オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
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「んー?」
「んー?」
あるはずのない人の気配を感じてリビングとのドアを開け、一歩踏み出すと
「え?」
という声。
その声の方を振り向くと、見慣れた男が1人、立っていた。
「疾風?」
そこにいたのは、疾風 麟だった。
4月に入学した高校で、偶然クラスが一緒になった疾風。
人目を引く茶色い髪とブルー・グレーの瞳はクォーターだからだと、同じ中学の時からの腐れ縁だと言う林 優一と速水 要から聞いた。
日本人離れした雰囲気と、キレイに整った顔立ち。
似合いすぎるくらいに似合っている、クラスで一番着崩した制服姿。
見た目を裏切って、見知った女子以外とは自分からはほとんど口をきかない硬派な性格。
もらったラブレターは全てゴミ箱行き、呼び出されてもすっぽかすにも関わらず、相変わらず人気は高い。
成績がいいわりには、授業態度はテキトー。
そして、夏休み。
中井高の桜井が追い掛け回されていたのを助けに行った時、合流するより先に桜井を助けたのが、疾風だった。
「和泉中の疾風と桜井」と言えば、近所では有名というのを、後から聞いた。
そして、秋。
信宗さんのせいで、知られたくないことを知られてしまった・・・が、疾風は、そのことは一切口にすることはなかった。
ただ、今のこの状況を疾風が自分の事を「水沢」だと思っているは、逆に幸いなのだと密かに思った。
「疾風・・・どうやって入ってきた?」
キツイ目つきで、徐々に麟の方へと歩み寄る。
「鍵」
ずっと右手に持ったままだったらしい鍵を、見えるように差し出した。
「信宗さんか・・・」
予想通りの答えで、大きなため息をく。
何を思ったか、偶然にプリントを届けに来た疾風を、叔父の信宗は気に入った。
お陰で、余計な事を知った、疾風。
「コーヒー」
「は?」
「コーヒー入れるけど、飲むか?」
「え?」
キッチンの方へと歩きながら、聞く。
しょせん、お坊ちゃん育ちのあの人は、どこか抜けていることが多いのは承知の上。
深く考えずにここの鍵を渡したのは、明らかで・・・それにしてもと思うと、気分転換でもしなければやってられない。
もちろん、やり終わってない宿題に息が詰まっていたのも事実。
そんなことを思いながらキッチンとリビングとの境目まで来て、疾風からの返事を催促してみる。
「疾風、飲むの?飲まないの?」
「あ・・・もらいます」
軽く左手を上げるのを返事にして、キッチンの中へ行きながら携帯を取った。
もちろん、かける相手は信宗さん。
「あ?もしもし?」
『悠宇?』
「今、いい?」
『どうぞ』
仕事中なのか外出中なのか、電話の向こうは少しざわついていた。
「疾風にマンションのキー、渡した?」
『ああ。渡したよ』
思わず、ため息が出る。
『来たのかな?』
「そう」
『あの子なら、悠宇に悪いことはないと思ってね』
「たぶんね」
学校にいる間にも、ある程度の性格は分かる。
『余計な事、だったかな?』
その声が、なんとなく切なそうに聞こえた。
わかってる、わかってる・・・信宗さんが、気を使っていることは。
「ううん・・・ありがと」
そう言うと、向こう側で肩の力が抜けたようなため息が聞こえた。
「また、連絡するから」
『待ってるよ』
心の中で、もう一度だけ「ありがとう」と言って、電話を切った。
電話をしながら支度していたコーヒーは、すっかり出来上がっていた。
「疾風!砂糖とミルクは?」
携帯をポケットにしまいながら、聞く。
「ミルクだけ」
その返事に、軽くうなづく。
ちょうど小腹も空いてきたし、先日買ってまだ残っているクッキーも取り出す。
トレイを持ってダイニングテーブルに行こうとすると、まだ呆然と疾風が立ち尽くしていた。
「座れよ」
「あ・・・はい」
その声に、まだ脱いでいなかったコートを慌てて脱ぎ、一番手近な椅子の背にかけて、その隣の椅子に腰かけた。
手早くテーブルを拭いてから、先に疾風、次に自分という順番でコーヒーを置く。
ミルクを入れたピッチャーとクッキーを置いたお皿をさらに置きながら、自分の座るべき場所を考える。
やっぱり、正面?
