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オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
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 ぱんぱんと手を払ってから右手を腰に当てると、臣人はいつもの台詞をはいた。
 「一昨日きやがれ」
 自慢げに言う臣人の背中を眺めながら、勇樹はあからさまにイヤそうな顔をした。
 その隣で、正は右手を顔に当て、がっくりとうな垂れた。


 土曜日の午後。
 寮から買い物に出た3人・・・というか、臣人は「犬も歩けば」よろしく、その連中に出くわした
 街中を歩いていた3人に、近所の高校生(推定)がガンを飛ばしたのだ。
 勇樹と正は相手にしなかった(正確には、勇樹は気づかなかった)が、臣人はそれを同じ様に返し、
 「ぁんだ、てめぇ?」
 と、向こうからつっかかってくるハメになったのだ。
 そんなコトは日常茶飯事だ。
 臣人としても、一応そこそこ相手は選んでいる。
 いかにもヤバい連中は、相手にしない・・・その怖さを、知っているからだ。
 とはいえ、敵を作る才能に溢れている事には変わりない。
 そうでなくても「嵐山の松原」と言えば有名であることを、本人は自覚しているようでしていない。
 結局手を上げ、相手を地面とお友達にさせると、満足そうな笑みを浮かべた。
 そしてその後姿をみて、一緒にいた勇樹と正はため息をついたのだった。

 「せんぱーい。もう、相手にすんの止めてってば」
 「るっせ」
 寮へ引き返す道すがら、2人がかりで文句を言われている臣人は機嫌が悪くなり、身長差からくる仕方のない歩幅を無視してずかずかと歩き、勇樹は小走りに近い歩調で歩きながら声をかけた。
 「相手増やすの、やめよーよってば」
 「いーだろ、どーでも」
 「よくない」
 勇樹は軽く頬を膨らませた。
 「俺もいい加減、うんざりなんですけど」
 ぼそりと呟いた正の言葉を受けて、勇樹は
 「ほらぁ」
 と追い討ちをかけた。
 「もう先輩と出歩くのやめる」
 「これからは、俺と2人で外出しような、勇樹」
 「うん」
 「をい!」
 2人の意気投合ぶりに、臣人は思わず足を止めた。
 「なんのイヤガラセだよ!」
 「どっちが、ですか?」
 「っつ・・・」
 勇樹の鋭い視線に、さすがの臣人も顔を引きつらせた。
 この、自分より20センチ近く背の低い子犬のような後輩が、見かけに反した事を平然とやってのけるのを充分すぎるほど知っていた。
 「先輩と外出すると、2回に1回は喧嘩に巻き込まれる」
 「俺も臣人のお守りは飽きてきた」
 「正!同室だろ!」
 「だからだよ」
 「!?」
 「連帯責任って、俺には都合の悪いことだから」
 「・・・」
 同室の者は連帯責任・・・それ故、正はかなりの迷惑をこうむっているのだ。
 「これからは、臣人の買い物は俺たちがするから。要件聞いたらベッドに縛り付けて、2人で出かけるか」
 「美作先輩を監視につけるとか?」
 「ナイス・アイデア、勇樹」
 「をい!」
 「じゃ、喧嘩買うの止めてください」
 「う・・・」
 年齢的には、臣人は勇樹の先輩だ。
 だがしかし・・・実質的なポジションは勇樹の方が上なのだ。
 自分から喧嘩をふっかけ、5分とたたずに負けた。
 それも、大勢の前で。
 「嵐山のケンカ No1」の座が勇樹に渡り、結果、臣人は変なところで逆らえないのだ。
 「・・・努力します」
 臣人は、小さな声でそう返した。

 寮に戻り、臣人は不貞寝をし、正は勇樹の部屋にいた。
 そして、
 「ちょっと言い過ぎたかな?」
 と、2人で軽く反省していた。
 「まあ。臣人もかわいそうなんだよ」
 目の前に広げたお菓子をつまみながら、正は言った。
 「?」
 「臣人って三男なんだけど、兄貴達がすごいんだよ」
 「すごいって?」
 勇樹は首を傾げた。
 「6つ上と9つ上だったかな?臣人はおもちゃだったらしい」
 「おもちゃ?」
 「プロレスだのなんだのの技かけられたりとか、生傷絶えなかったらしい・・・まあ、本人の言うことだから多少大袈裟だろうけど」
 「・・・」
 一人っ子の勇樹には、イマイチぴんとこなかった。
 「臣人は、兄貴達に喧嘩で勝つために空手を習ったって。だから特に、年上につっかかる・・・負けず嫌いって言えば、聞こえがいいけど」
 言われてみれば、臣人は、明らかに年下で勝ちが見えている様なタイプは相手にしない。
 年上の、ちょっと無理かな?と感じさせる様な相手には、絶対に引かない。
 「嵐山じゃあ、簡単に押さえつけられないから、臣人はのびのびしてんだろうけど」
 「・・・」
 「けど、ストッパーがいないと暴走するだろうけどね」
 そういうと、正はくすりと笑った。
 「ま。絶対に兄貴達には勝てないだろうけどね」
 「どーして?」
 「ふつーじゃないから」
 「?」
 「臣人の実家、ヤクザだから」
 「え・・・」
 さすがの勇樹が絶句した。
 「だから、兄貴達の気合の入り方とか違うんだよ」
 「・・・」
 勇樹のコメカミに、冷や汗が流れた。
 「小さな組らしいから、一応って話だけど」
 「そう、なんだ」
 「でもまあ、すぐに喧嘩買うのは迷惑だけど」
 「うん」
 こくりと頷く。

