オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
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あれこれ干渉もせずに衣食住のうち2つ(食住)が満たされている環境は、けっして悪くない。
が。
ろくすぽ知らない相手と暮らす緊張感はある。
が。
その相手が、自分の聞いていた評判とここまで違うとなると、さらに困惑せざるを得ない。
『ケンカ、百錬練磨のツワモノ』という評判から想像するのは、普通はゴツイ男だ。
しかし、目の前にいるのは、身長160くらい。
華奢な上に料理上手で家庭的となると、あまりにも予想の範疇を超えていた。
そしてなおかつ、
「お茶入れる」
と言って台所に立ち、ガラスのポットの中で色づいていく紅茶をのんびり眺めるほどにおっとりだったのだ。
「水沢」
「ん?」
ゆっくりとこちらを振り返る顔は、あまりに無防備だ。
「・・・調子、悪いんスか?」
「なんで?」
「ぼーっとしてないっスか?」
「別に」
あっさり答えると、またポットの方を向く。
「左様で・・・」
朝は朝で、コーヒーメーカーを眺めながら出来上がりを待っていた。
今は今で、夕食後の紅茶を入れる。
どう贔屓目に見ても、かなりおっとりした性格なんだろうと思う。
それがどうなって、ツワモノなんて呼ばれる様になるんだ?
麟の思考回路の範疇を越えていた。
「疾風」
「はい?」
「ミルクと砂糖は?」
「ミルク、いります」
「りょーかい」
のんびり答えると、冷蔵庫から牛乳を取り出しピッチャーに移し、軽くレンジで温め始める。
なんだかなぁ。
麟はため息をついた。
同居を始めて1週間ほどたったある日。
麟は、同級生の神崎を何故か送り迎えしてる成田の事を思い出し、裏門で捕まえた。
「疾風?」
麟の顔を見た瞬間に充槻はすぐに麟の名を呼んだが、その表情には、麟が来た事に不信感を持っていた。
「ちょっと聞きたいこと、あんだけど?」
「あ?」
「水沢のこと、なんだけど」
「水沢?」
眉根を寄せる。
「なんつーか、キャラがよくわかんねーんだけど?」
「は?」
充槻が固まる。
「俺はお前にそう言いたいぞ」
「余計なお世話」
そう言葉を返しつつ、なんて説明すればいいんだ?と、麟は思ったが、すぐに考え方を改めた。
「どんなヤツ?って話」
そう言われた充槻は、何かを考えた表情を作り、その後、軽くため息をついた。
「俺だって、まだ1年も一緒にいねーから」
「へ?」
「小6の時に嵐山にいて、松原に連れまわされたせいで名前が売れて。去年、こっちに引越したらしい。俺が知ってるのは、そんだけ」
本当にそれだけかよ?と、麟は心の中で突っ込んだ。
「性格は?」
「まあ・・・いいヤツだよ。ジョーシキあるけど世間知らずの天然ボケだけどな」
「天然ボケ・・・」
その言葉に「やっぱり」と思うと同時に、さすがに麟も言葉を失った。
「育ちがいいんだろ?おっとりしてるよ・・・ケンカの時以外は」
「・・・」
「どっかにスイッチがあんだろーな、アレは」
呆れ顔だ。
「なんでアレでケンカに強いのか、よくわかんねーよ」
「はあ」
それには麟も、同意見だ。
やっぱりアレは天然かぁ・・・そう思っていると、
「お前と大差ねーけど」
と、充槻が言った。
「は?」
その台詞に、麟は声のトーンを上げた。
「桜井に言わせると、な」
「?」
「お前もいいヤツだと。優しいし大人しいし、女だったら彼女にするって言ってたぜ」
「なんだよ、ソレ」
「俺が知るか。桜井に聞けって」
「・・・」
麟の中に、軽い怒りの感情が湧いた。
「で?気が済んだのかよ?」
「え?・・・あ、まあ」
「じゃあ、お姫様が来たんで」
「え?」
慌てて麟が振り向くと、裏門からこちらに向かってくる悠宇の姿が目に入った。
