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オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
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 その年初めての雪が降った日、帰りがけに偶然、一緒に帰ることになった。

 その年初めての雪が降った日、帰りがけに偶然、一緒に帰ることになった。
学校の連中にバレるのを恐れ、いつもは暗黙の了解で別々に登下校していた。
それが、雪のせいで、なんとなくお互いに工作しようという気が起きなかった。
寒いには寒いが、たまの雪には心も緩む。
ちょうど、下校時間をそこそこすぎて人がいないというのもあって、更に気も緩んでいたんだろう。
とりあえず、バス停までの道のりを歩いた。
「こーゆーの、あんまりないよな」
「・・・そうね」
大体、悠宇は基本・成田の送り迎えがあるのだ。
あまりにも慣れない状況に、なんとなく、何を話していいのかわからないままに、バス停に着いた。
ほとんど待つこともなくバスはやって来た。
悠宇から、先に乗り込む。
席はほとんどガラガラで、悠宇は一番後ろの席に座った。
その隣に、すこだけ間隔を開けて座る。
スペースはあるわけだし、べったり隣に座るのも違うだろう。
それに、前の方に乗っていた同世代くらいの私服の女が、俺の顔を見て「あれ?」という表情をしたのもあった。
「雪って、今日だけ?」
「んー。今朝の天気予報だと、一応上がることになってたけど」
隣の悠宇を見ると、もって来たタオルでカバンを拭いた後、袖や肩についた雪を拭っていた。
こーゆーコトロは、オンナなんだよなぁ。
なんとなくそれを眺めてると、急に悠宇がこちらを向いた。
「?」
少しだけ体を俺の方に向けるように座りなおすと、さっきまで拭いていたタオルで、俺の袖や肩を拭い始めた。
「いいよ、別に」
拭く前に、ちゃんとタオルをたたみ直していたのを俺は見ていた・・・ちゃんと、濡れていない面を使っていたのも知っていた。
「制服、明日も着るでしょ?」
そう言ってる間も、手を止めることはなく・・・結局、なすがままに拭かれてしまった。
「さんきゅ」
悠宇はその言葉に軽く笑うと、タオルをしまい、何事もなかったかの様にいつもの表情に戻った。

バス停を降りた時、悠宇の方を振り返った。
「俺、ちょっとコンビニ行ってくるわ」
「うん」
にこりと笑う。
一緒にマンションに入っていくのはさすがにマズイ・・・それを、分かってくれているとは思う。
「何か、いる?」
「大丈夫。じゃあね」
そう言うと、本当にまるで違う家へ帰るかの様な錯覚を覚えるほど普通に、悠宇はその場から去っていった。
外じゃなかったら、思わず引き止めていただろう。

コンビニから戻って、玄関で傘を畳んでいると、ぱたぱたとスリッパの音を響かせて、悠宇が玄関までやって来た。
「おかえり」
「ただいま」
「はい」
タオルが差し出される。
「ありがと」
受け取ると、まるで引き換えのようにカバンを持っていかれた。
「?」
玄関におきっぱなしだったもう1枚のタオルで、カバンを拭き始める。
「お風呂場、乾燥機モードにしてあるから、制服脱いだらかけておいた方がいいよ」
「あ・・・うん」
玄関でタオルを出されることは何度かあったけど、なんというか・・・今日はそれがやけにありがたく感じた。
「悠宇・・・」
カバンに手を伸ばす振りをして、悠宇の腕を掴んで引き寄せる。
その、細い体を腕の中に収めた。
先に部屋に帰って着替え、暖かい空気の中にいたせいが、手放したくない位に、暖かい。
「なぁに、麟?」
「ん?」
「ありがと」
「?」
首を傾けた気配がする。
そして、悠宇がそっと体を離したのは、幸い。
そのまま何も言わずに、唇を寄せると、大人しく瞳が閉じられた。
「タオル、ありがと」
唇を離してからそう言うと、悠宇はそっと俯いた。
「い〜いオンナ」ね・・・成田が言ったことを思い出す。
何を基準にあいつがそう言ったのかは引っかかるが、まあ・・・それはそれ。





オマケ
それから約1時間後、優一から動画つきのメールが届いた。
「はあ?」
目の端で、悠宇が不思議そうな顔をしたのが分かった。
「悠宇・・・これ」
動画を表示したまま、携帯を手渡す。
「え・・・」
さすがの悠宇も、固まった。
「どーしたの、これ?」
その動画は、バスの中で悠宇が俺の肩なんかを拭いてたのを映した動画。
「あのバスに、バスケ部女子の1年が乗ってて、撮ったらしい」
優一と要はバスケ部だ。
「俺、明日学校行きたくねー」
何を言われるか、分かったもんじゃねー。
このまま、学校が休みになる位大雪になって欲しいと、願ってしまった。





先日、関東でも雪が降りました。
ふわふわと、羽が舞い降りてくるかのような雪。
雪を見て、雪の時期のものを・・・と、ストックから引っ張り出してみました。

「麟が悠宇に惚れ直す」が、サブタイトルとなってましたが・・・どうなのかしら?
麟は鈍いし、悠宇も何気なく素っ気なく優しいので、なかなかありがたみを気づかない気がします。
ほんわかと、あったかくなっていただければ幸いです。

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雪?
こんにちは。
うちの方が南部のせいでしょうか・・。
雪降ったんですね。

雪の寒い中、人の温かさが身にしみます。
紅梅 2009/01/30(Fri)23:29:43 編集
Re:雪?
紅梅さん、またのコメントありがとうございます。

雪は1/24に降りました。
うちの方が標高も高いですし(笑)そのせいもあると思います。
寒いですけど、雪が降ると、何ともいえない雰囲気が好きです。

このお話で、ちょっとでもほんわかしていただけたのなら、幸いです、
【2009/01/31 11:02】
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