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オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
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 その日は、コレでもないっていう位に、晴れていた。

 その日は、コレでもないっていう位に、晴れていた。
青い空をバックに、淡い桜の花びらが散って、まさに入学式。
それとは裏腹に、麟はため息をついた。
一応もう一度その掲示板を見直してから、思わず口にした。
「またかよ?」
「2度あることは3度あるって言うけどな」
俺の左隣で、要が言った。
「4度目もアリってか?」
「・・・って言うか、腐れ縁だね」
右から割ってはいってくる、優一。
「腐ってる位なら、切れろよ」
中学3年間とあわせて今年で4年目・・・麟はまた、林 優一と速水 要と一緒のクラスになった。
高校になってまで。
「また、出席番号も連番か」
そう言う要の表情には「当然だよな」と書いてあった。
「変わり映え、しねーんだけど?」
「まあまあ。そー言わずに」
へらへらと笑いながら、優一が麟の方に腕を回してきた。
「また1年間よろしくって事で」
「事で」
反対側から要も腕を回してきた。
「も・・・どーでもよくなってきた」
麟は、うーんざりした表情でうなだれた。

疾風 麟が都立鷹ノ台高校を選んだ理由は、近いから。
それと、都立は学費が安いから。
中1の時に母親が亡くなってから、叔母の琴音の家に居候していて、私立に行く気なんかおきるはずもなく。
担任もそれに反対せず、難なく合格して、行き先と制服が変わっただけの日々が始まろうとしていた。

集合時間である9時になると、チャイムが鳴った。
その音につられてなんとなく席についていると、スーツを着た男が入ってきた。
「ほらほら、席に着け!」
出席簿で教卓を叩くノリは、体育会系だ。
全員が着席したのを見届けると、その男は口を開いた。
「俺がこのクラスの担任、片桐だ。担当は古文。1年間、よろしく」
「古文ってイメージじゃねーよ」
優一がこっそりと言ってきた・・・確かに。
その後出席を取り、ざっと今日の予定を話し、入学式のために体育館へと移動した。
そして体育館の前で入場待ちをしていた時、だった。
不意に片桐が
「こら!戻れ!」
と、大声を上げた。
その声の方を見ると、1人の女子が、体育館の端のコンクリの上を小走りで走っている後姿が目に入った。
その先には、2人の男。
同年代だと思われるその男の1人は長身で、ガタイがよかった。
もう1人はその男よりも小柄で、少し幼い雰囲気があった。
その2人に、その女子は近づいていった。
遠くて聞こえないものの、2言3言言葉を交わすと、小柄な方から何かを手渡され、それを受け取っていた。
そして軽く手を振ると、こちらに戻ってきた。
「何やってるんだ」
遠慮のない片桐に、出席簿で軽く頭を叩かれていた。
「うちのクラス?」
「みたいだね」
要の言葉に、優一が返した。
「けっこー美人じゃん」
名前順で前の方らしく、自分の場所に戻るその姿を見て、優一はにこにこと笑った。
「そーゆー問題か?」
「そーゆー問題」
悪びれずに、にこりと笑う。
「神崎、っつったっけ?」
ぼそりと言うと、優一が突っ込んできた。
「なんで名前知ってんの?」
「あ?」
追求の目。
「あ〜。さっき、俺、呼ばれたじゃん?」
話し始めると、要も耳を傾け始めたのが分った。

それは、集合時間の20分ほど前。
女の教師が来たかと思うと、
「疾風 麟くん、いますか?」
と言われ、呼び出された。
ついていくと、その先は校長室だった。
中に入ると、そこには2人の生徒と、教師が3人。
いかにも真面目そうな、メガネをかけた男子生徒。
そこそこ美人な、女子生徒。
教師のうちの1人は、もちろん、机の向こうに腰掛けた校長。
案内してきた教師は、中には入らなかった。
穏やかな表情を浮かべた校長が、口を開いた。
「まずは、入学おめでとう」
示し合わせたでもなく、なんとなく3人で頭を下げた。
「時間があまりないので単刀直入に言いますが。君たち3人のうちの1人に、入学式で答辞をお願いしたいので、来てもらいました」
ああ、なるほどね。
「・・・俺、遠慮します」
即座に麟が言うと、その場にいた全員の視線を集めたのが痛いほどに分った。
もちろん、覚悟の上だ。
「ええと・・・疾風くん、だったね。どうしてかな?」
「目立ちたくないんで」
即答すると、麟がそう言った理由を全員が分ったような雰囲気が漂った。
今時の高校生ならば、茶髪など珍しくはない。
しかし、鷹ノ台高校は基本的に大人しい生徒が多く、男子の茶髪率は高くはない。
祖父が日本人でない麟は、もともと明るい髪の色に加えて肌の色も白く、おまけに瞳の色もブルー・グレー。
なにもしなくても、麟は目立つのだ。
それを暗黙の了承としたのか、
「そうですか。では、仲谷くんか神崎さんにお願いできますか?」
という校長の言葉に、2人がなんとなしに視線を合わせた。
ややあってから、
「女子、がやった方がインパクトありませんか?」
と、にこやかに仲谷が言った。
遠まわしに「やりたくない」と、解釈できないくもない言葉。
「神崎さんは?」
「どちらでも」
まるで他人事のように、冷静にそう言った。
「では、神崎さんにお願いします。答辞の原稿は、式の前に届けます」
にこりと校長は笑い、3人は解放された。

「同じクラスだとは思ってなかったけど」
「ふーん」
「でもなんで、麟が候補になったんだろ?」
優一が突っ込む。
「知らね」
「そーいや、麟。卒業式の答辞も断ったろ?」
「あのなぁ」
今さら、とも思う。
「俺がやると思うか、要?」
「「まさか!」」
答えは、二重奏。
「なら、聞くなよ」
思わず麟は、くすりと笑った。





途中のあとがき

1章目を終わらせて・・・すごい不安になってきた。
終わるのか?(||゜Д゜)ヒィィィ!(゜Д゜||)

分ってたんですが・・・十分すぎるほどに分ってたんですが、麟と悠宇の話って長いんだよね。
遠回りしすぎだから。
やっぱり・・・この話を書くのはムボーだったのかと、今、がんがん警鐘が鳴ってます。

今日の言葉「後悔先に立たず」
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