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オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
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 「これ、クリスマスプレゼント」

 「これ、クリスマスプレゼント」
12月24日に突如訪れた信宗にそう言われ、こりと笑いながら手渡さされた、小さな封筒。
その中には、地図と鍵が入っていた。
地図に書かれていたのは、麟も知っていた駅近にでき間もない、新築のマンション。
あさってから新学期というその日、その鍵を手に取り、麟はそのマンションへと入っていった。

鍵に記されていた701号室の前で、立ち止まる。
母親が亡くなり、自宅にいずらくなって琴音の所に住むようになって3年。
いくら自分の叔母とはいえ、気は使うもの・・・どうにかならないかと思っていた時、偶然にももらったこの鍵は、救いのようにさえ見えた。
とりあえず見ておきたい・・・そう思って、その部屋の前に来た。
玄関に入ると、予想以上のキレイさに戸惑った。
「もともとモデルルームだから、家具は入っているから」
と聞いていたのの、その説明には違和感を覚えた。
広い玄関、右手には壁一面のシューズボックス。玄関の目の前には螺旋階段があった。
「階段?」
靴を脱ぎ、置いてあるスリッパを適当に履くと、その階段の足元へ近寄る。
「マンションなのに、2階?」
そんな間取りもアリなんだと、そう思うしかなかった。
そして、玄関から左手に続く廊下の先に、リビングがあるのが分かったので、そちらに歩いていき、扉を開く。
「あ?」
モデルルームとして使い、その後、誰も使ってないと思っていたが、明らかに人の気配があった。
暖房が入っているのがその証拠で、確実に誰か住んでいるのが分かった。
「・・・っかしいなぁ?」
そう思い首をかしげた瞬間、リビングの右奥にあるドアが突然開き、そこから見たことのある人物が現れた。
「え?」
思わず麟の口から出た言葉に反応してその人物が振り向き、次の瞬間、表情が固まった。
「疾風?」
そこにいたのは、水沢勇樹だった。
黒のフード付きトレーナーに、迷彩柄のカーゴパンツ。
見間違えることはない。
まだ一度しか会ったことはないものの、水沢だった。
「疾風・・・どうやって入ってきた?」
キツイ目つきで、徐々に麟の方へと歩み寄る。
「鍵」
ずっと右手に持ったままの鍵を、見えるように差し出した。
その鍵に目を留めると、
「信宗さんか・・・」
と言って、大きなため息をついた。
「コーヒー」
「は?」
「コーヒー入れるけど、飲む?」
「え?」
リビングの左手にあるらしいキッチンの方へと歩きながら、聞かれる。
キッチンは、カウンター式らしい。
ちょうどリビングとの境目まで来ると、立ち止まり振り返った。
「疾風、飲むの?飲まないの?」
「あ・・・もらいます」
その雰囲気に気おされて返事をすると、了解とばかりに軽く左手を上げ、キッチンの中へと入っていった。
ダイニングテーブルの所まで移動すると、何やら携帯で電話をしながらコーヒーを入れている様子が目に入った。
暑い盛りの8月のあの夜に偶然会った、噂の人物。
喧嘩に強く、その名前を出せば関東近郊の不良が恐れをなして言うことを聞くという噂を持つ人物が、まさかこんなにも華奢な男だと知って驚いたのを、昨日のことのように思い出せる。
「疾風!砂糖とミルクは?」
携帯をしまいながら、水沢がこちらを向く。
「ミルクだけ」
その返事に、軽くうなづく。
すると、ややあってからトレイを持って水沢がキッチンから出てきた。
「座れよ」
「あ・・・はい」
まだ脱いでいなかったコートを慌てて脱ぎ、一番手近な椅子にの背にかけて、その隣の椅子に麟は腰かけた。
手早くテーブルの上を拭くと、先に麟、次に自分という順番でコーヒーを置いていく勇樹。
それも、ちゃんとソーサーをつけたコーヒーカップで、ミルクはしっかりピッチャーに入っているし、最後にはレースペーパーを敷いたお皿の上にクッキーまでが置かれた。
勇樹は麟の正面の席に座ると、何も言わずに先に自分のカップにミルクをいれ、すぐにコーヒーを口元に運んだ。
ややあってから、水沢のほうから口を開いた。
「信宗さんから事情は聞いた。俺の部屋はあの奥の部屋だから入るな。上に3部屋、この階に1部屋空いてるから、好きな所使いな。必要なものがあれば、揃えるから」
「はあ」
「宿題やってたら、頭痛くなってきてさ。ちょうど一息つこうと思ってた時だから、よかったよ」
よかったという言葉を使ってはいるが、表情には殆ど出てこなかった。
「あの、水沢さん・・・」
「水沢でいい」
麟の台詞を掠め取るように、言い終わる前に口を挟んだ。
「水沢って、学生だったんだ」
「社会人に見えるかよ?」
「いや・・・あんまり学生ってイメージないし。高校生、なんすか」
「高1だよ」
「え・・・」
麟は絶句した。
「なに?」
睨みつけてきた水沢は、クッキーが片手にあっても、それなりの迫力があるのが微妙なところだった。
「いや・・・同い年に見えないなって」
「悪かったな」
拗ねる様な表情を作った。
初めて会ったあの日は夜で、自分の目の前で起こっているその状況を把握するだけで精一杯だった。
なので改めて勇樹を見る・・・あの場にいた連中の様なとがった雰囲気は多少あるものの、それが常でないことが分かる。
「無理、してんだ」
麟は直感した。
事実、あの日の印象よりは雰囲気は柔らかく、コーヒーなどを出す手つきなどを考えると、かなり家庭的なことがわかる。
「なんだよ」
「え・・いや、別に」
「ま、よろしく」
カップを口につけたまま、そっけない顔をして左手を伸ばしてくる勇樹に、麟はどこか安心をして手を差し出した。

そんな風に始まって、ゆっくりと麟はそのマンションにいる時間を多くしていった。
数日間は、学校が終わると荷物を持ってマンションに来るようになり、夜は今までの叔母の家に帰るというのを繰り返していた。
半月を過ぎた頃には、殆ど、その部屋の住人としての生活をするようになった。
勇樹は、始終いるのかいないのか分からないことが多かった。
いないのかと思えばひょっこり部屋から出てきたり、いるのかと思えば夜中遅くに帰ってきたり。
でも、食事や風呂の用意などは完璧で「リビングにいないだけ」と分かるようになってた。
数日一緒にいるようになって、麟は勇樹を「おもしろいヤツ」と思うようになった。
噂上では「鬼のように喧嘩が強い」と言われ、想像するからにゴツイ男なのかと思えば、実際会って見ると華奢で空気のような軽い印象があり。
穏やかなのかと思えば、怒ったとき等のすごみといった威圧感は、ものすごくあり。
しかし意外と家庭的・・・妙なアンバランスがそう思わせ、麟は退屈はしなかった。





途中のあとがき

こんなにも簡単に同居するのか?という、ツッコミはしないで頂きたい、そんな章だったりします。

よくよく考えると、家賃とか(ないけど)光熱費とか、そーゆーことを考えると、こんなに簡単に同居しないよなぁと、思ったりします。
その補填、どっかでしなきゃいけないかな(汗
次の次辺り、とか?
穴埋めの書下ろしを、しなきゃなんない感じなので。
でも、書き始めてどう進むか分らないので・・・大汗

基本的に、麟はいつになっても「居候」(〃^∇^)o_彡☆あははははっ

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