オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
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2学期の中間と期末のちょうど真ん中あたりの土曜。
2学期の中間と期末のちょうど真ん中あたりの土曜。
臣人に呼び出されていつもの様に時間を潰し、いつもの様に充槻と悠宇が帰ってくる途中に、運悪く雨に降られた。
悠宇のマンションに着いた時、二人はすっかり濡れそぼっていた。
「びしょぬれ」
マンションの地下駐車場で降りた悠宇は、ミニタオルをチョークバッグから取り出すと、まず顔を拭いた。
「大丈夫、充槻?」
同じように濡れそぼっている充槻は一旦バイクから降り、手で髪を拭いているかのようにわしゃわしゃとかき回した。
「気をつけないと風邪ひくな、コレは」
晩秋の雨は、予想以上に冷たかった。
そんな様子を見て、無言で充槻のバイクのキーを抜き取ると、エレベーターの前で悠宇は手招きをした。
「?」
充槻が黙ってついていくと、エレベーターで7階へ上がっていった。
「どーぞ」
そう言って、悠宇は701号室の扉を開けた。
オートで玄関のライトがつき、一足先に上がった悠宇は、充槻のためにスリッパを出した。
そして左手の廊下を進んでいくと、その途中のドアを開けてその中に入った。
「?」
充槻がその中を覗くと、そこは洗面所と脱衣所だった。
「濡れてるのは、コートとデニム?」
「まあ」
それを聞くと、洗濯機を開けてなにやら操作をする。
「乾燥機モードにしたから、脱いだら入れて。そっちがお風呂」
「は?」
充槻は固まった。
「え?ここって、お前の・・・」
「そう。風邪引く前に、お風呂入って。中のものは勝手に使っていいから」
そう言い置くと、悠宇は充槻を残して廊下とのドアを閉めた。
「まぢ?」
イキナリ悠宇のマンションに入ることになり充槻は慌てたものの、冷たい雨で冷え切った体を温める誘惑には勝てずに、遠慮なくお風呂を使わせてもらった。
そして出てくると、バスタオルと多少小さめではあるもののTシャツとスウェットのパンツが置かれていた。
しばらく考えてから、充槻はそれも遠慮なく借りることにした。
悠宇が持っている中でも大き目のTシャツとは言っても、男女の差は大きく、まるでピタTの様になってしまった充槻。
「ま、しかたねーか」
明かりを頼りにリビングに着くと、悠宇はすでに着替えており、ダイニングの椅子に座って髪の毛をタオルでぬぐっていた。
廊下とのドアの開いた音に振り向くと、まず、くすくすと笑い出した。
「お前なぁ」
「ご・・・ごめん」
「蹴るぞ」
そう言われても、くすくすと笑い続けた。
「コーヒー、入れた。あと、冷蔵庫は勝手にあけていい。他の部屋は入るなよ」
「了解」
「お風呂してくるから」
そう言うと、ひらひらと手を振りながら廊下の向こうに消えていった。
ここまで入り込んでいて今更遠慮もあるわけでもなく、キッチンのカウンターにさり気なく置かれたマグカップを借りて、コーヒーを注いだ。
そしてダイニングの椅子にかけて、辺りを見回す。
「金、あんだな」
まるでモデルルームさながらの家具などに、軽くため息をついた。
このマンションは、新築。
以前までの一戸建ては?
詮索する気はなかったが、どういう両親なのか、気にかかった。
そんな事を漫然と考えているうちに、そこそこの時間がたったらしい。
「寒くない?」
と、突然声をかけられ反射的に振り向くと、廊下とのドアの前に悠宇が立っていた。
フードつきの丈の長いパーカーに、柔らかい素材のパジャマと思われる淡い色のパンツを履いていた。
「風邪引きそうなら、風邪薬あるけど?」
「いや、いい」
「必要なら出すから」
にこりと笑うと、カウンターに近づき、コーヒーを注いだ。
「お腹は?空いてる?」
「ちょっとは」
「ふーん」
言いながらキッチンへと回り込み、冷蔵庫を開ける。
「何か食べる?」
「いや・・・それよか、親は?」
「んー」
「出かけてるとか?」
「まあ、そんなカンジ」
返答には、適当さが漂っていた。
「・・・って言うか、お前無防備すぎだろ」
「そう?」
しれっと答えた。
「シュークリームあるけど、食べる?」
「いらね」
「そう」
冷蔵庫を閉める音がした後、今度は右手にマグカップ、左手にシュークリームを2つ持ってダイニングの充槻の正面に座った。
気を使ってか、無言でその一つを充槻の正面に置き、もう一つはすぐに封を開けた。
「洋服乾いて雨上がったら、帰って」
「わかってる」
そのまま何も言わずにいると、まるで普段と同じように・・・充槻がいないかの如くに、テーブルの上においてあったプリントを読みつつ、シュークリームを食べ始めた。
どーゆー神経してんだよ?
