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オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
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俺と桜井は、疾風のいない間に水沢をプールに誘うことに成功した。

俺と桜井は、疾風のいない間に水沢をプールに誘うことに成功した。
嵐山の連中に水沢を取られるのはシャクだったし、夏休みで混んでいようが、そんなコトはカンケーない。
その下準備として、日程が決まったとたんに、俺は月野へ連絡をした。
「突然、なに?」
向こうの声がトゲトゲしい。
「頼みがあってさ」
「で、何?」
「水沢をプールに連れて行こうと思ってさ。で、新しい水着、買うようにハメてもらえないかと思って」
そう言うと、ややあってから、くすくすと笑い声が聞こえ始めた。
「誰と行くの?」
「俺と桜井と3人で」
「3人だけ?」
「嵐山の連中に水沢取られたくねーから」
「麟は?」
「疾風は用事があるってさ」
「かわいそ〜仲間ハズレ」
そう言いながら、くすくす笑ってた。
「いーんだよ、アイツは」
「なんで?」
「水沢と四六時中一緒だし。どーしても水着姿が見てぇなら、土下座でも何でもして、見せてもらえばいーんだよ、一緒に住んでんだし」
「あはは」
マジ笑いしているのが、聞こえる。
「やあねぇ。充槻って、ホントにいい性格してるわね」
「そりゃどーも」
相変わらず、くすくすとした笑い声が続く。
「ついでに言うと、行き返りの洋服もかわいいの買うとサイコーなんだけど」
「はぁ〜い。頑張りま〜す」
満面の笑みが、手に取れるように分った。
そして最後に、
「お礼を期待してま〜す。成功報酬でいいけどね」
と、しっかりつけてきた。

そして当日。
桜井と2人で水沢を迎えに行くと、ワンピースの裾をひらりとなびかせてやってきた。
ノースリーブで、セーラーカラーの紺のカットソー生地のワンピース。
柔らかい生地が体にまとわりついて、さり気なく体のラインが見える。
「夏っていいね〜」
さり気なく桜井がつぶやいた。

いざプールについて、先に着替えが終わって待っていると、去年とは違う水着を着た水沢が出てきた。
黒と白のギンガムチェックで、いわゆるビキニにスカートが付いた3点セット。
トップスのちょうど中央にはリボンが付いていて、スカートは途中からフレアーになっていた。
偶然に見つけたというチェックのシュシュで、髪も簡単にまとめてあった。
「ふ〜ん」
ハッキリ言えば、ビキニなんてモノは下着と大差ない。
去年の水着はホルターネックだったが、今回のはブラジャーと激しく近い。
目の保養、にしかならない。
これは月野を褒めないと・・・と思っていると
「成田・・・夏ってサイコーだね」
「あ?」
「ってゆーか、水沢さんが、かな?」
と言って、桜井がにんまりと笑った。
「月野の妹も、な」
その言葉に一瞬考えた後、ぽんと手を打った。
「策士」
「これ位のヤクトク、あってもいーだろ?」
「確かに」
にっこり笑った桜井が、俺の方に腕を回してきた。
「やっぱ、夏っていいね〜」
「どーかん」

「ちょっと休んでいい?」
ちょうど太陽が真上にあって、水辺じゃなきゃやってられないような時間に、水沢はそう言った。
「水沢さん、大丈夫ですか?」
「うん。でもちょっと、日差しがキツイ」
「まあ、暑いからな」
当たり前だと思いつつも、そんな台詞しか、出てこなかった。
「ちょっと休憩。ついでにトイレにも行くから、2人はてきとーしてて。この辺にいるから」
にこりと笑って、水沢はプールからあがった。
そして水沢は、流れるプールにいた俺たちに、にこにこと笑いながら手を振って去っていった。
「大丈夫かな、水沢」
「一応、オンナだからな。俺たちより体力ないんだろ?」
「かな?」
「じゃあ、1周したら探すか」
「そうだね」
「心配だし」
「ナンパが、ね」
桜井が苦笑いを浮かべた。
去年の海での出来事を、忘れてはいないらしい。
「まあな」
それからプールを1周して、水沢と分かれた辺りに戻ってきて、俺たちはプールからあがった。
「どこにいるんだろ?」
「人、多すぎ」
そうカンタンに見つかりそうにはなかった。
「じゃあ、手分けして探そう」
それがイチバン効率がいい。
結果的に桜井が水沢を見つけて、帰ってきた。
あ・・・手ぇ握ってやがる。
水沢を見つけて連れてきた桜井は、開口一番こう言った。
「一人にしないほうがいい」
「あ?」
その言葉を聞いて、水沢は苦笑いをした。
そして、その事情を聞いた。

