オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
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週明けの月曜日からテストという前々日の土曜日。
週明けの月曜日からテストという前々日の土曜日。
お昼ご飯を終えて程なく、悠宇の携帯が鳴った。
相手は、充槻だった。
「はい?」
「あ、俺、成田・・・水沢、時間あるか?」
「え?」
「今、マンションの前にいるんだけど」
「はい?」
思わず出してしまった大声。
「でてこれるか?」
一瞬考えてから、悠宇は返事をした。
「・・・5分ちょうだい」
「わかった」
そして慌しく、コートとマフラーを掴んで部屋から出た。
「・・・ずいぶん、テキトーなカッコだな」
開口一番、不満そうな表情で充槻は言った。
色合いやサイズから女物と分かるが、相変わらずのジップアップパーカーに長袖のTシャツ、そして少しだぶついたデニムに、玄関先に出ていたエンジニアブーツという姿だった。
「化粧もしてねーだろ」
「突然呼び出して、その言い方ひどくない?」
悠宇は軽く頬を膨らませた。
「ま、いいけど」
そう言うと、シートの自分の後ろの部分をぽんぽんと叩いた。
「で?どこ行くワケ」
「まあ、いいから」
「はい?!テスト前なんだけど」
「知ってる」
とは言うものの、充槻のこういう態度に悠宇の拒否権が殆どないことは承知だった。
渋々後ろに乗ると、充槻は何も言わずにバイクを走らせた。
そして今、悠宇は水面を眺めていた。
あれから充槻につれてこられたのは、お台場だった。
「何があんの?」
と聞いた悠宇に対して、充槻は
「なにも・・・ただの気分転換」
と答え、呆れさせたのだった。
「はいよ」
という言葉と同時に、悠宇の目の前にミルクティの缶が現れた。
その缶を差し出した充槻を軽く睨みつけてから受け取ると、
「おごりね」
と悠宇は言った。
充槻は返事もせずに悠宇の右隣に座り、自分用の缶コーヒーのプルタブに指をかけた。
悠宇は渡された缶を両手で持つと、それを右頬に当てた。
「あったか〜い」
軽く目を閉じる。
「冷めるぞ」
「いいの」
今度は左頬に缶を当てる。
その姿を横目で見て、充槻は軽くため息をついた。
「・・・悪かったな」
「え?」
「無理矢理つれてきて」
「・・・いいって」
そう言うと、悠宇はふぅと息を吐いた。
「テスト前にこんなこと、フツーしないし。一度くらいはアリってことにしとく」
「水沢・・・」
そう言う返事が返ってくると思っていなかった充槻は、コーヒーを飲もうとして口元まで運んでいた手を、思わず止めた。
「で?なんで連れ出したワケ?」
にっこり笑ってそう聞く悠宇に、がらにもなく、充槻はどきっとした。
「・・・デート」
「?」
「一度くらい、デートしてみたかったんだよ」
水沢と・・・という言葉は、あえてつけなかった。
「バカみたい」
悠宇はくすりと笑った。
「それならそうと、ちゃんと誘えばいいのに」
くすくすと悠宇は笑い続けた。
そしてひとしきり笑うと、ようやっと持っていたミルクティを開けて、こくりと一口飲んだ。
「俺がなに言ってもホンキにしねーくせに」
「充槻ってもてるんでしょ?桜井から聞いたけど」
その声は、いつもとは少し柔らかい声だった。
「さあな」
「会うたびに、違う女を連れてるって」
「知らね」
「どうして私を誘うの?」
「私」という言葉に、一瞬充槻は驚いた表情を作った。
「どうして?」
さらにそう言って、小首をかしげる悠宇に、充槻の心臓は早鐘のように鳴った。
「さあな」
「答えになってない」
「るせっ。そーゆーのは答えなくていいんだよ」
「ずるーい」
そう言うと、それ以上追求せずに、またミルクティをこくりと飲んだ。
そんな悠宇の横顔を見ながらため息をつくと、ややあってから、充槻は口を開いた。
「ホンキに、なれるかと思って」
「え?」
充槻は、オンナに不自由したことがなかった。
本人にその気がなくても、なぜかオンナのほうから言い寄ってくることが多く、特に断る理由もない相手に事欠かなかった。
基本的に充槻のワガママが通る関係しか、持ったことがなかった。
水沢勇樹は、充槻の思うようにならない初めての相手だった。
