オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
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夏休みがあけて数日後のことだった。
夏休みがあけて数日後のことだった。
昼休みが半分過ぎた頃、廊下が騒がしくなったかと思うと、勢いよく教室の後ろのドアが開いた。
目線がいっせいに注がれると、2年生が3人、そこに立っていた。
どこの学校にもいるもので、ちょっと素行が悪い部類の上級生だと誰もがなんとなく分かっている数名のうちの3人だった。
そのうちの1人が、口を開いた。
「疾風ってのは、どいつだ」
そう言ったのが聞こえると、要が
「また?」
とため息をついた。
同じようなことは、中学の時にも繰り返されていた。
「9月なら、まだいいほうじゃない?情報おそっ」
優一もうんざりと言う。
心当たりはいくつかある。
「俺だけど」
麟はめんどくさそうに立ち上がった。
「何か用スか」
「酒井田が呼んでる」
その名前は先日、正義から聞かされた名前だった。
素直に先輩の先導についていくと、やはりというか定番で、屋上へと連れて行かれた。
「酒井田、つれてきたぜ」
屋上への階段から少し離れた所に、ガタイのいい後姿が見えた。
「ああ」
返答しながら振り返った酒井田の向こう側に、予期せぬ人物がいた。
「神崎?」
一瞬目が合ったが、酒井田が近づいてきてその間に入ったために、その姿はすぐに見えなくなったが。
「お前が、疾風?」
「そうだけど」
「桜井から話は聞いた。何かと面倒があるだろうから、気をつけろよ」
柔和な笑みを浮かべる。
「はあ」
正直、意外だった。
「俺でよければ、やっかいごとは引き受けるから」
「はあ」
いわゆる「呼び出し」とは違うらしい。
その後、先日の水沢の件は周りに知られないようにと言われた。
そして、
「何かあったら」
という理由で携帯の連絡先を教えられ教室に返された。
腑に落ちないままに教室に帰ると、もちろんのこと、麟は優一と要につかまった。
「酒井田先輩って、柔道部の?」
「しらね」
「見た目が見た目だけに、目立つらしいって話だよ」
確かに、それは本人に会って納得できた。
「でも何でそこに、神崎さんが?」
「さあ」
肩をすくめる。
「噂をすれば、だね」
要が、席に戻ってきた悠宇をみつける。
「神崎さん、さっき屋上にいたって麟が言ってるけど」
にこにこと笑いながら、優一が話しかける。
「そう?人違いじゃない?」
その返答を聞いて、麟は
「やっぱりな」
と心の中でつぶやいた。
隠すだろうと、思っていただからだ。
「いやぁ。でも、さすがの麟だって、神崎さんほどの美人と他人を間違えたり、しないと思うけど」
「そう?」
そういうと、にこりと笑った。
「でも、神崎さんって昼休みいないこと多いよね」
思いがけず、要がつっこんだ。
「え?そう?」
その笑顔には「そんなことありません」と書かれているようだった。
「あ・・・この教室、ちょっと電波の調子悪くて外に行くから、かな?」
というと、携帯を取り出した。
「え?マヂ?」
「特にデータ通信すると、重いことが多くて。今日は普通のメールだけだったんだけど、つい、電波状況のいい場所にね」
はにかんだ様な笑顔に、優一と要は納得したようだった。
が。
5限の始まるチャイムが鳴ると同時に、悠宇がちらりと麟をみた。
それを目の端に捕らえた麟は、小さな声で言った。
「うそつき」
「お好きなように・・・」
そう言って浮かべた笑みは、ある意味無言の脅迫の様にすら思えた。
更にその次の週の土曜。
帰る前に、なんとなく廊下で話し込んでいた時のことだった。
「あ・・・」
と、もらしてから、優一が窓の外に釘付けになった。
「「?」」
優一の視線を追うと、裏門の前に、悠宇と男が1人。
「ああ、ウワサの・・・」
「ウワサ?」
要の言葉を、麟は復唱した。
「2学期になってから、なんだけど。毎日送り迎えされてる、ってさ」
それも、バイクに2ケツ、と付け加えられて。
「彼氏、かなぁ」
優一の台詞は、少しだけ悲しみを帯びていた。
「まあ。いてもおかしくないよね、彼女なら」
そんな要の台詞を聞きながら、親しげに2人が話す様子を眺めていた。
「ふーん」
不意に相手の男の顔が見え、麟は眉をしかめた。
そして次の瞬間、
「あ?」
と口にしてから、思わず身を乗り出した。
「どーした、麟?」
要が問う。
「成田・・・」
「え?麟、相手知ってんの?」
「あーまあ、一応」
優一の言葉に、素直に返す。
「俺が言えた義理じゃねーけど、ちょっと有名人らしい」
「有名?」
「大戸のヤツだよ、1コ上・・・って、桜井が言ってた」
「あー。そっち方面で?」
麟と正義の事を知っている2人だからこその、要の台詞だった。
「意外・・・」
優一が閉口する。
「春先にこの辺りに引越してきたにしては、知り合いの選択肢がいいとは言えないみたいだね」
と、要。
「人は見かけによらない、かぁ」
うなだれるようにして窓の枠に体を預けた優一の背中を見て、麟と要は肩をすくめた。
途中のあとがき
chapter 6よりも先に書けちゃった、chapter 7って(大汗
まあ、半分はストック使用ですけど。
この章のサブタイトルは「人は見かけによらない」
ちょこちょこと、悠宇の横顔が見えてくるわけです。
