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オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
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 体育祭、中間テストが立て続けに終わってようやく一息といった日曜日。

 体育祭、中間テストが立て続けに終わってようやく一息といった日曜日。
遅めに起きてまったりとしていると
「麟、お客様よ〜」
と琴音に呼ばれた。
叔母の琴音の家は花屋だ。
自宅の1階が店舗になっていて、その店の方へ行くと、神崎の父親が立っていた。
「あ・・・どうも」
麟が軽く頭を下げると、何かを察した琴音が
「ちょっと店番しててね」
と言って、自宅部分へと消えていった。
「急にすまないね」
「いえ・・・」
「ちょっと頼みごとがあってね。今日は何か、予定はあるかな?」
「いや。ないですけど。でも、どうしてここが・・・」
「ああ」
そう言うと、手に持っていたジャケットの内ポケットから名詞入れを取り出して、その1枚をを差し出した。
すんなり受け取り、目を走らせると、思わず声を漏らした。
「え?!」
その名詞には、桜の大門が付いていた。
「この前は言う機会がなくてね。ちょっと職権乱用・・・気分を悪くしたなら、謝るから」
「いえ・・・」
ましてやポストが副署長ともなれば、食って掛かる気すらも失せていた。
「じゃあ悪いけど、今日は付き合ってくれるかな?」
「はあ」
そうして麟は、悠宇の養父である神崎 信宗に連れ出された。

花屋の前に停めてあった国産最高級クラスの車を見て、まず麟はため息をついてから、助手席に乗った。
そして、走り出して少したってから、信宗に聞いた。
「あの・・・どこに行くんですか?」
道から、下り線であることは分っていたが。
「探しもの」
「はい?」
麟は一瞬、固まった。
「残念なことに、私には子供がいないし。悠宇位の年齢の知り合いっていうのも、なかなかいなくてね」
「はあ」
「私が学生の頃とは、色々と違うわけだし。意見とか、聞きたくてね・・・1人、女の子の知り合いがいるけど、女の子を連れまわすのも問題かな、ってね」
「はあ」
まあ、それはそうだと思いつつも、麟は気が抜けた。
「それで、俺?」
「1時間ほど走るけど、お腹は空いてるかな?飲み物が必要なら、適当なコンビニでも寄るけど?」
「どーでもいいです」
そう言うと、上手く窓の縁に肘をかけた。
「呆れた?」
「いや・・・つーか、ノリがよく分りません」
「気を使ってしゃべるの、面倒でしょう?タメ口でいいから」
「あーはい」
人の話を聞いてるようで聞いていない態度に、麟はため息をついた。
「真面目な口調で頼みごとされると、困るかな?と思ってね」
「まあ、そーですね」
「探しものは、悠宇だから」
「え?」
「ああ・・・もちろん、行方不明とかじゃないから。行き先は、分ってる」
「はあ」
この人と相性悪いかも・・・そう思った。
「実は。悠宇とは今年の4月になってから、一緒に住み始めたばかりで。あの子の事、分ってるようで分らないんだよ」
「じゃあ、それまでは・・・」
「悠宇は祖父母と一緒だった」
随分だな、と麟は思った。
「近所の中学に通わせたけど、その上の高校に行きたくないと言い出した時は、やっとワガママを言ってくれたとうれしかったけど」
「けど?」
「学校を変えるために引っ越しして一緒に暮らすようになったはいいけど、年頃の女の子はよく分らなくってね」
「年頃、ですか?」
笑いを含めて聞くと、
「年頃、だろう?君もだけど」
と笑い返された。
「夜中に抜け出すわ、怪我して帰ってくるわ、タバコも吸うわで・・・あれだけやってくれると、逆におかしくてね」
「神崎が、ですか?」
返事は、にこにことした笑いで返された。
「まぢですか?」
「あの子の事だから」
神経質に悩んでいる素振りは、ない。
「学校じゃあ、お嬢様だの高嶺の花だので通ってますよ?」
「見た目はね」
「見た目、ね」
思わずため息をついた。
「たった1人で神崎家に入って、学校意外は同じ世代の人と接することもなく3年過ごしたんだ。迷惑をかけないように色々我慢をしてきた反面、私には分らないような何かを内包している」
「・・・」
「いつかそれが弾けるんじゃないかと、心配でね」
その横顔が真剣で、麟は何も言えなくなった。

そして・・・結果的に約1時間のドライブで連れてこられたのは、
「本当に東京都かよ?!」
言いたくなるような、緑に囲まれた霊園だった。
「墓参り、ですか?」
「いや。探しもの」
「あー、そうでしたね」
麟はため息をついた。
「雨、降り始めたね」
「はあ」
細い雨が、音も立てずに降り始めたのは、つい先刻のこと。
「傘、あるから」
信宗はそう言うと、先に車を降りてトランクを開けた。
そして傘を取ってくると、助手席の窓を叩いた。
促されるようにして、麟は車を降りて傘を受け取った。
「探しものは、どこに落ちてるんですか?」
軽く笑みを浮かべると、信宗は麟を先導するようにして、雨の中を歩き始めた。





途中のあとがき

運良く(?)ちょうど舞台になってる季節と、かぶってくれたよ。
秋の長雨・・・ちょっともの悲しい。
春よりも、秋のほうがお墓参りに似合うような気がします。
曼珠沙華が、そうさせているのかもしれません。

・・・と書いていますが、センチメンタルになっているわけではございません(笑
今年の秋は、ライブが3本と舞台が2本と、出掛ける約束が2つに法事もあり。
仕事も、山盛りです。
ブルーになっているヒマ、ございません(笑
忙しすぎて、どたばたですo(+_+。)(。+_+)o

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忙しそうですね^^
こんばんは。またまたお邪魔しています。
早くも、今年があと2ヶ月というところまで来てしまいました。私も11月はお出かけ3つ、12月は年内いっぱいギッチリ働く予定です。
今月は怪我の月だったので、慌てないように過ごしたいと思っています。
紅梅 2008/10/28(Tue)20:17:07 編集
Re:忙しそうですね^^
紅梅さん
またのコメントありがとうございます。

>早くも、今年があと2ヶ月というところまで来てしまいました。
いや〜、言わないで下さい(笑
あっという間に時間が過ぎて、今さらひいひい言っています。

>今月は怪我の月だったので、慌てないように過ごしたいと思っています。
お怪我の具合はどうですか?
寒くなったり雨が降ったりすると影響を受けるかと思いますので(実体験により・笑)無理はされないで下さいね。
【2008/10/29 09:06】
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