 そんな事があってから、約1ヵ月後。
 臣人と近所のコンビニへ行くだけだというのに、また、面倒に巻き込まれた。
 「・・・」
 勇樹は色々と考えたが、すぐに言葉が出てこなかった。
 相手が、最初から臣人と自分を標的にしていたからだ。
 そうなったそもそもの原因は、臣人ではあったが。
 結局、最終的には
 「やだなぁ」
 という言葉しか、思いつかなかった。

 それから10分後。
 臣人は両膝に手を当て、深呼吸をした。
 「つっかれた」
 額に薄く汗を張り付かせている臣人の足元には、もちろん、地面とお友達になった相手が転がっていた。
 「先輩」
 薄手のパーカーを脱ぐと、勇樹は臣人の方を振り返った。
 「帰ろうよ」
 「おう」
 そう返してから、反動をつけて体を起こした。
 そして、意識のない相手に向かって言った。
 「「一昨日きやがれ」」

 ??

 臣人は、その言葉が二重奏だったのに気づいて、慌てて勇樹の方を見た。
 その視線の先にいた勇樹は、いつもの様にけろりとした表情で立っていた。
 「先輩?」
 「なんか言ったか、勇樹?」
 「別に」
 臣人は、なんとも言えない気持ちで勇樹を一瞥した。
 そして・・・。
 「帰るぞ」
 「うん」
 勇樹が自分の後ろを素直についてくるのを確認してから、臣人はその場を後にした。






あとがき

 これは、nobodyknows+の「Hero's Come Back!!」を聞いて思いついた話。
 歌詞と内容とは、ぜーんぜん関係ありません。
 この曲のイメージって言うか感じが「ああ、臣人だわ」って思いました。

 うちのキャラの中で、たぶん一番やんちゃなのは、臣人だと思う・・・どいつもこいつも、十分にやんちゃですけど。
 でも臣人が、一番手がつけられないキャラなのには違いない。
 少しでも優位に立ちたい負けず嫌いで、もちろん暴走しがち。
 で、正がストッパーです。

 更新頻度が落ちているので、あんまり呼ばれていないキャラ 臣人を出しました。
 勇樹と臣人(嵐山の連中)との馴れ初め話とか、いつになったら書けるんでしょうね、私・・・設定が薄っぺらくて、なかなか難儀しております。

 でも、お楽しみいただければ幸いです。
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こんばんは
ご無沙汰しています。
すっかり朝晩涼しく(<寒く)なり、暑がりの私も長袖を着るようになりました。
変なこだわりなんですが、秋に長袖を着るのは「負け」たようで、風邪っぽくならない限り半袖で頑張ってしまいます。で、先日から案の定風邪っぽくなってしまいました…。
年甲斐もなく、変なこだわりですよね。

さて、あまりお見かけしないキャラで登場しましたね。実家がヤクザとはビックリです。でも勇樹には頭が上がらない部分があるなんて、可愛いです。

>更新頻度が落ちている
まぁまぁ、そんな気にしないでください。かく言う私も週1回になりました。なかなか神が降りてこないんですよ、眠気に負けてます。
お互いにユルユルいきましょう。
紅梅 2009/10/14(Wed)23:10:49 編集
Re:こんばんは
紅梅さん、本当にいつもいつもコメントありがとうございます。
コメント欄見ると、まるで愛の交換日記の様ですわ(笑

>変なこだわりなんですが、秋に長袖を着るのは「負け」たようで
私はさくさく長袖着ます・・・自宅では半袖ですが。
私が半袖で寒いと感じると、20度以下と分かり、ペットのためにヒーターつけるので。

今回の話は変化球で臣人です。
実家が土建屋なので、そういうところはそういう感じのようですよ。

>お互いにユルユルいきましょう。
ありがとうございます。
神が降りてきても、その分仕事が圧迫されることがあるので、気をつけないと。
体と同じく、お互い無理せずがんばりましょうね
【2009/10/15 09:50】
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