オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
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9月1日の朝、いつもの通りに家を出ようとした悠宇は、門を出たとたんに固まった。
9月1日の朝、いつもの通りに家を出ようとした悠宇は、門を出たとたんに固まった。
「・・・よ」
道路の向かいで門の真正面にバイクを停めて寄りかかり、片手を挙げた人物は悠宇の想像を超えていた。
「成田・・・」
「へえ、けっこうかわいいじゃねーか」
呆然とする制服姿の悠宇を見て、まずそう言った。
「何でウチ、知ってる?」
「松原に聞いた」
それを聞くと、悠宇は右手で頭を抑えた。
「で?こんな朝っぱらから、何?」
「お姫様の送り迎えでもしようと思って」
「は?」
この行動は、単に充槻の思い付きだった。
「わざわざ家の前で待ち伏せしてまで?」
「そう」
「なんで?」
「いや・・・おもしろそうだから」
「はい?!」
「学校までどーやって行ってんだよ、いつもは」
「・・・バス」
「じゃあ、この方がラクだろ?」
「まあ一応」
その言葉を聞くと、バイクにまたがって自分の後ろをぽんぽんと叩いた。
それを見て、悠宇はため息をついた。
「何考えてんの?」
「なんも」
「何の得もないけど?」
「損得じゃねぇって」
「・・・ヒマ人」
「ほっとけ・・・で?乗るよな?」
「・・・」
抵抗するだけ無駄だと雰囲気から悟った悠宇は、大人しく乗せてもらうことにした。
「安全運転で」
「分かってる」
「事故ったら殴る」
「へいへい」
そしてその十数分後、鷹ノ台高校の校門前にバイクで乗りつけた二人に、登校中の生徒は釘付けになった。
いくら隣同士とはいえ、鷹ノ台と大戸の生徒が一緒にいることなど稀だったからだ。
まだ時間が少し早く目撃者が少なかったのは、悠宇にとっては幸いだった。
「ありがと」
軽やかに降りると、充槻に軽く微笑んだ。
「学校終わるの、何時?」
「え?」
「何時だよ」
悠宇は「お姫様の送り迎え」と言った充槻の言葉を思い出した。
「いいよ、帰りは」
「やだね」
そう言うと、悠宇に向かって右手を出した。
「?」
「なら、携帯の番号よこせ。連絡したら来てやるよ」
「・・・」
数秒考えてからため息をつくと、悠宇はカバンの中から手帳を取り出し、余白に携帯の番号とメアドを書き込んで、それを充槻に差し出した。
ここで嫌だと言っても引くわけない・・・そう実感していたし、これからのことを考えれば、連絡先を知っていても損はないはずだった。
「横流ししたら殺すから」
「しねーって」
差し出されたメモを内ポケットに仕舞うと、充槻は「じゃあな」と涼しい顔をしてバイクを発信させた。
その後ろを姿を見送りながら、悠宇はその日、数度目のため息をついた。
それからわずか2週間ほど後の月曜日の朝。
いつもの様に充槻が神崎家の前で待っていたが、時間になっても悠宇が出てこなかった。
「やすみか」
その時はそう思い、特に気にせずに自分だけは学校に向かった。
が、それが二日・三日と続くと、さすがに気になってきた。
電話をしても、メールを送っても、向こうから連絡のひとつもなかった。
そして、土曜日の朝・・・懲りずに待っていると、悠宇の父親らしき男性が出てきた。
「成田君、かな?」
親し気ににこりと笑う。
「そーですケド」
「悠宇は今日も学校休むから」
「・・・体調、悪いんですか?」
「ちょっとね」
差しさわりのない言葉を選んで真実を隠したのを、充槻はその表情から感じ取った。
黙ってその場を去ると、充槻は昼頃に臣人に電話をかけた。
「水沢、学校休んでんだけど、なんか知ってるか?」
「勇樹?あー。ちょっと待ってろ」
そういうと、そのまま保留もせずに電話から顔を離したのが分った。
電話口から
「正!今日、何日?!」
「20日」
「あ〜そうかぁ」
というやり取りが聞こえた。
「あのさ、成田」
「なんだよ?」
「悪ぃんだけど、勇樹のこと、そっとしておいてくんね?」
「はあ?」
「確か今頃が、命日のはずなんだよ両親の」
「命日?」
「だから、ほっといてやってくんねーかな?」
今までの印象を変えるほどの柔らかい口調で、臣人は言った。
「あいつさ、そん時人前で泣かなかったんだよ。でも、俺らの知らない所で泣いてんだろうからさ、今でも。だから、勘弁してやってくんねーかな」
「・・・わかった」
そう言うほかなく、充槻はそれ以上追求もせず、悠宇に連絡をとることもせずに、気持ちを押し込めた。
途中のあとがき
いやぁ・・・ストックを使ってますが、結局1章にするには長かったり短かったりで、調節のために四苦八苦。
今回も、半分は書下ろしです。
充槻はこーして送り迎えすることになりますが、何に乗ってるんでしょうね、バイク?
