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オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
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 その言葉を聞いた時、頭の中が真っ白になった。
 もちろん、自分の耳を疑った。
 言葉の意味を、正確に把握するまでに、更に時間がかかった。



 アイ・シテル・・・って?

 呆然としていると、首筋に唇が当てられたのが分った。
 「あ・・・」

 TDRに行こうと誘われて、了承したのは自分。
 泊まりでランドもシーもと言われて、思わず嬉しくなった。
 滅多にできることじゃないし。
 宿泊先のことを考えなかったのはウカツだったけど、スィートを取るなんて、考えられなかった。
 どうにかなると思ってた。
 でも・・・この状況。
 「んっ」
 首筋を軽く吸われた感触に、目を閉じる。
 見えはしないけど、さっきも同じ事をされたけど、経験で分った・・・キスマーク、だ。
 いつだったか先輩に同じ事をされた。
 そんなつもりはなかったから、その先を拒んだ。
 あの時は有里の家で有里がいた・・・けど、今は誰もいない。
 「むろ、た」
 両肩を押し返す。
 「ん?」
 押し当てられていた唇が離れ、思わず安堵の溜め息をついた。
 「なに?」
 柔らかい、声。
 「あの・・・」
 表情をうかがうと、いつもと同じ。
 何かと言うとはぐらかす、冗談交じりの言葉を言う、いつもの表情。
 冗談、なんだ。
 どことなく安心して目を伏せると、バスローブの前が完全にはだけていたのが目に入った。
 「!」
 慌てて、空いている左手で胸を隠した。
 そう言えば、
 『水沢が欲しい』
 『水沢を抱きたい』
 と言われて、ベルトを解かれていたのを思い出す。
 「勇樹?」
 名前を呼ばれて、我に返る。
 「あの」
 「なに?」
 「うそでしょ?」
 「なにが?」
 そう言って笑うのは、いつもと同じ表情だった。
 「・・・」
 どう聞いていいのか、分らない。
 戸惑っていると、唇が重ねられた・・・ほんの、一瞬。
 「自分の彼女とこーゆー事しないで、他の誰とすんの?」
 「!」
 それはそう、だけど。
 「俺に抱かれるの、イヤ?」
 「・・・」
 そんなこと、考えたことすらなかった。
 室田はくすりと笑うと、胸を隠していた左手をそっと取り去って、指を絡めた。
 「!」
 思わず、軽く息を呑んむ。
 「勇樹」
 耳元で囁かれた後、また、首筋に唇が這わされる。
 「っ!」
 室田の髪の毛に首筋をくすぐられ、なんともいえない感覚が背中を登っていく。
 それとは逆に、室田の唇は徐々に降りていく。
 だめ、だってば。
 また一つ、鎖骨の辺りに印が刻まれたのが分った。
 「むろ・・・た」
 そして、左胸にも印が刻まれる。
 「あ・・・だ、め」

 けどもちろん、聞き入れられることはなかった。
 それは、よく考えれば分ること。
 あの夏に別れてから5年たって再会しても、室田は私を好きだと言った。
 そして以前よりも、キスを求める回数も、体に触れる回数も増えていた事を。
 何度もその腕に抱きしめられてはいたけど、洋服越しとは、まるで違う感覚。
 少しづつ、肌を統べられていく。
 戸惑う気持ちとは裏腹に、室田は先に進んでいく。
 こんな事をしても、たどり着く先には何もないのに。

 「・・・ん」
 目が覚めて体を起してから、まだほの暗い冬の朝の室温の寒さと、何も来ていない自分の姿に気づいて、慌ててシーツを手繰り寄せた。
 その手元を見ると、シーツで隠し切れなかった胸元に、いくつかの印が刻まれているのが目に入った。
 昨夜、何があったのかは明白だった・・・けれど、一夜を共にした相手は、幸か不幸か、同じベッドにはいなかった事に思わず安堵の溜め息とつく・・・と、
 「あれ?勇樹?」
 不意に、声をかけられる。
 シャワーを浴びた様子のその声の主は、上半身は裸のままタオルで濡れた髪を拭きつつ、ベッドに近寄って腰かけた。
 「おはよ」
 「!」
 屈託のない笑顔にどうしていいのか分からなくて、思わず、シーツを胸元に抱き寄せた。
 それと同時に、愕然とする。
 年齢差を考えれば当然かもしれなかったが、慣れている、その対応に。
 自分の戸惑いとは、あまりにもま逆。
 「どうした?」
 「あの・・・だって」
 こんな状況で、どんな顔すればいいのか分からない。
 「あの・・・」
 視線を彷徨わせていると、頬に手が添えられ、顔を向けさせられた。
 「室田」
 「瞳、でいいよ」
 そして、軽く唇が重ねられた。
 「おはよ」
 「おはよう、ございます」
 「まだ6時前だよ。目、覚めちゃった?」
 問いかけに、俯いたままでこくりと頷く。
 「いつも、このくらいの時間に起きてるから」
 「そっか」
 すると、当然のごとく抱きしめられ、思わず息がとまった。
 「勇樹」
 わずかに柔らかい声で耳元でささやかれ、思わず顔を向けた時には、遅かった。
 待っていましたとばかりに、唇をふさがれた。
 「ん・・・」
 何度も何度も重ねられる唇からは、逃げることができなかった。
 ただでさえ、その腕はがっちりと腰に回されていたし、いつもいつもペースに巻き込まれていた。
 そして、ようやっとその唇から解放された時、天地が先刻とは変っていた。
 「!?」
 その腕の中に捕えられていた。
 「勇樹」
 「な、に?」
 警戒しつつ返事をすると、呆れるほどの笑みが返された。
 「ちょっとだけ」
 「え?」

 ようやっとその腕から解放され「支度するから」と理由を付けて、とりあえず洗面所に逃げた。
 けだるい感覚と、体の奥の痛み。

 ・・・あたし、何してるんだろう?

 そう、鏡の中の自分に問いかけた。





あとがき

 ちぇー、やっぱり暗いなぁ( ´△`)アァ-
 悠宇の恋愛って・・・常に迷ってるんだなぁということが分かってきた、この頃。

 「恋愛」ってものが、その人の中に入ってないことってあると思うんですけど・・・学生時代の私は、少なくともそうでした。
 部活とか、友達と遊ぶのが楽しかった(爆
 そーんな状態だってのに、相手のペースに巻き込まれて恋愛の中に身を置くことになってしまった苦悩。
 ま、そうじゃなくても、悠宇は迷ってますけどね。
 今の自分のわがままが許されるのには、代償があることが。

 一言でいえば、瞳と悠宇は悲恋、なんでしょうねぇ( -_-)旦~ しみじみ...
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