オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
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悠宇は上目がちに、抗議の視線を送った。
悠宇は上目がちに、抗議の視線を送った。
そんな視線をつけつつ、充槻は気づいた。
本気になれば、こんな状況から簡単に抜け出せるはずだろうが、わざとそうしないでいる事を。
そして、それを逆手に間合いをつめた。
「水沢」
笑みを浮かべたまま、唇を寄せる。
が、鼻先が触れ合うほどの距離で止め、充槻はそのまま悠宇を見つめた。
短い沈黙の後、ずっと顎を引いて硬く瞳を閉じていた悠宇は軽くため息を漏らすと、観念したかの様に、一度空けた瞳をゆっくりと閉じた。
その様子を見て、充槻は左腕に一時体重を預け、悠宇の左側に腰を下ろすと、そっと右手で頬に触れる。
そして、充槻はゆっくりと唇を重ねた。
「・・・なぁ」
唇を離してから、先刻と同じで鼻先が触れ合うほどの距離で、充槻は悠宇に話しかけた。
「水沢・・・抱かせろよ」
「え?」
その瞬間、悠宇の瞳が大きく開かれた。
「いいだろ?初めてってわけでもねーんだし」
「・・・」
「俺と一回ヤった位で、何か減るわけでもねえし」
「・・・だめ」
そう言うと、キスの間指一本すら動かさなかったその手で、充槻の体を押し返した。
「やっぱな・・・そう言うと思った」
充槻はくすりと笑うと、すばやく左手で悠宇の両手首を絡め取ってから押し倒すと、その両手首を頭の上に押さえ込んだ。
「!」
わずかに動揺したその表情を見ながら、充槻はさらにくすりと笑った。
「言わなかったっけ?無防備すぎるって」
「・・・」
「ちょうどいいけどさ」
くすくすと笑いながら、空いている右手を悠宇のTシャツの下に滑り込ませた。
「やっ」
悠宇の体が強張る。
「まだ室田のことが忘れられない?」
「違うって!」
まるでいたずらでもしているかの様に、悠宇の反応を見ながら、そっと体のラインを充槻はなぞった。
「じゃあ?」
軽く唇を重ねた後、充槻は意地悪く聞く。
「・・・」
軽く唇をかみ締めながら充槻に視線を送る悠宇の表情を見て、ふと、問う。
「あのさ・・・室田の前に、何人いた?」
「?」
「室田、何人目?」
「なんにんめ?」
その表情から、まったく意図が伝わってないのが手に取れた。
「まぢ?」
一瞬真顔になったかと思うと、充槻はくすくすと笑い始めた。
「以外・・・俺、もっとヤりまくってるタイプなのかと思ってた」
さらにくすくすと笑う。
「室田が初めてのオトコ?それからヤってもない?あ・・・松原も手ぇ出してないんだ」
「・・・」
「あ。否定もしないわけね」
充槻の態度は、おかしくて仕方がないといった感じで、悠宇の首筋に顔を埋めながらくすくすと笑い続けた。
ひとしきり笑ってから顔を起こすと、そっと悠宇の左頬をなぜた。
「水沢勇樹って、こんな可愛い女だったんだ」
にこにこと上機嫌で笑みを浮かべる充槻。
「どういう意味よ?」
「ん?」
充槻の表情が、さらに優しさを増したように感じた。
「無防備で、ガードが甘くて、男に従順で・・・こんなに可愛いとはね」
そう言うと、首筋に唇を這わせた。
「室田もばかだよな・・・こんないい女、手放すなんて」
首筋の、見えないような場所にひとつだけ赤い華を咲かせると、充槻は悠宇の顔を正面から見下ろした。
そして、捕らえていた両手首を離して両腕で悠宇の体を抱きしめると、耳元で囁いた。
「帰さねぇ、からな」
「・・・だから、だめだって言ったのに」
全身の力が抜け、つぶやくように言った悠宇の目からは、涙が零れ落ちた。
そして、3学期最後の登校日の朝。
いつもの時間にマンションをでた悠宇は、玄関の正面の路上にバイクを停めていたその人物を見て、固まった。
