オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
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10月最初の日曜日。
10月最初の日曜日。
夜になってから殆どほったらかしていた携帯を見ると、メールが入っているのに気づいた。
それはあの、悠宇が学校を休んで送り迎えをしなくなってから、ようやっと入った連絡だった。
「おせーよ」
悪態をつきながら開けてみる。
件名:無題
本文:引っ越したから
「は?」
訳が分らず、充槻は慌てて電話をかけた。
「はい?」
電話の向こうの悠宇の様子は、いたって普段通りだった。
「水沢?!引越したって、なんだよ!急に!」
「そのまま、なんだけど」
それがなに?とでも言いたい様な口調だった。
「新居、どこだよ!」
「いいって、別に」
「何が!」
「知らなくていいって」
「お前な・・・はいそーですか、って俺が言うと思ってんのか!」
一瞬の沈黙のあと、ため息と供に返事が返ってきた。
「・・・思ってない」
すんなりと言われて、充槻は肩の力が抜けた。
「分かってんじゃねーか」
「いばるな」
「で?住所は?」
聞き出すまで電話は切らないだろう・・・いい加減に分かっていたので、悠宇は大人しく住所を言った。
「今から行く・・・」
「好きにすれば?」
そう言って電話を切って約10分後、充槻は聞き出した住所へとたどり着いた。
そこは充槻も知っていた新築のマンションで、共用のエントランスへと続く階段の中ほどに、タバコをくわえた悠宇が座っていた。
髪は下ろしてあったが、Tシャツにジーンズというラフな格好だった。
「気が済んだ?」
充槻の顔を見るなり、悠宇はそう言った。
「ずいぶんだな」
「はいはい」
その声は、ため息と供に出てきた。
「タバコ吸ってたか、今まで」」
言いながら、充槻はその隣に腰掛けた。
「やめてた」
「やめた?」
「有里がよしなさい、って」
言いそうだな・・・充槻は思った。
「いつから吸ってんだよ?」
「嵐山にいた時にね」
「松原か」
「まあね」
「予想どーりだな」
軽く笑った。
「あ・・・これ、あげる」
ひょいっと、自分が手にしていたタバコを箱ごと、差し出した。
「は?」
思わず受け取って見てみると、1・2本しか減ってなかった。
「全部吸う前に湿気るから」
「じゃ、もらうケドさ」
遠慮なくもらい、火をつける。
お互いの紫煙を少し眺めてから、充槻は口を開いた。
「ずいぶん慌しい引越しじゃねーか」
「人の勝手」
「雲隠れでもするつもりだったのかよ?」
「いや」
そう言うと、悠宇は立ち上がった。
「悪いと思ってた」
「は?」
「学校も近くなったし、送り迎えしなくて済むだろうと思って、住所を言う気がなかった」
「お前・・・」
「足に使われるの、いいことじゃないでしょ」
つまりは、充槻のことを考えてのこと、と。
「そーゆーわけで、明日から来なくていいから」
その顔は、いたって普通で何の表情もなく、充槻はイラっとした。
「そう言えば、俺が来なくなると思ってたかよ?」
「・・・半分は」
「半分?」
「メールに住所を書けば、有無を言わさず明日の朝、ここにいるだろうし。書かなきゃ、聞き出されると思ってた」
「分かってるじゃねーか」
「とにかくいいから」
「待てよ」
充槻は立ち去ろうとする悠宇の腕を掴んだ。
「なに考えてるんだよ、お前?」
「・・・」
悠宇の視線から、充槻が外された。
「水沢!」
すると、ややあってから小さな声で返事が返ってきた。
「ほっといて欲しいときくらい、あんだよ」
「・・・」
思わず手が緩むと、するりと充槻の腕を解いて、悠宇は振り返りもせずにエントランスへ消えていった。
その時の、思いつめた様な横顔が頭にこびりついて、充槻はその夜殆ど寝れなかった。
酒井田に聞いた話では、水沢は5年ほど前に1年近く臣人達と一緒に行動していたが、その後3年ほど姿を表さず、色々な噂が流れた。
そしてひょっこり、今年になって姿を見せた・・・それがちょうど、初めて会った春先のことだと聞いた。
両親が亡くなって嵐山をやめ、有里と一緒の中学に行っていた話と統合すると、辻褄は合った。
真相は知らないにしろ、臣人の先日の言葉もあり、充槻はなにかが心に引っかかった。
だからこそ余計に、次の日の朝、悠宇を迎えに行った。
「・・・いいって言ったのに」
充槻の顔を見るなり、悠宇はため息と供にそう言った。
「俺には、構ってくれって言ってるように見えたぜ」
「ヤなヤツ」
悠宇は目を伏せながらそう言った。
「上等だよ」
そう言うと、充槻は悠宇の左腕を掴み、引き寄せた。
「ま。納得できる答えでもくれねー限り、俺はカンタンには引き下がらねーから覚えとけよ」
「・・・覚えとく」
そしてまた、悠宇を送り迎えする日々がはじまった。
途中のあとがき
最近、書けば書くほど「悠宇ってイヤなおんな〜」と思うようになってきた。
たぶん、だからこそ・・・そして、未知の部分で想像膨らませるのが面白いから、男側(瞳・充槻)目線で書いているんだろうなぁ自分、と思うようになってきた。
それに、悠宇側から話書くと暗いんだもん!
