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オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
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次の日も、約束通りに室田はやって来た。

次の日も、約束通りに室田はやって来た。
この日はいままでよりも遅く、水沢家の夕飯が終わったころに来た。
そして、断りきれずにデザートのスイカだけご馳走になると、すぐに帰ると言い出したのだった。
そして勇樹はまた「送ってくる」と言って、後を追いかけた。
エンジンをかけずにバイクを押す室田の後を、無言でついていく・・・と、室田は右に曲がり、昨夜の公園に入っていった。
もちろん勇樹は一瞬ためらったが、そのまま室田を追いかけた。
そして、スタンドをかける室田の後ろで、かけるべき言葉を一生懸命に探した。
振り返った室田は、どう声をかけようかと迷っている勇樹をみて、よころびのため息をついた。
そして、戸惑っている勇樹の両脇の下に手をかけ、ひょいとバイクのシートの上に乗せた。
「うわっ」
突然のことに、驚く勇樹・・・ついでに、室田は軽く唇を重ねる。
「え?」
まさに「鳩が豆鉄砲を食らった」様な驚きの顔をする勇樹。
それをみて、くすくすと笑う室田。
「スキだらけだな」
「!」
不意のキスに顔を赤く染めつつも、その言葉に、軽く頬を膨らませる。
どうしても室田と一緒にいると、調子を狂わせられる・・・というか、完全に室田のペースにさせられてしまう。
「・・・」
「まあまあ。怒るなよ」
室田はあくまでも、涼やかに笑う。
「はい、これ」
不意に、目の前に小さな手提げが現れる。
「え?なに?」
「まあいいから」
にこにこと嬉しそうに笑う室田に負けて、勇樹はそれをすんなりと受け取ってしまった。
「開けてみな」
「あ・・・うん」
こくりと頷いて受け取ると、その手提げの中のラッピングされたものを取り出す。
更に室田の視線に促されリボンを解き、包み紙を開けてみると、それは手の上に乗るような小さなジュエリーケースだった。
小さいながらも中は二つに分かれており、指輪を入れるスペースと、そのほかのアクセサリーが入るスペースに分かれていた。
「・・・」
「昨日が誕生日だったんだろ?だから、プレゼント」
「でも、俺」
「私、だろ?」
「・・・」
「今はまだ使わないんだろうけど、そのうち必要になる・・・っていうか、なって欲しいんだけど」
「うん・・・」
今の勇樹の頭の中には、アクセサリーはないに等しかった。
自分が今の室田と同い年位の女の子ならば、かなりうれしいプレゼントなのかもしれない・・・そう、勇樹は思った。
「いつか、その中に入れられる物、贈るよ」
「あ・・・うん」
そう答えるしか、勇樹には思いつかなかった。
そして簡単に包みなおすと、手提げにジュエリーケースを戻した。
「本当に、ありがと」
にっこりを笑う勇樹を見つめ、そっと右手を伸ばす室田。
「・・・」
髪をなでられ、再び赤くなった勇樹はうつむいた。
室田は勇樹のひざの上に置かれていた手提げを落ちないようにハンドルにかけると、そっと勇樹を抱きしめた。
「水沢・・・」
まったく抵抗せず、その腕に抱かれる勇樹。
いいよなぁ、このサイズ・・・と、室田は思った。
完全に腕の中に入って、なおかつ逆に、自分の腕の方が余る。
これなら、自分で守っていられる・・・と。
ややあってから、勇樹はちょっと小さな声で室田を呼んだ。
「あのさぁ・・・」
「ん?」
少し体を離す室田。
「室田の誕生日って、いつ?」
「俺の?」
「そう。室田の誕生日に、お返しするから」
あまりの無邪気な笑顔に思わず噴出す・・・「雰囲気、ぶち壊しじゃねーか」というのが、本音だ。
勇樹は勇樹で笑われ、軽く頬を膨らます。
「悪い悪い」
軽く頭をなぜる。
「お返しなんていいから」
「でも・・・」
ばつの悪い表情のままの勇樹。
「気持ちだけ、もらっとくから」
「・・・」
なんと返していいのか分からず、何か言いたげな表情で見上げる。
少し考えてから、室田が返す。
「じゃあ。今、お返しして欲しいんだけど」
「今?」
「そう、今」
笑みを浮かべると、室田はそっと勇樹の頬に右手を添え、顔を近づけた。
さすがの勇樹も、この行動に室田の言う「お返し」に気がついて、体を両腕で押し返そうとした。
「これって、お返し?」
「十分、お返し」
腕力の差は歴然で、徐々に体は近づいてくる。
そして勇樹は、恥ずかしさのためもあって、体とあごを引いた。
「俺、安上がりだから」
「違くない?」
「そうか?・・・って言うか、イヤ?」
「そういう訳、じゃ、ない、けど・・・」
顔を赤らめながらも言った勇樹のその言葉に、思わず室田は頬が緩む。
徐々に顔が近づいていくと、逆に、勇樹の声が次第に小さくなっていき、押し返そうとしていた両腕は、もはや添えられているだけになっていた。
「じゃあ、今お返しして欲しい」
「・・・」
いつ唇が触れ合ってもおかしくない距離になり、勇樹は声すら出せなくなっていた。
「水沢」
「はい・・・」
それは、蚊の鳴くような声。
「好きだよ」
まるで返事をするかの様に、添えられている手が、きゅっと室田の服を掴む。
「また、会いにくるから」
「・・・はい」
まるで顔を覗き込むようにして、室田はそっと唇を重ねた。





途中のあとがき

わはは・・・犯罪、犯罪(笑
サイズ(身長の違い)を大いに利用した、い〜い組み合わせだと、本人は思っているのですが。

ちなみに・・・勇樹にあげたプレゼントは、瞳のおねーちゃん(恵:めぐみ)の見積。
こんな会話があったのだと、想像されます。
瞳:あーねーきー。なんかいいモノ、ない?
恵:あんたね、言葉をはしょりすぎ!彼女にあげる物でいい物ない?でしょ。
瞳:そう。
恵:まったく!今度はどんな子?
瞳:年下で、すげーかわいい。
恵:年下って、いくつ下?
瞳:5つ、かな?
恵:あんた・・・我が弟ながら、守備範囲の広さに呆れるわ。つーか、犯罪。
瞳:でも、合意の上だし。
恵:まあ、つかまらないようにね。明日の午前中買い物行くから、何か買ってくればいいんでしょ?
瞳:さ〜すが姉貴。
こんなカンジ?

次の瞳編の予定ですが、書き下ろすか、ストックを使うか悩み中です。
でも書き下ろすと、さらに長くなるのが目に見えてる(-_-;ウーン
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