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オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
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もう2度と会わないだろうと思っていた室田とわずかな再会をした数時間後、自宅へと戻った悠宇の携帯が鳴った。

もう2度と会わないだろうと思っていた室田とわずかな再会をした数時間後、自宅へと戻った悠宇の携帯が鳴った。
番号は、成田だった。
「みつき?」
「・・・水沢?俺」
聞き覚えのある声。
「・・・室田?」
「成田に携帯借りたんだ。俺の番号知らないだろ?知らない番号からじゃ、出ないかもって」
「そう、なんだ」
「今から会える?」
「今から?」
すでに24時をすぎている。
「時間が時間なのは分かってる。迷惑かけて悪いけど、成田から大体の住所は聞いたから、俺がそっちに行くから」
どうしよう?という言葉で、悠宇の頭の中にいっぱいになった。
「無理、か?」
「・・・」
その声の切なさに断りきれずに、最寄り駅近くのファミレスで会う約束をしたものの、その後の悠宇の頭の中も「どうしよう?」でいっぱいだった。
小さなバッグにお財布と携帯と家の鍵だけを入れて、ゆっくりと歩いて約束の場所に向かうと、室田の方が先に来ていた。
「遅れてごめんなさい」
室田のいるテーブルに近づくと、まず頭を下げた。
「いいよ。道空いてたから、早くついただけだし」
にこりと笑い、座るようにと促す。
あまり何かを食べるという気分にならなかったので、二人ともコーヒーだけ注文した。
「ざっと成田に聞いたけど、誰とも連絡とってなかったって」
「うん・・・」
あの5年前の夏「寮に帰る」と言われて以来、二人はまったく会っていなかった。
それどころか、誰に聞いても連絡すら取れなかった。
ただでさえ社会人となった室田には、学生であるほかの連中との距離は離れていく一方だった・・・そんな状況の中で、唯一と言っていいほど繋がっていた成田からの呼び出しだった。
「あの後、9月の中ごろに両親が亡くなって・・・それで、嵐山をやめて叔父さんに引き取られたの」
「え?」
両親が亡くなった・・・成田の気遣いか、それは聞いていなかった。
「引き取られた後も色々あって・・・それで、次の年から新しい学校に通うことになったの」
「新しい学校?」
「うん・・・去年の夏休み前に、同級生の一人が月野の妹だって分かって」
月野・・・嵐山での水沢の同級生のはずだった。
「それで、夏休み明けに月野から臣人先輩に連絡がいって、最近は顔を出すようになって」
あまりにも・・・あまりにも簡単な4年間の流れ。
「じゃあ、今は何年生?」
「高1。中1を留年したことになるから、年は誕生日過ぎたから17なんだけど」
「留年・・・でも、新しい中学に行ったとしても、誰も知り合いとかいなかったのか?」
「うん。女子校だったから」
「女子校ぉ?」
スポーツ系の男子校嵐山から女子校とは、あまりの変化に頭が痛くなった。
「女子校って、どこの?」
「世田谷にある聖華蘭っていう学校なんだけど」
さらに頭痛がした・・・そこは、あまりにも有名なお嬢様女子校な上に、頭も異常にいいことで有名な学校だった。
それならば、誰も知り合いがいるはずもなかった。
「つまり、叔父さんに引き取られて、すべてが変わったって事?」
「うん」
こくりとうなづく。
あまりの変化に驚くと同時に、一部、すこし安心をする。
あのまま男子校にいるには、きっと限界が来るだろうと思っていたからだった。
「じゃあ・・・今は、ちゃんと女の子なんだ」
「うん。もう水沢勇樹じゃなくて・・・神崎悠宇って名前になった」
コーヒーを一口飲むと、室田はまずはため息をついた。
「まあでも、名前が変わっても、俺の知ってる水沢だよな?」
ずっとうつむいたままだった悠宇が、その言葉にゆっくりと顔を上げた。
室田の視線は、まっすぐに悠宇に注がれており、真剣なのが痛いほど伝わってきた。
そして、室田の言わんとしている事は、よく分かった。
「・・・うん」
「それならいいよ。また会えてうれしいよ」
「室田・・・」
悠宇の表情にも、多少の安堵の色が現れる。
「なんて説明しようか困ってたろ?」
「うん・・・」
「ありがとな」
すこし手を伸ばして、軽く頭をなぜた。
「もう十分に遅いけど、あまり遅くならない方がいいだろ?送るよ」
「うん、ありがと」
その時はじめて、少し肩の力が抜けた悠宇は笑顔を見せた。

