オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
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ある夜。
時刻は、草木も眠る丑三時。
バイトを終えてマネージャーに送ってもらった麟が欠伸をしつつ帰宅すると、何故かリビングの灯りが付いていた。
不審に思いつつも、欲求に従って先にお風呂のスイッチを押しダイニングから出た時、ソファに悠宇がいるのに気付いた。
「?」
側に近寄りそっと伺うと、パジャマ代わりと思われるロングティーシャツを着たままで、軽い寝息をたてているのが分かった。
「をいをい」
麟はため息をついた。
季節は、冬。
このまま放っておけば、確実に風邪引きコースだ。
「悠宇」
肩を軽く揺すると、まず、身じろぎをしてから、ゆっくり瞳が開かれた。
「麟?」
あまり見られる事のない無防備な表情に、麟の理性がぐらついた。
「あ・・・お帰りなさい」
寝起きのいい悠宇の焦点はすぐに合い、柔らかな笑みが添えられる。
「ただいま」
「何時?」
「2時半すぎ」
その言葉に、悠宇の瞳が軽く見開かれる。
「私・・・」
「うたた寝してたみたいだな」
その言葉に、即座に反省顔を作った。
「風邪ひくぞ」
「そうだね」
ソファから体を離しながら、大きなため息をついた。
「風呂、温めてるから」
「麟、先入って」
その気持ちはありがたいが、悠宇の体の冷えも気になった。
風邪をひかれては、麟自身も困るのだ。
「・・・つーか、一緒に入る?」
何気に言うと、悠宇が固まった。
「その方が、時間短縮できるし」
「まあ、そうだけど・・・」
付き合う様になって、約8ヶ月。
肌を合わせるになって、約5ヶ月・・・まだ2人は、一緒にお風呂に入った事はなかった。
なんとなくお互いに恥ずかしさがあり、避けてきた結果だった。
「確か、入浴剤あったろ?」
「うん」
時々、悠宇が趣味で入れる入浴剤があるのを、麟は知っていた。
「色が付く入浴剤入れれば、マシだと思うけど」
「うん」
とは言え、恥ずかしいことに変わりはない。
「それに俺、風呂の中で寝そうな位眠い」
その言葉に、悠宇はくすりと笑った。
あまりに長い時間麟がお風呂から出てこないのでそっと覗いたところ、湯船に浸かったままうとうとしているのを見て、一瞬ひやりとしたことが数回あったのだ。
「じゃ、テキトーに入浴剤入れるから」
と言い残すと、麟はするりと立ち上がり、自分の部屋へ入っていった。
その背中が完全に部屋の中に消えてから、
「本当に?」
と、悠宇はひとりごちた。
信じられない気持ちのままソファにいると、麟は先程のやり取りなどなかったかの様な素振りで、すたすたと着替えを抱えて廊下へと消えて行った。
「んー。本気、かなぁ」
そう思いつつも、一応自分のパジャマを持ち脱衣所に行くと、麟の着替えと脱いだ服があり、本当にバスルームの中にいるのだと事実が告げる。
それでも、どことなくまだ戸惑いながら服を脱いで、カンタンに髪の毛をまとめる。
そしてそっと扉を開ける・・・と、麟はバスタブにもたれ掛かったまま、目をつぶっていた。
「・・・」
一瞬躊躇ったが、それを幸いと思い、悠宇は音を立てずに中へ入った。
冷え切った体にかけ湯をするが、麟はぴくりとも動かない。
思わず心配になり、バスタブで体を隠してから、悠宇はそっと麟の体をゆすった。
「麟?」
すると、ゆっくりと瞳が開かれた。
「あ・・・俺、意識なかった」
眠そうな表情で、ぽつり。
悠宇は、思わずため息をついた。
心臓に悪い・・・その言葉を、ばしゃばしゃとお湯で顔を洗う麟眺めながら、飲み込んだ。
「入らないの?」
「え?」
ぽやんとした表情で言った麟のその言葉に、どきりとする。
「そういう訳じゃ・・・」
「入れば?」
言いながら、麟はお湯が乳白色で中が見えないだろうと思い、わざと膝を立て、悠宇が入れるスペースを作った。
「ほら」
「うん・・・」
麟に背中を向ける様にして、おどおどと悠宇は湯船に入った。
そして、更に戸惑う。
湯船に身を沈めたまではいいが、しゃがんだまま、その後どうすべきなのか、全く分からずにいた。
すると。
「悠宇」
「え?」
呼ばれて顔を向けると、麟が反対側の壁の方を指差していた。
「?」
何の意味か分からずにそちらの方を向くと、次の瞬間、二の腕が引っ張られた。
「え?」
不意の事にバランスを崩しそうになる・・・と、麟の腕が体に巻付き、背後に引っ張られた。
「!」
思わず、息を飲む。
麟の足の間に挟まれ、後ろから抱きすくめられた様になった。
「あの・・・」
慌てて振り向こうとすると、
「いいじゃん、これで」
という声と供に、肩に頭が置かれた。
「!」
悠宇は、息を呑んだ。
動けない・・・。
そのまま悠宇は、息を殺しつつ、この状況をどう打破しようかと考え始めた。
と・・・。
あれ?
