オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
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「やべ。飲みすぎた」
「やべ。飲みすぎた」
そう言うと、麟はふらりと立ち上がった。
「あ。大丈夫?」
伊達に料理のための利き酒をしているわけではない俺は、まだ余裕があった。
「とりあえず」
そう言いながら、麟は廊下へと続く襖を開けた。
「麟?」
「トイレ」
そう言って、部屋を出て行った。
「んー。ちょっとこの状況は、マズイかな」
部屋の中には、酔いつぶれて寝込んだヤローどもがごろごろしていた。
それも時間はまだ、宵の口。
転がっているのは、未成年のみ。
いくら正月だからと言っても・・・などと思いつつ、飲み残してある日本酒を少しづつ流し込んでいると、麟が戻ってきた。
「吐いた?」
一応、心配して聞いてみる。
「いや。ただちょっと・・・」
「ちょっと?」
「酔ってる」
麟がそう言うのは、珍しいことだった。
そして、俺の隣に腰を下ろして空いているグラスに氷を放り込むと、まだ一応残っていたウーロン茶を注いだ。
それを一気に半分くらい飲み干すと、襖と襖との間の柱にもたれ掛かりながら、ため息をついた。
「そー言えばさ・・・どうしてるの?」
わざと名前を挙げずに、意味ありな視線を送ってみた。
「んー?」
はぐらかされるのかな?と思っていると、何故か携帯を取り出し、それを差し出した。
「へえ」
振袖を着た悠宇ちゃんの写真が、ディスプレイに映し出されていた。
「初詣、行ったんだと」
「一緒に行きたかったでしょ」
そう言いながら携帯を返すと、
「まあな」
と言って受け取った。
「!?」
素直に麟がそう返すことが珍しく・・・ああ、本当に酔ってるんだと納得した。
「早く帰りたい?」
「一応」
それにも、素直にホンネを返した。
「周り、男だらけだし」
「あはは。仕方ないよね」
「わかってる」
そう言うと、またウーロン茶を飲んだ。
「うまくいってるんでしょ?」
「まあ」
「喧嘩は?」
「しない」
「ふうん。本当に、仲いいんだね」
「じゃなきゃ、付き合うか」
「ま。そうだけどね」
薫が麟の手元に視線を送ると、すでにウーロン茶は空になっていた。
それを幸いとばかりに、カクテルの缶を握らせた。
「本当に好きなんだね」
「・・・まあ」
わざと、その言葉を缶を開ける音で誤魔化したかのように、見えた。
「後悔してる?」
「いや」
「幸せ?」
「まあ・・・でも、たまには離れた方がいい」
ゆっくりと、そう言った。
「え?」
夏の時もそうだった。
普通なら付き合って間もなくて、後ろ向きな台詞なんて出ないだろうって時に「困ってる」と言った麟。
「会いたくなるから」
あはは・・・ダメじゃん。
べたべただ。
「なるほどね。確かに」
そう言ってから、まだ残ってる日本酒を新たに注いだ。
その横で、麟もカクテルを口にした。
「なんで惚れたんだろ、俺」
そう言って、ため息をひとつ。
「麟?」
「そんなつもり、なかったのに」
「惚れるのに、理由なんていらないんじゃないの?」
「そうか?」
「たぶん」
じゃあなんで紗姫と付き合ってるか?って聞かれたら、俺だって答えられない。
「付き合ってみたら、違った?普段と」
「違いすぎる。女は怖い」
「あはは」
思わず、笑う。
「どんなカンジ?」
「ん・・・捨てられた子ネコ」
「子ネコ?」
いや、聞いたのはそーゆーコトじゃないんだけど。
ま、いっか。
「よくあるじゃん?雨の中、段ボール箱に入れられて捨てられた子ネコ」
「ああ、分かる分かる」