「神崎・・・」
「どうかしたの?」
悠宇が問うと、
「なんでもねー」
と充槻が返し、
「俺だって知り合いなんだよ、コイツ」
と麟が充槻を指差した。
「そう」
「お前こそ、何で知り合いなんだよ?」
今度は麟は問うと、悠宇は軽く驚いた表情を作り、それを見た充槻がぷっと吹き出した。
「なんだよ!」
食って掛かるが、充槻は返事もできずにくつくつと笑い続けた。
「おかしすぎる」
「成田!」
充槻に反論してから悠宇の方を振り向くと、悠宇も軽く笑っていた。
「なんだよ、神崎」
「別に」
お得意の・・・というか、本当になんでもない様な表情で言う。
「誰かから連絡あった?充槻?」
「・・・いや、ない」
笑いをこらえながら、充槻は答えた。
「帰るんだろ?」
「うん」
問いかけられて素直に答えると、悠宇は慣れた様子で充槻の側に歩み寄り、ひらりとバイクの後ろにまたがった。
「じゃあな」
キーを差し込みエンジンをかけると、充槻は麟に左手を挙げた。
それにつられて麟も左手を上げると、続けて悠宇も軽く左手を振り、軽い笑顔を残して2人は去って行った。
そんなことやり取りがあってから、麟は勇樹を、
「こーゆーヤツなのかぁ」
と思うようになり、そのおっとりさを肩の力を抜いて見守れるようになった。
が。
「うそだろ・・・」
同居していた水沢 勇樹が、実は神崎 悠宇で女だっただなんて事実を突き付けられた。
「そーいや、神崎もおっとりしてるっちゃーしてたな」
ベッドに入り、ぼんやりと思いだす。
約1年間、同じ教室で雑談した程度ではあるが。
同年代にしては口数が少なく、女にしては表情の変化も乏しいし、身振り手振りも少ない・・・一言でいえば、大人しい。
その原因が、おっとりというか天然ボケ。
すべての点と点が、線で繋がった様な感覚を覚えた。
「ま、いっかぁ」
くすりと笑ってから目を閉じると、麟はゆっくりと眠りに引き込まれていった。
そして、ある休日の昼下がり。
ちょうど飲み物が切れたので、麟は台所に立った。
「水沢」
「?」
ダイニングテーブルで雑誌を読んでいた悠宇が、ゆっくりと顔を上げた。
「コーヒー入れるけど、飲む?」
「うん。ありがと」
軽い微笑みが添えられて。
「了解」
コーヒーメーカーにセッティングをして、意味もなく、それを見つめる。
こぽこぽという音と香りと共に、コーヒーができていく。
こういう時間も、悪くない・・・麟はゆっくりと、深呼吸をした。
あとがき
えー。穴埋めであげましたけど、結局これって何なんだろう?( ・◇・)?(・◇・ )
とまどっている麟に、ゆっくりとしみこんでいく様な悠宇の存在。
2人はこうやって、ゆっくりと愛を育んでいったのでしょう。
あ。
そーいえば、今月は麟のお誕生月ですわ。
あら~、頑張るべきかしら?
が。
ろくすぽ知らない相手と暮らす緊張感はある。
が。
その相手が、自分の聞いていた評判とここまで違うとなると、さらに困惑せざるを得ない。
『ケンカ、百錬練磨のツワモノ』という評判から想像するのは、普通はゴツイ男だ。
しかし、目の前にいるのは、身長160くらい。
華奢な上に料理上手で家庭的となると、あまりにも予想の範疇を超えていた。
そしてなおかつ、
「お茶入れる」
と言って台所に立ち、ガラスのポットの中で色づいていく紅茶をのんびり眺めるほどにおっとりだったのだ。
「水沢」
「ん?」
ゆっくりとこちらを振り返る顔は、あまりに無防備だ。
「・・・調子、悪いんスか?」
「なんで?」
「ぼーっとしてないっスか?」
「別に」
あっさり答えると、またポットの方を向く。
「左様で・・・」
朝は朝で、コーヒーメーカーを眺めながら出来上がりを待っていた。
今は今で、夕食後の紅茶を入れる。
どう贔屓目に見ても、かなりおっとりした性格なんだろうと思う。
それがどうなって、ツワモノなんて呼ばれる様になるんだ?
