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オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
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 ようやっと巻けたと思って足を止めてから、
 「カンベンしてくれよ」
 と、息も絶え絶えに口にした。
 「俺が、何したってんだよ?」
 地元だからいいものの、逃げ疲れた体で、とりあえず目の前の児童公園へと入った。
 水くらい飲めるだろ?
 正義は、そう思った。

 大戸高と中井高の仲の悪さは、聞いていた。
 まだ1年だし・・・なんて思っていたら、気づいたら先輩に目をつけられるわ、大戸高の標的にもなっていた。
 今日は今日とて、5~6人に追い掛け回されるハメになるなんて、想定外だった。
 「きっつー」
 思わず夜空を見上げながらふらふらと公園に入り、数メートル進んだところで、足が止まった。
 「あ・・・」
 公園には、先客がいた。
 ベンチの前に立つ、ゴツイ男。
 ベンチに座った、華奢な男。
 ゴツイ男の方は制服で・・・あ。あれ、鷹ノ台だ。
 華奢な男の方は、ロゴの入った黒いTシャツに黒のパーカーにデニムにスニーカー。
 その2人が、一緒に振り返る。
 そして次の瞬間、ゴツイ男が眉をしかめた。
 「和泉中の桜井?」
 瞬間、正義の頭の中にアラームが響いた。
 「誰?」
 華奢な男がゴツイ男に問いかける。
 「地元で有名なヤツです。桜井 正義。あの制服・・・中井の1年」
 「・・・」
 華奢な男が再び、静かに振り向いた。
 ゴツイ男は鷹ノ台で、もう1人は華奢だからと一瞬安心したが、正義は感で分った。
 ヤバイ、同類だ。
 さすがの鷹ノ台にも、こーゆーヤツの1人や2人はいるってか?
 大戸のヤツに追いかけられてる上に、新手かよ?
 逃げるかぁ・・・と思うとほぼ同時に、自分が入ってきた入口の方から、足音が近づく。
 「うっそ・・・マヂ?」
 引きつりながら、後ずさる。
 そして、大戸の連中ご登場。
 さすがに、逃げられない気がして冷や汗が流れる。
 えーとえーとえーと・・・なんだっけ、こーゆー状況?
 勉強の時にはまったく回転しない思考回路が、ターボをかけて動き出す。
 じゃなくて!こんな人数、いっぺんに相手にできねー!
 「今日って厄日かよぉ」
 もう、笑うしかなかった。
 そんな時、だった。
 「なんで、中井のヤツが大戸のヤツに追いかけられてんの?」
 それは、華奢な男の声だった。
 男にしてはちょっと高めの、声変わり前の様な声。
 「仲が悪いんスよ、前から」
 「ふーん」
 「ただ最近、相手選んでないんで厄介で」
 「鷹ノ台は?」
 「相手になんないんで。まあ、カツアゲくらいされてますけどね」
 ってことは、華奢な男も鷹ノ台?先輩・後輩ってトコロ?
 ごく一部、冷静な部分が判断を下した。
 が・・・大戸の連中は、そんな外野のことなど、気にしてはいなかった。
 「ちょ!ちょっと待てって!」
 鷹ノ台の2人の前を通って逃げれるか?
 そう思って、軽く振り返った時だった。