「びしょ濡れでぼろぼろで、どーしていいか分からなくって呆然としてて」
「そんなカンジ、ってこと?」
「まあ」
「じゃあ、かわいいね」
「かわいい、か」
そう言うと、またカクテルを飲む。
「なんだろな」
「え?」
「かわいいとは違う気が」
欠伸をかみ殺す麟の横顔が少し赤いのは、お酒のせいだってことにしておこう。
この先、なーんにも話してくれなくなったらソンだから(笑
オマケ
麟を京都駅で見送った後、藤原が口を開いた。
「そう言えば。いつ彼女作ったんですか、麟先輩」
「は?!」
あの日、全員酔いつぶれてたはず。
「俺も聞こえた」
牧野も言った。
「なんで!」
「かーなーり酔ってましたけど、それはしっかり聞いてました」
悪びれずに言う藤原に、俺は頭が痛くなった。
「麟が知ったら、殺されるぞ」
「言いませんよ」
「俺も」
「お前ら・・・」
「どんな人なんですか?」
にこりと笑う、藤原。
「どんな人、ねぇ・・・」
俺は言葉を選んだ。
「・・・お互いに、脛に傷持ってて、それに触れない、似た者同士くっついただけ」
「え?」
その声は二重奏。
「いいとこ取りなんて、調子いいんだよ」
「なに、怒ってるんすか?」
牧野に顔を覗き込まれる。
「麟があんなにベタ惚れになるなんて、思ってなかったんだよ」
「それ、怒る理由っすか?」
「麟先輩、優しいじゃないですか。分かる気もしますけど?」
「後で困るのは、麟の方だ」
俺がそう言うと、一瞬の沈黙の後、二人は笑い出した。
「妬いてるんすか?」
「心配性ですね、薫先輩も」
「悪いかよ?」
「「全然」」
あとがき
設定的には、悠宇と麟が高2の冬休み。
京都に帰った麟を含めて、薫の家で「新年会」と称して騒ぐ…なかで、ノロケ。
本来なら京都弁なんでしょうけど、関東人の私にはちょっと無理なので、お分かりになる方は、麟意外の台詞は京都弁で読んでください。
書いたのがちょうど1月だったので、こういう話になりました。
そう言うと、麟はふらりと立ち上がった。
「あ。大丈夫?」
伊達に料理のための利き酒をしているわけではない俺は、まだ余裕があった。
「とりあえず」
そう言いながら、麟は廊下へと続く襖を開けた。
「麟?」
「トイレ」
そう言って、部屋を出て行った。
「んー。ちょっとこの状況は、マズイかな」
部屋の中には、酔いつぶれて寝込んだヤローどもがごろごろしていた。
それも時間はまだ、宵の口。
転がっているのは、未成年のみ。
いくら正月だからと言っても・・・などと思いつつ、飲み残してある日本酒を少しづつ流し込んでいると、麟が戻ってきた。
「吐いた?」
一応、心配して聞いてみる。
「いや。ただちょっと・・・」
「ちょっと?」
「酔ってる」
麟がそう言うのは、珍しいことだった。
そして、俺の隣に腰を下ろして空いているグラスに氷を放り込むと、まだ一応残っていたウーロン茶を注いだ。
それを一気に半分くらい飲み干すと、襖と襖との間の柱にもたれ掛かりながら、ため息をついた。
「そー言えばさ・・・どうしてるの?」
わざと名前を挙げずに、意味ありな視線を送ってみた。
「んー?」
はぐらかされるのかな?と思っていると、何故か携帯を取り出し、それを差し出した。
「へえ」
振袖を着た悠宇ちゃんの写真が、ディスプレイに映し出されていた。
「初詣、行ったんだと」
「一緒に行きたかったでしょ」
そう言いながら携帯を返すと、
「まあな」
と言って受け取った。
「!?」
素直に麟がそう返すことが珍しく・・・ああ、本当に酔ってるんだと納得した。
「早く帰りたい?」
「一応」
それにも、素直にホンネを返した。
「周り、男だらけだし」
「あはは。仕方ないよね」
「わかってる」
そう言うと、またウーロン茶を飲んだ。
