オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
そして、月曜日。
そして、月曜日。
悠宇のマンションにある共同スペースの一つとしてのゲストルームで会うのはどうか?との連絡を、室田は了承した。
指示されたとおりにオートロックの玄関から最上階へ上がりその部屋に入ると、シンプルな家具などが置かれたそのゲストルームは、ちょっとしたホテルともいえる感じだった。
ユニットバスとトイレ。2口のコンロにシンクがあるカウンターキッチンには、小さいながらも冷蔵庫とレンジも完備。4人がけのダイニングテーブルセットに、TVにシングルベッドが2つ。
「普通に暮らせるな」と、思わず言ってしまうほどだった。
室田がその室内に入ってややあってから、ドアがノックされ、悠宇が入ってきた。
「水沢」
薄い生地で細めのシルエットのニットに、深くVに空いたニットの胸元からはインナーのコットンのキャミソールがのぞき、昨日と同じジーンズにスニーカー、という姿だった。
「呼びつけて、ごめんなさい」
「いや、大丈夫だから」
そもそも会うことを希望したのは、室田の方だ。
「頂き物なんだけど、ケーキ持ってきた。甘いもの、嫌い?」
胸の前に抱いていた箱を、キッチンのカウンターに置きながら、軽く首をかしげる。
「いや。食べれるよ」
「じゃあ、コーヒーか紅茶入れるけど、どっちがいい?」
言いながらキッチンの方に向かう悠宇を、ダイニングテーブル近くで引き止める。
「室田?」
「水沢・・・」
そのまま引き寄せて、抱きしめる。
「あの。コーヒーか紅茶は?」
「あとでいいから」
即座にそう言われてしまうと、何も言い返せなくなるというもの。
「ずっと、会いたかった」
「・・・」
5年間の間の悠宇の変化は、見るだけでも十分すぎるほどに分かるものだったが、抱きしめると、さらにそれが分かる。
室田が思っていた以上に、柔らかい体つきになっていた。
けれど、自分の腕の中に入って、更に自分の腕があまる安心感のようなものは変わりがなかった。
「水沢・・・」
そっと顔を近づけると、その分、悠宇は顔と体を離していった。
「水沢?」
「・・・」
悠宇はうつむいた。
「彼氏、いるの?」
「・・・いない、けど」
「けど?」
あくまでも、室田は優しく問う。
「迷惑?」
「そういう、わけじゃ」
その表情は、戸惑いに満ちていた。
「じゃあ。俺と付き合ってくれる?」
「でも」
「でも?」
悠宇の戸惑うを表情を見て溜め息をつくと、室田はもう一度やんわりと悠宇を抱きしめた。
「松原と付き合ってるってウワサ、あるらしいけど?」
その言葉に、一瞬体が固まる。
「そういうわけじゃ」
「じゃあ。とりあえず、俺のこと、嫌いじゃないよね?」
ややあってから、こくりと頷く。
「好きじゃなきゃ、付き合えない?」
「あんまり、考えたこと、ない」
「なるほどね」
相変わらず受け身なわけかぁと思い出し、軽く溜め息をつく。
「嫌いじゃないから付き合う、はナシ?」
「・・・でもそれじゃ」
「俺は、それで十分」
にこりと笑う。
「それでいい?」
その言葉に、腕に添えられた手が、きゅっと上着を握った。
「じゃ。今から俺の彼女ね」
少し体を離すと、室田はそっと右手で頬をなぜた。
「室田・・・」
「好きだよ、水沢」
そして顔を寄せると、悠宇は大人しく瞳を閉じた。
何度も唇を重ねては離すキスは、まるで5年分の思いを伝えるかの様だった。
それから、そんな逢瀬を週に1回ないし2回続けた。
もちろんその中には、外出・・・というか、悠宇が外に連れ出されたデートも入っていた。
「ありがちだけどさ、映画とか行かない?」
そう言われ、悠宇は面食らった。
「あ〜。映画とか、わざわざ行かない?」
「ほとんど」
「行きたいところとか、ないの?」
「別に」
「水沢、趣味って何だっけ?」
「特に」
あ〜コイツ、真面目なんだっけか?