不意に、悠宇は違和感に気づいた。
後ろから抱きすくめられ、肩に頭が置かれたのは確か。
けれど、この感触からいくと、麟の顔は肩の方を向いていた。
湯船の中の波紋もなくなっていき、徐々に音が聞こえなくなってゆく。
そして聞こえてきた、麟の息遣い。
肩に置かれた頭は、完全に力を抜いて置かれてる様で重いし、腕も緩んできた。
まさか、ねて・・・る?
「麟?」
名を呼ぶが、返事はない。
「ね、麟」
すこし振り返るように身じろぎをすると、
「んー」
という寝ぼけた声と共に、頭が上がる。
「・・・俺、寝てた?」
「ちょっとね」
湯船の中で寝てしまう麟の様子が、よくわかった。
温かいお湯の中で、気持ちが緩んでしまうんだろう。
「もう上がれば?危ないよ」
「ん」
返事はあるものの、また、肩に頭が置かれた。
「麟?」
言いながら麟の方に少し体を向けた時、だった。
首筋に、唇が這わされたのが分った。
「!?」
その唇が、徐々に後へ回っていき、背中に下ろされていく。
「んっ」
粟だっていく感触に、思わず背中を反らせた。
「やだ・・・麟」
体を前に倒して離すと、唇も、すんなりと離れていった。
「麟?」
顔を向けて表情を窺うと、まだ眠そうな・・・それでいて、柔和な笑みを浮かべる。
すると、
「ちょっとだけ」
と言いながら、頬に右手が添えられた。
「麟?!」
予想外の出来事に抵抗するが、そもそもが至近距離。
「ちょっ・・・んっ」
あっという間に、唇を塞がれた。
ややあってから開放されると、さらに強く抱きしめられた。
「悠宇」
耳元で囁かれ、お湯の中ということも手伝って、体温が上がる。
戸惑う悠宇の気持ちを他所に、軽く抵抗したために湯船より出て露になっている胸元に、麟は唇を這わせた。
「あっ!」
そして、印を刻もうとする間隔が伝わってきた。
まずい・・・。
汗とも冷や汗とも付かない何かが、頬を伝っていく。
1つだけ、胸元に花を咲かせると、麟は改めて悠宇を抱きしめた。
「悠宇・・・」
「なに?」
「俺、風呂でていい?のぼせる」
はい?
「もーちょっと、このままでいたい気もすんだけど・・・無理」
その言葉に、悠宇はなんとも言えない気持ちになった。
「・・・どうぞ」
「ん」
そっと顔を伺うと、眠気のせいか何のせいか図れないが、麟の半分瞳が閉じていた。
「じゃ、後で」
あと?
その言葉に、悠宇が疑問符を飛ばしている隙をついて、麟はバスルームから出て行った。
そして、悠宇が部屋に戻ると、キングサイズのベッドの中には先客がいた。
そっと近づき、伺う・・・と。
「!」
思わず、悠宇はくすりと笑った。
髪の毛は半乾きのまま、麟が安らかな寝息を立てていた。
シーツに包まるようにしているその幸せそうな横顔は、すこし幼くすら見えた。
「お疲れ様」
そっと頬に口づけてから、悠宇はその隣に横になった。
バスルームの中で麟が言った「後で」が、その後どうなったか・・・。
それは、悠宇と麟の2人だけが知るお話。
あとがき
設定的には、付き合いだしてからの冬だから、高2の冬のお話。
この話は、TVCM「資生堂 ばら園」を見ていて思いつきました。
NEWSの「Happy Birthday」という楽曲と、商品のバスグッズにかけて「happy bath day」とでるロゴ。
「お風呂かぁ~」なんて思っているうちに「悠宇と麟のお風呂話って、ないよね?」なんて思いつきました。
基本的に恥ずかしがっている2人なので、こんなハプニングでもない限り一緒することはないと思われます。
まあ、麟のへたれ具合がかわいければよいのです(笑
お楽しみいただけたら、幸いです。
バイトを終えてマネージャーに送ってもらった麟が欠伸をしつつ帰宅すると、何故かリビングの灯りが付いていた。
不審に思いつつも、欲求に従って先にお風呂のスイッチを押しダイニングから出た時、ソファに悠宇がいるのに気付いた。
「?」
側に近寄りそっと伺うと、パジャマ代わりと思われるロングティーシャツを着たままで、軽い寝息をたてているのが分かった。
「をいをい」
麟はため息をついた。
季節は、冬。