「うまくいってるんでしょ?」
「まあ」
「喧嘩は?」
「しない」
「ふうん。本当に、仲いいんだね」
「じゃなきゃ、付き合うか」
「ま。そうだけどね」
薫が麟の手元に視線を送ると、すでにウーロン茶は空になっていた。
それを幸いとばかりに、カクテルの缶を握らせた。
「本当に好きなんだね」
「・・・まあ」
わざと、その言葉を缶を開ける音で誤魔化したかのように、見えた。
「後悔してる?」
「いや」
「幸せ?」
「まあ・・・でも、たまには離れた方がいい」
ゆっくりと、そう言った。
「え?」
夏の時もそうだった。
普通なら付き合って間もなくて、後ろ向きな台詞なんて出ないだろうって時に「困ってる」と言った麟。
「会いたくなるから」
あはは・・・ダメじゃん。
べたべただ。
「なるほどね。確かに」
そう言ってから、まだ残ってる日本酒を新たに注いだ。
その横で、麟もカクテルを口にした。
「なんで惚れたんだろ、俺」
そう言って、ため息をひとつ。
「麟?」
「そんなつもり、なかったのに」
「惚れるのに、理由なんていらないんじゃないの?」
「そうか?」
「たぶん」
じゃあなんで紗姫と付き合ってるか?って聞かれたら、俺だって答えられない。
「付き合ってみたら、違った?普段と」
「違いすぎる。女は怖い」
「あはは」
思わず、笑う。
「どんなカンジ?」
「ん・・・捨てられた子ネコ」
「子ネコ?」
いや、聞いたのはそーゆーコトじゃないんだけど。
ま、いっか。
「よくあるじゃん?雨の中、段ボール箱に入れられて捨てられた子ネコ」
「ああ、分かる分かる」
「びしょ濡れでぼろぼろで、どーしていいか分からなくって呆然としてて」
「そんなカンジ、ってこと?」
「まあ」
「じゃあ、かわいいね」
「かわいい、か」
そう言うと、またカクテルを飲む。
「なんだろな」
「え?」
「かわいいとは違う気が」
欠伸をかみ殺す麟の横顔が少し赤いのは、お酒のせいだってことにしておこう。
この先、なーんにも話してくれなくなったらソンだから(笑
オマケ
麟を京都駅で見送った後、藤原が口を開いた。
「そう言えば。いつ彼女作ったんですか、麟先輩」
「は?!」
あの日、全員酔いつぶれてたはず。
「俺も聞こえた」
牧野も言った。
「なんで!」
「かーなーり酔ってましたけど、それはしっかり聞いてました」
悪びれずに言う藤原に、俺は頭が痛くなった。
「麟が知ったら、殺されるぞ」
「言いませんよ」
「俺も」
「お前ら・・・」
「どんな人なんですか?」
にこりと笑う、藤原。
「どんな人、ねぇ・・・」
俺は言葉を選んだ。
「・・・お互いに、脛に傷持ってて、それに触れない、似た者同士くっついただけ」
「え?」
その声は二重奏。
「いいとこ取りなんて、調子いいんだよ」
「なに、怒ってるんすか?」
牧野に顔を覗き込まれる。
「麟があんなにベタ惚れになるなんて、思ってなかったんだよ」
「それ、怒る理由っすか?」
「麟先輩、優しいじゃないですか。分かる気もしますけど?」
「後で困るのは、麟の方だ」
俺がそう言うと、一瞬の沈黙の後、二人は笑い出した。
「妬いてるんすか?」
「心配性ですね、薫先輩も」
「悪いかよ?」
「「全然」」
あとがき
設定的には、悠宇と麟が高2の冬休み。
京都に帰った麟を含めて、薫の家で「新年会」と称して騒ぐ…なかで、ノロケ。
本来なら京都弁なんでしょうけど、関東人の私にはちょっと無理なので、お分かりになる方は、麟意外の台詞は京都弁で読んでください。
書いたのがちょうど1月だったので、こういう話になりました。
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