オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
×
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
その言葉を聞いた時、頭の中が真っ白になった。
もちろん、自分の耳を疑った。
言葉の意味を、正確に把握するまでに、更に時間がかかった。
もちろん、自分の耳を疑った。
言葉の意味を、正確に把握するまでに、更に時間がかかった。
アイ・シテル・・・って?
呆然としていると、首筋に唇が当てられたのが分った。
「あ・・・」
TDRに行こうと誘われて、了承したのは自分。
泊まりでランドもシーもと言われて、思わず嬉しくなった。
滅多にできることじゃないし。
宿泊先のことを考えなかったのはウカツだったけど、スィートを取るなんて、考えられなかった。
どうにかなると思ってた。
でも・・・この状況。
「んっ」
首筋を軽く吸われた感触に、目を閉じる。
見えはしないけど、さっきも同じ事をされたけど、経験で分った・・・キスマーク、だ。
いつだったか先輩に同じ事をされた。
そんなつもりはなかったから、その先を拒んだ。
あの時は有里の家で有里がいた・・・けど、今は誰もいない。
「むろ、た」
両肩を押し返す。
「ん?」
押し当てられていた唇が離れ、思わず安堵の溜め息をついた。
「なに?」
柔らかい、声。
「あの・・・」
表情をうかがうと、いつもと同じ。
何かと言うとはぐらかす、冗談交じりの言葉を言う、いつもの表情。
冗談、なんだ。
どことなく安心して目を伏せると、バスローブの前が完全にはだけていたのが目に入った。
「!」
慌てて、空いている左手で胸を隠した。
そう言えば、
『水沢が欲しい』
『水沢を抱きたい』
と言われて、ベルトを解かれていたのを思い出す。
「勇樹?」
名前を呼ばれて、我に返る。
「あの」
「なに?」
「うそでしょ?」
「なにが?」
そう言って笑うのは、いつもと同じ表情だった。
「・・・」
どう聞いていいのか、分らない。
戸惑っていると、唇が重ねられた・・・ほんの、一瞬。
「自分の彼女とこーゆー事しないで、他の誰とすんの?」
「!」
それはそう、だけど。
「俺に抱かれるの、イヤ?」
「・・・」
そんなこと、考えたことすらなかった。
室田はくすりと笑うと、胸を隠していた左手をそっと取り去って、指を絡めた。
「!」
思わず、軽く息を呑んむ。
「勇樹」
耳元で囁かれた後、また、首筋に唇が這わされる。
「っ!」
室田の髪の毛に首筋をくすぐられ、なんともいえない感覚が背中を登っていく。
それとは逆に、室田の唇は徐々に降りていく。
だめ、だってば。
また一つ、鎖骨の辺りに印が刻まれたのが分った。
「むろ・・・た」
そして、左胸にも印が刻まれる。
「あ・・・だ、め」
けどもちろん、聞き入れられることはなかった。
それは、よく考えれば分ること。
あの夏に別れてから5年たって再会しても、室田は私を好きだと言った。
そして以前よりも、キスを求める回数も、体に触れる回数も増えていた事を。
何度もその腕に抱きしめられてはいたけど、洋服越しとは、まるで違う感覚。
少しづつ、肌を統べられていく。
戸惑う気持ちとは裏腹に、室田は先に進んでいく。
こんな事をしても、たどり着く先には何もないのに。
「・・・ん」
目が覚めて体を起してから、まだほの暗い冬の朝の室温の寒さと、何も来ていない自分の姿に気づいて、慌ててシーツを手繰り寄せた。
その手元を見ると、シーツで隠し切れなかった胸元に、いくつかの印が刻まれているのが目に入った。
昨夜、何があったのかは明白だった・・・けれど、一夜を共にした相手は、幸か不幸か、同じベッドにはいなかった事に思わず安堵の溜め息とつく・・・と、
「あれ?勇樹?」
不意に、声をかけられる。
シャワーを浴びた様子のその声の主は、上半身は裸のままタオルで濡れた髪を拭きつつ、ベッドに近寄って腰かけた。
「おはよ」
「!」
屈託のない笑顔にどうしていいのか分からなくて、思わず、シーツを胸元に抱き寄せた。
それと同時に、愕然とする。
年齢差を考えれば当然かもしれなかったが、慣れている、その対応に。
自分の戸惑いとは、あまりにもま逆。
「どうした?」
「あの・・・だって」
こんな状況で、どんな顔すればいいのか分からない。
「あの・・・」
視線を彷徨わせていると、頬に手が添えられ、顔を向けさせられた。
「室田」
「瞳、でいいよ」
そして、軽く唇が重ねられた。
「おはよ」
「おはよう、ございます」
「まだ6時前だよ。目、覚めちゃった?」
問いかけに、俯いたままでこくりと頷く。
「いつも、このくらいの時間に起きてるから」
「そっか」
すると、当然のごとく抱きしめられ、思わず息がとまった。
「勇樹」
わずかに柔らかい声で耳元でささやかれ、思わず顔を向けた時には、遅かった。
待っていましたとばかりに、唇をふさがれた。
「ん・・・」
何度も何度も重ねられる唇からは、逃げることができなかった。
ただでさえ、その腕はがっちりと腰に回されていたし、いつもいつもペースに巻き込まれていた。
そして、ようやっとその唇から解放された時、天地が先刻とは変っていた。
「!?」
その腕の中に捕えられていた。
「勇樹」
「な、に?」
警戒しつつ返事をすると、呆れるほどの笑みが返された。
「ちょっとだけ」
「え?」
ようやっとその腕から解放され「支度するから」と理由を付けて、とりあえず洗面所に逃げた。
けだるい感覚と、体の奥の痛み。
・・・あたし、何してるんだろう?
そう、鏡の中の自分に問いかけた。
あとがき
ちぇー、やっぱり暗いなぁ( ´△`)アァ-
悠宇の恋愛って・・・常に迷ってるんだなぁということが分かってきた、この頃。
「恋愛」ってものが、その人の中に入ってないことってあると思うんですけど・・・学生時代の私は、少なくともそうでした。
部活とか、友達と遊ぶのが楽しかった(爆
そーんな状態だってのに、相手のペースに巻き込まれて恋愛の中に身を置くことになってしまった苦悩。
ま、そうじゃなくても、悠宇は迷ってますけどね。
今の自分のわがままが許されるのには、代償があることが。
一言でいえば、瞳と悠宇は悲恋、なんでしょうねぇ( -_-)旦~ しみじみ...
PR
この記事にコメントする