このまま放っておけば、確実に風邪引きコースだ。
「悠宇」
肩を軽く揺すると、まず、身じろぎをしてから、ゆっくり瞳が開かれた。
「麟?」
あまり見られる事のない無防備な表情に、麟の理性がぐらついた。
「あ・・・お帰りなさい」
寝起きのいい悠宇の焦点はすぐに合い、柔らかな笑みが添えられる。
「ただいま」
「何時?」
「2時半すぎ」
その言葉に、悠宇の瞳が軽く見開かれる。
「私・・・」
「うたた寝してたみたいだな」
その言葉に、即座に反省顔を作った。
「風邪ひくぞ」
「そうだね」
ソファから体を離しながら、大きなため息をついた。
「風呂、温めてるから」
「麟、先入って」
その気持ちはありがたいが、悠宇の体の冷えも気になった。
風邪をひかれては、麟自身も困るのだ。
「・・・つーか、一緒に入る?」
何気に言うと、悠宇が固まった。
「その方が、時間短縮できるし」
「まあ、そうだけど・・・」
付き合う様になって、約8ヶ月。
肌を合わせるになって、約5ヶ月・・・まだ2人は、一緒にお風呂に入った事はなかった。
なんとなくお互いに恥ずかしさがあり、避けてきた結果だった。
「確か、入浴剤あったろ?」
「うん」
時々、悠宇が趣味で入れる入浴剤があるのを、麟は知っていた。
「色が付く入浴剤入れれば、マシだと思うけど」
「うん」
とは言え、恥ずかしいことに変わりはない。
「それに俺、風呂の中で寝そうな位眠い」
その言葉に、悠宇はくすりと笑った。
あまりに長い時間麟がお風呂から出てこないのでそっと覗いたところ、湯船に浸かったままうとうとしているのを見て、一瞬ひやりとしたことが数回あったのだ。
「じゃ、テキトーに入浴剤入れるから」
と言い残すと、麟はするりと立ち上がり、自分の部屋へ入っていった。
その背中が完全に部屋の中に消えてから、
「本当に?」
と、悠宇はひとりごちた。
信じられない気持ちのままソファにいると、麟は先程のやり取りなどなかったかの様な素振りで、すたすたと着替えを抱えて廊下へと消えて行った。
「んー。本気、かなぁ」
そう思いつつも、一応自分のパジャマを持ち脱衣所に行くと、麟の着替えと脱いだ服があり、本当にバスルームの中にいるのだと事実が告げる。
それでも、どことなくまだ戸惑いながら服を脱いで、カンタンに髪の毛をまとめる。
そしてそっと扉を開ける・・・と、麟はバスタブにもたれ掛かったまま、目をつぶっていた。
「・・・」
一瞬躊躇ったが、それを幸いと思い、悠宇は音を立てずに中へ入った。
冷え切った体にかけ湯をするが、麟はぴくりとも動かない。
思わず心配になり、バスタブで体を隠してから、悠宇はそっと麟の体をゆすった。
「麟?」
すると、ゆっくりと瞳が開かれた。
「あ・・・俺、意識なかった」
眠そうな表情で、ぽつり。
悠宇は、思わずため息をついた。
心臓に悪い・・・その言葉を、ばしゃばしゃとお湯で顔を洗う麟眺めながら、飲み込んだ。
「入らないの?」
「え?」
ぽやんとした表情で言った麟のその言葉に、どきりとする。
「そういう訳じゃ・・・」
「入れば?」
言いながら、麟はお湯が乳白色で中が見えないだろうと思い、わざと膝を立て、悠宇が入れるスペースを作った。
「ほら」
「うん・・・」
麟に背中を向ける様にして、おどおどと悠宇は湯船に入った。
そして、更に戸惑う。
湯船に身を沈めたまではいいが、しゃがんだまま、その後どうすべきなのか、全く分からずにいた。
すると。
「悠宇」
「え?」
呼ばれて顔を向けると、麟が反対側の壁の方を指差していた。
「?」
何の意味か分からずにそちらの方を向くと、次の瞬間、二の腕が引っ張られた。
「え?」
不意の事にバランスを崩しそうになる・・・と、麟の腕が体に巻付き、背後に引っ張られた。
「!」
思わず、息を飲む。
麟の足の間に挟まれ、後ろから抱きすくめられた様になった。
「あの・・・」
慌てて振り向こうとすると、
「いいじゃん、これで」
という声と供に、肩に頭が置かれた。
「!」
悠宇は、息を呑んだ。
動けない・・・。
そのまま悠宇は、息を殺しつつ、この状況をどう打破しようかと考え始めた。
と・・・。
あれ?
