オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
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目の前においてあったグラスの中の水を一気に飲み干してから、
「はあー」
と、充槻は盛大なため息をついた。
「まぢ、死ぬかと思った」
「笑いすぎだっつーの」
麟がそれを、即座に突っ込んで冷ややかな目で見つめた。
「おめーが悪ぃんだよ、桜井!」
「え!俺?!」
「おめーがくだらねぇコト言うからだ!」
「え~。八つ当たりじゃん」
「どこが!」
強い口調で言われ、正義は
「ひどい」
と、ぽつりと言った。
「お前だって賛同したろ?水沢とヤらないオトコはいねーって」
「まあ」
こくりと頷く。
「水沢さん美人だし、スタイルいいし。水着姿、サイコーだったし」
思わず、正義の顔が緩んだ。
「ウエスト細ぇし、胸あるし」
「そう!華奢なくせに胸ありますよね」
「あれは、E位だろ」
「・・・んで、お前はそんなこと知ってんだよ」
鋭い視線と共に、麟はその言葉を放った。
麟にしてみれば、面白くない。
自分の付き合っている女の批評をされているのだ。
そうでなくとも、充槻や正義は悠宇のことになると眉尻が下がるのだ。
「Eだと」
それを知ってから知らないでか、充槻はあっけらかんと言った。
「へぇぇ」
充槻の言葉が半分は誘導尋問であったのだろうと、正義は思った。
「をい!」
「なんだよ」
「なんでお前が、悠宇のサイズ知ってんだよ!」
「見りゃ分かる」
「テキトーな事言いやがって」
麟の顔には『うそをつくな』と書いてある。
「お前とは違うんだよ・・・それに」
「?」
「抱いたことあるから」
「「!!」」
その場が、充槻の一言で局地よりも瞬時に凍った。
が。
当の本人は、その反応を想定していなかったらしく、思わず眉をしかめた。
「・・・あ?」
びしっと固まった麟を見てから、その次に正義を見る。
そして、ややあってからため息をつくと同時に口を開いた。
「そーゆーイミじゃねーよ、ばぁーか」
充槻は麟を鼻で笑った。
「抱きかかえた、か?正確な日本語は」
「・・・」
麟は、いまだに疑わしい視線を送っている。
「お前も知ってるだろ、桜井」
「へ?」
急に自分に振られ、正義は間抜けな声を出した。
「2年位前の春のことだよ」
「え?あ?・・・ああ」
思い当たるフシがあるらしく、すぐに納得し・・・それをみて、麟も少し表情を和らげた。
「水沢がケガして、運んだんだよ」
「悠宇が、ケガ?」
「俺を庇って、な」
その理由に納得すると同時に、充槻の横顔を見て、麟は言葉が出なかった。
それのことを、いまだに悔やんでいる様に見えたからだ。
そして・・・充槻はその時のことを、ぽつりぽつりと話し始めた。
春・・・とは言っても、まだまだ肌寒いある夜。
悠宇と充槻と正義の3人は、10数人を相手にした。
数は大したことはなかったが、卑怯にも相手はエモノ(武器)を持っていた。
エモノを使わずに喧嘩をするルールなど、存在していない。
刃物でなかったのは幸いだったが、そもそもエモノを使うことを考えていない3人にとっては、それはもちろん不利だった。
そんな状況下の中、不意に正義が叫んだ。
「成田!」
「!?」
その声で思わず振り返った充槻の視界には、相手のうちの一人が金属バットを振りかぶった姿が目に入った。
ヤバイ!
