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オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
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 さすがに・・・とは言っても、付き合いは半年ほどだが、そういうグサリとくる一言には、慣れた。
 「ばかか、お前?」
 「・・・」
 「ちげーな。ばか、だな」
 紫煙と共に吐き出される言葉に、思わず大きなため息をついた。
 「つーか、お前は1年間一緒のクラスだろ?」
 「まあ」
 「なんで知らないんだよ?」
 「あれは神崎なんだって」
 「・・・」
 すこし視線を彷徨わせてから出た言葉は、
 「オンナのカッコでケンカしねーか」
 「当たりめーだっつーの」



 この男・・・隣接校の1コ上、成田 充槻との話題になっているのは、同じクラスの神崎 悠宇こと水沢 勇樹のことだった。
 中学の時の同級生、桜井 正義に聞いたところによると、世間で噂(らしい)の「ケンカ負け知らずの横浜・嵐山校の水沢 勇樹」らしい。
 嵐山といえば有名なスポーツ進学校で男子校だ。
 ところが、事情あって女のくせに男子校に行き、今は嵐山をやめていてこの近所・・・どころか同じ高校にいた同じクラスの女子の神崎 悠宇だったなんてオチ、そうそうあるわけじゃない。
 「大体お前さ、おかしいとか思わねーのかよ?」
 「は?」
 「俺らオトコの中に混じってケンカしてんなんて、フツーじゃねーだろ」
 「まあ」
 「おかしいとか、思わねーのか?」
 「思わなくは、ない」
 「だから!気にならないのかっ!って言ってんだよ、俺は」
 そんな話をしたのは数日前だった。

