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オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
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軽く休憩しようと思い、充槻が海から上がって1人パラソルに向かうと、そこには悠宇がひとりで座っていた。

軽く休憩しようと思い、充槻が海から上がって1人パラソルに向かうと、そこには悠宇がひとりで座っていた。
が、悠宇の目の前には見知らぬ男が二人、しゃがみこんでいた。
「ナンパか」
悠宇は顔色一つ変えず、何やら言葉をかけている二人を平然と見つめていたが、それ以前にいかにも荷物番をしている態度は、格好の的で。
それに加え、正直充槻も呆れたほどにスタイルもよく、顔も整っている女が人待ち顔で1人でいれば「ナンパしてください」と言っている様なものだった。
「仕方ねーか」
軽くため息をつくと、充槻は近づき、
「何やってんだよ」
と、わざと声を低くして言った。
慌てて振り向く男たちを睨みつける。
「充槻・・・」
いつもは「成田」と呼んでいるのを、わざと「充槻」と言った悠宇の考えは、手に取れた。
「人のオンナに声かけてんじゃねーよ」
ありがちな台詞だったが、この言葉と充槻のすごみの効果は絶大で、二人の男はまるで見てはいけないものでも見てしまった様な表情で、慌ててその場を去った。
その背中に対して、充槻は
「ばーか」
と投げかけた。
そして改めて悠宇を見てみると、水着はぜんぜん濡れていないようだった。
「何してんの、お前?」
タオルで体を拭きつつ、聞いてみる。
「留守番」
「留守番、ねぇ」
確かに、多少の荷物が盗られては話にはならない。
その隣に座りながら、充槻は話しかけた。
「お前さぁ、なんで女なのに嵐山にいたんだよ?男子校だろ?」
さすがにバレるだろう、そう思って聞く。
「そういう条件で」
「学校側もグルなワケか」
「嵐山にいたのは、小6の時だけだし」
「今・・・鷹ノ台だっけ?」
4月に、初めて会ったときのことを思い出す。
酒井田と同じ・・・という会話があった。
鷹ノ台といえば、充槻が通っている大戸高校の隣接校ではあるが、同じ都立高校とは言っても、レベルは雲泥の差の学校だった。
「そう」
その態度は素っ気なかった。
「お前さぁ、もっと女らしい可愛い態度できねーの?」
「余計なお世話」
「・・・ありえねー」
充槻は、呆れるしかなかった。
「そー言えば。海、入らねーの?」
「留守番だから」
「は?」
そう言われ、ふと思い当たったことを充槻は口にした。
「水沢・・・お前さ、もしかしてカナヅチ?」
「得意じゃないだけ」
即答だった。
「ふーん」
図星だな・・・と充槻は心の中で思った。
「それでよく、海に来ようと思ったな」
「友里が強引で」
照れ隠しなのか、相変わらず返事は素っ気ない。
「一度も入らないつもりかよ?」
「・・・」
悠宇は本気で返事に窮していた。
その様子を見て、充槻は悠宇の左腕を掴んで立ち上がった。
「え?なに?」
悠宇が慌てるのを無視し、肩にかけてあっただけのパーカーを剥ぎ取った。
「ちょっと!!」
「ビーサン脱げ」
「え?なんで?」
「いーから!」
少しだけ声を大きくして言ったせいか、一瞬悠宇が固まったが、しぶしぶそれに従った。
両足からサンダルが脱げたのを確認すると、充槻はそのまま悠宇を波打ち際まで引っ張っていった。
「ホンキで苦手かよ?」
「いや、そうじゃないけど・・・」
悠宇の顔には戸惑いがあった。
「なら、来い」
そして、ちょうど膝下くらいまで水に漬かるところまで引っ張っていった。
「・・・離せってば」
観念したのか、ぼそっと悠宇は言った。
「逃げるなよ」
それだけ、一応言った。
そして手を離したが、悠宇は逃げずに、自分の膝に寄せては返す波をじっと見つめていた。