5年前の夏を思い出す。
朝、そこそこ早く起きて、午前中は父親が教えている道場の片隅で、その稽古を大人しく眺め。
昼食の後はかならず宿題をやり、夕方に近くなれば母親の家事を手伝うか、本でも読みながら留守番。
ケガのせいもあったかもしれないが、特に外出するでもなく、ゲームやTVをするわけでもなく、そしてもちろん親にワガママを言うわけでもなく・・・だからこそ、側にいられたという事もあったが、
「まぢかよ?」
と思った位に、大人しかったのだ。
思わず出そうになったため息を、室田は押し殺した。
「じゃ。映画行くのはイヤ?」
「そういうわけじゃ」
お決まりの台詞の後、
「じゃ、決定」
と笑顔に押し切られて、悠宇は珍しく外出したのだった。
そしてまた、室田としても、思いがけないこともあった。
座る前に薄手のコートを脱いだその下からは、濃いパープルのオフタートルのニット・ワンピースが現れたのだ。
長めの袖を手首の辺りでくしゅくしゅとたるませ、その上からドレス・ウオッチをはめ、ローウエストの切り替えの下はプリーツになっており、切り替え部分にはシフォンのリボンが通されていた。
スタイルのよさを、さりげなく伝えるデザインだった。
そして、黒いロングブーツ。
「水沢・・・」
「?」
するりと座席に座って、小首をかしげる。
そんな悠宇の肩に、室田は腕をまわして引き寄せた。
「ちょっと!」
抵抗する悠宇を無視して、耳元でささやいた。
「ワンピース、似合ってるよ」
「・・・」
とたんに、大人しくなる。
「かわいいよ」
更にそう言われた悠宇は、少し眉根を寄せると、わざと視線をそらした。
それが照れ隠しだと分った室田は、くすくすと笑いながら、
「次はどこに行くかなぁ」
と、思いをめぐらせた。
途中のあとがき
詳しく書く場面がなかったので補足ですが、室田はバイクのレーサーです。
小さい頃からポケバイやってて、だんだんと大きな単車へ移っていった・・・で、戦績がいいことからスカウトされて、高校卒業と同時にレーサーへ。
なんか、車のF1なんかよりは資金的にもなりやすいそうな。
だからいいかな〜と。
しっかし・・・室田、すけべおやじみたいですねぇ。
基本的に性格などは、このキャラが誕生した時から変わらないのですが、どーも最近BLEACHの浦原さんに似てきた気が(汗
なぜ?
悠宇のマンションにある共同スペースの一つとしてのゲストルームで会うのはどうか?との連絡を、室田は了承した。
指示されたとおりにオートロックの玄関から最上階へ上がりその部屋に入ると、シンプルな家具などが置かれたそのゲストルームは、ちょっとしたホテルともいえる感じだった。
ユニットバスとトイレ。2口のコンロにシンクがあるカウンターキッチンには、小さいながらも冷蔵庫とレンジも完備。4人がけのダイニングテーブルセットに、TVにシングルベッドが2つ。
「普通に暮らせるな」と、思わず言ってしまうほどだった。
室田がその室内に入ってややあってから、ドアがノックされ、悠宇が入ってきた。
「水沢」
薄い生地で細めのシルエットのニットに、深くVに空いたニットの胸元からはインナーのコットンのキャミソールがのぞき、昨日と同じジーンズにスニーカー、という姿だった。
「呼びつけて、ごめんなさい」
「いや、大丈夫だから」
そもそも会うことを希望したのは、室田の方だ。
「頂き物なんだけど、ケーキ持ってきた。甘いもの、嫌い?」
胸の前に抱いていた箱を、キッチンのカウンターに置きながら、軽く首をかしげる。
「いや。食べれるよ」
「じゃあ、コーヒーか紅茶入れるけど、どっちがいい?」
言いながらキッチンの方に向かう悠宇を、ダイニングテーブル近くで引き止める。
「室田?」
「水沢・・・」
そのまま引き寄せて、抱きしめる。
「あの。コーヒーか紅茶は?」
「あとでいいから」
即座にそう言われてしまうと、何も言い返せなくなるというもの。
「ずっと、会いたかった」
「・・・」
5年間の間の悠宇の変化は、見るだけでも十分すぎるほどに分かるものだったが、抱きしめると、さらにそれが分かる。
室田が思っていた以上に、柔らかい体つきになっていた。
けれど、自分の腕の中に入って、更に自分の腕があまる安心感のようなものは変わりがなかった。
「水沢・・・」
そっと顔を近づけると、その分、悠宇は顔と体を離していった。
「水沢?」
「・・・」
悠宇はうつむいた。
「彼氏、いるの?」
「・・・いない、けど」
「けど?」
あくまでも、室田は優しく問う。
「迷惑?」
「そういう、わけじゃ」
