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オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
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 2月上旬のある休日。

 2月上旬のある休日。
 急に友里から電話が掛かってきて、ある写真を探すハメになった。
 思いを巡らせてから、きっとそこだろうと確信しつつクローゼットの上段を開けてから、閉口した。
 同じような箱が、ずらり・・・。
 同じ企画の箱での整理は確かにしやすかったが、雑誌での知識を鵜呑みにするのもよくないわけか・・・と実感する。
 でも、探さないわけにはいかない。
 脚立に乗りながら一箱ずつ確認していると、
 「水沢?」
 という声が聞こえた。
 「疾風?なに?」
 「コンビニ行くけど、何かいるかと思って」
 近づいてくる気配に、そのまま返答して、気付く。
 「コンビニ?」
 っていうか、入ってきてる?
 そう思って、手を止める。
 「疾風!勝手に入ってくんなって言っ・・・あ!」
 無理やりに体をねじって疾風の方をみようとして・・・バランスを崩した。

 「水沢っ!」
 疾風が慌てて駆け寄ってくるのが分った。
 「・・・いて」
 よりによって、右肩から落ちるなんて。
 思わず、右肩を押さえる。
 「大丈夫かよ」
 「大丈夫じゃない」
 「え?」
 「痛い・・・もともと、古傷があるから余計に痛い」
 「え・・・」
 「っつ・・・疾風が勝手に入ってくるからだ」
 右肩を押さえたまま、睨み付ける。
 「あ・・・悪ぃ」
 その形相に気おされてか、疾風は素直に謝った。
 「まあ、探していたものは見つかったけど」
 バランスを崩したときに持っていた箱は、予想通り、写真の入った箱だった。
 それはよかったけど、中身をぶちまけてしまった状態を見ると、ため息がでた。
 「早目に整理しときゃよかった」
 思わず言うと、疾風が吹き出した。
 失礼なヤツ・・・そう思いながら睨み付けた。
 「水沢って意外と・・・」
 そのあとの台詞を言わずに、疾風はくすくすと笑って誤魔化した。
 「手伝えよな、疾風」
 それくらい、しろって。
 「はいはい」
 疾風は大人しく、それに従った。
 分けることもせずに、箱に放り込んだ写真。
 まるでシャッフルされたかの様に、見事なくらいにばらばらになっていた。
 あー、片付けなきゃマズイかも・・・そう思いつつ、ふと疾風の方に視線を移した。
 「疾風?」
 手の止まった疾風の方を改めて振り返った時、その手に握られている写真に写っているものが分かると、無意識に手が伸びた。
 去年の夏に、海に行った時に撮った写真。
 それは、疾風も知っているメンツが写っていた。
 特に、桜井が。
 「疾風、返せ!」
 「!」
 とっさに、遠くへ手を伸ばされた。
 「水沢、やっぱり知り合いだったんだな」
 ・・・って、誰と?
 「月野には兄貴がいるから分かるけど。前に、テキトーな事かぬかして誤魔化したけど、やっぱり神崎と知り合いかよ」
 思わず、ぎりっと歯をかみ締める。
 「ま、そうだよな。神崎の親父さんがここの鍵持ってるくらいだからな」
 だから、分かるだろうって?
 「他になに隠してる?」
 疾風に右手で胸倉をつかむまれて、ぐいっと引き寄せられた。
 「水沢!」
 ああ・・・直接聞かないと気がすまないってワケ?
 少したってからため息をつくと、ゆっくりと手を解ながら立ち上がる。
 「鈍いな、疾風」
 「は?!」
 「鈍すぎ」
 言いながら、パーカーの中から隠していた長い髪を出し、軽く束ねていたゴムを解き、2・3回頭を振った。
 そして右手で髪をかきあげてから、にっこりと笑ってみせる。
 疾風の前で低くしていた声を止めて、普通のトーンに戻して言う。
 「もっと早く気づくと思ってたけど」
 「え?あ?・・・神崎?」
 ようやっと。
 ようやっと分かって、おかしい位に呆れた顔をした。

 それから数分後、気分転換にインスタントのココアをいれ、不満そうな顔をしている疾風の前に座った。
 「本当にぜんぜん気づかなかったの?」
 「・・・悪かったな」
 おかしすぎて、くすくすと笑う。
 「まあ、これであれこれ小細工して隠す必要なくなったのは、楽なんだけど」
 制服姿をみられたら、確実にバレるとこだったから。
 「っていうか、水沢って嵐山に通ってたから男じゃなかったのかよ?」
 拗ねた表情のままの疾風は、そう言った。
 「体育の時間に、みたことあるでしょ?」
 体育といえば、夏場は水泳もあった・・・絶対に一度位は、視界に入れているはず。
 「それとも、今ここで脱ごうか?」
 ちょっとだけ、からかってみると、
 「いや、それはいい・・・」
 と、即答してきた。
 「それに、女子校の出身なのバレてるでしょ?」
 クラスの女子にバレていれば、林の耳に入り・・・結果、知っているはず。
 「あ?じゃあ、嵐山は?」
 「小6の時だけ・・・中1の途中で退学したから」
 「退学?」
 「怪我で入院して出席日数足りなくなって、別の学校で1年生からやり直したから、実は一つ年上なの」
 「はあ?」
 あ、それは予想してなかったワケか。
 「学校の連中にいう必要ないでしょ、そこまで。それに、成田が送り迎えするのも、さっきの写真も辻褄が合ってくるでしょ?」
 「まぢかよ」
 疾風は、右手を額に当てた。
 「そういうことで、私が水沢勇樹なのはナイショで」
 有里を真似て、右人差し指を軽く唇にあて、ウインクをする。
 「了解」
 疾風は「お手上げです」のポーズをとった。

 そして、同居しているのが「神崎 悠宇」に変わったことで、疾風の中でゆっくりと変化が起こっていくことなど、まったく・・・まったく予想していなかった。





途中のあとがき

 このシーンも「by and by」と対です。

 いやぁ本当に、我ながら麟も悠宇も鈍いなぁと、カンシンします(・_・;)
 まあ、麟の方がなんだかんだで悠宇のことは気になっているワケですが、悠宇はさっぱりです。
 こんだけ鈍い2人だから、書くと話が長くなるんだとようやっと気づきました。
 ・・・遅すぎ?!Σ(- -ノ)ノ エェ!?

 でもまあ、お楽しみいただければ幸いです。
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