「充槻・・・」
「よ」
あの日から、テスト中もテスト休み中も、二人は会わなかったにも関わらず、以前とまったく変わらない表情で、充槻は片手を挙げた。
「どーしたの?」
「どーしたもこーしたも、お姫様の送り迎え」
にこりと笑うその表情には、少しだけ以前と何か変わったような錯覚を覚えた。
「拒否る理由、あんのかよ?」
「別に・・・」
「そんなに警戒すんなよ。変なコト、しねーって」
「当たり前」
悠宇は軽く睨みつけた。
「近所に住んでる特権、使わせてもらうわ。お前といると、飽きねーから」
「充槻?」
「どんなに口説こうがキスしようが抱こうが、水沢勇樹は手に入らねーって分かった・・・悪かったよ、振り回して」
充槻が両手を挙げた。
「水沢が、どーしてもイヤだって言うなら、俺は消えるよ。でも、構わないっていうなら、俺は水沢の後ろを守る」
「・・・」
「オンナの背中なんか見るつもりなかったけど、水沢なら、いい」
「充槻・・・」
「どうする?」
それは、初めて二人の間の選択権が悠宇に渡った瞬間だった。
ややってから、悠宇は軽くため息をついた。
「言ってなかったけど、充槻のこと、嫌いじゃないから」
その顔は、水沢 勇樹の顔だった。
力強い瞳が、まっすぐに充槻を見ていた。
「・・・上等だよ」
あとがき
おわった〜ε- ( ̄、 ̄A) フゥー
こんなに長くなるとは予想だにせず・・・本当に、終わってよかったと思いました。
昨年、久しぶりに書き始め(仕事中に・汗)今年はアップのために加筆し、ずいぶん楽しい時が過ごせました。
でもまだもちろん、書き足りないわけで(笑
次は何を書こうかと、悩み中であります。
まあ多分、このままだと麟と悠宇の話が濃厚と思いつつ、他のキャラの話も書きたかったり(汗
もしもリクエストがあれば、お聞かせください・・・考慮します。
とりあえず、予想以上に長かったcrosswiseにお付き合いくださり、ありがとうございました。
そんな視線をつけつつ、充槻は気づいた。
本気になれば、こんな状況から簡単に抜け出せるはずだろうが、わざとそうしないでいる事を。
そして、それを逆手に間合いをつめた。
「水沢」
笑みを浮かべたまま、唇を寄せる。
が、鼻先が触れ合うほどの距離で止め、充槻はそのまま悠宇を見つめた。
短い沈黙の後、ずっと顎を引いて硬く瞳を閉じていた悠宇は軽くため息を漏らすと、観念したかの様に、一度空けた瞳をゆっくりと閉じた。
その様子を見て、充槻は左腕に一時体重を預け、悠宇の左側に腰を下ろすと、そっと右手で頬に触れる。
そして、充槻はゆっくりと唇を重ねた。
「・・・なぁ」
唇を離してから、先刻と同じで鼻先が触れ合うほどの距離で、充槻は悠宇に話しかけた。
「水沢・・・抱かせろよ」
「え?」
その瞬間、悠宇の瞳が大きく開かれた。
「いいだろ?初めてってわけでもねーんだし」
「・・・」
「俺と一回ヤった位で、何か減るわけでもねえし」
「・・・だめ」
そう言うと、キスの間指一本すら動かさなかったその手で、充槻の体を押し返した。
「やっぱな・・・そう言うと思った」
充槻はくすりと笑うと、すばやく左手で悠宇の両手首を絡め取ってから押し倒すと、その両手首を頭の上に押さえ込んだ。
「!」
わずかに動揺したその表情を見ながら、充槻はさらにくすりと笑った。
「言わなかったっけ?無防備すぎるって」
「・・・」
「ちょうどいいけどさ」
くすくすと笑いながら、空いている右手を悠宇のTシャツの下に滑り込ませた。
「やっ」
悠宇の体が強張る。
「まだ室田のことが忘れられない?」
「違うって!」
まるでいたずらでもしているかの様に、悠宇の反応を見ながら、そっと体のラインを充槻はなぞった。
「じゃあ?」
軽く唇を重ねた後、充槻は意地悪く聞く。
