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オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
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 その日の朝、ちょうどこれから自分の下駄箱を開けようとした時に、麟は声をかけられた。

 その日の朝、ちょうどこれから自分の下駄箱を開けようとした時に、麟は声をかけられた。
「よっ」
左肩に手が置かれたのでそちらを見ると、要だった。
「おう」
「なんか、すごく寒くね?」
「凍死するかも、俺」
そう冗談半分で言いながら麟が下駄箱を空けた瞬間、コトンと何かが落ちた。
「あ?」
拾い上げてみると、それは10センチ四方のラッピングされた箱。
「なんだ、コレ?」
靴を履き替えるのも忘れていると、横からひょいっと要が下駄箱の中を覗いた。
「まだあるよ」
そう言うと、麟の手の上に似たり寄ったりの包みをさらに3つ上乗せした。
「え?あ?」
まったく状況がつかめてない麟をみてくすりと笑うと、要は言った。
「今日、バレンタインじゃん」
「え?」
「もてるオトコは大変だねぇ、麟くん」

教室までの廊下を隣り合って歩きつつ、麟は文句を言いっぱなしだった。
「チョコレート業界の戦略に、どいつもこいつも踊らされやがって」
「メディアの力は偉大だからねぇ」
「こんなの日本だけじゃねーか」
「日本人はアバウトだからねー」
「大体、なんで下駄箱なんかに入れんだよ、食い物を!」
「直接渡せない子が入れたんでしょ」
話すうちに教室の前に着き、ロッカーにコートを入れる為、ロッカーの前に来る。
「だから!そーゆー問題じゃなくて!」
そして、コートを脱ぐために殆ど叩きつけるようにして、麟は鞄を床に置いた。
乱暴に置かれた鞄の上から、先ほどのチョコレートが廊下に転がり落ちる。
「まあまあ、その位にしとけ」
要は両手で麟の肩をぽんぽんと叩いた。
「・・・っち」
鞄を叩きつけたことで廊下にいる生徒の視線を集めていたことに気づいた麟は、要の言葉もあって、舌打ちしつつ無理無理に大人しくなった。
気の収まらないそのままに荒っぽくコートを脱ぐと、勢いよくロッカーの扉を開けた。
「・・・」
「・・・」
さすがに、二人して言葉を失った。
麟のロッカーは、基本的に教科書くらいしか入っていない。
盗られる物はないからと、施錠をしていなかった点では、落ち度があった。
が、その教科書が見えなくなっていた・・・チョコレートの包みによって。
「・・・あのさぁ」
「なんだ?」
「今日って、何のイヤガラセの日だって?」
「しらね」
さすがに、要も麟が気の毒になってきていた。
教室に入って自分の席の前に来て、麟は10秒くらい固まった。
「・・・イヤな予感、しねぇ?」
「する」
麟が要に問いかけると、即答だった。
「何?ど〜したの?」
二人に少し遅れて教室に入ってきた優一が、二人の間に立ち、両腕を二人の肩に回した。
「今日は、麟にとっての受難の日なんだよ」
要が変わって答えた。
「なにそれ?」
「すぐ分かるって」
機嫌悪そうに答えると、麟は自分の机を蹴り倒した。
鈍い音が響き、机と椅子が一緒に倒れる。
クラスの視線が集中したが、それを気にせずに麟が器用に足で机を起こすと、予感は的中していた。
基本、麟の机の中には替えのルーズリーフの束くらいしか入っていない。
が、机を起こすと同時にことんことんと音を立てて、チョコレートの包みが零れ落ちた。
「うわ」
優一は、嬉しそうな声を上げた。
麟はルーズリーフをだけを拾い上げると、恐る恐る匂いをかいでみた。
「・・・チョコ臭い」
がっくりと肩を落とした。

結局、その日は始終麟は不機嫌だった。
特に帰りが一番不機嫌だった。
ロッカーからコートを出すと
「チョコ臭い」
と言って、がっくりとうなだれた。
「どーすんの、このチョコの山」
優一に聞かれ、たっぷり10秒以上考えてから
「捨てる」
と言った。
「・・・それは、さすがにヤバくないか?」
麟の受難に同情しているとはいえ、さすがに要もそれは止めた。
「・・・ってか、食えないし」
「でも捨てるのは」
「・・・持って帰れないし」
「確かに・・・」
「無理だな」
そして結果的に、要と優一が担任に相談し、中身のチョコは職員室へ差し入れし、ラッピングや手紙の類は全て、焼却炉の中に消えていった。