「え?」
ファミレスからエンジンかけないでバイクを押し、話しながら悠宇の自宅マンションの前につくと、室田は驚いた。
駅近でもあり、外観から見るに、あきらかに高級の部類に入るマンションだと分かる。
7階建てで、ドアとドアとの感覚から1戸が広いと分かると、さらに高級度が上がったような錯覚を覚えた。
「本当にここに住んでるの?」
「うん」
叔父さんは金持ちかぁ・・・と心の中でつぶやく。
「水沢はバイクは?」
「うん、原チャリだけど一応持ってる。駐車場は地下」
建物の左端に車が通れる広さのスロープがあり、悠宇はそっちに歩いていった。
地下の駐車場に停めてある車も、それなりにいい車ばかりが停めてあった。
入り口のスロープとは逆側でエレベーターの近くに、バイク用の駐輪場があった。
「自転車は玄関近くの地上なんだけど、バイクは地下に駐車場があるの」
「ふーん。で、水沢のは?」
空いているスペースにバイクを停めながら聞く。
「私のはこれ」
ぽんぽんと一台の原チャリのシートをたたく。
女の子らしいセレクトだった。
イタリアンタイプのデザインで、色はワインレッド。
「買い物とか、近所でしか乗らないけど」
「かわいいね」
悠宇の横に立つと、軽く頭をなぜた。
「でも、あんまり乗らないし」
「それでいいよ、女の子なんだし」
そう言うと、ちょっと驚いた顔で室田を見上げた。
「ん?なに?」
「・・・なんでもない」
視線を落とす悠宇をみて、ふと気づく・・・もしかして、嵐山の連中は悠宇を女として扱っていないんじゃないか?と。
仕方がないといえば仕方がないのかもしれない。
ずっと男だと思っていた相手が、数年たって「女でした」と現れたのだから。
「水沢・・・」
軽く抱き寄せると、まるで5年前と同じように、抵抗もせずに室田の腕の中におさまった。
「水沢・・・ずっと、会いたかった」
そのまま、抱きしめる。
「身長、ずいぶん伸びたんだな」
腕の中で、こくりとうなづく。
「また会える?」
「・・・」
すぐに返事は返ってこなかった。
「どうして、何も言わないの?」
それは、小さな声だった。
「え?」
「5年間、連絡もしなかったのに・・・」
ため息をつくと、室田は悠宇の髪をなぜた。
「理由は教えてもらったし。それに、こうしてまた会えたから、俺はそれで満足だし」
あくまでも優しく返してくる室田・・・5年たっていても、室田には時間の流れがないかのように思えた。
そんな態度に、悠宇は何も言えなくなる。
「じゃあ・・・改めて、また会える?」
聞かれ、悠宇はゆっくりうなづいた。
「明日・・・いや、日付変わったから今日だけど」
「・・・学校、終わってからなら」
「今日、日曜だっけ?」
すっかり曜日感覚のなくなっていた室田は、軽くため息をついた。
「じゃあ、学校終わったら連絡くれる?電話でもメールでもいいから」
「うん」
「じゃあ、また会いにくるから」
そう言うと室田は、そっと顔を近づけた。
一瞬驚いたような表情をした悠宇も抵抗することはまるでなく、まるであの時から5年もたっていないかのように、自然に唇を重ねた。





途中のあとがき

あーあ、室田と再会しちゃったよ・・・って、親が言うセリフじゃないんですけどね(笑
この話を最初に考えた時は、恋愛小説になるハズじゃなかったんですけどねぇ。
それになぜ、こんなに長い?
なぜ、こーなった?
(ノ≧ロ)ノ<嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌嫌
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