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オリジナル小説をぽつぽと書いてゆきます
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 3月15日。

 3月15日。
 昨日、充槻に呼び出されたまま・・・不本意ながらの朝帰り。
 マンションのエレベータに乗って、わずかに痛む腰のせいで壁に寄りかかりながら携帯を取り出して時間を確認すると、9時を回ってた。
 ホワイトデーって、バレンタインのお返しをもらえる日、なんじゃなかったろうか?
 お返しどころか、こっちがあげたと言えなくもない。
 そんな、冗談ともつかないことを思っている場合・・・じゃない。
 イヤだなぁ。
 きっと、疾風は起きているだろう。
 気まずい。
 ユウウツな思いに視線を下げながら玄関を開けてリビングへ行くと、予想通りに疾風は起きてダイニングの椅子に座ってた。
 「おかえり」
 いつもと変わらない、軽い笑顔。
 「・・・ただいま」
 なんとなく後ろめたくて、思わず視線を逸らした。
 「成田、何だって?」
 「大したことじゃなかった」
 「コーヒー、あるけど」
 「ん・・・後でもらう」
 「後?」
 「シャワー、浴びたいから」
 「ふーん」
 何のとげもない言葉を背中に受けながら、まずは部屋に戻って支度を整える。
 そして部屋を出て、お風呂場に行こうとする足を、疾風の声で止められて振り返る。
 「神崎。都合のいい時でいいから、数学教えてほしいんだけど」
 明日から、学年末試験。
 「うん・・・了解」
 「よろしく」
 そう言って浮かべた笑顔は、今の自分には怖いくらいに眩しかった。

 シャワーを終えて、少し砂糖を多めにいれたコーヒーを片手にダイニングに付くと、疾風は日本史のノートと教科書を広げていた。
 「・・・疾風」
 「ん?」
 視線は、そのままだった。
 「疾風さぁ、彼女いるの?」
 「は?」
 ペンを回していた手がぴたりと止まって、ゆっくりと顔が上がる。
 「なんで?」
 「んー。イヤ、まずいんじゃないかと思って」
 「なにが?」
 「彼女いたら。一応、女と一緒に住んでるって、フツーはイヤでしょ」
 「・・・今更」
 疾風がため息をついた。
 「ってゆーか。ソレ、俺の言う台詞だろ」
 「え?」
 「オトコがいるのはお前の方だろ?」
 「・・・いない、ケド」
 「ウソつけ」
 少し目を細め、疾風は呆れた顔をした。
 「なんで?」
 「優一が『彼氏いるよねぇ、絶対にいるよねぇ』って連呼してる」
 林、が?
 「成田も送り迎えしてるし」
 「充槻のことは誤解されるけど、違うから」
 「松原がどーのーってのは?」
 さすがに、耳に入ってるんだ。
 「桜井が怪しい、とかって」
 「会ってる様に見える?」
 「・・・いや」
 「じゃあ分るでしょ、いないって」
 「本当だって保証は?」
 思いがけない追求。
 「桜井に聞けば?それに・・・そう言う疾風はどーなの?」
 「俺?」
 「彼女」
 いて、不思議はない。
 「いない」
 あっさりと。
 「なんで?」
 「んー」
 ペンをくるりと回しながら、考え込んだ。
 そして、ややあってから
 「どーでもいいから」
 と、ぽつりと返ってきた。
 「え?」
 「俺、身内が女ばっかりで、女の中で育ってきたからさ。目の色変えて『彼女欲しい』ってノリ、よくわかんねーから」
 「・・・」
 納得、した。
 男だと思っていた同居人が女とわかっても、態度がさほど変わらない理由。
 女慣れ、してる。
 それで、荒っぽい所作はない上に、躾もされている。
 お風呂やトイレがバッティングするのも、さり気なく避ける。
 「できる時はできるだろーし」
 「まあ、確かに」
 そういうスタンス・・・よく有里が言ってた。
 『がっついてるとダメだ』って。
 だからこそ、先月、あれだけのチョコが集まったのかもしれない。
 「そんなことより、数学はいつ教えてくれんの?」
 「え?」
 急に矛先が変わる。
 「あ・・・じゃあ、教科書持ってくる」
 腰を上げると、
 「よろしく」
 と言って、再び疾風が柔らかい笑顔を浮かべた。





途中のあとがき

 充槻、当て馬に成り下がる(w_−; ウゥ・・
 っていうか、充槻は悠宇を通して変わるし、悠宇は充槻の件があったから麟を意識し出したし・・・って設定組んだんですけどねぇ。
 でもまあ、どちらにしても悠宇と麟の鈍さに変わりない(呆

 あと、麟の身内話がありましたが、そう・・・麟の知り合い(京都の)は8割がた女性です。
 同世代はそれなりに男ばかりですが。
 ある意味、感覚が麻痺してんでしょうねぇ・・・って他人事のように言う私(汗

 ようやっと折り返し地点。
 この後もお楽しみいただければ、幸いです。
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