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オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
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 高校生活のリズムを掴んで慣れ始めた頃に、黄金週間がやってくる。

 高校生活のリズムを掴んで慣れ始めた頃に、黄金週間がやってくる。
それが終われば、中だるみをしてくれとばかりな陽気。
なかなかやる気など出てこないのが、世の常。
「こら!」
丸められた教科書が、怒鳴り声と共に乾いた音を立てる。
声からワンテンポ遅れてゆっくり麟が顔を上げると、仁王立ちした片桐の姿が目に入った。
「1限から寝るな!」
続く言葉をものともせずに、あくびをひとつ。
「いい度胸だな、疾風」
「・・・どうも」
「もうすぐ中間だぞ」
「知ってます」
あっさりと答えるその様子を見て、
「やっぱりコイツが一番の問題児だな」
片桐はそう確信した。
鷹ノ台高校は都立でありながら進学率は高く、国公立に進む者もいる上位校だ。
故に、大人しい生徒が多い校風だった。
麟が入学式の前に校長室に呼び出されたその場に、実は片桐もいた。
部屋の隅でかしこまっていた上に、口を開くこともなかったが。
見た目が全てではないと分ってはいたが、自分が担任する生徒である麟をみて、
「をいをい」
と思ったのは事実だった。
何をしなくても目立つ、外見。
まるで初日とは思えないほど、制服も着崩していた。
口の利き方は多少心得てはいるものの、校長室に呼ばれても気後れしている気配は微塵もない・・・それは、麟だけに限ったことではなかったが。
授業が始まってからも、
「寝ている」
という報告は、殆ど全ての教師から聞こえてきた。

しかし片桐の思いは、いい意味で裏切られることになった。

それは、中間テストから数日後のこと。
「なんの人だかり?」
通学路の途中で待ち合わせて3人一緒にチャリ通している麟・要・優一の3人は、ある朝、廊下の人だかりを目にした。
「さあ?」
優一の問いに、2人は首をかしげた。
教室に行くにはその人だかりの前を通らなければならず、不可抗力でその前を通りながら、視線を向けた。
そこは掲示板の前で、模造紙による張り紙がしてあった。
「1学期中間テスト 上位30位席次表」
最悪・・・麟は即座に眉根を寄せた。
「そー言えば麟、中間どうだった?」
「なんで俺に聞くんだよ?」
そのままの表情を、振り返った要に向ける。
「見にいこ」
そう背後から優一の声が聞こえたかと思うと、左腕をがっちり掴まれて、麟はその人だかりの中に連れ込まれた。
「あ。2位だってさ、麟」
席次表を見た優一は、何も考えずに素直に言った。
余計な事、言いやがって。
麟は、怒鳴りたい衝動を抑えた。
優一の一言で、周囲の視線が自分に注がれたのだ。
それを更に、怒鳴ることで視線を引き付ける事は、不本意すぎる。
「1位は神崎さんなんだ」
すぐ右隣にいた要の言葉に、麟はようやっと席次表に視線を注いだ。
1位 A組:神崎 悠宇
2位 A組:疾風 麟
B組:仲谷 秀一
「・・・」
そういう事か。
入学式の日、答辞を読む候補に選ばれた理由が、なんとなく分った。
「すごいね〜神崎さん」
素直に、優一は感心していた。
そして前日の夕刻、1年担当の教師全員に配布された席次表のコピーをみて、片桐も感心していた。
「疾風が2位?」
意外だな・・・そう思いながら、穴の開くほどに席次表を眺めていた。

しかしまた、片桐の思いは裏切られた。

梅雨の到来を彷彿とさせる曇天のある日。
1限の片桐の古文の授業が30分ほど過ぎた頃、だった。
すこし乱暴に後ろのドアが開いたかと思うと、麟が当たり前のようにつかつかと教室に入り、自分の席に座った。
その表情からは、不機嫌さが漂っていた。
「なんだ疾風、遅刻か?もう少し、申し訳なさそうに入ってこれないのか!」
担任の片桐が怒鳴る。
「保健室行って、遅刻しました。すいませんでした」
その台詞は明らかに棒読みで、反省の色はなかった。
「保健室?」
よくよく見ると、変わったばかりの夏服のあちらこちらがかすかに汚れていることに気づく。
そして、保健室で処置されたのであろう傷と絆創膏が目に入った。
「疾風?」
片桐が近寄る。
「保健室に行った理由は?」
「・・・」
「疾風!」
「・・・他校生にケンカ売られた」
「ケンカ?どこの生徒だ?」
「夏服だから、わかんねー」
「お前なぁ」
ため息をひとつ。
「あとで職員室来いよ」
「・・・」
「疾風!」
「・・・はい」
「頼むから、問題起こすな」
その様子を横目で見ていた要と優一は、
「もしかして、待ち伏せされた?」
「じゃない?」
と、こそこそと言葉を交わした。
それはもちろん、席の位置関係から悠宇の目の前で行なわれた。
「ねえ。なんで待ち伏せされてまで、ケンカ売られるの?」
同じく声を抑えて、悠宇は聞いた。
一瞬目を合わせる2人・・・ややあってから、要が口を開いた。
「中学の時、目立つからって目つけられて」
「和泉中の疾風って言ったら、地元じゃ有名」
優一が、横から口を挟む。
「そうなんだ」
「驚いた?」
苦笑いを浮かべる要。
「別に」
そう言って悠宇も、にこりと笑った。






途中のあとがき

書きながら思うのですが「ああやっぱり、私の心の中にはいつでも緑都への憧れがあるなぁ」と。
同世代の方ならご存知でしょうが「花とゆめ」で連載されていた「ここはグリーンウッド」
これを読んで、高校生活を憧れました・・・それの尾を引いているようで(笑)自分にはなかった高校生活を、してもらっているんでしょうねぇ。
え?私の高校時代?
部活・部活・テスト・部活でしたよ。
え?専門学校時代?
授業・バイト・授業・習い事でしたよ≧(´▽`)≦アハハハ
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