悠宇を見ながら充槻はため息をついた。
親がいなくて1人きり、そんな中、いくら雨に濡れたとはいえ、充槻を引き入れる。
自分自身もお風呂に入り、髪を下ろしている姿はいつもとは違い、女の横顔になっていた。
多少戸惑う充槻の心など知らず、悠宇はシュークリームを食べ終わると、テレビの前のソファに座り、ガラステーブルの上に新聞を広げた。
なにか、真剣な面持ちで紙面を見ている。
そんな姿を見て、充槻にいたずら心が沸く。
どんな反応するか?
そう思いながら、水沢に近づいた。
「水沢・・・」
「ん?」
呼ばれて悠宇が左を向くと、予想より近くに充槻の顔があった。
「なに?」
あごを引いて警戒した顔をしつつ、右手をソファの上につき、左手で充槻の右肩を押し返した。
「充槻、近いって」
にやりと笑いつつも返事をしない充槻の体の重みが、徐々にかかってきて、悠宇は右肘をついた。
「充槻、なに?」
「何って?」
そう充槻が言った時には、右肘でのわずかな抵抗では徐々に増してくる身体の重みを支えきることはできなくなり、悠宇はやっと自分が押し倒されたのだと悟った。
そしてすばやく、充槻は慣れた手つきで悠宇の両手首を押さえ込んだ。
「何って・・・この状況は、襲ってくださいってモンだろ」
「・・・それで?」
「それで?って。お前、そう言うか、フツー?」
「悪かったね」
「俺が付き合わねぇ?って言ったの、忘れてるだろ」
「・・・」
どう答えても結果が同じような気がして、悠宇はわざと答えなかった。
すると、充槻はくすりと笑ってからゆっくりと、顔を近づけた。
重なる直前に充槻の唇から逃れるため、悠宇は顔を背けた。
が、充槻にとってはそれは逆に一つのチャンスを作ることなり、露になった左首筋の髪をそっとかき上げると、そっと首筋に唇を這わせた。
「!」
悠宇の体が、わずかに強張る。
「室田に抱かれたい?」
「!?」
「あれから、室田と会ってるのかよ?」
野暮は承知の上で、首筋に顔をうずめながら充槻は聞いた。
「会ったら悪い?」
「室田に惚れてるのかよ」
「充槻にはカンケーない」
「なんで、室田?」
その声は、少し切ないように悠宇には聞こえた。
「室田に聞けって」
「え?」
充槻はぴたりと動きを止め、悠宇を正面から見つめた。
「室田、から?」
「・・・5年前にね」
「5年前?」
室田が悠宇と初めて会ったのが、5年前だと充槻は聞かされていた。
「嵐山にいる頃からって、ワケかよ」
「誰も知らないけどね」
「・・・」
人知れず、それこそ臣人にも知られずに関係があったのかと思うと、充槻は呆れた。
「5年間離れてたけど、お互いに思ってた、ってか?」
「・・・」
「松原もバカだな・・・気づかなかったワケか」
充槻は肩をすくめた。
「ばかみてー」
そう言うと、ふいに悠宇の上からどいて立ち上がった。
「帰る」
「え?」
「コーヒー、ご馳走様」
呆然とする悠宇を置いたまま、充槻は廊下へと消えていった。
ややあってから、押し付けられてほんのり赤くなった両手首を見つめ、悠宇は
「充槻のばか」
と、ぼそりとつぶやいた。
途中のあとがき
書き溜めを使うと、ラクねぇ(*^m^*) ムフッ
このシーンは、どーしても書きたくなったシーン。
ちょっと充槻がかわいそうなんですけどね。
でも、これくらいで手を引く充槻じゃあないんですけどね。
臣人に呼び出されていつもの様に時間を潰し、いつもの様に充槻と悠宇が帰ってくる途中に、運悪く雨に降られた。
悠宇のマンションに着いた時、二人はすっかり濡れそぼっていた。
「びしょぬれ」
マンションの地下駐車場で降りた悠宇は、ミニタオルをチョークバッグから取り出すと、まず顔を拭いた。
「大丈夫、充槻?」
同じように濡れそぼっている充槻は一旦バイクから降り、手で髪を拭いているかのようにわしゃわしゃとかき回した。
「気をつけないと風邪ひくな、コレは」