そう思った次の瞬間、何かに充槻の視界は遮られ、それと同時にいやぁな音がした。
「水沢!!」
充槻との間に、悠宇が割って入ったのだ。
「をい!」
右肩を押さえて片膝を付いた悠宇を見て、充槻は一瞬にして頭に血が上った。
エモノなど忘れ、間合いを考えることもなく相手の膝を蹴った。
それがその卑怯な行為への致命傷となり・・・そして、その相手が頭格だったらしく、退散のきっかけになったが、充槻にとってはそんなことに気を配っている暇はなかった。
「水沢!」
右肩を押さえ、痛みに耐えながら俯いている悠宇の傍による。
そして、相手の大半がいなくなったのを見届けてから、正義も悠宇の下へとやってきた。
「水沢さん、大丈夫ですか?救急車、呼びますか?」
悠宇の傍にしゃがみ、そう言いながら携帯を取った正義のその手を、悠宇自身がとめた。
「・・・へいき、だから」
「でも・・・」
「その代わり、頼み、ある」
「はい?」
「携帯、取って」
悠宇はたいていチョークバッグを持っており、そこに携帯が入っているのを知っていた。
「はい」
「平気、じゃねーだろ!水沢」
充槻は、逆ギレしていた。
その姿は、正義が初めて見る充槻のうろたえた姿だった。
「水沢さん」
言いながら正義は、携帯をそっと差し出した。
「ありがと」
ぼそりと小さな声で言うと、悠宇はどこかへ電話をかけた。
「あの・・・頼み、あるんだけど」
痛みをこらえながら通話する悠宇を、2人は見守るしかなかった。
それから二言三言言葉を交わすと、悠宇は電話を切った。
電話を切ってから軽くため息をつくと、悠宇はすこし、顔を上げた。
「みつき」
「水沢・・・」
ようやっと上がった顔に、充槻はそっと手を添えた。
「頼み、あるんだけど」
「何?」
まるで自分がケガをしているという様子でない悠宇に対し、充槻は強い口調で返事をした。
「実家につれてってくれる?」
「あ?」
「お願い」
「はあ?病院行けよ!」
「いいの、平気だから。お願い」
「!」
なにか・・・反論をしたそうな表情を作った充槻だったが、ややあってから、ため息をひとつ。
「・・・わかった」
口ではそう言うが、表情には不満の色がありありと出ていた。
「じゃあ、今日は解散。連絡するから」
と、正義に向かって言った。
「え・・・でも」
「大丈夫、充槻がいるから」
痛みに耐えながらも薄く笑いを浮かべた悠宇を見て、正義は軽く唇を噛んだ。
「分かりました。ちゃんと連絡、くれますね?」
「うん」
「じゃ。成田、水沢さんを頼む」
「了解」
そして正義はおとなしく帰宅し、充槻は悠宇をバイクの後ろに乗せて、悠宇の実家へと向かった。
とちゅうのあとがき
えーと・・・なんでこの話が続くんだ?と、本人が突っ込みいれてます。
設定的には、悠宇が一人暮らしをはじめた後の話。
充槻は高2から高3になった頃。
なんつーかある意味、悠宇と付き合うようになっても麟が充槻との事を容認している背景話、でしょうね。
ちなみに、Riverstream orchidとはシュンランのことで、花言葉は「素直な仕草」
なぜか後半もありますが、お楽しみいただければ幸いです。
「はあー」
と、充槻は盛大なため息をついた。
「まぢ、死ぬかと思った」
「笑いすぎだっつーの」
麟がそれを、即座に突っ込んで冷ややかな目で見つめた。
「おめーが悪ぃんだよ、桜井!」
「え!俺?!」
「おめーがくだらねぇコト言うからだ!」
「え~。八つ当たりじゃん」
「どこが!」
強い口調で言われ、正義は
「ひどい」
と、ぽつりと言った。
「お前だって賛同したろ?水沢とヤらないオトコはいねーって」
「まあ」
こくりと頷く。
「水沢さん美人だし、スタイルいいし。水着姿、サイコーだったし」
思わず、正義の顔が緩んだ。
「ウエスト細ぇし、胸あるし」