 「桜井は?」
 呼び出されて、てっきりいるのかと思って聞くと、
 「用事があるってさ」
 と、成田はあっけらかんと答えた。
 「じゃあ、なんで俺を呼び出したんだよ?」
 いつもは戦力外だというのに・・・と言おうとすると、それを阻まれた。
 「そのうち分かるって」
 言いながら充槻が指差した方を見ると、エンジンを切った原チャリを押しながら近づいてくる悠宇の姿が目に入った。
 春とは言ってもまだ少し寒いせいか、マフラーで顔半分を隠している。
 そしてある程度近づくと、まずは原チャリを停めた。
 「どーなってるの?」
 まず、充槻に問いかけた。
 「そろそろじゃねーのか?」
 返事をする充槻は、ベンチに座ったままで横柄な口調で答えた。
 「なにそれ?」
 「別に、挑戦状もらって時間まで書かれてたワケじゃねーだろ」
 「あのね」
 「ヒマつぶしでいいじゃねーか」
 「?」
 麟は、イキナリ目の前でコントを見せられ、何とも言えない気持ちになった。
 そして、どう突っ込もうかと真剣に考えていた時、不意に悠宇が何かを言いかけて口をつぐんだのが分かった。
 「?」
 「おいでなすったか」
 充槻がため息と共に言い・・・そして、悠宇が口を閉ざした理由と、充槻のため息の理由が即座に分かった。
 「無駄足踏むのは嫌だけど、こーゆーことをしたい訳じゃないんだけど」
 「どーかん」
 ぽつりと言った悠宇の言葉に、充槻が同意する。
 2人はそう言うが、相手はそんな思いなど知る由もなく、お呼びでない連中が公園内に入ってきた。
 一瞥して、その目的は明白だった。
 「よう、成田」
 そのうちの一人が、口を開いた。
 「なんだよ」
 充槻はベンチに座ったまま、さもめんどくさそうに答えた。
 「今日はずいぶん兵隊が少ないじゃねーか」
 「兵隊?・・・ばかか、おめーら」
 「「??」」
 10人はいるだろう相手の顔が、わずかに歪む。
 「俺の方が兵隊だよ、コイツの」
 と言って悠宇を指差すのを、それぞれに顔を見合わせた。
 その隙をついて、麟はこっそりと充槻に聞いた。
 「誰?」
 「うちの高校の連中」
 「はぁ?なんで?」
 「いろいろ」
 「・・・」
 麟は思わず目を細めた。
 誤魔化すのは、充槻の常套手段だ。
 「おめーらみてーなザコは知らねーだろーケド、俺なんかよりずっと有名人だぜ」
 そう言われて、悠宇は軽く充槻を睨んだ。
 「知らねーだろ、嵐山の水沢なんて」
 充槻は相手をせせら笑った。
 笑われた相手は、充槻に言われたことを理解するのに時間がかかっていた。
 どう見ても華奢見える人物を、格上と言ったのだ。
 その表情には「信じられない」といったものの、当然含まれていた。
 「ま。お前らの相手なんか、俺で十分だけどな」
 充槻は、さらに笑った。
 「・・・成田に、何か用?」
 それまで成り行きを見ていた悠宇が、口を開いた。
 「テメーには関係ねぇだろ」
 「ある」
 即答、だった。
 「嵐山だか何だか知らねぇけど、うぜーんだよ」
 「あんたもね」
 相手も凄むが、悠宇は全く表情も変えずに言い返した。
 「成田に手を出すな」
 「あ?」
 「降りかかる火の粉を払ってるだけで、大戸の頂上とか興味ないんだよ」
 「ああ?!」
 「頂上取りたいやつとだけ、やってな。成田は関係ない」
 「よくお分かりで」
 溜め息と共に、麟にだけ聞こえる程度のボリュームで、充槻は言った。
 このやり取りを聞いて、麟は今夜のこの状況を理解した。
 同じ高校内での、いざこざ・・・それにまったく興味のない、充槻。
 充槻が『同感』と言った気持ちは、十分すぎるほどに分かった。
 「っせーな!」
 悠宇の態度が癇に障ったらしい相手は襟首を掴もうと右手を伸ばし、もちろんそれは難なくかわされた。
 「!?」
 まるで、肩透かしを食らってつんのめる様になった相手は、一瞬何が起こったか分からなかったらしく、疑問符を浮かべていた。
 そして少し経ってから、仲間の「なにやってんだよ」の声を受けて、もう一度手を伸ばした。
 もちろん、結果は同じだった。
 「??」
 相手は思わず、自分の手を見つめて不思議な表情を作った。
 その様子を見て、麟は驚き、充槻は当然といった表情を作った。
 麟が驚いたのは相手に対してではなく、悠宇に対してだった。
 ただ単なるケンカをしてきた訳じゃないのは、すぐに分かった。
 相手が伸ばしてきた手を左前腕で受け止め、腕をくるりと回してかわし、相手の腕を撫ぜる様にして受け流す。
 たった腕一本動かしただけで、それをかわすのは、普通ではない。
 「何やってんだよ!」
 仲間のうちの短気な一人が、苛立ちを伝えるように肩を押した。
 「いや・・・」
 今だ茫然としている仲間に対して、さらに苛立ちを募らせた2人目は、
 「おめえ、邪魔なんだよ!」
 と言って悠宇に対して手を挙げた。
 その事を予測していたのか、さっと悠宇は相手の足を払い片膝をつかせると、首の後ろに手刀を一発・・・驚く暇もなく、相手は崩れ落ちた。
 それをきっかけに、相手の半分は悠宇と対峙し、残りは倒れた仲間の元へと駆け寄った。
 慌ただしくなったその場の雰囲気は5分足らずで決着がつき、10分と経たないうちに、公園にいるのは悠宇と充槻と麟だけとなった。





あとがき

 うーあー。
 これ「にゃんぽん」よりも後に書き始めて、先に終わってましたが、載せる順番ってあるんで、ちょっと熟成させときました。
 カビてないといいんだけど(汗

 この話の題名・・・ぱっと見、ずえんずえん繋がりない感じですよね。
 CHABAのパレードって曲なんですが、歌詞がよくて・・・で、この歌詞や曲からこの話ができました。

 最初迷走気味だったんですけど、収まるように収まりました( ´o`) <(ホ)
 そして何故か、後半戦もあります。

 後半共々、お楽しみいただければ幸いです。
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