晩秋の雨は、予想以上に冷たかった。
そんな様子を見て、無言で充槻のバイクのキーを抜き取ると、エレベーターの前で悠宇は手招きをした。
「?」
充槻が黙ってついていくと、エレベーターで7階へ上がっていった。
「どーぞ」
そう言って、悠宇は701号室の扉を開けた。
オートで玄関のライトがつき、一足先に上がった悠宇は、充槻のためにスリッパを出した。
そして左手の廊下を進んでいくと、その途中のドアを開けてその中に入った。
「?」
充槻がその中を覗くと、そこは洗面所と脱衣所だった。
「濡れてるのは、コートとデニム?」
「まあ」
それを聞くと、洗濯機を開けてなにやら操作をする。
「乾燥機モードにしたから、脱いだら入れて。そっちがお風呂」
「は?」
充槻は固まった。
「え?ここって、お前の・・・」
「そう。風邪引く前に、お風呂入って。中のものは勝手に使っていいから」
そう言い置くと、悠宇は充槻を残して廊下とのドアを閉めた。
「まぢ?」
イキナリ悠宇のマンションに入ることになり充槻は慌てたものの、冷たい雨で冷え切った体を温める誘惑には勝てずに、遠慮なくお風呂を使わせてもらった。
そして出てくると、バスタオルと多少小さめではあるもののTシャツとスウェットのパンツが置かれていた。
しばらく考えてから、充槻はそれも遠慮なく借りることにした。
悠宇が持っている中でも大き目のTシャツとは言っても、男女の差は大きく、まるでピタTの様になってしまった充槻。
「ま、しかたねーか」
明かりを頼りにリビングに着くと、悠宇はすでに着替えており、ダイニングの椅子に座って髪の毛をタオルでぬぐっていた。
廊下とのドアの開いた音に振り向くと、まず、くすくすと笑い出した。
「お前なぁ」
「ご・・・ごめん」
「蹴るぞ」
そう言われても、くすくすと笑い続けた。
「コーヒー、入れた。あと、冷蔵庫は勝手にあけていい。他の部屋は入るなよ」
「了解」
「お風呂してくるから」
そう言うと、ひらひらと手を振りながら廊下の向こうに消えていった。
ここまで入り込んでいて今更遠慮もあるわけでもなく、キッチンのカウンターにさり気なく置かれたマグカップを借りて、コーヒーを注いだ。
そしてダイニングの椅子にかけて、辺りを見回す。
「金、あんだな」
まるでモデルルームさながらの家具などに、軽くため息をついた。
このマンションは、新築。
以前までの一戸建ては?
詮索する気はなかったが、どういう両親なのか、気にかかった。
そんな事を漫然と考えているうちに、そこそこの時間がたったらしい。
「寒くない?」
と、突然声をかけられ反射的に振り向くと、廊下とのドアの前に悠宇が立っていた。
フードつきの丈の長いパーカーに、柔らかい素材のパジャマと思われる淡い色のパンツを履いていた。
「風邪引きそうなら、風邪薬あるけど?」
「いや、いい」
「必要なら出すから」
にこりと笑うと、カウンターに近づき、コーヒーを注いだ。
「お腹は?空いてる?」
「ちょっとは」
「ふーん」
言いながらキッチンへと回り込み、冷蔵庫を開ける。
「何か食べる?」
「いや・・・それよか、親は?」
「んー」
「出かけてるとか?」
「まあ、そんなカンジ」
返答には、適当さが漂っていた。
「・・・って言うか、お前無防備すぎだろ」
「そう?」
しれっと答えた。
「シュークリームあるけど、食べる?」
「いらね」
「そう」
冷蔵庫を閉める音がした後、今度は右手にマグカップ、左手にシュークリームを2つ持ってダイニングの充槻の正面に座った。
気を使ってか、無言でその一つを充槻の正面に置き、もう一つはすぐに封を開けた。
「洋服乾いて雨上がったら、帰って」
「わかってる」
そのまま何も言わずにいると、まるで普段と同じように・・・充槻がいないかの如くに、テーブルの上においてあったプリントを読みつつ、シュークリームを食べ始めた。
どーゆー神経してんだよ?