その表情は、戸惑いに満ちていた。
「じゃあ。俺と付き合ってくれる?」
「でも」
「でも?」
悠宇の戸惑うを表情を見て溜め息をつくと、室田はもう一度やんわりと悠宇を抱きしめた。
「松原と付き合ってるってウワサ、あるらしいけど?」
その言葉に、一瞬体が固まる。
「そういうわけじゃ」
「じゃあ。とりあえず、俺のこと、嫌いじゃないよね?」
ややあってから、こくりと頷く。
「好きじゃなきゃ、付き合えない?」
「あんまり、考えたこと、ない」
「なるほどね」
相変わらず受け身なわけかぁと思い出し、軽く溜め息をつく。
「嫌いじゃないから付き合う、はナシ?」
「・・・でもそれじゃ」
「俺は、それで十分」
にこりと笑う。
「それでいい?」
その言葉に、腕に添えられた手が、きゅっと上着を握った。
「じゃ。今から俺の彼女ね」
少し体を離すと、室田はそっと右手で頬をなぜた。
「室田・・・」
「好きだよ、水沢」
そして顔を寄せると、悠宇は大人しく瞳を閉じた。
何度も唇を重ねては離すキスは、まるで5年分の思いを伝えるかの様だった。
それから、そんな逢瀬を週に1回ないし2回続けた。
もちろんその中には、外出・・・というか、悠宇が外に連れ出されたデートも入っていた。
「ありがちだけどさ、映画とか行かない?」
そう言われ、悠宇は面食らった。
「あ〜。映画とか、わざわざ行かない?」
「ほとんど」
「行きたいところとか、ないの?」
「別に」
「水沢、趣味って何だっけ?」
「特に」
あ〜コイツ、真面目なんだっけか?
5年前の夏を思い出す。
朝、そこそこ早く起きて、午前中は父親が教えている道場の片隅で、その稽古を大人しく眺め。
昼食の後はかならず宿題をやり、夕方に近くなれば母親の家事を手伝うか、本でも読みながら留守番。
ケガのせいもあったかもしれないが、特に外出するでもなく、ゲームやTVをするわけでもなく、そしてもちろん親にワガママを言うわけでもなく・・・だからこそ、側にいられたという事もあったが、
「まぢかよ?」
と思った位に、大人しかったのだ。
思わず出そうになったため息を、室田は押し殺した。
「じゃ。映画行くのはイヤ?」
「そういうわけじゃ」
お決まりの台詞の後、
「じゃ、決定」
と笑顔に押し切られて、悠宇は珍しく外出したのだった。
そしてまた、室田としても、思いがけないこともあった。
座る前に薄手のコートを脱いだその下からは、濃いパープルのオフタートルのニット・ワンピースが現れたのだ。
長めの袖を手首の辺りでくしゅくしゅとたるませ、その上からドレス・ウオッチをはめ、ローウエストの切り替えの下はプリーツになっており、切り替え部分にはシフォンのリボンが通されていた。
スタイルのよさを、さりげなく伝えるデザインだった。
そして、黒いロングブーツ。
「水沢・・・」
「?」
するりと座席に座って、小首をかしげる。
そんな悠宇の肩に、室田は腕をまわして引き寄せた。
「ちょっと!」
抵抗する悠宇を無視して、耳元でささやいた。
「ワンピース、似合ってるよ」
「・・・」
とたんに、大人しくなる。
「かわいいよ」
更にそう言われた悠宇は、少し眉根を寄せると、わざと視線をそらした。
それが照れ隠しだと分った室田は、くすくすと笑いながら、
「次はどこに行くかなぁ」
と、思いをめぐらせた。
途中のあとがき
詳しく書く場面がなかったので補足ですが、室田はバイクのレーサーです。
小さい頃からポケバイやってて、だんだんと大きな単車へ移っていった・・・で、戦績がいいことからスカウトされて、高校卒業と同時にレーサーへ。
なんか、車のF1なんかよりは資金的にもなりやすいそうな。
だからいいかな〜と。
しっかし・・・室田、すけべおやじみたいですねぇ。
基本的に性格などは、このキャラが誕生した時から変わらないのですが、どーも最近BLEACHの浦原さんに似てきた気が(汗
なぜ?
PR
この記事にコメントする
Re:うわ〜
コメントありがとうございます。
>少々強引な彼。どこぞの誰かさんのようです。
>思わず重ねてしまいます。
あはは・・・そうですか?
どこぞの誰かさんが本当にもっと強引ならば、紅梅さんの創作意欲が沸かなかったかもしれませんね?
この先も、お楽しみいただければ幸いです。
>少々強引な彼。どこぞの誰かさんのようです。
>思わず重ねてしまいます。
あはは・・・そうですか?
どこぞの誰かさんが本当にもっと強引ならば、紅梅さんの創作意欲が沸かなかったかもしれませんね?
この先も、お楽しみいただければ幸いです。