「どんなに声かけても誘っても、なびかねーオンナなんてお前くらいだから」
「だから?」
「手に入れようと思った」
「征服欲、ってやつね」
悠宇はさらりと言った。
「お前な・・・」
「ばかみたい」
ため息と供にその言葉を吐き出すと、悠宇は充槻から視線を逸らせて再び水面を眺めた。
そんな悠宇の肩に左腕を回しながら、充槻は聞いた。
「な・・・松原と、何もなかったワケじゃねーんだろ?」
「ん?」
「答えろよ」
「んー」
悠宇は少し考えて、言葉を選んだ。
「なりゆき、かな」
「なりゆき?」
「そうなっちゃっただけ。付き合ってたつもりないし。それに、誰かと付き合おうとか、思ったことないし」
「それって、さり気なく自分はモテルって言ってないか?」
「そう?」
「室田は?」
「・・・先輩よりは好きだと思ったから、かな?」
くすりと笑う。
「じゃあ、俺と松原と同じ時期に出会ってたら?」
「そーゆーのはナシ。充槻だって、私のこと気にならなかったかもしれないでしょ?」
「まあ、確かに」
充槻の返事を聞くと、悠宇はくすりと笑い、また一口ミルクティを飲んだ。
ほんの少しだけ悠宇の肩を抱き寄せると、充槻は言った。
「な。マジに俺と付き合わねぇ?」
「考えとく」
いつもの答えが返ってきて、充槻は呆れた。
「お前さぁ、この雰囲気でそう言うか?」
「言う」
そしてお互いに顔を見合わせると、思わず噴き出した。
「じゃあ、今日だけ付き合ってあげる」
くすくすと笑いながら言い、ひとしきり笑って悠宇が俯けていた顔を上げる・・・と、鼻先が触れるほどの距離に充槻の顔があった。
「え?」
次の瞬間、二人の唇が触れ合った。
「・・・ヤなオンナ」
つぶやくように言う、充槻。
「ちゃんと拒めよ。もっと、欲しくなるだろ」
「充槻・・・」
さらに肩を引き寄せ、空いている右手で缶を持ったままの悠宇の両手を包み込むと、充槻はもう、一度ゆっくりと唇を重ねた。
途中のあとがき
一応、3/14辺りの話として設定してます。
その頃って、学年末試験の頃だよね?
ついでにホワイトデー。
にも関わらず、悠宇を連れ出していただきました。
きゃー、充槻がんばって〜(/▽\)きゃー♪
充槻贔屓の作者です(大汗
お昼ご飯を終えて程なく、悠宇の携帯が鳴った。
相手は、充槻だった。
「はい?」
「あ、俺、成田・・・水沢、時間あるか?」
「え?」
「今、マンションの前にいるんだけど」
「はい?」
思わず出してしまった大声。
「でてこれるか?」
一瞬考えてから、悠宇は返事をした。
「・・・5分ちょうだい」
「わかった」
そして慌しく、コートとマフラーを掴んで部屋から出た。
「・・・ずいぶん、テキトーなカッコだな」
開口一番、不満そうな表情で充槻は言った。
色合いやサイズから女物と分かるが、相変わらずのジップアップパーカーに長袖のTシャツ、そして少しだぶついたデニムに、玄関先に出ていたエンジニアブーツという姿だった。
「化粧もしてねーだろ」
「突然呼び出して、その言い方ひどくない?」
悠宇は軽く頬を膨らませた。
「ま、いいけど」
そう言うと、シートの自分の後ろの部分をぽんぽんと叩いた。
「で?どこ行くワケ」
「まあ、いいから」
「はい?!テスト前なんだけど」
「知ってる」
とは言うものの、充槻のこういう態度に悠宇の拒否権が殆どないことは承知だった。
渋々後ろに乗ると、充槻は何も言わずにバイクを走らせた。
そして今、悠宇は水面を眺めていた。
あれから充槻につれてこられたのは、お台場だった。
「何があんの?」
と聞いた悠宇に対して、充槻は
「なにも・・・ただの気分転換」
と答え、呆れさせたのだった。
「はいよ」
という言葉と同時に、悠宇の目の前にミルクティの缶が現れた。
その缶を差し出した充槻を軽く睨みつけてから受け取ると、
「おごりね」
と悠宇は言った。
充槻は返事もせずに悠宇の右隣に座り、自分用の缶コーヒーのプルタブに指をかけた。
悠宇は渡された缶を両手で持つと、それを右頬に当てた。
「あったか〜い」
軽く目を閉じる。
「冷めるぞ」
「いいの」
今度は左頬に缶を当てる。
その姿を横目で見て、充槻は軽くため息をついた。
「・・・悪かったな」
「え?」
「無理矢理つれてきて」