すでに「crosswise」をお読みの方であれば「ああ、なるほど」と思うはず・・・そう辻褄合わせているんですけど、そう思ってもらえていれば、幸いなのですが。
昼休みが半分過ぎた頃、廊下が騒がしくなったかと思うと、勢いよく教室の後ろのドアが開いた。
目線がいっせいに注がれると、2年生が3人、そこに立っていた。
どこの学校にもいるもので、ちょっと素行が悪い部類の上級生だと誰もがなんとなく分かっている数名のうちの3人だった。
そのうちの1人が、口を開いた。
「疾風ってのは、どいつだ」
そう言ったのが聞こえると、要が
「また?」
とため息をついた。
同じようなことは、中学の時にも繰り返されていた。
「9月なら、まだいいほうじゃない?情報おそっ」
優一もうんざりと言う。
心当たりはいくつかある。
「俺だけど」
麟はめんどくさそうに立ち上がった。
「何か用スか」
「酒井田が呼んでる」
その名前は先日、正義から聞かされた名前だった。
素直に先輩の先導についていくと、やはりというか定番で、屋上へと連れて行かれた。
「酒井田、つれてきたぜ」
屋上への階段から少し離れた所に、ガタイのいい後姿が見えた。
「ああ」
返答しながら振り返った酒井田の向こう側に、予期せぬ人物がいた。
「神崎?」
一瞬目が合ったが、酒井田が近づいてきてその間に入ったために、その姿はすぐに見えなくなったが。
「お前が、疾風?」
「そうだけど」
「桜井から話は聞いた。何かと面倒があるだろうから、気をつけろよ」
柔和な笑みを浮かべる。
「はあ」
正直、意外だった。
「俺でよければ、やっかいごとは引き受けるから」
「はあ」
いわゆる「呼び出し」とは違うらしい。
その後、先日の水沢の件は周りに知られないようにと言われた。
そして、
「何かあったら」
という理由で携帯の連絡先を教えられ教室に返された。
腑に落ちないままに教室に帰ると、もちろんのこと、麟は優一と要につかまった。
「酒井田先輩って、柔道部の?」
「しらね」
「見た目が見た目だけに、目立つらしいって話だよ」
確かに、それは本人に会って納得できた。
「でも何でそこに、神崎さんが?」
「さあ」
肩をすくめる。
「噂をすれば、だね」
要が、席に戻ってきた悠宇をみつける。
「神崎さん、さっき屋上にいたって麟が言ってるけど」
にこにこと笑いながら、優一が話しかける。
「そう?人違いじゃない?」
その返答を聞いて、麟は
「やっぱりな」
と心の中でつぶやいた。
隠すだろうと、思っていただからだ。
「いやぁ。でも、さすがの麟だって、神崎さんほどの美人と他人を間違えたり、しないと思うけど」
「そう?」
そういうと、にこりと笑った。
「でも、神崎さんって昼休みいないこと多いよね」
思いがけず、要がつっこんだ。
「え?そう?」
その笑顔には「そんなことありません」と書かれているようだった。
「あ・・・この教室、ちょっと電波の調子悪くて外に行くから、かな?」
というと、携帯を取り出した。
「え?マヂ?」
「特にデータ通信すると、重いことが多くて。今日は普通のメールだけだったんだけど、つい、電波状況のいい場所にね」
はにかんだ様な笑顔に、優一と要は納得したようだった。
が。
5限の始まるチャイムが鳴ると同時に、悠宇がちらりと麟をみた。
それを目の端に捕らえた麟は、小さな声で言った。
「うそつき」
「お好きなように・・・」
そう言って浮かべた笑みは、ある意味無言の脅迫の様にすら思えた。
更にその次の週の土曜。
帰る前に、なんとなく廊下で話し込んでいた時のことだった。
「あ・・・」
と、もらしてから、優一が窓の外に釘付けになった。
「「?」」
優一の視線を追うと、裏門の前に、悠宇と男が1人。
「ああ、ウワサの・・・」
「ウワサ?」
要の言葉を、麟は復唱した。
「2学期になってから、なんだけど。毎日送り迎えされてる、ってさ」
それも、バイクに2ケツ、と付け加えられて。
「彼氏、かなぁ」
優一の台詞は、少しだけ悲しみを帯びていた。
「まあ。いてもおかしくないよね、彼女なら」
そんな要の台詞を聞きながら、親しげに2人が話す様子を眺めていた。
「ふーん」
不意に相手の男の顔が見え、麟は眉をしかめた。
そして次の瞬間、
「あ?」
と口にしてから、思わず身を乗り出した。
「どーした、麟?」
要が問う。
「成田・・・」
「え?麟、相手知ってんの?」
「あーまあ、一応」
優一の言葉に、素直に返す。
「俺が言えた義理じゃねーけど、ちょっと有名人らしい」
「有名?」
「大戸のヤツだよ、1コ上・・・って、桜井が言ってた」
「あー。そっち方面で?」
麟と正義の事を知っている2人だからこその、要の台詞だった。
「意外・・・」
優一が閉口する。
「春先にこの辺りに引越してきたにしては、知り合いの選択肢がいいとは言えないみたいだね」
と、要。
「人は見かけによらない、かぁ」
うなだれるようにして窓の枠に体を預けた優一の背中を見て、麟と要は肩をすくめた。
途中のあとがき
chapter 6よりも先に書けちゃった、chapter 7って(大汗
まあ、半分はストック使用ですけど。
この章のサブタイトルは「人は見かけによらない」
ちょこちょこと、悠宇の横顔が見えてくるわけです。
すでに「crosswise」をお読みの方であれば「ああ、なるほど」と思うはず・・・そう辻褄合わせているんですけど、そう思ってもらえていれば、幸いなのですが。
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