オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
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「大丈夫か、水沢?」
そっと頬に手を添える。
悠宇は軽く右肩を動かしてから、軽く笑った。
「うん・・・平気」
安堵のため息をつくと、充槻は畳んでおいてあったパーカーを悠宇の肩にかけた。
「ありがと」
再び、にこりと笑った。
信宗もその笑顔を見て安堵し・・・そして、そっとその場を去った。
「水沢・・・」
「?」
「なんで、俺を庇った?」
「え?」
きょとんとした表情を作る。
「何で俺を庇ったんだ」
少しだけ、口調をキツクした。
「・・・」
「水沢」
返事を促す。
「・・・何も」
「何も?」
「何も考えてなかった」
「は?」
今度は、充槻が目を丸くした。
「庇おうとか、思ってなかった。気付いたら、動いてた」
無意識だったのか?と思うと、充槻は何も言えなくなった。
そんな、思わず固まった充槻を見て、悠宇がバツの悪そうな顔をした。
「お前なぁ」
ため息と共に、充槻は言った。
「大将がケガすんじゃねーよ」
「でも・・・」
そう言い澱んだ後で少し何か考え、そして、充槻を正面から見つめた。
「充槻が同じ状況にいたら、どうしてた?」
「あ?」
「あの時の私が、充槻だったら?」
「・・・まぁ、同じコトしてたかもな」
「でしょ?」
「殴られるのが桜井だったら、違ったかもしれねーけど」
笑いながら答えつつ、充槻は理解した。
自分が、このオンナの傍にいることを・・・そして、他の連中も傍にいることを。
「うそばっかり」
くすりと、悠宇が笑う。
「あのなぁ」
つられて、充槻も思わず笑った。
そして・・・そっと、悠宇の体を抱きしめた。
「・・・ケド。頼むからケガすんじゃねーよ、大将」
「充槻もね」
「わーってる」
柔らかい体を抱きしめながら、安堵とは別の何かに心が満たされるのを、充槻は感じていた。
「・・・つーワケ」
そこまで話してから、充槻はため息をついた。
もちろん、必要以上に悠宇を抱きしめたことだけは、言わずにいた。
「で?」
「俺は帰って、桜井にメールして。んで、次の日水沢に会ったら、ケロッとしてて軽くむかついた」
「水沢さんぽいよね」
視線はノートとテキストに釘付けのまま、正義が言う。
「確かに、やるかも」
何事もない様な表情をした悠宇の顔が、麟の頭の中をかすめた。
「らしいっちゃ、らしいケド、大将がケガされると困んだよ。ジカクねーだろ、アイツ」
「その辺も、水沢さんぽい」
正義が軽く笑う。
「俺も、水沢さんにケガさせるほど庇われたい」
「バーカ」
即座に充槻は返した。
「胃が痛くなって、寝れねーぞ」
「ふーん。そうだったんだ?」
「「は?」」
何気のない正義の突っ込みに、充槻と麟の2人が、思わず固まった。
「成田にも、良心ってあったんだ」
ぼそりと麟が言う。
「てめー、今、なんつった?!」
「なにも」
そう言いおいて、麟は何食わぬ顔をしてフリードリンクへのコーナーへと向かうために席を立った。
その背中を見ながら、充槻は思わず
「疾風、むかつく」
と、つぶやいた。
正義は視線を上げつつくすくすと笑い、そんな正義を苦々しい表情で充槻はにらみ付けた。
オマケ
それから数日後のある日。
夕飯が終わってお茶を入れるために悠宇がキッチンに立っていた時のこと。
少しづつ色付いていくポットの中の紅茶を眺めていると、タバコを吸いにレンジフードの下に来たのであろう麟に、抱きすくめられた。
「なに?」
「何も」
言いつつも、麟はそのまま悠宇を抱きしめていた。
今日は珍しく、悠宇は襟ぐりの広く開いたTシャツを着ていた。
「あのさ」
「ん?」
「右肩って、ケガしやすいんだって?」
