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オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
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 それはある金曜日の事だった。



 帰宅してからどこぞへ出かけたらしく、悠宇の姿がなかった。
 完全に日が落ちて、夕飯時になった頃に悠宇は帰宅したようだったが、その時、麟は自分の部屋でうとうとしていた。
 悠宇の帰宅の気配を感じて起き、ダイニングへと向かった。
 そして、ダイニングテーブルの上に目をやると、今からサンドウィッチを入れてピクニックでも行く様なかごが置かれており、中には白い毛玉があった。
 えーと?
 それをじーっと見つめていると、不意にその毛玉が動いた。
 「?」
 そして、ブルーの瞳がきらりと光った。
 「にゃぁ」
 「!!」
 麟は、思いっきり固まった。

 悠宇が着替えて部屋から出てくると、ダイニングテーブルの上に置いたネコと麟が見つめあったまま、固まっていた。
 「疾風?」
 声をかけながら近づくが、麟の反応はなかった。
 「疾風?」
 手の届く距離に近づいてからもう一度声をかけると、麟とネコがシンクロして、悠宇の方へ顔を向けた。
 「どしたの?」
 「・・・これ」
 ゆっくりとネコを指差す。
 「実家から預かってきた」
 「は?」
 「急に・・・法事が入って、ペットホテルを予約できなかったって」
 「はあ」
 麟の反応に違和感を覚え、一瞬考えてから、悠宇は聞いた。
 「まさか疾風、ネコ嫌い?」
 「・・・えーと。いや、そーゆーわけじゃないんだけど」
 「?」
 「俺、ペット飼ったことないから」
 「あ。この子、ちゃんと躾されてるから」
 「えーと。そうじゃなくて・・・なんつーのか、慣れない」
 「世話はちゃんとするから。それに、明後日には返すから」
 それは、週末だけ預かるという事だった。
 「あ、うん」
 ゆっくりと頷く。
 悠宇と麟のやり取りの間、ネコは尻尾をぱたぱたとさせながらそれぞれの顔を見比べていた。
 「よかったね、嫌われてないよ」
 言いながら、悠宇はネコを抱き上げた。
 ふわりと抱きあげられたネコは、悠宇に撫ぜられ、幸せそうに眼を細めた。
 へえ。そんな顔、すんだ。
 柔らかい表情でネコを見つめる悠宇に、麟は軽く驚いた。
 「えと・・・ネコ、名前は?」
 「名前?」
 「あんだろ?」
 「うん」
 「なんての?」
 「おじょうさま」

 「はあ?!」

 麟の思考回路が、一瞬止まった。
 「それ、名前か?」
 「そう」
 「誰が付けたんだよ?」
 そう反論すると、悠宇が鋭い目つきで睨んだ。
 「悪かったね」
 「あ・・・いや」
 どーゆーセンスだよ?
 麟は思わず心の中でつぶやいた。
 確かに、白くて長い毛がふわふわしているネコには、多少の気品を感じないではないが。
 「おじょうさま?」
 「にゃ」
 思わず反応する、おじょうさま。
 「じゃあ、メス?」
 「オス」
 「は?」
 麟は、迷路にはまりこんだような錯覚に陥った。
 「抱っこしてみる?」
 「え?」
 麟は思わずひきつった。
 「大丈夫、大人しい子だから」
 悠宇は、麟の返事も聞かずにネコを差し出した。
 「え?あ?」
 おたおたしているうちに、腕の中におさまってしまった。
 うわ・・・。
 ロングコートなせいで多少温かいが、その感覚に麟は驚いた。
 「すげ・・・動くぬいぐるみ」
 ふわりとした柔らかさ。
 かわいくないわけはないが、多少の不安を感じる。
 「みゃう」
 おじょうさまもおじょうさまで、じっと麟を見つめていた。
 「じゃあ、そのかごに戻して。夕飯作るから」
 「え?」
 慌てる麟を無視して、悠宇はすたすたとキッチンへと入って行った。
 「・・・だってさ」
 思わず話しかけると、
 「にゃあ」
 と、おじょうさまは返事をした。

 夕飯は、悠宇お得意のパスタとスープだった。
 それを2人で食べていると同時、ダイニングの一角に敷かれた専用ラグの上で、おじょうさまは大人しくキャット・フードを食べていた。
 食べ終わると大人しく待っており、2人が食事を終えて悠宇が片付けにキッチンへ行き、麟がリビングのソファに座ってはたと気付くと、左わきにちょこんとおじょうさまが座っていた。
 「あの?」
 話しかけても、返事が返ってくるわけはない。
 「神崎の所に行けよ」
 「みゅ」
 タイミング良く返事をするが、動かない。
 えーと?これは?
 慣れない対応に、それでも一応思考回路をフル回転させてみるが、決定策は思い浮かばなかった。
 無意識のうちの見つめあっていると、小さな足音が近づいてきた。
 「どーしたの?」
 「あ・・・いや」
 「おじょうさま、疾風にかまって欲しいんじゃないの?」
 言いながら、悠宇はしゃがみこんだ。
 「そー言われても」
 「おじょうさま、疾風の事が気に入ったんだ」
 自分の事を言われたのがわかったのが、尻尾をぱたりと一振り。
 「あのー、神崎さん?」
 「ん?」
 「ネコ語がわかるなら、教えてほしーんだけど」
 「義務教育で習ったじゃん」
 「・・・をい」
 表情一つ変えずに言い放った悠宇に対して、怒りよりも呆れが先に来た。
 「お風呂入るから、おじょうさまをよろしく」
 「ええ?!」
 そもそもがマイペースな悠宇は、おじょうさまを一撫ぜすると、すたすたと自分の部屋に入って行った。
 「まぢかよ」
 みつめるが、もちろん返事はしない。
 それどころか、何かを感じ取ったのかとことこと麟の真正面から近づき、足の間で座って丸くなり、あまつさえ、太ももの上に手と頭を乗っけてきた。
 麟はがくりとうなだれると、
 「勘弁してください」
 と、つぶやいた。





あとがき

 どーやら私、にゃんこと触れ合いたいらしいゞ( ̄∇ ̄;)ヲイヲイ

 悠宇の実家が、ネコを飼っているという設定は、前々からありました。
 正確には、じーちゃんばーちゃんが飼ってるんですが。
 ペルシャとかヒマラヤンとかに「おじょうさま」って似合うと思うんですけどねぇ。

 あ・・・ちなみに私は、ネコは飼ってません。
 なので、未知数な話を書いてます≧(´▽`)≦アハハハ
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