まああまたここで、ひと段落です。
夜になってから殆どほったらかしていた携帯を見ると、メールが入っているのに気づいた。
それはあの、悠宇が学校を休んで送り迎えをしなくなってから、ようやっと入った連絡だった。
「おせーよ」
悪態をつきながら開けてみる。
件名:無題
本文:引っ越したから
「は?」
訳が分らず、充槻は慌てて電話をかけた。
「はい?」
電話の向こうの悠宇の様子は、いたって普段通りだった。
「水沢?!引越したって、なんだよ!急に!」
「そのまま、なんだけど」
それがなに?とでも言いたい様な口調だった。
「新居、どこだよ!」
「いいって、別に」
「何が!」
「知らなくていいって」
「お前な・・・はいそーですか、って俺が言うと思ってんのか!」
一瞬の沈黙のあと、ため息と供に返事が返ってきた。
「・・・思ってない」
すんなりと言われて、充槻は肩の力が抜けた。
「分かってんじゃねーか」
「いばるな」
「で?住所は?」
聞き出すまで電話は切らないだろう・・・いい加減に分かっていたので、悠宇は大人しく住所を言った。
「今から行く・・・」
「好きにすれば?」
そう言って電話を切って約10分後、充槻は聞き出した住所へとたどり着いた。
そこは充槻も知っていた新築のマンションで、共用のエントランスへと続く階段の中ほどに、タバコをくわえた悠宇が座っていた。
髪は下ろしてあったが、Tシャツにジーンズというラフな格好だった。
「気が済んだ?」
充槻の顔を見るなり、悠宇はそう言った。
「ずいぶんだな」
「はいはい」
その声は、ため息と供に出てきた。
「タバコ吸ってたか、今まで」」
言いながら、充槻はその隣に腰掛けた。
「やめてた」
「やめた?」
「有里がよしなさい、って」
言いそうだな・・・充槻は思った。
「いつから吸ってんだよ?」
「嵐山にいた時にね」
「松原か」
「まあね」
「予想どーりだな」
軽く笑った。
「あ・・・これ、あげる」
ひょいっと、自分が手にしていたタバコを箱ごと、差し出した。
「は?」
思わず受け取って見てみると、1・2本しか減ってなかった。
「全部吸う前に湿気るから」
「じゃ、もらうケドさ」
遠慮なくもらい、火をつける。
お互いの紫煙を少し眺めてから、充槻は口を開いた。
「ずいぶん慌しい引越しじゃねーか」
「人の勝手」
「雲隠れでもするつもりだったのかよ?」
「いや」
そう言うと、悠宇は立ち上がった。
「悪いと思ってた」
「は?」
「学校も近くなったし、送り迎えしなくて済むだろうと思って、住所を言う気がなかった」
「お前・・・」
「足に使われるの、いいことじゃないでしょ」
つまりは、充槻のことを考えてのこと、と。
「そーゆーわけで、明日から来なくていいから」
その顔は、いたって普通で何の表情もなく、充槻はイラっとした。
「そう言えば、俺が来なくなると思ってたかよ?」
「・・・半分は」
「半分?」
「メールに住所を書けば、有無を言わさず明日の朝、ここにいるだろうし。書かなきゃ、聞き出されると思ってた」
「分かってるじゃねーか」
「とにかくいいから」
「待てよ」
充槻は立ち去ろうとする悠宇の腕を掴んだ。
「なに考えてるんだよ、お前?」
「・・・」
悠宇の視線から、充槻が外された。
「水沢!」
すると、ややあってから小さな声で返事が返ってきた。
「ほっといて欲しいときくらい、あんだよ」
「・・・」
思わず手が緩むと、するりと充槻の腕を解いて、悠宇は振り返りもせずにエントランスへ消えていった。
その時の、思いつめた様な横顔が頭にこびりついて、充槻はその夜殆ど寝れなかった。
酒井田に聞いた話では、水沢は5年ほど前に1年近く臣人達と一緒に行動していたが、その後3年ほど姿を表さず、色々な噂が流れた。
そしてひょっこり、今年になって姿を見せた・・・それがちょうど、初めて会った春先のことだと聞いた。
両親が亡くなって嵐山をやめ、有里と一緒の中学に行っていた話と統合すると、辻褄は合った。
真相は知らないにしろ、臣人の先日の言葉もあり、充槻はなにかが心に引っかかった。
だからこそ余計に、次の日の朝、悠宇を迎えに行った。
「・・・いいって言ったのに」
充槻の顔を見るなり、悠宇はため息と供にそう言った。
「俺には、構ってくれって言ってるように見えたぜ」
「ヤなヤツ」
悠宇は目を伏せながらそう言った。
「上等だよ」
そう言うと、充槻は悠宇の左腕を掴み、引き寄せた。
「ま。納得できる答えでもくれねー限り、俺はカンタンには引き下がらねーから覚えとけよ」
「・・・覚えとく」
そしてまた、悠宇を送り迎えする日々がはじまった。
途中のあとがき
最近、書けば書くほど「悠宇ってイヤなおんな〜」と思うようになってきた。
たぶん、だからこそ・・・そして、未知の部分で想像膨らませるのが面白いから、男側(瞳・充槻)目線で書いているんだろうなぁ自分、と思うようになってきた。
それに、悠宇側から話書くと暗いんだもん!
まああまたここで、ひと段落です。
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