「え?」
慌てた様子で、顔が振り向く。
「・・・あ。この前?」
瞬時に、先日のことを思いついたらしい。
「ちょっと、クセになってるらしくて」
「ま、よくあることだよな。捻挫とかもそうだし」
「うん」
「気をつけろよ。2人も、それなりに心配してた」
「大丈夫、滅多にないから」
「そーだろうけど・・・」
つぶやきながら、いつもよりも多めに覗いている肩に、麟はそっと口付けた。
『名誉の負傷』をしたであろう、右の肩に。
あとがき
えーっと、突発的に書き始めたこの話も、どうにか終了。
題名の「Riverstream orchid」はシュンランで、花言葉は「素直な仕草」
んー。まあ、うちの子供たちは大体、友達思いなんだよね。
それぞれ、それなりの理由や気持ちがあって、相手のことを信じてたりする。
この時の悠宇の場合、なーんも考えてなかった イコール 題名に結びつく。
本当になーんも考えてなくて、気付いたら充槻を庇うカタチになっていた・・・もちろん、後悔もしていない。
そして、悔やんでももらいたくない。
「咄嗟」って、そんなもんだと思う。
そしてこの話は、悠宇が高1で、充槻が高2の終わりの春休みあたりの話。
4月に充槻は出会って、5月に正義とも出会って、夏には一緒に海も行って、一緒にいるのが当たり前の状況になってて・・・この事があって、より悠宇に対する信頼感だとか、アップしていると思う。
この言葉が最適かは分からないけど、二人とも悠宇に惚れ直しちゃってんでしょう。
それと同時に、麟の充槻を見る目もちょっと変わるのも入れ込んでみました。
お楽しみいただけたのなら、幸いです。
そっと頬に手を添える。
悠宇は軽く右肩を動かしてから、軽く笑った。
「うん・・・平気」
安堵のため息をつくと、充槻は畳んでおいてあったパーカーを悠宇の肩にかけた。
「ありがと」
再び、にこりと笑った。
信宗もその笑顔を見て安堵し・・・そして、そっとその場を去った。
「水沢・・・」
「?」
「なんで、俺を庇った?」
「え?」
きょとんとした表情を作る。
「何で俺を庇ったんだ」
少しだけ、口調をキツクした。
「・・・」
「水沢」
返事を促す。
「・・・何も」
「何も?」
「何も考えてなかった」
「は?」
今度は、充槻が目を丸くした。
「庇おうとか、思ってなかった。気付いたら、動いてた」
無意識だったのか?と思うと、充槻は何も言えなくなった。
そんな、思わず固まった充槻を見て、悠宇がバツの悪そうな顔をした。
「お前なぁ」
ため息と共に、充槻は言った。
「大将がケガすんじゃねーよ」
「でも・・・」
そう言い澱んだ後で少し何か考え、そして、充槻を正面から見つめた。
「充槻が同じ状況にいたら、どうしてた?」
「あ?」
「あの時の私が、充槻だったら?」
「・・・まぁ、同じコトしてたかもな」
「でしょ?」
「殴られるのが桜井だったら、違ったかもしれねーけど」
笑いながら答えつつ、充槻は理解した。
自分が、このオンナの傍にいることを・・・そして、他の連中も傍にいることを。
「うそばっかり」
くすりと、悠宇が笑う。
「あのなぁ」
つられて、充槻も思わず笑った。
そして・・・そっと、悠宇の体を抱きしめた。
「・・・ケド。頼むからケガすんじゃねーよ、大将」
「充槻もね」
「わーってる」
柔らかい体を抱きしめながら、安堵とは別の何かに心が満たされるのを、充槻は感じていた。
「・・・つーワケ」
そこまで話してから、充槻はため息をついた。
もちろん、必要以上に悠宇を抱きしめたことだけは、言わずにいた。
「で?」
「俺は帰って、桜井にメールして。んで、次の日水沢に会ったら、ケロッとしてて軽くむかついた」
「水沢さんぽいよね」
視線はノートとテキストに釘付けのまま、正義が言う。
「確かに、やるかも」
何事もない様な表情をした悠宇の顔が、麟の頭の中をかすめた。
