこと、しばし。
突然、正義の目の前にいた人が急に横に飛んだのが、麟の視界の隅に入った。
「!?」
「なぁにやってんだよ、てめーら!」
その声に、その場にいた全員がぴたりと止まる。
「中井の連中に手ぇ出すなって、あれほど言っといたじゃねーか!」
全身黒ずくめ・・・黒いシャツに黒いデニムに黒い靴の男が、正義の目の前に立っていた。
人が横に飛んだのは、その男が横から蹴ったから、らしい。
「成田!」
正義の声に、その男はひらりと手を振った。
「やばい、成田だ」
などという言葉が周囲から聞こえてきて、自分の右腕を掴んでいる相手の手が緩んだのがわかった麟は、左わき腹に蹴りをくれてやる。
「俺は今日、機嫌がいいんだよ。コイツじゃなくて、俺が相手してやってもいーんだぜ!」
これ見よがしに、胸の前で腕をならす。
「やべーよ」
という声も聞こえる中、後ろの方ではもっと慌てた声が上がっていた。
「水沢だ!」や「嵐山の松原と水沢だ」
などの声がし、誰か一人がその場を去ったのをキッカケに、集まったときよりも速いペースで、その場から人がいなくなった。
「?」
ワケの分らない麟は、軽く首をひねった。
「なんだ、やる気ねぇのか」
黒ずくめの・・・成田はそう言うと、つまらなそうにため息をひとつ。
そして、正義を振り返った。
「悪ぃな、桜井。うちの連中、人の話聞かねーから」
「いや、いいって。お互い様」
にっこり笑うと、言いながら正義は膝に付いた埃を払った。
「完全に巻いたと思ったんだけどさぁ」
「あめーんだよ、お前は」
「すんません」
軽く頭を叩かれる正義を見て、麟は
「こいつのキャラって、誰の前でも変わらない」
と、思わず肩の力が抜けた。
「で?・・・あれ、誰?」
2人の成り行きを見ていた麟と、成田の視線があう。
「中学の同級生」
「ふーん」
値踏みの視線が、麟を射し続けていた。
「ってか。俺たちまで巻き込むんじゃねーよ、成田」
不意に成田の左肩に腕が回され、右側にのしかかるようにしてもう一人、現れる。
「この借り、高くつくぜ」
「勝手に借りてろ」
「返す気、ねーな?」
「勝手にこっちに来た、てめーがわりーんだろ」
「そー言うか?」
「ったりめーだっての」
「せっかく海に誘ってやったのに」
「つまらねーコトで恩売んなよ、松原。つーか!あちーから離れろ!」
成田が、さもうざったそうに松原を払いのけた。
引き剥がされた松原は一息つくと、
「で。誰、あれ?」
と、視線を麟に向けた。
「いや・・・中学の同級生で、ただ巻き込んだだけなんで」
視線の間に、正義が割って入る。
「桜井の?」
「はい」
そのやり取りを見て、麟をこれ以上関わらせる気がない様子と、相手が正義より年上、もしくは格上なのが分った。
「名前は?」
突然、成田が正義を飛び越して、麟に声をかけた。
「疾風 麟」
「疾風?ああ・・・和泉中の」
その言葉に「ああ、気づいたかぁ」という雰囲気で、正義が天を仰いだ。
「なに?有名人?」
松原が成田の顔を伺う。
「地元じゃ、な」
「へえ」
そしてまた、値踏みの視線が向けられる。
ヤな感じ・・・麟はそう思った。
「中井高?あいつも?」
成田が指をさす。
「いや。麟は鷹ノ台」
「だってよ、水沢。知ってる、コイツ?同じ鷹ノ台だって」
成田が振り返りながら叫ぶと、また一人、今度は華奢な男が近づいてきた。
「勇樹、知ってるか?」
「あ・・・松原、こいつはいいって」
正義は少し、おろおろとし始めた。
「・・・知ってる」
華奢な男、水沢はそう言いながら麟に視線を移し、麟もまた視線を移した。
白いTシャツにアメ横辺りで購入したと思われるシャツ、少しだぶついたデニムに、白いスニーカー。
明らかに、洋服に着られている。
身長は160程で、ほっそりとした腕が、袖から出ていた。
けれど、麟の目を引いたのは存在感、だった。
この場にいる誰よりも背が低く、華奢・・・にも関わらず、攻撃性はない、静かな威圧的。
「水沢さんが別に気にするほどのことじゃ・・・」
