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オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
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 2学期の中間テストが終わって一息、というある夕方。
 寒くもなく暑くもない気温のため、公園で特に理由もないままに集まった。



 話の内容は「中間がどうの」だとか「嵐山の連中がどうの」だとか、ツキナミなネタだ。
 あーでもないこーでもないと言っていると、
 「ぐぅ」
 と、誰かのお腹が鳴った。
 「あ、ごっめーん」
 正義が頭をぼりぼりと掻いて誤魔化す。
 「昼メシ食べたんだけどさー」
 とは言え、お互いまだまだ育ち盛りだ。
 「まあ。多少スキマはあるよなぁ」
 珍しく、充槻がぽつりと賛同した。
 「いい加減、夕飯の時間じゃねーのか?」
 「食欲の秋?」
 悠宇が少し、首を傾げた。
 「正義が読書の秋のわけ、ねーし」
 「だな」
 「あ、麟ヒドイ。軽く傷つく」
 そうは言うが、顔はへらへらと笑っている。
 「何食べたい?」
 何の気なしに、悠宇は聞いた。
 「肉!焼き肉!」
 がしっと小ぶりを握りしめ、正義は答えた。
 「吐くほど焼き肉、食いたい!」
 「悪くねーなぁ」
 何故かまた、充槻が賛同した。
 「麟は?」
 「まあ、たまには炭火とかで食いたい」
 お家焼き肉も悪くはないが、においが残るがネックであまりしていないのは確かだ。
 「うーん?」
 悠宇が軽く首を捻ること数秒・・・不意に携帯を取り出し、どこぞに電話をかけ始めた。
 「「「?」」」
 男3人は一瞬顔を見合わせた。
 そして通話を終えた悠宇が振りかえった。
 「充槻。言うとおりに運転してくれる?」
 「あ?」
 悠宇は充槻の運転付きでここに来た。
 「ま、いーけど」
 「じゃあ、2人はついてきて」
 「「はあ」」
 要領の得ないまま、充槻は悠宇を後ろに乗せ。麟と正義はそれぞれ自分の原チャリで、その後をコガモの様について行った。

 悠宇の指示でたどり着いたのは、とある閑静な住宅街の一角だった。
 駐車スペースがある家の前にそれぞれバイクをとめると、悠宇はすたすたとその家に入って行った。
 「いらっしゃいませ、お嬢様」
 「「「はあ?」」」
 初老の男性が深く腰を折りながら言った台詞に、男3人は固まった。
 「急にわがまま言ってすみません」
 「ムシかよ、をい」
 充槻がすかさず突っ込むが、悠宇は当然のごとく返事をしなかった。
 「どうぞ、こちらへ」
 その男性の先導について行く悠宇の後ろを、やはり3人は大人しくついて行く。
 「水沢さんって、お嬢様なの?」
 「らしい」
 「見えないんだけど、俺」
 正義と充槻は、こそこそ小声で話しながら歩を進める。
 両脇にはドアしかない廊下を通り、通された個室の中を見て、ようやっとここがどこかを理解した。
 「「「焼き肉屋?」」」
 テーブルの真ん中にある熱源が、それを物語る。
 「隠れた名店、とかってヤツ?」
 正義が麟と充槻を振り返る。
 「知らね」
 充槻が一刀両断する。
 「焼き肉食べたいって言わなかった?」
 椅子を引いてもらいながら、悠宇はあっさりと言い放った。
 「言いましたけど・・・」
 「ファミレスじゃない所でご飯してもいいかな?と思ったんだけど」
 というわりには、あまりの説明のなさに閉口する。
 「神崎様には、いつもご贔屓にしていただいてます。どうぞ、ごゆっくりお食事をなさってください」
 「「「・・・」」」
 そしてまた、3人で顔を見合わせる。
 「俺たち、ただの高校生ですけど」
 正義が言うと、にっこりとほほ笑まれた。
 「分かっております。ですからもちろん、アルコール類はお出ししません」
 「出世払いでいいから」
 悠宇は、本気とも冗談ともつかない表情で、けろりと言ってのけた。
 「ちげーだろ」
 高校生のお財布の中身など、たかが知れている。
 けれども、文句言いつつも、充槻も悠宇の隣に座った。
 「・・・どーにかなんだろ」
 巨大なため息をついてから、麟はすたすたと悠宇の向かいの席に腰かけた。
 「どーにかなる、はずだよねぇ」
 少し不安を抱えつつも、悠宇が自分たちにひどいことをするわけはないと安堵しながら、正義は空いている席に座った。

 おしぼりとお水とお通しが、まず出された。
 「好きなもの、頼んでね」
 メニューはない、と悠宇は付け加えた。
 「はい!俺、カルビ食いたい」
 正義が真っ先に言った。
 「あとは?」
 「「・・・」」
 基本、麟も充槻も食事に対しては文句が少ない。
 出されたものは、よっぽど口に合わないものじゃない限り、残すことはなかった。
 「じゃあ、適当に持ってきてください」
 「かしこまりました」
 初老の男性が深々と頭を下げて、部屋を出て行った。
 「水沢って、こーゆー店でメシ食うんだ?」
 充槻が口を開く。
 「知り合いのお店、って言ってた」
 「信宗さんが?」
 と、麟。
 「うん」
 こくりと頷く。
 「たまに2人で来て、ご飯してた」
 「水沢さんは、焼き肉好きなんですか?」
 「うーん?普通、かなぁ」
 「普通、ですか?」
 「たまに食べたい」
 「ま、これでも一応オンナだからな」
 「一応、が余計じゃない?」
 そんなこんなを話していると、お肉が登場した。
 「ぅわ、いい肉」
 麟の目が細くなった。
 一緒に、野菜とサンチュもついてくる。
 「どうぞ、お召し上がりください」
 「はーい!いっただっきまーす!」
 入店した時の不安顔はどこやら?正義はうれしそうに箸を持った。

 「どうぞまた、お越しください」
 「ご馳走様でした」
 悠宇はニコリと笑って、正義はそれ以上の笑みで頭を下げた。
 「大変楽しいお食事をしていただけた様で、こちらも満足です」
 にこにこと言うが、間違いなく、この店で断トツにうるさく騒がしい客だったはずだろう。
 「ありがとうございました」
 もう一度頭を下げた悠宇に習って3人も軽く頭を下げ、店を後にした。
 「でもマヂで、うまかった」
 充槻の口調からも、満足な雰囲気が漂っていた。
 「確かにいい肉だった」
 麟も納得の様だった。

 「みんなで焼き肉するの、いいね」

 「「「?!」」」
 男3人の視線がざざっと悠宇に集中すると、一瞬だけ、悠宇は目を丸くした。
 「みんなでご飯するの、楽しいね」
 その笑顔が、3人にとっては最高のデザートになった。





あとがき

 えーとまあ、ただ単に、私が職場の人と焼き肉に行くことになり・・・心の中で温めていたものを出して見ました。

 まあ、ああ見えても一応悠宇はお嬢様なので、おいしいお店はご存知です。
 正確に言うと、信宗さんが、ですが。
 焼き肉屋に見えない焼き肉屋って、隠れた名店的でよさそうかな?と。

 こいつらで焼き肉やったら、大騒ぎでしょうねぇ。
 楽しそうだけど、焼き肉奉行しちゃう私は、食べれないかも(ノ_・。)

 値段は・・・もちろんヒミツであり、悠宇はもちろん誰にも請求しませんでしたとさ。
 チャンチャン
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