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オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
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「どーした?」

「どーした?」
後から入ってきた室田が、ベッドルームの入り口から数歩のところで立ち止まっていた悠宇の頭を、ぽんぽんと叩く。
「俺、歯磨いてくるから」
そう言うと、にっこり笑ってからバスルームへと姿を消した。
悠宇は、言われるがままに素直にベッドに入る事が、はたしていいものかどうなのか、分からずにいた。
とりあえず、ベッドには入らずに窓辺へと行く。
少しカーテンを開けて外を見るが、夜景は悠宇の瞳に映っていないのと同じだった。
「どうしよう・・・」
悠宇は心の中で何度もつぶやく。
ホテルの手配から何から、室田にまかせっきりだった自分にも非はある。
それにしても、である。
「どうした?」
気づくと、室田がそばに来ていた。
「ん?明日も楽しみだなぁって」
「そうだね」
悠宇の右隣にきて、そっと肩を抱く。
「シーに来たの、初めて」
「実は、俺も」
お互いに顔を見合わせて、くすっと笑う。
そして、室田は少し空いたカーテンを閉めた。
と−−−。
「きゃ」
突然、室田が悠宇を抱き上げ、そのままベッドの方へ歩を進める。
「おろして!」
「ダーメ」
いたずらっ子の様な笑みを浮かべ、そっと悠宇の額にキスをする。
そして悠宇をベッドの上に寝かせると、その上から覆いかぶさった。
「あの・・・ちょっと」
今さらとは思うものの、自分のおかれている状況を考えて両肘を使って後ずさりする。
しかし、逃げれば追われ、室田との距離も室田の態度も変わらなかった。
「室田・・・」
「なに?」
「近くない?」
「そう?」
体が枕にあたり、それ以上後ずさりできなくなったと分かると、悠宇は軽く息を呑んだ。
室田の視線は、その間もずっと悠宇に注がれていた。
つと、その視線が下にそれ、右手でネックレスのヘッドの部分へと注がれ、右手で包み込む。
「さっき・・・」
「え?」
「お返しくれるって、言ったよね?」
「・・・」
「欲しいものがある」
「な、に?」
「ずっと、欲しかった」
真剣なまなざしに、さすがの悠宇もぴたりと動かなくなる。
「水沢が欲しい」
一瞬、悠宇は我が耳を疑った。
「え・・・」
「水沢が、欲しい。5年間、ずっと好きだった」
ネックレスを持っていた手を離し、そっと、頬をなぜる。
「水沢を抱きたい」
そう言うと、慣れた手つきで、悠宇のバスローブのベルトをするりと解いた。
「あの・・・でも」
「でも?」
その真剣なまなざしに気圧される。
「今、俺の手の中にいるのに・・・もう手放せるわけないだろ」
悠宇がその言葉に驚いていると、その隙をついて唇を重ねてきた。
「ん・・・」
いつものように軽くやさしく何度も口付け、その間の吐息とともに何度も名前を呼ぶ。
気の済むまで重ねていた唇をゆっくりと離し、悠宇を見下ろすと、頬が赤く染まっていた。
「勇樹」
そっと頬をなぜると、悠宇は恥ずかしそうに顔を外した。
そのせいで露になった右の首筋に、そっと唇を這わせる。
「あ・・・」
悠宇の体がびくりと反応し、押し返そうと右肩に添えられた左手が抵抗をみせる。
「んっ」
首筋に一つだけ赤い印を刻むと、室田はもう一度悠宇の顔を正面から捕らえた。
「勇樹」
「むろ・・・た」
少し潤んだ悠宇の瞳をみて、室田は心の中でこの思いは止められないものだと確信する。
「勇樹・・・あいしてる」
「!」
そして・・・。

「んー」
ゆっくり目を開けると、冬の弱い朝の光がカーテンの隙間から少しだけさし、ベッドサイドのライトが、わずかに部屋を照らしているのが目にはいる。
次に感じたのは、完全に痺れきっている左腕。
「あ?」
視線を左腕に送ると、目に入ったのは小さな幸せ。
「そっか」
思わず笑みをこぼしながら、自分に体を預けて軽い寝息を立てている愛しい女の髪を、そっとなぜる。
「ん・・・」
一瞬、起こしてしまったかと焦ったが、身じろぎをすると、また軽い寝息を立て始めた。
それを見て、喜びを含んだため息をつくと、今度こそ起こさない様に注意しながら、左腕を抜いた。
「まだ早いし、シャワーでもすっか」
欠伸を一つしてから、室田はベッドから抜け出した。

「・・・ん」
ゆっくりと起き上がってから、冬ならでは室温の寒さと、何も来ていない自分の姿に気づくと、悠宇は慌ててシーツを手繰り寄せた。
その手元を見ると、シーツで隠し切れなかった胸元に、いくつかの印が刻まれていた。
と−−−。
「あれ?勇樹?」
不意に、声をかけられる。
シャワーを浴びたその声の主は、上半身は裸のままタオルで濡れた髪を拭きつつ、ベッドに近寄って腰かける。
「おはよ」
「!」
返事はなく、悠宇は赤くなり、さらにシーツを胸元に抱き寄せた。
「どうした?」
「あの・・・だって」
ほの暗い部屋の中で、ぼんやりと白く明るい肌の悠宇のそばに近寄る。
「あの・・・」
さらに体を寄せ、左手で寝乱れた髪を撫ぜた後で頬に触れ、そっと顔を自分の方に向けさせる。
「室田」
「瞳、でいいよ」
そして顔を寄せ、軽く唇を重ねる。
「おはよ」
「おはよう、ございます」
顔を赤くしたままで視線を落とした悠宇を見て、くすりと笑う。
「まだ6時前だよ。目、覚めちゃった?」
問いかけに、こくりと頷く。
「いつも、このくらいの時間に起きてるから」
「そっか」
そう言うと、悠宇の体を引き寄せ、抱きしめた。
「勇樹」
優しく言う室田は、幸せで包まれていた。
5年間思い続けた悠宇を、やっと・・・やっと手に入れた幸福感で満たされていた。





途中のあとがき

・・・というわけで、期待通りの展開だと思いますが。
でも「どさちゅん」で(笑
一応、自分PCの中にはR指定な部分も存在はしてますが、それを世に出すのは気持ち的にはばかられます(照
なので、こんなカンジで。

このTDRの二日間の話は、次の章で終わります。
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