「・・・いいって」
そう言うと、悠宇はふぅと息を吐いた。
「テスト前にこんなこと、フツーしないし。一度くらいはアリってことにしとく」
「水沢・・・」
そう言う返事が返ってくると思っていなかった充槻は、コーヒーを飲もうとして口元まで運んでいた手を、思わず止めた。
「で?なんで連れ出したワケ?」
にっこり笑ってそう聞く悠宇に、がらにもなく、充槻はどきっとした。
「・・・デート」
「?」
「一度くらい、デートしてみたかったんだよ」
水沢と・・・という言葉は、あえてつけなかった。
「バカみたい」
悠宇はくすりと笑った。
「それならそうと、ちゃんと誘えばいいのに」
くすくすと悠宇は笑い続けた。
そしてひとしきり笑うと、ようやっと持っていたミルクティを開けて、こくりと一口飲んだ。
「俺がなに言ってもホンキにしねーくせに」
「充槻ってもてるんでしょ?桜井から聞いたけど」
その声は、いつもとは少し柔らかい声だった。
「さあな」
「会うたびに、違う女を連れてるって」
「知らね」
「どうして私を誘うの?」
「私」という言葉に、一瞬充槻は驚いた表情を作った。
「どうして?」
さらにそう言って、小首をかしげる悠宇に、充槻の心臓は早鐘のように鳴った。
「さあな」
「答えになってない」
「るせっ。そーゆーのは答えなくていいんだよ」
「ずるーい」
そう言うと、それ以上追求せずに、またミルクティをこくりと飲んだ。
そんな悠宇の横顔を見ながらため息をつくと、ややあってから、充槻は口を開いた。
「ホンキに、なれるかと思って」
「え?」
充槻は、オンナに不自由したことがなかった。
本人にその気がなくても、なぜかオンナのほうから言い寄ってくることが多く、特に断る理由もない相手に事欠かなかった。
基本的に充槻のワガママが通る関係しか、持ったことがなかった。
水沢勇樹は、充槻の思うようにならない初めての相手だった。
「どんなに声かけても誘っても、なびかねーオンナなんてお前くらいだから」
「だから?」
「手に入れようと思った」
「征服欲、ってやつね」
悠宇はさらりと言った。
「お前な・・・」
「ばかみたい」
ため息と供にその言葉を吐き出すと、悠宇は充槻から視線を逸らせて再び水面を眺めた。
そんな悠宇の肩に左腕を回しながら、充槻は聞いた。
「な・・・松原と、何もなかったワケじゃねーんだろ?」
「ん?」
「答えろよ」
「んー」
悠宇は少し考えて、言葉を選んだ。
「なりゆき、かな」
「なりゆき?」
「そうなっちゃっただけ。付き合ってたつもりないし。それに、誰かと付き合おうとか、思ったことないし」
「それって、さり気なく自分はモテルって言ってないか?」
「そう?」
「室田は?」
「・・・先輩よりは好きだと思ったから、かな?」
くすりと笑う。
「じゃあ、俺と松原と同じ時期に出会ってたら?」
「そーゆーのはナシ。充槻だって、私のこと気にならなかったかもしれないでしょ?」
「まあ、確かに」
充槻の返事を聞くと、悠宇はくすりと笑い、また一口ミルクティを飲んだ。
ほんの少しだけ悠宇の肩を抱き寄せると、充槻は言った。
「な。マジに俺と付き合わねぇ?」
「考えとく」
いつもの答えが返ってきて、充槻は呆れた。
「お前さぁ、この雰囲気でそう言うか?」
「言う」
そしてお互いに顔を見合わせると、思わず噴き出した。
「じゃあ、今日だけ付き合ってあげる」
くすくすと笑いながら言い、ひとしきり笑って悠宇が俯けていた顔を上げる・・・と、鼻先が触れるほどの距離に充槻の顔があった。
「え?」
次の瞬間、二人の唇が触れ合った。
「・・・ヤなオンナ」
つぶやくように言う、充槻。
「ちゃんと拒めよ。もっと、欲しくなるだろ」
「充槻・・・」
さらに肩を引き寄せ、空いている右手で缶を持ったままの悠宇の両手を包み込むと、充槻はもう、一度ゆっくりと唇を重ねた。
途中のあとがき
一応、3/14辺りの話として設定してます。
その頃って、学年末試験の頃だよね?
ついでにホワイトデー。
にも関わらず、悠宇を連れ出していただきました。
きゃー、充槻がんばって〜(/▽\)きゃー♪
充槻贔屓の作者です(大汗
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