「そう!華奢なくせに胸ありますよね」
「あれは、E位だろ」
「・・・んで、お前はそんなこと知ってんだよ」
鋭い視線と共に、麟はその言葉を放った。
麟にしてみれば、面白くない。
自分の付き合っている女の批評をされているのだ。
そうでなくとも、充槻や正義は悠宇のことになると眉尻が下がるのだ。
「Eだと」
それを知ってから知らないでか、充槻はあっけらかんと言った。
「へぇぇ」
充槻の言葉が半分は誘導尋問であったのだろうと、正義は思った。
「をい!」
「なんだよ」
「なんでお前が、悠宇のサイズ知ってんだよ!」
「見りゃ分かる」
「テキトーな事言いやがって」
麟の顔には『うそをつくな』と書いてある。
「お前とは違うんだよ・・・それに」
「?」
「抱いたことあるから」
「「!!」」
その場が、充槻の一言で局地よりも瞬時に凍った。
が。
当の本人は、その反応を想定していなかったらしく、思わず眉をしかめた。
「・・・あ?」
びしっと固まった麟を見てから、その次に正義を見る。
そして、ややあってからため息をつくと同時に口を開いた。
「そーゆーイミじゃねーよ、ばぁーか」
充槻は麟を鼻で笑った。
「抱きかかえた、か?正確な日本語は」
「・・・」
麟は、いまだに疑わしい視線を送っている。
「お前も知ってるだろ、桜井」
「へ?」
急に自分に振られ、正義は間抜けな声を出した。
「2年位前の春のことだよ」
「え?あ?・・・ああ」
思い当たるフシがあるらしく、すぐに納得し・・・それをみて、麟も少し表情を和らげた。
「水沢がケガして、運んだんだよ」
「悠宇が、ケガ?」
「俺を庇って、な」
その理由に納得すると同時に、充槻の横顔を見て、麟は言葉が出なかった。
それのことを、いまだに悔やんでいる様に見えたからだ。
そして・・・充槻はその時のことを、ぽつりぽつりと話し始めた。
春・・・とは言っても、まだまだ肌寒いある夜。
悠宇と充槻と正義の3人は、10数人を相手にした。
数は大したことはなかったが、卑怯にも相手はエモノ(武器)を持っていた。
エモノを使わずに喧嘩をするルールなど、存在していない。
刃物でなかったのは幸いだったが、そもそもエモノを使うことを考えていない3人にとっては、それはもちろん不利だった。
そんな状況下の中、不意に正義が叫んだ。
「成田!」
「!?」
その声で思わず振り返った充槻の視界には、相手のうちの一人が金属バットを振りかぶった姿が目に入った。
ヤバイ!
そう思った次の瞬間、何かに充槻の視界は遮られ、それと同時にいやぁな音がした。
「水沢!!」
充槻との間に、悠宇が割って入ったのだ。
「をい!」
右肩を押さえて片膝を付いた悠宇を見て、充槻は一瞬にして頭に血が上った。
エモノなど忘れ、間合いを考えることもなく相手の膝を蹴った。
それがその卑怯な行為への致命傷となり・・・そして、その相手が頭格だったらしく、退散のきっかけになったが、充槻にとってはそんなことに気を配っている暇はなかった。
「水沢!」
右肩を押さえ、痛みに耐えながら俯いている悠宇の傍による。
そして、相手の大半がいなくなったのを見届けてから、正義も悠宇の下へとやってきた。
「水沢さん、大丈夫ですか?救急車、呼びますか?」
悠宇の傍にしゃがみ、そう言いながら携帯を取った正義のその手を、悠宇自身がとめた。
「・・・へいき、だから」
「でも・・・」
「その代わり、頼み、ある」
「はい?」
「携帯、取って」
悠宇はたいていチョークバッグを持っており、そこに携帯が入っているのを知っていた。
「はい」
「平気、じゃねーだろ!水沢」
充槻は、逆ギレしていた。
その姿は、正義が初めて見る充槻のうろたえた姿だった。
「水沢さん」
言いながら正義は、携帯をそっと差し出した。
「ありがと」