そう思い座ってみたものの、なんとなく気恥ずかしくなって何も言わずに先に自分のカップにミルクをいれ、コーヒーを口元に運んだ。
どういうつもりなんだろう、疾風は?
一口飲みながら思う。
「信宗さんから事情は聞いた。俺の部屋はあの奥の部屋だから入るな。上に3部屋、この階に1部屋空いてるから、好きな所使いな。必要なものがあれば、揃えるから」
「はあ」
「宿題やってたら、頭痛くなってきてさ。ちょうど一息つこうと思ってた時だから、よかったよ」
「あの、水沢さん・・・」
「水沢でいい」
疾風の台詞を掠め取るように、言い終わる前に口を挟む。
同級生に、さん付けっておかしいって。
「水沢って、学生だったんだ」
「社会人に見えるかよ?」
「いや・・・あんまり学生ってイメージないし。高校生、なんすか」
「高1だよ」
「え・・・」
疾風は絶句した。
「なに?」
思わず、睨み返した。
「いや・・・同い年に見えないなって」
「悪かったな」
同い年にみえないわけね・・・確かに一つ年上だけど、そんな風に見えるんだ。
「なんだよ」
そんなに呆然とするのって、失礼なんじゃないだろうか?
「え・・・いや、別に」
「ま、よろしく」
カップを口につけたまま左手を伸ばすと、疾風はすんなりと手を差し出した。
途中のあとがき
えええっとぉ・・・やっぱ、これじゃない話を書いた方が?という気持ちが、山盛り(大汗
「by and by」で麟目線を書いたので、対になる悠宇目線を・・・って、安易な発送が悪かったの様です。
って、1話書いただけで言う言葉じゃない気がしますが。
目標は、10話完結。
一応、その予定で線引きをしてあるので大丈夫だとは思いますが。
どうなるのか、全く不明( ・◇・)?(・◇・ )
この章は、麟目線の「by and by」にもあった場面の、悠宇目線バージョン。
目線違うとおもしろかも?と思って、以前「対」として書いたもの。
日の目を見るとは思いませんでしたが(笑)お楽しみいただければ幸いです。
あるはずのない人の気配を感じてリビングとのドアを開け、一歩踏み出すと
「え?」
という声。
その声の方を振り向くと、見慣れた男が1人、立っていた。
「疾風?」
そこにいたのは、疾風 麟だった。
4月に入学した高校で、偶然クラスが一緒になった疾風。
人目を引く茶色い髪とブルー・グレーの瞳はクォーターだからだと、同じ中学の時からの腐れ縁だと言う林 優一と速水 要から聞いた。
日本人離れした雰囲気と、キレイに整った顔立ち。
似合いすぎるくらいに似合っている、クラスで一番着崩した制服姿。
見た目を裏切って、見知った女子以外とは自分からはほとんど口をきかない硬派な性格。
もらったラブレターは全てゴミ箱行き、呼び出されてもすっぽかすにも関わらず、相変わらず人気は高い。
成績がいいわりには、授業態度はテキトー。
そして、夏休み。
中井高の桜井が追い掛け回されていたのを助けに行った時、合流するより先に桜井を助けたのが、疾風だった。
「和泉中の疾風と桜井」と言えば、近所では有名というのを、後から聞いた。
そして、秋。
信宗さんのせいで、知られたくないことを知られてしまった・・・が、疾風は、そのことは一切口にすることはなかった。
ただ、今のこの状況を疾風が自分の事を「水沢」だと思っているは、逆に幸いなのだと密かに思った。
「疾風・・・どうやって入ってきた?」
キツイ目つきで、徐々に麟の方へと歩み寄る。
「鍵」
ずっと右手に持ったままだったらしい鍵を、見えるように差し出した。
「信宗さんか・・・」
予想通りの答えで、大きなため息をく。
何を思ったか、偶然にプリントを届けに来た疾風を、叔父の信宗は気に入った。
お陰で、余計な事を知った、疾風。
「コーヒー」
「は?」
「コーヒー入れるけど、飲むか?」
「え?」
キッチンの方へと歩きながら、聞く。
しょせん、お坊ちゃん育ちのあの人は、どこか抜けていることが多いのは承知の上。
深く考えずにここの鍵を渡したのは、明らかで・・・それにしてもと思うと、気分転換でもしなければやってられない。
