オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
その夜。
その夜。
突然先輩に呼び出され、充槻と一緒にまた、喧嘩に巻き込まれた。
血の気の多い連中と一緒にいれば、ケンカに巻き込まれることは自然と多く、自分が出て行かなきゃならなくなるのも必至で。
終わった後にしゃべったり・・・などしていたせいか、帰宅したときには夜中の3時を回っていた。
2人を起こさない様にリビングの明かりだけをつけ、救急箱を取り出してソファに座った。
「こーゆー小傷って、なくならないよなぁ」
思わずため息をつきながら、消毒を出して手に取った・・・その時、だった。
「おかえり」
「え?」
まさかかけられると思っていなかった声に、思わず身をすくめる。
「ケガ?」
ゆっくり振り返ると、部屋から出てきいたのは疾風だった。
「ごめん。起こすつもりなくて・・・ただちょっと、一応、消毒しておこうと思って」
季節的に半そででむき出しになった腕に小さな切り傷やあざが幾つかと、砂地に手を付いてできた右手の平と左肘が軽く擦り剥けただけ。
ただ、それだけ。
「貸しな」
ソファをまたいでの向かいに座ると、ほとんど無理やりに救急箱を奪った。
そして、マキロンをコットンに含ませると、ケガの箇所を出せとばかり左手を出してきた。
「・・・ごめん」
「いいって」
こんなかすり傷のために。
「お前さ」
「え?」
「女にしてはケガしすぎだよ」
「・・・」
「事情は分かるけど」
一緒に住むようになってからも何度も傷の手当してもらったから、そう言ったのだろう。
消毒を終えてから、少し大きめの傷にはガーゼ、他には絆創膏を張ってくれる。
もう終わったんだ・・・と思い疾風の方を見ると、ふいに左頬に手を伸ばしてきた。
「・・・っつ」
「一発殴られたろ」
改めてマキロンをコットンに含ませると、再び、左頬に手を伸ばしてきた。
「!・・・っつ」
切れていたのだろう唇に、痛みが走る。
「顔なんか殴られんなよ、女なんだからさ」
「ガードはしたんだけど」
ごめん・・・ほんとに。
「はい、終了」
言いながら、疾風はため息とともに救急箱を閉めた。
「本当にありがと。救急箱は、片付けるから」
申し訳なさに、すぐにその場を去りたかった。
視線も合わせずに左手に箱を持ち、体を反転させながら立ち上がろうとした時だった。
「!」
疾風が右腕を掴んできた。
「?」
振り返ると、また、張り詰めたな様な表情をしていた。
こういう事は、この数ヶ月に何回かあった。
「急に身を翻すと引き止められる」事が。
「疾風?」
「神崎・・・」
小さな声で名前が呼ばれると、強く引き寄られた。
一瞬にして、疾風の腕に包まれてしまった。
「疾風?!」
その隣で、不意の事に手を離してしまった救急箱が、がたんと落ちる。
「頼むから・・・」
「え?」
「頼むから、あんま無理すんなよ」
薫くんから変なことを聞いたせいだろうか?
その言葉に、胸が締め付けられた。
そして、薫くんは京都へ帰り、休みの間の平日初日。
いつもの時間に降りていくと、いつもの様に充槻が待っていた。
「よ」
そう言って、充槻は右手を上げた。
「おはよ」
「だりーな、休みの間のガッコーなんて」
うんざりした顔の充槻をおかしく思いつつ、ふと、言ってみる。
「サボる?」
「お前と一緒なら」
思わせぶりな笑顔を浮かべる。
「つーかさ」
「?」
「何、シケたツラしてんだよ」
「え?」
するりと、慣れた手つきで頬に添えられた掌。
「らしくねーって」
「そう?」
らしくない、か。
「そーゆー顔、俺に見せてくれんのは悪くねーけど、他の奴らの前じゃすんじゃねーぞ」
「?」
「俺らがついてけねーだろ、水沢」
水沢・・・か。
思わず視線を落とすと、頬にあった手がするりと肩に回った。
「で?サボる?」
その表情は、サボるの大歓迎と物語っているような気がした。
「やめとく。出席日数足りなくなったら嫌だから」
「ま、それもそうだな。2回もダブったら、シャレになんねーな」
「余計なお世話」
5月のさわやかな風の中、思わず、くすりと笑った。
途中のあとがき
はい。よーやっと、悠宇が麟を本気で意識し始めましたよ(='m') ウププ
悠宇も鈍いですが、鈍いと言うよりは、好きだといわれてもそうだと思わない。
いい言い方をすれば、自意識過剰じゃない。
悪い言い方をすれば、鈍いという設定。
つーか、恋愛フラグが立ち難いんでしょうね。
土壇場まで来て、え?本当だったの?といタイプ。
充槻との「TO・RI・KO」なんか、そのパターン(笑
まあまあ、そんなものですよ・・・あと数回、どうぞお付き合いくださいませ。
突然先輩に呼び出され、充槻と一緒にまた、喧嘩に巻き込まれた。
血の気の多い連中と一緒にいれば、ケンカに巻き込まれることは自然と多く、自分が出て行かなきゃならなくなるのも必至で。
終わった後にしゃべったり・・・などしていたせいか、帰宅したときには夜中の3時を回っていた。
2人を起こさない様にリビングの明かりだけをつけ、救急箱を取り出してソファに座った。
「こーゆー小傷って、なくならないよなぁ」
思わずため息をつきながら、消毒を出して手に取った・・・その時、だった。
「おかえり」
「え?」
まさかかけられると思っていなかった声に、思わず身をすくめる。
「ケガ?」
ゆっくり振り返ると、部屋から出てきいたのは疾風だった。