麟の思考回路の範疇を越えていた。
「疾風」
「はい?」
「ミルクと砂糖は?」
「ミルク、いります」
「りょーかい」
のんびり答えると、冷蔵庫から牛乳を取り出しピッチャーに移し、軽くレンジで温め始める。
なんだかなぁ。
麟はため息をついた。
同居を始めて1週間ほどたったある日。
麟は、同級生の神崎を何故か送り迎えしてる成田の事を思い出し、裏門で捕まえた。
「疾風?」
麟の顔を見た瞬間に充槻はすぐに麟の名を呼んだが、その表情には、麟が来た事に不信感を持っていた。
「ちょっと聞きたいこと、あんだけど?」
「あ?」
「水沢のこと、なんだけど」
「水沢?」
眉根を寄せる。
「なんつーか、キャラがよくわかんねーんだけど?」
「は?」
充槻が固まる。
「俺はお前にそう言いたいぞ」
「余計なお世話」
そう言葉を返しつつ、なんて説明すればいいんだ?と、麟は思ったが、すぐに考え方を改めた。
「どんなヤツ?って話」
そう言われた充槻は、何かを考えた表情を作り、その後、軽くため息をついた。
「俺だって、まだ1年も一緒にいねーから」
「へ?」
「小6の時に嵐山にいて、松原に連れまわされたせいで名前が売れて。去年、こっちに引越したらしい。俺が知ってるのは、そんだけ」
本当にそれだけかよ?と、麟は心の中で突っ込んだ。
「性格は?」
「まあ・・・いいヤツだよ。ジョーシキあるけど世間知らずの天然ボケだけどな」
「天然ボケ・・・」
その言葉に「やっぱり」と思うと同時に、さすがに麟も言葉を失った。
「育ちがいいんだろ?おっとりしてるよ・・・ケンカの時以外は」
「・・・」
「どっかにスイッチがあんだろーな、アレは」
呆れ顔だ。
「なんでアレでケンカに強いのか、よくわかんねーよ」
「はあ」
それには麟も、同意見だ。
やっぱりアレは天然かぁ・・・そう思っていると、
「お前と大差ねーけど」
と、充槻が言った。
「は?」
その台詞に、麟は声のトーンを上げた。
「桜井に言わせると、な」
「?」
「お前もいいヤツだと。優しいし大人しいし、女だったら彼女にするって言ってたぜ」
「なんだよ、ソレ」
「俺が知るか。桜井に聞けって」
「・・・」
麟の中に、軽い怒りの感情が湧いた。
「で?気が済んだのかよ?」
「え?・・・あ、まあ」
「じゃあ、お姫様が来たんで」
「え?」
慌てて麟が振り向くと、裏門からこちらに向かってくる悠宇の姿が目に入った。
「神崎・・・」
「どうかしたの?」
悠宇が問うと、
「なんでもねー」
と充槻が返し、
「俺だって知り合いなんだよ、コイツ」
と麟が充槻を指差した。
「そう」
「お前こそ、何で知り合いなんだよ?」
今度は麟は問うと、悠宇は軽く驚いた表情を作り、それを見た充槻がぷっと吹き出した。
「なんだよ!」
食って掛かるが、充槻は返事もできずにくつくつと笑い続けた。
「おかしすぎる」
「成田!」
充槻に反論してから悠宇の方を振り向くと、悠宇も軽く笑っていた。
「なんだよ、神崎」
「別に」
お得意の・・・というか、本当になんでもない様な表情で言う。
「誰かから連絡あった?充槻?」
「・・・いや、ない」
笑いをこらえながら、充槻は答えた。
「帰るんだろ?」
「うん」
問いかけられて素直に答えると、悠宇は慣れた様子で充槻の側に歩み寄り、ひらりとバイクの後ろにまたがった。
「じゃあな」
キーを差し込みエンジンをかけると、充槻は麟に左手を挙げた。
それにつられて麟も左手を上げると、続けて悠宇も軽く左手を振り、軽い笑顔を残して2人は去って行った。
そんなことやり取りがあってから、麟は勇樹を、
「こーゆーヤツなのかぁ」
と思うようになり、そのおっとりさを肩の力を抜いて見守れるようになった。
が。
「うそだろ・・・」
同居していた水沢 勇樹が、実は神崎 悠宇で女だっただなんて事実を突き付けられた。
「そーいや、神崎もおっとりしてるっちゃーしてたな」
ベッドに入り、ぼんやりと思いだす。
約1年間、同じ教室で雑談した程度ではあるが。
同年代にしては口数が少なく、女にしては表情の変化も乏しいし、身振り手振りも少ない・・・一言でいえば、大人しい。
その原因が、おっとりというか天然ボケ。
すべての点と点が、線で繋がった様な感覚を覚えた。
「ま、いっかぁ」
くすりと笑ってから目を閉じると、麟はゆっくりと眠りに引き込まれていった。
そして、ある休日の昼下がり。
ちょうど飲み物が切れたので、麟は台所に立った。
「水沢」
「?」
ダイニングテーブルで雑誌を読んでいた悠宇が、ゆっくりと顔を上げた。
「コーヒー入れるけど、飲む?」
「うん。ありがと」
軽い微笑みが添えられて。
「了解」
コーヒーメーカーにセッティングをして、意味もなく、それを見つめる。
こぽこぽという音と香りと共に、コーヒーができていく。
こういう時間も、悪くない・・・麟はゆっくりと、深呼吸をした。
あとがき
えー。穴埋めであげましたけど、結局これって何なんだろう?( ・◇・)?(・◇・ )
とまどっている麟に、ゆっくりとしみこんでいく様な悠宇の存在。
2人はこうやって、ゆっくりと愛を育んでいったのでしょう。
あ。
そーいえば、今月は麟のお誕生月ですわ。
あら~、頑張るべきかしら?
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