「いいって、桜井。俺が鷹ノ台にいる以上、いつかは何かあるはずだし」
言いながら、正義に苦笑いした。
いたか、こんなヤツ?麟は思った。
「でも、鷹ノ台には酒井田さんが・・・」
「酒井田先輩は、もう卒業するし」
「こいつ、一匹狼だし」
「和泉中の疾風って分かれば、いくら鷹ノ台に隠れててもバレるぜ、いつか」
と、成田。
「んー」
何かを考えている表情で正義の横まで来て、水沢と呼ばれた華奢な男の足が止まった。
「じゃ、桜井が面倒みて」
ぽん、と正義の右肩に左手を置いた。
「え?!マヂ困る!」
「?」
「俺が暴走する麟を止められるワケない!」
「随分勝手に言ってくれるなぁ、桜井」
さっきから聞いているが、麟がまったく分からない所で麟の話がされているようだった。
「俺は、ぜんぜん状況が飲み込めてねーんだけど」
言いながら、正義の左腕を掴んだ。
「誰、こいつら?」
「え〜と」
正義は目を泳がせた。
「一応・・・友達?ケンカを手伝ってくれる友達、かな?」
あまりにも不自然な物言いに、水沢がふき出した。
「うけるよ、ソレ」
「マヂっすか?」
「・・・ってか、自分の所は自分の所で片付けとけよ。勇樹、帰ろうぜ」
成田と一緒にいた松原が、めんどくさそうに言った。
「はーい」
その松原に軽く手をあげ、水沢が返事をする。
「桜井、後始末よろしく・・・じゃ、そのうちに」
そう言って軽く手を振りながら、麟を一瞥すると、水沢はひらりと身を翻した。
途中のあとがき
たった1晩の数時間の出来事が、なぜにこんなに長い?(・_・?)
でもまあ、このシーンがないと困るんですよねぇ。
時間の流れでいうと、この辺りはcrosswiseと重なり、話の流れは充槻編と重なってきます。
この「海に行く」っていうのが、のちのちも重要な役割を果たしまして・・・って、自分でネタばらしですか?(笑
でもまあ、これは大切なシーンであって・・・一安心です。
突然、正義の目の前にいた人が急に横に飛んだのが、麟の視界の隅に入った。
「!?」
「なぁにやってんだよ、てめーら!」
その声に、その場にいた全員がぴたりと止まる。
「中井の連中に手ぇ出すなって、あれほど言っといたじゃねーか!」
全身黒ずくめ・・・黒いシャツに黒いデニムに黒い靴の男が、正義の目の前に立っていた。
人が横に飛んだのは、その男が横から蹴ったから、らしい。
「成田!」
正義の声に、その男はひらりと手を振った。
「やばい、成田だ」
などという言葉が周囲から聞こえてきて、自分の右腕を掴んでいる相手の手が緩んだのがわかった麟は、左わき腹に蹴りをくれてやる。
「俺は今日、機嫌がいいんだよ。コイツじゃなくて、俺が相手してやってもいーんだぜ!」
これ見よがしに、胸の前で腕をならす。
「やべーよ」
という声も聞こえる中、後ろの方ではもっと慌てた声が上がっていた。
「水沢だ!」や「嵐山の松原と水沢だ」
などの声がし、誰か一人がその場を去ったのをキッカケに、集まったときよりも速いペースで、その場から人がいなくなった。
「?」
ワケの分らない麟は、軽く首をひねった。
「なんだ、やる気ねぇのか」
黒ずくめの・・・成田はそう言うと、つまらなそうにため息をひとつ。
そして、正義を振り返った。
「悪ぃな、桜井。うちの連中、人の話聞かねーから」
「いや、いいって。お互い様」
にっこり笑うと、言いながら正義は膝に付いた埃を払った。
「完全に巻いたと思ったんだけどさぁ」
「あめーんだよ、お前は」
「すんません」
軽く頭を叩かれる正義を見て、麟は
「こいつのキャラって、誰の前でも変わらない」
と、思わず肩の力が抜けた。
「で?・・・あれ、誰?」
2人の成り行きを見ていた麟と、成田の視線があう。
「中学の同級生」
「ふーん」
値踏みの視線が、麟を射し続けていた。
「ってか。俺たちまで巻き込むんじゃねーよ、成田」
不意に成田の左肩に腕が回され、右側にのしかかるようにしてもう一人、現れる。
「この借り、高くつくぜ」