「ごめん。起こすつもりなくて・・・ただちょっと、一応、消毒しておこうと思って」
季節的に半そででむき出しになった腕に小さな切り傷やあざが幾つかと、砂地に手を付いてできた右手の平と左肘が軽く擦り剥けただけ。
ただ、それだけ。
「貸しな」
ソファをまたいでの向かいに座ると、ほとんど無理やりに救急箱を奪った。
そして、マキロンをコットンに含ませると、ケガの箇所を出せとばかり左手を出してきた。
「・・・ごめん」
「いいって」
こんなかすり傷のために。
「お前さ」
「え?」
「女にしてはケガしすぎだよ」
「・・・」
「事情は分かるけど」
一緒に住むようになってからも何度も傷の手当してもらったから、そう言ったのだろう。
消毒を終えてから、少し大きめの傷にはガーゼ、他には絆創膏を張ってくれる。
もう終わったんだ・・・と思い疾風の方を見ると、ふいに左頬に手を伸ばしてきた。
「・・・っつ」
「一発殴られたろ」
改めてマキロンをコットンに含ませると、再び、左頬に手を伸ばしてきた。
「!・・・っつ」
切れていたのだろう唇に、痛みが走る。
「顔なんか殴られんなよ、女なんだからさ」
「ガードはしたんだけど」
ごめん・・・ほんとに。
「はい、終了」
言いながら、疾風はため息とともに救急箱を閉めた。
「本当にありがと。救急箱は、片付けるから」
申し訳なさに、すぐにその場を去りたかった。
視線も合わせずに左手に箱を持ち、体を反転させながら立ち上がろうとした時だった。
「!」
疾風が右腕を掴んできた。
「?」
振り返ると、また、張り詰めたな様な表情をしていた。
こういう事は、この数ヶ月に何回かあった。
「急に身を翻すと引き止められる」事が。
「疾風?」
「神崎・・・」
小さな声で名前が呼ばれると、強く引き寄られた。
一瞬にして、疾風の腕に包まれてしまった。
「疾風?!」
その隣で、不意の事に手を離してしまった救急箱が、がたんと落ちる。
「頼むから・・・」
「え?」
「頼むから、あんま無理すんなよ」
薫くんから変なことを聞いたせいだろうか?
その言葉に、胸が締め付けられた。
そして、薫くんは京都へ帰り、休みの間の平日初日。
いつもの時間に降りていくと、いつもの様に充槻が待っていた。
「よ」
そう言って、充槻は右手を上げた。
「おはよ」
「だりーな、休みの間のガッコーなんて」
うんざりした顔の充槻をおかしく思いつつ、ふと、言ってみる。
「サボる?」
「お前と一緒なら」
思わせぶりな笑顔を浮かべる。
「つーかさ」
「?」
「何、シケたツラしてんだよ」
「え?」
するりと、慣れた手つきで頬に添えられた掌。
「らしくねーって」
「そう?」
らしくない、か。
「そーゆー顔、俺に見せてくれんのは悪くねーけど、他の奴らの前じゃすんじゃねーぞ」
「?」
「俺らがついてけねーだろ、水沢」
水沢・・・か。
思わず視線を落とすと、頬にあった手がするりと肩に回った。
「で?サボる?」
その表情は、サボるの大歓迎と物語っているような気がした。
「やめとく。出席日数足りなくなったら嫌だから」
「ま、それもそうだな。2回もダブったら、シャレになんねーな」
「余計なお世話」
5月のさわやかな風の中、思わず、くすりと笑った。
途中のあとがき
はい。よーやっと、悠宇が麟を本気で意識し始めましたよ(='m') ウププ
悠宇も鈍いですが、鈍いと言うよりは、好きだといわれてもそうだと思わない。
いい言い方をすれば、自意識過剰じゃない。
悪い言い方をすれば、鈍いという設定。
つーか、恋愛フラグが立ち難いんでしょうね。
土壇場まで来て、え?本当だったの?といタイプ。
充槻との「TO・RI・KO」なんか、そのパターン(笑
まあまあ、そんなものですよ・・・あと数回、どうぞお付き合いくださいませ。
PR
この記事にコメントする
甘酸っぱい^^
「疾風」という文字に目を奪われてしまいました。
うふふ。
☆;:*:;☆;:*:;☆;:*:;☆;:*:;☆
若いときの恋って、いいですね。
ほんのりと甘くて、少し恥ずかしくて、胸がキュンとなるような、そんな気持ち。
そんなピュアな頃を思い出しました。
うふふ。
☆;:*:;☆;:*:;☆;:*:;☆;:*:;☆
若いときの恋って、いいですね。
ほんのりと甘くて、少し恥ずかしくて、胸がキュンとなるような、そんな気持ち。
そんなピュアな頃を思い出しました。
Re:甘酸っぱい^^
おはようございます・・・本当にいつもいつも、こめんとありがとうございます。
>「疾風」という文字に目を奪われてしまいました。
ふふふ・・・いい苗字をつけたものだと、自画自賛しております(笑
>そんなピュアな頃を思い出しました。
ふふふ・・・幸せな気分に浸れたのであれば、幸いです。
でも、私自身はそんな経験ないんですよねぇぇ(大汗
部活や習い事に忙しくて、そんなヒマねぇよ!って感じでした。
でもどうにかこうにか書いてますが、お楽しみいただけているのなら、幸いです。
>「疾風」という文字に目を奪われてしまいました。
ふふふ・・・いい苗字をつけたものだと、自画自賛しております(笑
>そんなピュアな頃を思い出しました。
ふふふ・・・幸せな気分に浸れたのであれば、幸いです。
でも、私自身はそんな経験ないんですよねぇぇ(大汗
部活や習い事に忙しくて、そんなヒマねぇよ!って感じでした。
でもどうにかこうにか書いてますが、お楽しみいただけているのなら、幸いです。