「あつ」
当たり前だけど、プールにいるとは言え暑くて・・・水の中にいるのは快適なんだけど、日差しが遮られてないのは、ちょっとツライ。
それをてきとーな言い訳にして、悠宇は日陰に避難していた。
「神崎さん」
「?」
腰を下ろして一息ついていると、不意に声をかけられて。
顔を上げると、二人の男が立っていた。
「俺、隣のクラスの原田っていうんだけど」
「俺は田中。知ってる?」
「んー。なんとなく」
言われて見れば、いたような気がした。
原田と田中は、麟や正義と同じ中学の出身で、同じ鷹ノ台に進学した二人だった。
2人・・・だけかは知らないが、日陰にいる悠宇を見つけ、これ幸いと話しかけてきた。
「神崎さん、1人?」
「友達と」
「でも今は、1人なんでしょう?」
「うん。ちょっと、トイレに行くのに、別行動したから」
めんどー。
そう思いながらも、悠宇は笑みを浮かべて対応していた。
そしてややあってから、その2人の後ろから近づいてきた正義の姿が、目に入った。
悠宇は是幸いと、軽く胸の辺りで手を振った。
「?」
「あ、一緒に来た友達?」
そんな事を言いながら、2人が振り返った時だった。
「ここにいたんだ」
にこりと笑って声をかける正義の姿を見て、2人が固まった。
「?」
その意味が、悠宇には分からなかった。
「探したよ」
「ごめんね」
「これだけ人がいれば、仕方ないし」
「神崎さん、一緒に来た友達って・・・」
「俺だよ」
「「え?」」
正義の顔を見つつ、2人の顔が引きつった。
そして次の瞬間、正義の目つきと雰囲気ががらりと変わった。
「よぉ、原田に田中」
「桜井・・・」
2人の表情が更に引きつった。
「俺のツレに、気安く声かけてんじゃーねーよ」
その雰囲気には、悠宇も少なからず驚いた。
しかし、次の瞬間には正義はいつもの表情に戻った。
「行こ」
にっこり笑って、右手を差し出した。
「・・・うん」
悠宇が左手を差し出すと、しっかり握って引き寄せた。
それにあわせて、悠宇は立ち上がる。
「じゃあな」
その瞬間だけ表情を変えて2人を睨むと、そのまますたすたと歩き始めた。
「ねえ、桜井」
引っ張られた形になった悠宇は、あわてて歩調を合わせた。
それが分って、正義は歩調を緩めた。
「あんな威嚇、するんだ?」
くすくすと笑いながら言う悠宇に、桜井は軽く笑った。
「びっくりしました?」
「別に。ただ、ああいう雰囲気見たことなかったから」
「すいません」
「でも、あんな威嚇するようなタイプじゃなかったら、充槻なんかと知り合いのはずないもんね」
「ま。そうですね」
正義は頭をかいた。
「和泉中の桜井と疾風って、有名なんだってね?」
「らしいです」
苦笑いするその表情には、
「勘弁してください」
と書いてあった。
「ちょっと、かっこよかった」
「ちょっとだけ、ですか?」
照れたように言う正義に、悠宇はくすりと笑った。
「・・・だいぶ」
「マジですか?」
「ちょっと御幣があるけど、惚れ直したに近いかな?」
「大マジですか?」
返事の変わりに笑顔を返すと、同じように笑顔が返された。
「俺、会うたび水沢さんの事、惚れ直しますよ?」
「お世辞」
「いやいや、マヂで。こんなにかっこいい人、いないっすよ」
「かっこいい、なの?」
少し有里を真似て、すねた表情を作ってみる。
「え〜と」
視線を彷徨わせる。
「成田だったら、いいオンナの一言でしょーけど。なんつーか、すごい男前ないい女ですよ」
「日本語おかしくない?」
「そーですけど、分ってくれますよね?」
「一応ね」
にこりと笑うと、正義も笑顔を返した。
「俺、一生水沢さんに付いて行きますから」
「でも、たまにはさっきみたいに先を歩いていいからね」
「はい!」
そして浮かべた笑顔は、今日一番の笑顔になった。





あとがき

初の桜井くんの話し・・・ですが、出だしは充槻だ(笑

時期も時期なので、夏のお話。
悠宇と正義が高2で、充槻高3の夏休みの設定です。
麟は京都に帰省中ででてきません。
充槻と有里で結託するシーンは楽しいですね。
いいコンビだ。
そして、違う意味でいいコンビの充槻と正義。
基本的に、正義はストッパー的な役割であり、情報収集に長けてます。
ムードメーカー(*^-^)

タイトルはやはり、ご贔屓歌手の曲よりただきました。
明るくポップな感じが、正義にいいかなぁ?と。
いつも、そんなんばっかりですけどね(大汗
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