もちろん、やり終わってない宿題に息が詰まっていたのも事実。
そんなことを思いながらキッチンとリビングとの境目まで来て、疾風からの返事を催促してみる。
「疾風、飲むの?飲まないの?」
「あ・・・もらいます」
軽く左手を上げるのを返事にして、キッチンの中へ行きながら携帯を取った。
もちろん、かける相手は信宗さん。
「あ?もしもし?」
『悠宇?』
「今、いい?」
『どうぞ』
仕事中なのか外出中なのか、電話の向こうは少しざわついていた。
「疾風にマンションのキー、渡した?」
『ああ。渡したよ』
思わず、ため息が出る。
『来たのかな?』
「そう」
『あの子なら、悠宇に悪いことはないと思ってね』
「たぶんね」
学校にいる間にも、ある程度の性格は分かる。
『余計な事、だったかな?』
その声が、なんとなく切なそうに聞こえた。
わかってる、わかってる・・・信宗さんが、気を使っていることは。
「ううん・・・ありがと」
そう言うと、向こう側で肩の力が抜けたようなため息が聞こえた。
「また、連絡するから」
『待ってるよ』
心の中で、もう一度だけ「ありがとう」と言って、電話を切った。
電話をしながら支度していたコーヒーは、すっかり出来上がっていた。
「疾風!砂糖とミルクは?」
携帯をポケットにしまいながら、聞く。
「ミルクだけ」
その返事に、軽くうなづく。
ちょうど小腹も空いてきたし、先日買ってまだ残っているクッキーも取り出す。
トレイを持ってダイニングテーブルに行こうとすると、まだ呆然と疾風が立ち尽くしていた。
「座れよ」
「あ・・・はい」
その声に、まだ脱いでいなかったコートを慌てて脱ぎ、一番手近な椅子の背にかけて、その隣の椅子に腰かけた。
手早くテーブルを拭いてから、先に疾風、次に自分という順番でコーヒーを置く。
ミルクを入れたピッチャーとクッキーを置いたお皿をさらに置きながら、自分の座るべき場所を考える。
やっぱり、正面?
そう思い座ってみたものの、なんとなく気恥ずかしくなって何も言わずに先に自分のカップにミルクをいれ、コーヒーを口元に運んだ。
どういうつもりなんだろう、疾風は?
一口飲みながら思う。
「信宗さんから事情は聞いた。俺の部屋はあの奥の部屋だから入るな。上に3部屋、この階に1部屋空いてるから、好きな所使いな。必要なものがあれば、揃えるから」
「はあ」
「宿題やってたら、頭痛くなってきてさ。ちょうど一息つこうと思ってた時だから、よかったよ」
「あの、水沢さん・・・」
「水沢でいい」
疾風の台詞を掠め取るように、言い終わる前に口を挟む。
同級生に、さん付けっておかしいって。
「水沢って、学生だったんだ」
「社会人に見えるかよ?」
「いや・・・あんまり学生ってイメージないし。高校生、なんすか」
「高1だよ」
「え・・・」
疾風は絶句した。
「なに?」
思わず、睨み返した。
「いや・・・同い年に見えないなって」
「悪かったな」
同い年にみえないわけね・・・確かに一つ年上だけど、そんな風に見えるんだ。
「なんだよ」
そんなに呆然とするのって、失礼なんじゃないだろうか?
「え・・・いや、別に」
「ま、よろしく」
カップを口につけたまま左手を伸ばすと、疾風はすんなりと手を差し出した。
途中のあとがき
えええっとぉ・・・やっぱ、これじゃない話を書いた方が?という気持ちが、山盛り(大汗
「by and by」で麟目線を書いたので、対になる悠宇目線を・・・って、安易な発送が悪かったの様です。
って、1話書いただけで言う言葉じゃない気がしますが。
目標は、10話完結。
一応、その予定で線引きをしてあるので大丈夫だとは思いますが。
どうなるのか、全く不明( ・◇・)?(・◇・ )
この章は、麟目線の「by and by」にもあった場面の、悠宇目線バージョン。
目線違うとおもしろかも?と思って、以前「対」として書いたもの。
日の目を見るとは思いませんでしたが(笑)お楽しみいただければ幸いです。
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