 「・・・え?」

 何かが、目の前を通り過ぎていった。
 「なんだテメェ!」
 通り過ぎたものを目で追っていくと、さっきの華奢な男が、大戸の連中との間に立っていた。
 「水沢!」
 後ろから、ゴツイ男の声がした。
 「水沢?」
 それは、聞いたことのある名前。
 「テメェ!やられたいのか?」
 怒声にひるむこともない、背中。
 その背中は確固とした自信に満ちていて、華奢だけど、大きかった。
 「やれるもんなら、やってみな」
 「!!」
 追い詰めたと思った相手の前に立ち、なおかつ挑発され、大戸の連中はまず、相手を水沢と呼ばれた華奢な男とした。
 一番近い男が拳を上げた時、水沢はすっと踏み出した。
 その背中に阻まれて見えなかったが、足を使ったのは確かで・・・そして、いやぁな音がした。
 「うわああああ!!」
 左膝を押さえて、転げ回る。
 「おいっ!大丈夫か!?」
 1人が駆け寄る。
 「テメェ!!」
 さらに逆上した1人が、水沢へ向かう。
 拳を振り落とすが、水沢は1歩後ろに下がってそれをかわし・・・下げた右足を軸にして回し蹴りで、相手の左脇の下に踵を入れた。
 そこって、急所じゃなかったっけ?
 たまらずにうずくまる・・・声すら、上げられないらしい。
 その時点で、残った連中は「マズイ」と判断できたらしい。
 2人の負傷者をかかえ、慌しくその場を去っていった・・・負け犬の遠吠えを残して。

 うえー、まぢで?
 正義の背中に、先刻とは違う意味での冷や汗が流れた。
 そして、それと同時に思い出した。
 『横浜嵐山の水沢 勇樹』
 ハンパなくケンカが強い、という風の噂を。
 まぢで?
 すると、軽くため息をついた水沢が、くるりと振り返った。
 何事もなかった様な、その表情。
 うっわ、びっじーん。
 少年と形容した方が似合う、あっさりとした顔立ち。
 「あ・・・ありがとうございました」
 ゴツイ男の方へ行こうとして正義の前に差し掛かった時、深々と頭を下げた。
 「大した事じゃないから」
 態度まで、あっさり。
 つーか、俺は惚れたよ、この人に。
 「あのっ」
 その後ろを付いていきながら、声をかける。
 「なに」
 「鷹ノ台の人、ですか?」
 「・・・」
 シカト。
 「お前、桜井だよな?」
 と、ゴツイ男。
 「いちおー」
 「なんで、大戸の連中に付回されてんだよ?」
 「いや~。俺もそれ、知りたいぐらいなんスよねぇ」
 「・・・」
 へらへらとした表情に、ゴツイ男は呆れた表情を作った。
 「ちょっと、聞いてみるか」
 ため息の後にそう言って携帯を取り出し、どこぞへ電話をかけ始めた。
 「あのー、水沢さん」
 「?」
 「連絡先教えてくれません?携帯番号とメアド」
 「はい?」
 ぼーぜんとした表情も、なかなかナイスだ。
 「お近づきになりませんか?」
 「!」
 なにかがツボを刺激したらしく、水沢は、くすくすと笑い始めた。
 その笑い顔も、またかわいい。
 「桜井、だっけ?」
 笑いながら聞いてくる。
 「そうです。桜井 正義・・・『せいぎ』って書いて『まさよし』です」
 「で?お近づきになってどーすんの?」
 「えーと・・・色々と」
 さらに水沢は笑い続ける。
 「次、会えたらね」
 「はいっ!」

 この人の側にいたら、間違いはない。
 だから、絶対にまた会いたい。
 いや・・・会う。
 会って絶対に、捕まえる。





あとがき

 えーと、正義のお話しです。
 この話も、ある歌がキッカケで書く気になったのです。
 FLOWのGO!!!という歌。
 ぜったいにこれ、正義のイメージソングだと思いました。

 正義の話はすごく書きたいんですよね。
 でも、イマイチ書き方が分らない・・・書きやすいのは、あくまでも充槻なんですよね(汗
 画力があったら、この話は漫画にした方がいいデキだと思う。
 話によって、言葉で説明しやすい(小説向き)なのと、説明し難い(漫画・映像向き)なのがあって、正義の話は圧倒的に漫画・映像向き。
 コンテなら書ける自信あるんだよねぇ・・・でも、言葉にするのは難しかった(/_<。)ビェェン
 精進しなきゃ!

 そんなつたない文章ですが、お楽しみいただければ幸いです。
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