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オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
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その後、室田は勇樹が退院するまでの間に5回ほどお見舞いに来た。

その後、室田は勇樹が退院するまでの間に5回ほどお見舞いに来た。
不思議に思った勇樹は、当然のごとく、そのことを室田に聞いたことがあった。
「あのさぁ、室田」
「ん?」
「なんで来んの?美作先輩に会うつもりだったとか?」
「いや。美作に会うつもりなら、ちゃんと連絡取るって」
そう言って、携帯をちらつかせた。
「じゃあ、なんで?」
「いや・・・なんとなく」
「?」
首を傾げる勇樹に対して、室田はにこりと笑った。

結果的に勇樹は1学期のほとんどを病院で過ごした。
中間テストの代わりの山のような課題を病院内で片付け、数日間の不便な寮生活と期末テストをこなし、終業式が終わって早々に実家へ帰宅した。
そして、7月22日。
勇樹は自宅の玄関で固まった。
「えーと?」
さすがの勇樹も、思いがけない状況に言葉を失っていた。
突然の訪問者は、室田だった。
「俺、あがっていいの?」
お見舞い中に勇樹の母親に会い、室田はしっかりと顔を覚えられていた。
そのために、先に玄関先で対応した母親が用意したスリッパを、室田は指差した。
「・・・どうぞ」
「じゃ、お邪魔します」
そうして室田は、水沢家に上がりこんだ。
勇樹はとりあえず、リビングに室田を通すと、すぐに聞いた。
「なんで、家、知ってんの?」
「美作に聞いた」
あ、そっかぁと、勇樹は心の中で納得した。
「でさ」
「はい?」
「なんで来たの?」
「んー?」
その表情には、誤魔化すつもりなのが、ありありと浮かんでいた。
「も・・・どーでもいいや」
勇樹は大きなため息をついた。

そして、数日後のこと。
リビングで宿題を片付けている勇樹は、その後ろにいる人物に視線を送ると、また溜め息をついた。
そんな様子を、母親がくすくす笑ってみていた。
「おかーさん!」
勇樹が睨みつける。
「私買い物に行ってくるから、お留守番、よろしくね」
にこりと笑うと、母親が視界から消え、ややあってから玄関の閉まる音が聞こえた。
あれから毎日のように通ってくる室田。
入院中もそうだったが、年の離れたおにーちゃん的雰囲気の室田がいるのは、ちょっとした宿題程度なら教えてもらえる特典もあって、そんなに心地の悪いものではなかった。
しかし、そんなにも毎日くる事の意味が、勇樹にはまるっきり分からなかった。
そして今日は、勇樹の後ろで宿題をやっている背中を見つめてる・・・と思っていたら、ソファに寄りかかって軽い寝息を立てていた。
「むーかーつーくー」
だからと言って、勇樹がいくら頬を膨らませても、起きるわけではない。
ややあってから、宿題が一区切り付いた勇樹はのどの渇きを覚え、ゆっくりと立ち上がった。
そして、台所に行く途中で、室田が身じろぎしたのに気が付いた。

・・・あれ?
ゆっくりと覚醒していく意識のなかで、室田は自分が他人の家で昼寝してしまったことに気が付いた。
やべ。
とは思っても、寝起き。
あくびをしてから座り直すと、
「はい」
という声と共に、目の前にグラスが差し出された。
「え?」
見上げると、目の前に勇樹が立っていて、グラスを差し出している姿が映った。
「あ・・・さんきゅ」
受け取ってすぐに口をつけると、キンキンに冷えたポカリが異常に美味しく、思わず一気に飲み干した。
一息ついてからふと視線を送ると、勇樹も一緒に汲んできたであろうグラスから、ゆっくりとポカリを飲んでいる姿が目に入った。
「?」
ちょっと待て・・・俺、さっき起きたばっかだぞ?
「水沢」
「ん?」
グラスをテーブルに置きながら、まだあどけない顔が、室田に向けられる。
「コレ」
グラスを少し掲げる。
「?」
「なんで、俺が起きるってわかった?」
「動いたから」
「はい?」
「何度も立ち上がるのめんどーだから、ついで」
「はい?」
・・・ああ。
室田はやんわりと理解した・・・素っ気ないのは、口調だけ。
口調に気を取られて気が付かなかっただけで、似ても似つかない程おっとりとした母親と、動作は重なる。
そして、室田は勇樹に手を伸ばした。
「水沢」
「ん?」
不意に左の腕をつかまれて勇樹は振り返ったが、そのまま、引き寄せられた。
「え?なに?」
身長差が30センチもある勇樹を引き寄せるのは、室田には造作もなかった。
あっという間に抱き寄せられ、勇樹の体はすっぽりと室田の腕の中におさまり、最後に右肩にあごが乗せられた。
「あの・・・抱き枕じゃないんだけど?」
「うん」
そう返したものの、抱きしめた腕が緩められることはなかった。
「・・・」
自分の体に巻きついた室田の腕をしばし眺めてから、勇樹は溜め息を一つ。
「室田」
「ん?」
「離してくんない?」
「もうちょっとしたら、ね」
鼻先が触れ合うほどに近くでにっこりと笑った室田に絶句して、文句を言うことすらできなかった勇樹は、不本意ながらしばしの間、そのまま大人しく抱きすくめられていた。





途中のあとがき

結局また、書き下ろしました。
よくよく考えてみると、書きたいシーンしか書きためがなくて、その間がすっぽりないことに気づきました。
「だめじゃん(ノ_-;)ハア…」と思いました。
こうして、自分の首を絞めていくんですねぇ(呆
・・・しかし、室田ってなんなんでしょうね?
「気に入った」と「惚れた」は違うんでしょうけど、室田にとっての「違い」がよくわかりません。
やっぱり勇樹に一目惚れだったのかな?なんて、今さら無責任に思ってます。
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