powder sugar4

　待ち合わせ場所を原宿にするなんて、ヒドイ。

　待ち合わせ場所を原宿にするなんて、ヒドイ。
人ごみでごった返した原宿で会おうなんて、みつきは最上級にバカだ。
頭にきたから、私に遠回りでも新宿を指定した。
ホームだけど。
「よ！」
ふつーに、悪びれるでもなくみつきと桜井くんは現れた。
「早いね、月野さん」
「レディを待たせるなんて、サイテー」
わざと言ってやる。
「ごめんねー。せっかく着物着てくれたのに」
桜井くんは、平謝りだ。
「みつきは？」
睨み付ける。
「意外」
「しつれーなヤツ！」
「どっちが！最後まで聞けよな、お前」
横柄な態度は、相変わらず。
「どーゆーイミよ？」
「予想外に似合ってる」
え？
「・・・ばか」
「バカでけっこーです」
そのやり取りをみて、桜井くんがくすくすと笑っていた。
そして、人ごみの中に、悠宇をみつけた。
「ごめんね、遅れて」
近づいてきた悠宇が胸の前で、小さく手を合わせる。
背後から近づいたことで気づくのが遅れた二人は、慌てて振り返った。
「おせーよ」
みつきは、相変わらずだ。
「ごめんね、桜井」
「いいえ！水沢さんの着物姿見れただけで、俺はオッケーっす！」
「桜井だけかよ？」
「しつれーなコト言うからよ！」
「ありがと、友里」
代わりに言ってあげると、にこりと悠宇は笑った。
「あとは、行きながら話そうよぉ」
そう言って悠宇の手を取ると、みつきが言った。
「女同士で歩くな」
「なによ」
「ヤロー二人で歩けって？」
「・・・わかったわよ」
そう言うと、みつきの腕を取った。
「何で俺なんだよ？」
「悠宇を拉致しそうだから」
「おいおい」
桜井くんは、この状況に呆然としていた。
すると悠宇は、右手で桜井くんのコートの左袖をそっと握った。
「歩きにくいから、エスコートしてね」
にこりと笑った悠宇の表情を見て、桜井くんはさっと赤くなった。
「怒られない？」
「大丈夫」
あ・・・知ってるんだ。
タイミングよく滑り込んできた山手線に、乗り込む。
「みつき、あとで写真撮ってね。悠宇と二人で」
「はいはい」
「写メもね」
「はいはい」
口調はめんどくさそうだったけど、みつきは約束を守ってくれた。
そして何故だか、みつき自身の携帯でも、写メを撮った・・・悠宇だけを。
「送ってやろ。イヤミな文でも付けて」
「なあに？麟くんに？」
「当たり前」
「意地、わるぅいぃ」
「自分のオンナをほっとくヤツが悪い」
「まあね」
ちなみに、メールの文はこんなんだった。

件名：貸しとく
本文：エスコートしといたぞ。この借りは、高いからな。帰ってきたら、利子つけて返せ。月野の分も。
てめーのオンナ、ほっとくんじゃねーよ。ばーか

うふふ・・・みつきってだから、面白い。
そして、その返事はみつきにじゃなく、しばらくしてから悠宇の携帯に返ってきた。
それを読んで、悠宇がくすくす笑ってた。
「どしたの？」
笑ったままで、携帯を差し出してくれた。
相変わらず、件名なしで、本文のみ。
『成田から、エスコート代をぼったくっとけ』
「あはは」
「疾風から？」
「エスコート代を請求しろって」
みつきにウインクする。
「え？じゃあ、俺も？」
桜井くんが、おろおろする。
そのやりとりに、悠宇はさらに笑い続けた。
そして私は、そのメールの下に改行がついているのに気付いた。
「？」
スクロールする。
改行は１０コ位付いてた。
『もったいないから、成田に着物姿見せるな。早く帰れ』
「ぷっ」
思わず噴出しちゃった。
「なんだよ？どーした？」
「ねえ、悠宇。このメール、最後まで読んだ？」
「え？」
悠宇に声をかけている最中、みつきは私の手ごと携帯を奪っていた。
「バカか、あいつ？」
「あーあ。ごちそうさまー」
「？」
そして携帯を返すと、さっそく最後の一文を読んだ悠宇が、きょとんとした。
「麟くん、かーわいい」
「嫉妬してる場合かよ？」
「自業自得じゃんね」





あとがき
読んでの通り、powder sugar３とお対になるお話です。
悠宇が高２のお正月、という設定。
設定的には、友里は赤とか紫の振袖。悠宇は、黒と思っています。
行き先は、混んでようが明治神宮に行ってみよう！という感じです。