「勝手に借りてろ」
「返す気、ねーな?」
「勝手にこっちに来た、てめーがわりーんだろ」
「そー言うか?」
「ったりめーだっての」
「せっかく海に誘ってやったのに」
「つまらねーコトで恩売んなよ、松原。つーか!あちーから離れろ!」
成田が、さもうざったそうに松原を払いのけた。
引き剥がされた松原は一息つくと、
「で。誰、あれ?」
と、視線を麟に向けた。
「いや・・・中学の同級生で、ただ巻き込んだだけなんで」
視線の間に、正義が割って入る。
「桜井の?」
「はい」
そのやり取りを見て、麟をこれ以上関わらせる気がない様子と、相手が正義より年上、もしくは格上なのが分った。
「名前は?」
突然、成田が正義を飛び越して、麟に声をかけた。
「疾風 麟」
「疾風?ああ・・・和泉中の」
その言葉に「ああ、気づいたかぁ」という雰囲気で、正義が天を仰いだ。
「なに?有名人?」
松原が成田の顔を伺う。
「地元じゃ、な」
「へえ」
そしてまた、値踏みの視線が向けられる。
ヤな感じ・・・麟はそう思った。
「中井高?あいつも?」
成田が指をさす。
「いや。麟は鷹ノ台」
「だってよ、水沢。知ってる、コイツ?同じ鷹ノ台だって」
成田が振り返りながら叫ぶと、また一人、今度は華奢な男が近づいてきた。
「勇樹、知ってるか?」
「あ・・・松原、こいつはいいって」
正義は少し、おろおろとし始めた。
「・・・知ってる」
華奢な男、水沢はそう言いながら麟に視線を移し、麟もまた視線を移した。
白いTシャツにアメ横辺りで購入したと思われるシャツ、少しだぶついたデニムに、白いスニーカー。
明らかに、洋服に着られている。
身長は160程で、ほっそりとした腕が、袖から出ていた。
けれど、麟の目を引いたのは存在感、だった。
この場にいる誰よりも背が低く、華奢・・・にも関わらず、攻撃性はない、静かな威圧的。
「水沢さんが別に気にするほどのことじゃ・・・」
「いいって、桜井。俺が鷹ノ台にいる以上、いつかは何かあるはずだし」
言いながら、正義に苦笑いした。
いたか、こんなヤツ?麟は思った。
「でも、鷹ノ台には酒井田さんが・・・」
「酒井田先輩は、もう卒業するし」
「こいつ、一匹狼だし」
「和泉中の疾風って分かれば、いくら鷹ノ台に隠れててもバレるぜ、いつか」
と、成田。
「んー」
何かを考えている表情で正義の横まで来て、水沢と呼ばれた華奢な男の足が止まった。
「じゃ、桜井が面倒みて」
ぽん、と正義の右肩に左手を置いた。
「え?!マヂ困る!」
「?」
「俺が暴走する麟を止められるワケない!」
「随分勝手に言ってくれるなぁ、桜井」
さっきから聞いているが、麟がまったく分からない所で麟の話がされているようだった。
「俺は、ぜんぜん状況が飲み込めてねーんだけど」
言いながら、正義の左腕を掴んだ。
「誰、こいつら?」
「え〜と」
正義は目を泳がせた。
「一応・・・友達?ケンカを手伝ってくれる友達、かな?」
あまりにも不自然な物言いに、水沢がふき出した。
「うけるよ、ソレ」
「マヂっすか?」
「・・・ってか、自分の所は自分の所で片付けとけよ。勇樹、帰ろうぜ」
成田と一緒にいた松原が、めんどくさそうに言った。
「はーい」
その松原に軽く手をあげ、水沢が返事をする。
「桜井、後始末よろしく・・・じゃ、そのうちに」
そう言って軽く手を振りながら、麟を一瞥すると、水沢はひらりと身を翻した。
途中のあとがき
たった1晩の数時間の出来事が、なぜにこんなに長い?(・_・?)
でもまあ、このシーンがないと困るんですよねぇ。
時間の流れでいうと、この辺りはcrosswiseと重なり、話の流れは充槻編と重なってきます。
この「海に行く」っていうのが、のちのちも重要な役割を果たしまして・・・って、自分でネタばらしですか?(笑
でもまあ、これは大切なシーンであって・・・一安心です。
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