「・・・」
軽く唇をかみ締めながら充槻に視線を送る悠宇の表情を見て、ふと、問う。
「あのさ・・・室田の前に、何人いた?」
「?」
「室田、何人目?」
「なんにんめ?」
その表情から、まったく意図が伝わってないのが手に取れた。
「まぢ?」
一瞬真顔になったかと思うと、充槻はくすくすと笑い始めた。
「以外・・・俺、もっとヤりまくってるタイプなのかと思ってた」
さらにくすくすと笑う。
「室田が初めてのオトコ?それからヤってもない?あ・・・松原も手ぇ出してないんだ」
「・・・」
「あ。否定もしないわけね」
充槻の態度は、おかしくて仕方がないといった感じで、悠宇の首筋に顔を埋めながらくすくすと笑い続けた。
ひとしきり笑ってから顔を起こすと、そっと悠宇の左頬をなぜた。
「水沢勇樹って、こんな可愛い女だったんだ」
にこにこと上機嫌で笑みを浮かべる充槻。
「どういう意味よ?」
「ん?」
充槻の表情が、さらに優しさを増したように感じた。
「無防備で、ガードが甘くて、男に従順で・・・こんなに可愛いとはね」
そう言うと、首筋に唇を這わせた。
「室田もばかだよな・・・こんないい女、手放すなんて」
首筋の、見えないような場所にひとつだけ赤い華を咲かせると、充槻は悠宇の顔を正面から見下ろした。
そして、捕らえていた両手首を離して両腕で悠宇の体を抱きしめると、耳元で囁いた。
「帰さねぇ、からな」
「・・・だから、だめだって言ったのに」
全身の力が抜け、つぶやくように言った悠宇の目からは、涙が零れ落ちた。
そして、3学期最後の登校日の朝。
いつもの時間にマンションをでた悠宇は、玄関の正面の路上にバイクを停めていたその人物を見て、固まった。
「充槻・・・」
「よ」
あの日から、テスト中もテスト休み中も、二人は会わなかったにも関わらず、以前とまったく変わらない表情で、充槻は片手を挙げた。
「どーしたの?」
「どーしたもこーしたも、お姫様の送り迎え」
にこりと笑うその表情には、少しだけ以前と何か変わったような錯覚を覚えた。
「拒否る理由、あんのかよ?」
「別に・・・」
「そんなに警戒すんなよ。変なコト、しねーって」
「当たり前」
悠宇は軽く睨みつけた。
「近所に住んでる特権、使わせてもらうわ。お前といると、飽きねーから」
「充槻?」
「どんなに口説こうがキスしようが抱こうが、水沢勇樹は手に入らねーって分かった・・・悪かったよ、振り回して」
充槻が両手を挙げた。
「水沢が、どーしてもイヤだって言うなら、俺は消えるよ。でも、構わないっていうなら、俺は水沢の後ろを守る」
「・・・」
「オンナの背中なんか見るつもりなかったけど、水沢なら、いい」
「充槻・・・」
「どうする?」
それは、初めて二人の間の選択権が悠宇に渡った瞬間だった。
ややってから、悠宇は軽くため息をついた。
「言ってなかったけど、充槻のこと、嫌いじゃないから」
その顔は、水沢 勇樹の顔だった。
力強い瞳が、まっすぐに充槻を見ていた。
「・・・上等だよ」
あとがき
おわった〜ε- ( ̄、 ̄A) フゥー
こんなに長くなるとは予想だにせず・・・本当に、終わってよかったと思いました。
昨年、久しぶりに書き始め(仕事中に・汗)今年はアップのために加筆し、ずいぶん楽しい時が過ごせました。
でもまだもちろん、書き足りないわけで(笑
次は何を書こうかと、悩み中であります。
まあ多分、このままだと麟と悠宇の話が濃厚と思いつつ、他のキャラの話も書きたかったり(汗
もしもリクエストがあれば、お聞かせください・・・考慮します。
とりあえず、予想以上に長かったcrosswiseにお付き合いくださり、ありがとうございました。
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