「らしいっちゃ、らしいケド、大将がケガされると困んだよ。ジカクねーだろ、アイツ」
「その辺も、水沢さんぽい」
正義が軽く笑う。
「俺も、水沢さんにケガさせるほど庇われたい」
「バーカ」
即座に充槻は返した。
「胃が痛くなって、寝れねーぞ」
「ふーん。そうだったんだ?」
「「は?」」
何気のない正義の突っ込みに、充槻と麟の2人が、思わず固まった。
「成田にも、良心ってあったんだ」
ぼそりと麟が言う。
「てめー、今、なんつった?!」
「なにも」
そう言いおいて、麟は何食わぬ顔をしてフリードリンクへのコーナーへと向かうために席を立った。
その背中を見ながら、充槻は思わず
「疾風、むかつく」
と、つぶやいた。
正義は視線を上げつつくすくすと笑い、そんな正義を苦々しい表情で充槻はにらみ付けた。
オマケ
それから数日後のある日。
夕飯が終わってお茶を入れるために悠宇がキッチンに立っていた時のこと。
少しづつ色付いていくポットの中の紅茶を眺めていると、タバコを吸いにレンジフードの下に来たのであろう麟に、抱きすくめられた。
「なに?」
「何も」
言いつつも、麟はそのまま悠宇を抱きしめていた。
今日は珍しく、悠宇は襟ぐりの広く開いたTシャツを着ていた。
「あのさ」
「ん?」
「右肩って、ケガしやすいんだって?」
「え?」
慌てた様子で、顔が振り向く。
「・・・あ。この前?」
瞬時に、先日のことを思いついたらしい。
「ちょっと、クセになってるらしくて」
「ま、よくあることだよな。捻挫とかもそうだし」
「うん」
「気をつけろよ。2人も、それなりに心配してた」
「大丈夫、滅多にないから」
「そーだろうけど・・・」
つぶやきながら、いつもよりも多めに覗いている肩に、麟はそっと口付けた。
『名誉の負傷』をしたであろう、右の肩に。
あとがき
えーっと、突発的に書き始めたこの話も、どうにか終了。
題名の「Riverstream orchid」はシュンランで、花言葉は「素直な仕草」
んー。まあ、うちの子供たちは大体、友達思いなんだよね。
それぞれ、それなりの理由や気持ちがあって、相手のことを信じてたりする。
この時の悠宇の場合、なーんも考えてなかった イコール 題名に結びつく。
本当になーんも考えてなくて、気付いたら充槻を庇うカタチになっていた・・・もちろん、後悔もしていない。
そして、悔やんでももらいたくない。
「咄嗟」って、そんなもんだと思う。
そしてこの話は、悠宇が高1で、充槻が高2の終わりの春休みあたりの話。
4月に充槻は出会って、5月に正義とも出会って、夏には一緒に海も行って、一緒にいるのが当たり前の状況になってて・・・この事があって、より悠宇に対する信頼感だとか、アップしていると思う。
この言葉が最適かは分からないけど、二人とも悠宇に惚れ直しちゃってんでしょう。
それと同時に、麟の充槻を見る目もちょっと変わるのも入れ込んでみました。
お楽しみいただけたのなら、幸いです。
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Re:あったかい
紅梅さま
いつもいつも、本当にコメントありがとうございます。
>最後のキッチンでのシーン、いいですね。
>心がほんわかしました。
そうですか?
舞台になっている時期は真夏なんですけどねw
>あったかくしてお過ごしくださいね。
はい・・・紅梅さんも、先日痛くした足を養生してくださいませ。
いつもいつも、本当にコメントありがとうございます。
>最後のキッチンでのシーン、いいですね。
>心がほんわかしました。
そうですか?
舞台になっている時期は真夏なんですけどねw
>あったかくしてお過ごしくださいね。
はい・・・紅梅さんも、先日痛くした足を養生してくださいませ。