チョコの匂いのコートを我慢しつつマンションに帰ると、先に帰っていた悠宇に麟は問うた。
「なぁ、神崎。ファブリーズとか、ある?」
「ある。待ってて」
にっこりと笑い、機嫌の悪そうな麟を刺激しないように気遣いながら、洗面所からファブリーズを取ってきて手渡す。
「どうかした?」
「臭い・・・」
エレベーターに乗る前から脱いでいたコートを、無言で差し出した。
「?」
小首を傾げつつも、顔を近づける。
「チョコレート?」
「そう」
朝、麟よりも遅く遅刻ギリギリで教室に入った悠宇は、まったく知らなかったのだった。
「今日は厄日なんだよ」
ため息をつきながら自分の部屋に入っていく麟の背中を、悠宇は無言で送った。
そして数分後、着替えた麟が部屋から出てくる。
「これ、ありがと」
「うん・・・片付ける」
にっこり笑って受け取り片付けて戻ってくると、ソファにへたりと座り込んだ麟に声をかける。
「何か飲む?」
「あ・・・うん」
ソファに座っている麟はかなり疲れた様子だったので、リクエストも聞かずにあるものを入れた。
「はい」
「あ、サンキュ」
ソファの前のテーブルに麟の分を置くと、悠宇は自分のマグカップをとりにキッチンに戻った。
「神崎・・・」
「はい?」
キッチンからソファの方を見ると、麟がこちらを向いていた。
あまりにも何か言いたげな顔をしていたので、一旦ダイニングテーブルの上に自分のマグカップを置いた後、麟の隣に座った。
「これ・・・」
麟は手に持ってるマグカップを少し持ち上げた。
一口飲んでみて、その異変に気づいた様子だった。
「それ、ホットチョコレート」
「ホットチョコレート?」
「一応、ちゃんとしたメーカーのビターの。だから、いつものインスタントのココアより美味しいはずだけど?」
「あ・・・まあ」
「さらにミルクで薄めてあるけど、まだ甘い?」
「いや・・・どうにか飲める」
「チョコ、あんまり好きじゃないでしょ?だから代わりに」
・・・知ってて?
麟は言葉を失った。
「ハッピー・バレンタイン」
そう言ってウインクする悠宇に、心がすこし溶かされた気がした。




あとがき

これは2007年のバレンタイン時期に、会社で一気に書き上げたものヾ(--;)ぉぃぉぃ
これは、悠宇と麟が付き合う前のバレンタイン話。
by and byをちゃんとした後から見ると、水沢が悠宇だとわかって直後くらいでしょうね?
クラスメートにチョコ売り場に連行されて、
「バレンタインかぁ」
と思い・・・この時は、充槻に付き合いでチョコあげてますが、売り場でホットチョコレートを見て
「買ってみよう」
なんて思ったって所でしょうか?
1人では飲みきれないので、麟にもおすそ分け。
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チョコレート
またコメントしちゃいました。

****

男の人って、甘いものが苦手な人が多いんでしょうか。自分の回りを見ると、結構いたりします。
私はミルクチョコやボンボンが好きだなぁ。
ドリンクチョコレートも贈ったことあったけど、我が家の冷蔵庫で夏越えしていました。
手作りの記憶・・・なしです。#%V
紅梅 2009/02/16(Mon)12:46:35 編集
Re:チョコレート
紅梅さま、本当にいつもコメント、ありがとうございますv

>男の人って、甘いものが苦手な人が多いんでしょうか。自分の回りを見ると、結構いたりします。
はい・・・私の身内も、甘いものOKな人が多いです。
チョコに関しては、私のほうが苦手なので、その延長に麟のホンネがあったりします。

>手作りの記憶・・・なしです。#%V
大丈夫です、私もありません(大汗
【2009/02/17 10:21】
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