ぼそりと小さな声で言うと、悠宇はどこかへ電話をかけた。
「あの・・・頼み、あるんだけど」
痛みをこらえながら通話する悠宇を、2人は見守るしかなかった。
それから二言三言言葉を交わすと、悠宇は電話を切った。
電話を切ってから軽くため息をつくと、悠宇はすこし、顔を上げた。
「みつき」
「水沢・・・」
ようやっと上がった顔に、充槻はそっと手を添えた。
「頼み、あるんだけど」
「何?」
まるで自分がケガをしているという様子でない悠宇に対し、充槻は強い口調で返事をした。
「実家につれてってくれる?」
「あ?」
「お願い」
「はあ?病院行けよ!」
「いいの、平気だから。お願い」
「!」
なにか・・・反論をしたそうな表情を作った充槻だったが、ややあってから、ため息をひとつ。
「・・・わかった」
口ではそう言うが、表情には不満の色がありありと出ていた。
「じゃあ、今日は解散。連絡するから」
と、正義に向かって言った。
「え・・・でも」
「大丈夫、充槻がいるから」
痛みに耐えながらも薄く笑いを浮かべた悠宇を見て、正義は軽く唇を噛んだ。
「分かりました。ちゃんと連絡、くれますね?」
「うん」
「じゃ。成田、水沢さんを頼む」
「了解」
そして正義はおとなしく帰宅し、充槻は悠宇をバイクの後ろに乗せて、悠宇の実家へと向かった。
とちゅうのあとがき
えーと・・・なんでこの話が続くんだ?と、本人が突っ込みいれてます。
設定的には、悠宇が一人暮らしをはじめた後の話。
充槻は高2から高3になった頃。
なんつーかある意味、悠宇と付き合うようになっても麟が充槻との事を容認している背景話、でしょうね。
ちなみに、Riverstream orchidとはシュンランのことで、花言葉は「素直な仕草」
なぜか後半もありますが、お楽しみいただければ幸いです。
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この記事にコメントする
痛い・・
こんばんは。
うわ・・肩で嫌な音がしたの?
なぜかそこに反応してしまいました。
悠宇ちゃん女の子なのに・・。
朝晩の冷え込みで紅葉が進んでいますね。
この時期からクリスマスにかけてが、一番好きな季節です。花粉ないし。寒いし。
近所のお寺のイチョウもだんだん黄色くなってきました。うちの方は12月くらいが最盛期ですね。
寒いので、風邪にはご用心召されませ^^
うわ・・肩で嫌な音がしたの?
なぜかそこに反応してしまいました。
悠宇ちゃん女の子なのに・・。
朝晩の冷え込みで紅葉が進んでいますね。
この時期からクリスマスにかけてが、一番好きな季節です。花粉ないし。寒いし。
近所のお寺のイチョウもだんだん黄色くなってきました。うちの方は12月くらいが最盛期ですね。
寒いので、風邪にはご用心召されませ^^
Re:痛い・・
紅梅さま
いつもいつも本当にありがとうございます。
>うわ・・肩で嫌な音がしたの?
>悠宇ちゃん女の子なのに・・。
あはは・・・ケガの多い子なのでね。
設定上、ここでケガしてくれないと困るので、我慢してもらいました。
>花粉ないし。
ここに思わず笑っちゃいましたw
>寒いので、風邪にはご用心召されませ^^
ありがとうございます。
紅梅さんは体力勝負なお仕事されてますので、本当に気をつけてくださいね
いつもいつも本当にありがとうございます。
>うわ・・肩で嫌な音がしたの?
>悠宇ちゃん女の子なのに・・。
あはは・・・ケガの多い子なのでね。
設定上、ここでケガしてくれないと困るので、我慢してもらいました。
>花粉ないし。
ここに思わず笑っちゃいましたw
>寒いので、風邪にはご用心召されませ^^
ありがとうございます。
紅梅さんは体力勝負なお仕事されてますので、本当に気をつけてくださいね