悠宇を見ながら充槻はため息をついた。
親がいなくて1人きり、そんな中、いくら雨に濡れたとはいえ、充槻を引き入れる。
自分自身もお風呂に入り、髪を下ろしている姿はいつもとは違い、女の横顔になっていた。
多少戸惑う充槻の心など知らず、悠宇はシュークリームを食べ終わると、テレビの前のソファに座り、ガラステーブルの上に新聞を広げた。
なにか、真剣な面持ちで紙面を見ている。
そんな姿を見て、充槻にいたずら心が沸く。
どんな反応するか?
そう思いながら、水沢に近づいた。
「水沢・・・」
「ん?」
呼ばれて悠宇が左を向くと、予想より近くに充槻の顔があった。
「なに?」
あごを引いて警戒した顔をしつつ、右手をソファの上につき、左手で充槻の右肩を押し返した。
「充槻、近いって」
にやりと笑いつつも返事をしない充槻の体の重みが、徐々にかかってきて、悠宇は右肘をついた。
「充槻、なに?」
「何って?」
そう充槻が言った時には、右肘でのわずかな抵抗では徐々に増してくる身体の重みを支えきることはできなくなり、悠宇はやっと自分が押し倒されたのだと悟った。
そしてすばやく、充槻は慣れた手つきで悠宇の両手首を押さえ込んだ。
「何って・・・この状況は、襲ってくださいってモンだろ」
「・・・それで?」
「それで?って。お前、そう言うか、フツー?」
「悪かったね」
「俺が付き合わねぇ?って言ったの、忘れてるだろ」
「・・・」
どう答えても結果が同じような気がして、悠宇はわざと答えなかった。
すると、充槻はくすりと笑ってからゆっくりと、顔を近づけた。
重なる直前に充槻の唇から逃れるため、悠宇は顔を背けた。
が、充槻にとってはそれは逆に一つのチャンスを作ることなり、露になった左首筋の髪をそっとかき上げると、そっと首筋に唇を這わせた。
「!」
悠宇の体が、わずかに強張る。
「室田に抱かれたい?」
「!?」
「あれから、室田と会ってるのかよ?」
野暮は承知の上で、首筋に顔をうずめながら充槻は聞いた。
「会ったら悪い?」
「室田に惚れてるのかよ」
「充槻にはカンケーない」
「なんで、室田?」
その声は、少し切ないように悠宇には聞こえた。
「室田に聞けって」
「え?」
充槻はぴたりと動きを止め、悠宇を正面から見つめた。
「室田、から?」
「・・・5年前にね」
「5年前?」
室田が悠宇と初めて会ったのが、5年前だと充槻は聞かされていた。
「嵐山にいる頃からって、ワケかよ」
「誰も知らないけどね」
「・・・」
人知れず、それこそ臣人にも知られずに関係があったのかと思うと、充槻は呆れた。
「5年間離れてたけど、お互いに思ってた、ってか?」
「・・・」
「松原もバカだな・・・気づかなかったワケか」
充槻は肩をすくめた。
「ばかみてー」
そう言うと、ふいに悠宇の上からどいて立ち上がった。
「帰る」
「え?」
「コーヒー、ご馳走様」
呆然とする悠宇を置いたまま、充槻は廊下へと消えていった。
ややあってから、押し付けられてほんのり赤くなった両手首を見つめ、悠宇は
「充槻のばか」
と、ぼそりとつぶやいた。
途中のあとがき
書き溜めを使うと、ラクねぇ(*^m^*) ムフッ
このシーンは、どーしても書きたくなったシーン。
ちょっと充槻がかわいそうなんですけどね。
でも、これくらいで手を引く充槻じゃあないんですけどね。
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