今流行のオバケスクーター推奨ですが、値段考えると無理があります。
カブの改造とかジョーカー辺りを乗ってほしいのが、親心(笑
「・・・よ」
道路の向かいで門の真正面にバイクを停めて寄りかかり、片手を挙げた人物は悠宇の想像を超えていた。
「成田・・・」
「へえ、けっこうかわいいじゃねーか」
呆然とする制服姿の悠宇を見て、まずそう言った。
「何でウチ、知ってる?」
「松原に聞いた」
それを聞くと、悠宇は右手で頭を抑えた。
「で?こんな朝っぱらから、何?」
「お姫様の送り迎えでもしようと思って」
「は?」
この行動は、単に充槻の思い付きだった。
「わざわざ家の前で待ち伏せしてまで?」
「そう」
「なんで?」
「いや・・・おもしろそうだから」
「はい?!」
「学校までどーやって行ってんだよ、いつもは」
「・・・バス」
「じゃあ、この方がラクだろ?」
「まあ一応」
その言葉を聞くと、バイクにまたがって自分の後ろをぽんぽんと叩いた。
それを見て、悠宇はため息をついた。
「何考えてんの?」
「なんも」
「何の得もないけど?」
「損得じゃねぇって」
「・・・ヒマ人」
「ほっとけ・・・で?乗るよな?」
「・・・」
抵抗するだけ無駄だと雰囲気から悟った悠宇は、大人しく乗せてもらうことにした。
「安全運転で」
「分かってる」
「事故ったら殴る」
「へいへい」
そしてその十数分後、鷹ノ台高校の校門前にバイクで乗りつけた二人に、登校中の生徒は釘付けになった。
いくら隣同士とはいえ、鷹ノ台と大戸の生徒が一緒にいることなど稀だったからだ。
まだ時間が少し早く目撃者が少なかったのは、悠宇にとっては幸いだった。
「ありがと」
軽やかに降りると、充槻に軽く微笑んだ。
「学校終わるの、何時?」
「え?」
「何時だよ」
悠宇は「お姫様の送り迎え」と言った充槻の言葉を思い出した。
「いいよ、帰りは」
「やだね」
そう言うと、悠宇に向かって右手を出した。
「?」
「なら、携帯の番号よこせ。連絡したら来てやるよ」
「・・・」
数秒考えてからため息をつくと、悠宇はカバンの中から手帳を取り出し、余白に携帯の番号とメアドを書き込んで、それを充槻に差し出した。
ここで嫌だと言っても引くわけない・・・そう実感していたし、これからのことを考えれば、連絡先を知っていても損はないはずだった。
「横流ししたら殺すから」
「しねーって」
差し出されたメモを内ポケットに仕舞うと、充槻は「じゃあな」と涼しい顔をしてバイクを発信させた。
その後ろを姿を見送りながら、悠宇はその日、数度目のため息をついた。
それからわずか2週間ほど後の月曜日の朝。
いつもの様に充槻が神崎家の前で待っていたが、時間になっても悠宇が出てこなかった。
「やすみか」
その時はそう思い、特に気にせずに自分だけは学校に向かった。
が、それが二日・三日と続くと、さすがに気になってきた。
電話をしても、メールを送っても、向こうから連絡のひとつもなかった。
そして、土曜日の朝・・・懲りずに待っていると、悠宇の父親らしき男性が出てきた。
「成田君、かな?」
親し気ににこりと笑う。
「そーですケド」
「悠宇は今日も学校休むから」
「・・・体調、悪いんですか?」
「ちょっとね」
差しさわりのない言葉を選んで真実を隠したのを、充槻はその表情から感じ取った。
黙ってその場を去ると、充槻は昼頃に臣人に電話をかけた。
「水沢、学校休んでんだけど、なんか知ってるか?」
「勇樹?あー。ちょっと待ってろ」
そういうと、そのまま保留もせずに電話から顔を離したのが分った。
電話口から
「正!今日、何日?!」
「20日」
「あ〜そうかぁ」
というやり取りが聞こえた。
「あのさ、成田」
「なんだよ?」
「悪ぃんだけど、勇樹のこと、そっとしておいてくんね?」
「はあ?」
「確か今頃が、命日のはずなんだよ両親の」
「命日?」
「だから、ほっといてやってくんねーかな?」
今までの印象を変えるほどの柔らかい口調で、臣人は言った。
「あいつさ、そん時人前で泣かなかったんだよ。でも、俺らの知らない所で泣いてんだろうからさ、今でも。だから、勘弁してやってくんねーかな」
「・・・わかった」
そう言うほかなく、充槻はそれ以上追求もせず、悠宇に連絡をとることもせずに、気持ちを押し込めた。
途中のあとがき
いやぁ・・・ストックを使ってますが、結局1章にするには長かったり短かったりで、調節のために四苦八苦。
今回も、半分は書下ろしです。
充槻はこーして送り迎えすることになりますが、何に乗ってるんでしょうね、バイク?
今流行のオバケスクーター推奨ですが、値段考えると無理があります。
カブの改造とかジョーカー辺りを乗ってほしいのが、親心(笑
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