不意に、悠宇は違和感に気づいた。
後ろから抱きすくめられ、肩に頭が置かれたのは確か。
けれど、この感触からいくと、麟の顔は肩の方を向いていた。
湯船の中の波紋もなくなっていき、徐々に音が聞こえなくなってゆく。
そして聞こえてきた、麟の息遣い。
肩に置かれた頭は、完全に力を抜いて置かれてる様で重いし、腕も緩んできた。
まさか、ねて・・・る?
「麟?」
名を呼ぶが、返事はない。
「ね、麟」
すこし振り返るように身じろぎをすると、
「んー」
という寝ぼけた声と共に、頭が上がる。
「・・・俺、寝てた?」
「ちょっとね」
湯船の中で寝てしまう麟の様子が、よくわかった。
温かいお湯の中で、気持ちが緩んでしまうんだろう。
「もう上がれば?危ないよ」
「ん」
返事はあるものの、また、肩に頭が置かれた。
「麟?」
言いながら麟の方に少し体を向けた時、だった。
首筋に、唇が這わされたのが分った。
「!?」
その唇が、徐々に後へ回っていき、背中に下ろされていく。
「んっ」
粟だっていく感触に、思わず背中を反らせた。
「やだ・・・麟」
体を前に倒して離すと、唇も、すんなりと離れていった。
「麟?」
顔を向けて表情を窺うと、まだ眠そうな・・・それでいて、柔和な笑みを浮かべる。
すると、
「ちょっとだけ」
と言いながら、頬に右手が添えられた。
「麟?!」
予想外の出来事に抵抗するが、そもそもが至近距離。
「ちょっ・・・んっ」
あっという間に、唇を塞がれた。
ややあってから開放されると、さらに強く抱きしめられた。
「悠宇」
耳元で囁かれ、お湯の中ということも手伝って、体温が上がる。
戸惑う悠宇の気持ちを他所に、軽く抵抗したために湯船より出て露になっている胸元に、麟は唇を這わせた。
「あっ!」
そして、印を刻もうとする間隔が伝わってきた。
まずい・・・。
汗とも冷や汗とも付かない何かが、頬を伝っていく。
1つだけ、胸元に花を咲かせると、麟は改めて悠宇を抱きしめた。
「悠宇・・・」
「なに?」
「俺、風呂でていい?のぼせる」
はい?
「もーちょっと、このままでいたい気もすんだけど・・・無理」
その言葉に、悠宇はなんとも言えない気持ちになった。
「・・・どうぞ」
「ん」
そっと顔を伺うと、眠気のせいか何のせいか図れないが、麟の半分瞳が閉じていた。
「じゃ、後で」
あと?
その言葉に、悠宇が疑問符を飛ばしている隙をついて、麟はバスルームから出て行った。
そして、悠宇が部屋に戻ると、キングサイズのベッドの中には先客がいた。
そっと近づき、伺う・・・と。
「!」
思わず、悠宇はくすりと笑った。
髪の毛は半乾きのまま、麟が安らかな寝息を立てていた。
シーツに包まるようにしているその幸せそうな横顔は、すこし幼くすら見えた。
「お疲れ様」
そっと頬に口づけてから、悠宇はその隣に横になった。
バスルームの中で麟が言った「後で」が、その後どうなったか・・・。
それは、悠宇と麟の2人だけが知るお話。
あとがき
設定的には、付き合いだしてからの冬だから、高2の冬のお話。
この話は、TVCM「資生堂 ばら園」を見ていて思いつきました。
NEWSの「Happy Birthday」という楽曲と、商品のバスグッズにかけて「happy bath day」とでるロゴ。
「お風呂かぁ~」なんて思っているうちに「悠宇と麟のお風呂話って、ないよね?」なんて思いつきました。
基本的に恥ずかしがっている2人なので、こんなハプニングでもない限り一緒することはないと思われます。
まあ、麟のへたれ具合がかわいければよいのです(笑
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Re:あっ^^
紅梅さん、いつもいつもコメントありがとうございます。
>この間いただいたバスグッズで、同じようなことを・・。
よいではないですか・・・夫婦ですし、仲良しって事で(*^-^)ニコ
贈ったバスグッズで、そんな効果があるとは、予想以上に嬉しいです。
>この間いただいたバスグッズで、同じようなことを・・。
よいではないですか・・・夫婦ですし、仲良しって事で(*^-^)ニコ
贈ったバスグッズで、そんな効果があるとは、予想以上に嬉しいです。