男だと思っていた相手が、実は女だと分かった上に、こうも否定しようもない事実を突きつけられては、認めざるを得ない。
それならばと視線を替えてみるには、充槻にとってはいい品定めの時間になった。
すんなりと伸びた手足と、想像していた以上にボリュームのあった胸とくびれたウエスト。
日焼けをしていないせいか、病弱な雰囲気すらある白い肌には、それとは相反するように無数の小傷が散らばっていた。
華奢だとは思っていたものの、女だと分かって改めて見ると、
「なんでコレでケンカに強えぇんだ?」
と、呆れるほかなかった。
ややあってから、悠宇は口を開いた。
「小さい頃、波打ち際で転んで波に飲まれたことがあって」
「あ?」
「プールならまだ平気だけど」
「トラウマってやつか」
充槻は軽くため息をついた。
「今ならおぼれたりしねーだろ」
「・・・たぶん」
意外な弱点だな、と充槻は心の中で思った。
「もう少し行ってみるか?」
「え?」
すこし怯えた表情に、一瞬充槻はどきりとした。
「おぼれねーって」
右手を差し出すと、悠宇は少し考えた後に、それでもおずおずと左手を出してきた。
その手を掴むと、充槻はさらに沖に向かってゆっくり歩き出した。
そして太ももあたりまで漬かったところで、ようやく止まった。
「まだぜんぜん浅いぞ」
「・・・わかってる」
充槻が手を離したが、悠宇は先ほどと同じように、足元の寄せては返す波を見つめた。
するとふいに
「あ・・・」
という声と供に、急に右腕が掴まれた。
「?」
慌てて悠宇の方を向くと、少し大きめの波が体に当たったのがわかった。
「平気か?」
とっさに、掴まれたままの右腕を悠宇の左手にあてがった。
「うん・・・一応」
気ぃつかってんな、こいつ・・・一応見せた笑顔の硬さに、充槻はそう感じた。
「なに雰囲気だしてんだよ!!」
突然のその言葉に振り向くと、わずか後方に臣人が立っていた。
「先輩・・・」
「なに?成田が連れ出したのか?」
その表情には、驚きの色があった。
「まーな。浜辺においとくよりマシだろ」
それを聞くと、臣人が充槻の肩にぽんと左手を置きながら言った。
「good job、成田!」
水沢が海が苦手なのわかってやがったな、コイツ・・・と充槻は思った。
「平気か、勇樹」
臣人の視線は悠宇に移り、右手でそっと髪をなぜた。
「・・・一応」
「ほんとにぃ?」
声と供に、友里が悠宇の背後から腰に手を回してきた。
「友里・・・」
「まだ、がっちがちだけど?」
右肩にあごを置き、にっこりと笑う。
「そんなんじゃ、みつきの腕、あざになるよ?」
「え?」
その声は、臣人と悠宇の二重奏だった。
臣人の視線が充槻の腕をがっちり掴んだ悠宇の手に移ったのが分かると、悠宇は慌てて手を離した。
「・・・ごめん」
悠宇以外の視線には、くっきりと手形のついた充槻の右腕が目に入った。
「あらら」
「悪ぃな、成田」
「取れんだろ、すぐ。こんなモン」
「ごめん」
臣人は再び謝る悠宇の頭を引き寄せ、ぽんぽんと軽く叩いた。
「じゃあ、海から上がって一息つこ!」
にっこり笑いながら、友里は左腕を悠宇に、右腕を充槻に絡めた。





途中のあとがき

ま、こんなカンジでしょうか?
もともと勇樹は女だけど男子校に行ってたって設定は、かなり昔からあったんですが、最近になってこーゆー話を書くキッカケになったのは、ドラマ「花ざかりの君たちへ」の影響。
「そーゆー設定って、リアルに可能かも?」と思いました。
最初から「オトコだ」って聞いてれば、違和感を感じるもののアリかと?

でもまぁ実際問題、どーなんでしょーね?
謎です(笑
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